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バレエで描き出す資源の循環──環境問題をテーマとした舞台「プラスチック」が来年1月上演

これまで、社会問題を可視化するバレエ公演を見たことがあるだろうか? 2023年1月8日(日)・9日(月・祝)、神奈川県KAAT神奈川芸術劇場ホールで、環境問題をテーマとした舞台「プラスチック」が幕を開ける。
バレエで描き出す資源の循環──環境問題をテーマとした舞台「プラスチック」が来年1月上演
Photo: Hajime Watanabe Hair & Makeup: Ryuji Nozaki

日本では、毎年東京ドーム112杯分のごみが家庭から捨てられ、中でもプラスチック ゴミの廃棄量はアメリカに次いで世界2位とされている。この問題に芸術がどうアプローチできるかを主題に、K-BALLET COMPANY / Bunkamuraオーチャードホール芸術監督である熊川哲也は、K-BALLET Opto第2弾のテーマを「プラスチック」とし、環境問題に着目したドラマチックバレエ『ペットボトル迷宮』『ビニール傘小町』を来年1月に上演する。

『ペットボトル迷宮』は、演出家アレッシオ・シルヴェストリン振付・演出のもと、傑出した実力をもつミュンヘン・バレエのプリンシパル、ジュリアン・マッケイのほか、飯島望未、日髙世菜、堀内將平、成田紗弥らが共演する。

三島由紀夫「近代能楽集『卒塔婆小町』」と太田省吾「小町風伝」を原案とする『ビニール傘小町』は、渡辺レイが振付・演出を担当。白石あゆ美、石橋奨也、山本雅也、小林美奈、杉野慧らが出演する。

2022年11月24日(木)セルリアンタワーの能楽堂で行われた製作発表会にて。『ペットボトル迷宮』に出演するジュリアン・マッケイ、飯島望未、日髙世菜がデモンストレーションをした。Photo: Hajime Watanabe

プラスチック汚染についての問題提起型のストーリーとダンスだけでなく、舞台装置や衣裳にも注目だ。『ペットボトル迷宮』では、産業廃棄物業者の協力のもと捨てられたペットボトル1万本以上を回収・洗浄し、舞台装置や衣裳として新たな命が吹き込まれるという。また、『ビニール傘小町』では、商業施設などで捨てられたたくさんのビニール傘を回収し、演出に利活用される。さらに、現代美術家森村泰昌と日刊イトイ新聞によるプロジェクト「アート・シマツ」とのコラボレーションで、美術展で一度使用され、処分される予定だった2500平方メートルに及ぶ川島織物セルコンのカーテンも再利用する。企画・構成・台本を担う高野泰寿は、能楽堂で行われた製作発表会にてこう語った。

「雨が降るとコンビニでたくさんのビニール傘が買われ、安いから電車などに忘れられる。あまりにも消耗的な使われ方をしているビニール傘を見たときに、このテーマを取り上げようと思いました。

今回、『供養』ということをキーワードとしています。日本文化の中で針供養や人形供養などが古くからあるように、私たちはものを大切に使い、弔って循環させていくという発想をもっています。私たちは今、プラスチックの過剰使用をやめなければいけない一方で、プラスチックという素材が私たちの生活をより良いものにしてくれたのも事実。そこで、私たちには何ができるのか? 説教臭くなりすぎない形で重要なメッセージをオーディエンスに伝え、この問題に目を向けるきっかけになれたらと考えています」

左から、『ビニール傘小町』の山本雅也、小林美奈、『ペットボトル迷宮』の日髙世菜、飯島望未、ジュリアン・マッケイ。Photo: Hajime Watanabe

また、アメリカでも屈指の手つかずの自然が残るモンタナ州で育ったというジュリアンは、日頃から環境に配慮した買い物を心がけるなど、地球を守ることへの強い危機意識をもつ。そんな彼は、「踊る」ことを通して、変化を起こしていきたいと意気込みを語ってくれた。

気候変動の問題は、非常に危機的な状況です。ですが、クラシカルアート、ダンス、バレエ、シアターの世界では、まだこうした社会課題にフォーカスした団体や会社に出合ったことがありませんでした。ですから、K-BALLETから今回の依頼をもらったとき、私は二つ返事で参加したいと言いました。

ファッション業界では、リサイクル素材を使ったシューズや服が生まれているのに、バレエ業界ではまだ変革が起こっていません。例えば、舞台に使われた装飾などを再利用することや、さまざまな面でよりサステナブルな素材を選択するなど、改善していけるところはたくさんあります。歴史があるからこそ、変化が起こるまでには時間がかかってしまうのかもしれないけれど、今回のプロジェクトを通して業界全体の危機意識を高められたらと考えています。ショーを通して、人を幸せにするだけでなく、ポジティブインパクトを残せるのではないでしょうか」

Photo: Nicholas MacKay

K-BALLET Opto「プラスチック」
日程/2023年1月8日(日)12:30開演 | 16:30開演、9日(月・祝)12:30開演(全3公演)
会場/KAAT神奈川芸術劇場 ホール(神奈川県横浜市中区山下町281)
チケット/S:9,000円、A:7,500円、B:3,000円
主催/Bunkamura、K-BALLET
公式サイト/特設ページはこちら
問い合わせ先/Bunkamura 03-3477-3244

Editors: Airi Nakano, Mina Oba