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リモート体験やキャッシュレス コロナで高齢者も動く

新しいお金の生活様式(3)

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今月は「新しいお金の生活様式」というテーマを設定してみました。新型コロナウイルスの影響を受けて、今変わりつつある私たちのお金の問題を取り上げてみます。

~スタジアムの何倍もの観客が自宅でライブを視聴する時代~

先日、国民的人気バンドであるサザンオールスターズがオンラインでのコンサート配信を行い、大きな話題となりました。無観客ライブでありながら18万人がチケットを購入して視聴、家族を含めると推定視聴者は50万人にもなるそうです。

会場となった横浜アリーナの収容人数は1万7000人といわれていますから、驚くべき規模の視聴者数だということが分かります。私の周囲でも、中高齢の世代が多く視聴されている印象でした。

これは「新しいお金の生活様式」のひとつを象徴する出来事です。「コンサートまで出かけるのはちょっと……」という層が改めてライブ体験に関心があることが示されました。

また、オンラインでの視聴に課金をする人はたくさんいるということも示されました。これは、「リモート体験にかかる消費」が私たちの生活にこれから入り込んでいくスタートラインかもしれません。

新型コロナ以降、ZOOMを使ったオンライン飲み会を体験した人も多かったと思います。家族でのカラオケも、実は「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」や「プレイステーション4」といったゲーム機があれば、自宅でできることを初めて知った人もいるでしょう。レンタルビデオショップに行かなくても、オンラインで映画をレンタルしたり購入したりできることを、今回初体験した人も多かったはずです。

自宅からリモート体験ができるのは、アミューズメントだけではありません。すでに語学などでオンライン学習は普及し始めていましたが、高校や大学がリモート授業を開始しました。オンデマンドの授業も含めこうした動きは加速していくことでしょう。リモート体験とその消費は、ウィズコロナ時代に大きな意味を持つようになることでしょう。

~リアルは「少数精鋭」「プレミアム」に~

とはいえ、これはリアルの体験がゼロになることを意味しているわけではありません。18万人がネットでライブを見ても、現場に足を運んでライブを見たいという人はゼロにならないからです。

オンラインで会えるようになったとしても、時々直接会って友人と話をしたいという気持ちも変わらないはずです。むしろオンラインの交流が深まることでオフ会の重みが増すことかもしれません。

リモート体験とリアル体験は相乗的にどちらも続いていくことになるでしょう。そして、リアルの経験にはプレミアムな価値が認識されていくことになるはずです。

ディズニーランドや映画館、動物園や美術館なども、そこに行く体験に価値があることは変わりません。私たちは「実経験の価値」、ありがたみや喜びをこれからはもっと強く認識して、消費をするようになるのではないでしょうか。

だとすれば、これからはリアル経験に対する消費を、対価に見合う価値がある消費として選択していくことになるはずです。

~高齢者がECサイトでキャッシュレス決済する時代~

ところで、「新しい生活様式」の例としてECサイトの利用が挙げられています。買い物をする店で「密」を避ける選択肢のひとつということです。厚生労働省の資料に経済産業省が推奨するイメージのあるECサイト活用推進の記載があるということに、今回の余波の大きさが分かります。

リモート体験とともに今起きつつある消費のもうひとつの変化は「ECサイトの活用」でしょう。在宅のまま注文をし商品を受け取れる仕組みは今の時代にとても助かる仕組みです。

ヤマト運輸のリリースによれば前年同月比で取扱数の増加が見られていますが、多くはECサイトの利用拡大によるものと推察されます。各社のECサイトも、利用率の拡大がしばしばニュースになっています。

すでに利用していた人はもちろん、新規アカウントの設定も相当見られているものと思われます。特徴的なのは高齢者の利用拡大にもつながっているという指摘があることです。ECサイトの利用やキャッシュレス決済の利用が高齢者において拡大したという調査があります。これは、すでに技術的には普及レベルにあったサービスが、さらに多くの人に広がったということです。

全国をターゲットに中小店舗でもビジネスができ、また利用者は価格競争のメリットを享受しつつ、自宅で安全に受け取りができるECサイトは今後もその活用が大事になってきます。

同時に、アカウント凍結を脅す詐欺メールなどから身を守る術もこれからより重要になっていくことでしょう。むしろこちらの啓発のほうが当面の課題かもしれません。

~現金の重みが感じられない時代の消費には注意~

消費行動の変化としてはキャッシュレス決済の増加もあります。先ほどの調査でもキャッシュレス決済の利用が拡大している傾向が示唆されています。

現金を介さないことがどこまで新型コロナウイルスの対策となるかはまだ不明ですが、いささかなりとも効果がありそうであれば、現金取引を避ける心情は理解できます。

そして結果としてそれが社会が求めていたキャッシュレス決済社会への移行の促進につながっていたのであれば、悪いことばかりではないでしょう。

しかし、キャッシュレス決済の普及に伴う注意点もあります。それは「現金の重みを感じにくい」ことです。私たちが長年「財布に現金を適度に持つ」「現金の残り具合を考えながら買い物をする」という感覚を持っていましたが、キャッシュレスではこれを持てなくなります。慣れが必要です。

ところが、家計が急変している時期にキャッシュレス決済への移行を同時に行うと、実際にどれくらいお金を使っているかわかりにくくなります。それでも、銀行からのチャージによって電子マネーを使っている場合は当月の資金をATMで下ろして現金決済するのとあまり変わりがありません。しかしクレジットカードからの翌月以降の支払いでチャージすると、負担の先送りになってしまいます。

家計が苦しいとき、安易にクレジットカード払いへ切り替える場合、便利と安心が、家計の節約にもなるよう注意が必要です。

ウィズコロナ時代、消費スタイルにはいろんな変化が生まれています。便利をうまく取りこみ、リスクは賢く避けていきたいものです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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