北朝鮮ミサイル、政治混乱で安保に隙 石破政権初の対応
北朝鮮による31日早朝のミサイル発射を受け、石破茂政権は発足後初めて安全保障上の危機対応に追われた。日本周辺では岸田文雄前首相が退任を表明して以降、中国やロシア、北朝鮮の軍事的挑発が続く。政治基盤の不安定さを狙った揺さぶりの意図があるとみられる。
石破茂首相はミサイル発射から1時間ほど経過した午前8時20分ごろに首相官邸に入った。一部の日程を取りやめ、予定より早く出邸した。
事務方から情報を確認すると中谷元防衛相や岩屋毅外相らを集めて石破政権で初の国家安全保障会議を開いた。
首相は「日本を守る」を政策課題の柱に据え、アジアの厳しい安全保障環境に対応する重要性を訴えている。防衛政策に精通し、北朝鮮抑止などのために自衛隊の能力強化を訴えてきた経緯もある。
防衛省の分析によると、北朝鮮が今回発射したミサイルは飛翔(ひしょう)時間、高度ともに過去最長、最高の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級と推定される。11月には北朝鮮が7度目の核実験に踏み切るとの見立てもある。
日本周辺では8月14日に岸田氏が退任を発表してから、せきを切ったかのように周辺国の軍事行動が目立つ。
これまでに中国軍機、ロシア軍機がそれぞれ日本の領空を侵犯し、海でも中国海軍の空母が日本の接続水域に入った。中ロの軍艦が共同で日本周辺を航行する事案もあった。
9月以降、野党第1党の立憲民主党の代表選、自民党総裁選、衆院選と政治日程が続いた。10月27日投開票の衆院選では与党が過半数を割り込み、11月11日にも召集される特別国会での首相指名選挙に向けて各党の駆け引きが続く。
政治情勢が不安定になると日本周辺の軍事活動が活発になることは過去にもあった。防衛省幹部は「衆院選が終わったばかりで米国では大統領選が控えている。中国、ロシア、北朝鮮の挑発行動はさらに続くだろう。足元をみられている」と話す。
政治の流動化は外交日程にも影響を与える。
11月15〜16日にはペルーでアジア太平洋経済協力会議(APEC)、18〜19日にはブラジルで20カ国・地域(G20)の首脳会議がある。
首相は特別国会で首相に指名されれば出席する意向だ。米国のバイデン大統領や中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との初の首脳会談を調整している。
現時点で情勢は見通しづらい。
自民、公明両党は国民民主党を取り込む多数派工作を続ける。立民は首相指名選挙でほかの野党に同党への協力を働きかけている。特別国会で予算委員会などの論戦を求める声もあり、首相が選ばれて予定通り出発できるかもわからない。