物価上昇率以上の賃上げを狙おう 学び直しも視野
2023年に備えるマネー戦略(1)
あっという間に今年も12月になりました。今月のテーマは2022年のお金の問題を棚卸ししつつ、「2023年に備えるマネー戦略」としたいと思います。今年はなんといっても物価上昇という大きな転機がありました。来年まず考えたいのはこれに見合う「給料アップ」をどう勝ち取っていくかです。
来春は賃上げをただ喜ぶだけではダメ
今年は物価上昇元年といってもいい年でした。22年10月の消費者物価指数の前年同月比の上昇率は3.6%となり、伸び率は消費増税時も上回り、40年8カ月ぶりというくらいの上げ幅になりました。「値上げの年」を象徴する数値となっています。
23年、考えていきたいのは「物価が上昇した分、給料も上がるかどうか」です。政府は経団連などに賃上げの要請をしていますが、来春ほど賃上げの重要性が高まった年はありません。
全体としては3%の物価上昇ですが、電気代・ガス代のように20%以上の値上がりとなった項目もあります。23年も値上がりが継続するという予想もあり、できればこれに見合う大幅な賃上げを期待したいところです。
労働組合のある会社に勤めている人は、労働組合のがんばりに注目してみましょう。デフレ時代にはなかなか存在意義が発揮しにくかった労働組合ですが、こうした時代は労働者代表として会社とぶつかって、賃上げを勝ち取る役目が期待されます。
しかし、「物価上昇率=賃上げ率」というだけではいけません。
物価上昇を超える賃上げを昇格・昇給で狙う
私たちのビジネススキルの高まりは本来的には物価上昇率を上回る(物価上昇とは関係なく、人材価値が高まっていくから)のが理想です。「物価上昇率<賃上げ率」とならなければいけません。
年齢に応じた能力向上を一律に賃金に反映する仕組みは年齢給といえます。個人の能力評価がひとりひとりに反映されるのは昇格・昇給ということです。
個人のビジネスパーソンとして考えたとき、あなた自身は「物価上昇率<賃上げ率(昇格・昇給分を含む)」となることを目指していきましょう。特に若い世代ほど伸び代が大きい分、スキル向上に取り組み、会社からの評価を高めて給料アップにつなげていくのです。
昇格・昇給が実現すれば、当面の物価上昇分を上回る給与アップを勝ち取ることができます。それは目の前の家計の安定のみならず、将来に備える余裕の確保にも通じます。23年あるいは24年は、本気で昇格・昇給を手に入れるためにがんばってみましょう。
昇給は受け身では実現しません。昇給のために今何ができるか、少し考えてみましょう。できれば年末年始の休暇のうちに答えをみつけて、23年は年初からスタートダッシュをしたいところです。
何をすればよいか分からない、という人は信頼できる上司に相談してみましょう。真面目に働いている先輩でもいいでしょう(仕事の態度がいい加減な先輩や同僚に相談すると、バカにされてしまうのでこういう手合いは避けることが肝心です)。
社内規定を読み込むと、昇格の条件が示されていることもあります。前回の人事評価にもヒントが示されているかもしれません。
学び直しで自分自身のレベルアップ計画を
近年は、リカレント教育、あるいはリスキリングが注目されています。社会人大学院に入学するなど自分自身で意欲的に取り組む学び直しをする方法もあれば、会社側が学び直しの場を提供してくれる研修を受ける機会もあります。アプローチは様々ですが、こうした「学び直し」について23年は意識を高めていきたいところです。
学び直しは、ビジネススキルの高度化や方向変換を行うために重要です。特に現役時代が50年間になりつつあり、求められるスキルも変化し続けていく時代に生き残るには学び直しが欠かせないからです。
仕事に直接つながるスキルの向上、あるいは資格取得で年収増が実現できるなら、まずはそれに取り組みます。あなたにまだ欠けているビジネススキルの多くは、問題意識を持てばたくさんの学習機会が用意されていることに気づくはずです。
例えば専門知識をもっと習得した方がいいとアドバイスされたなら、業界紙を通読するような習慣をつけてみます。シンクタンクのリポート、業界のセミナーなどに関心を高めてみると、一気に世界が広がります。
資格取得も大事です。資格をバカにする人もいますが、受験勉強は体系的に知識を習得するのに効率的な仕組みです。また対外的に自分の能力を示せることもメリットです。新しいフィールドを手に入れる方法として、うまく活用してみてください。会社が助成金を出してくれる場合は手続きも忘れずに行いましょう。
リスキリングにおいては、今までの能力が時代遅れになっている事実をつきつけられることもあります。これは厳しいことですが、勇気を持って新しい能力獲得に取り組んでみてください。きっと新時代に必要な知識が手に入るはずです。
転職は成長業界への進路変更も視野に
今の会社でがんばって年収増を目指すのが基本ではありますが、転職活動も23年のテーマの一つです。転職活動は自分のキャリアの現在位置を確認し、これから進むべき方向性を考えるいいきっかけになります。
転職活動をすることで、今の会社があなたを低評価していることが明らかになることがあるでしょう。これは労働市場で自分を適正価格で評価してもらい年収をアップするチャンスでもあります。
社内だけを見ていてはこうした客観評価は難しく、転職活動は有意義です。結果として転職をしなかった場合であっても、自分のビジネスキャリアを整える刺激になります。
もちろん転職が成功して年収増あるいは労働条件アップ(例えば、残業がなくて同年収なら実質プラス)が手に入るならいいことです。特に物価上昇時期には大幅な年収増を勝ち取るチャンスとして転職を意識してみたいところです。
もう一つ、23年に意識したい転職の視点としては「成長する業界」狙いが挙げられます。あなたがもし23年春の賃上げで十分な賃金上昇を確保できなかったとしたら、それはあなたの会社や属する業界に賃上げする限界があるということかもしれません。
あなたに、十分なビジネススキルがあるなら、その能力に相応した年収をもらう資格があります。そのためには、あなたに十分な給料を払ってくれる会社あるいは業界に転職をする必要があります。
最初は軽い気持ちでいいのです。年末年始の自由時間に、スマホに転職系アプリをいくつかインストールしてみましょう。もしかしたら23年はあなたの飛躍の年になるかもしれません。
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「FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が若年層に向けて、「幸せな人生」を実現するためのお金の問題について解説するコラムです。毎週月曜日に掲載します。