トランプ氏、ウクライナでの「ばかげた戦争」停止をプーチン氏に要求 応じなければ追加制裁と警告

2017年の国際会議で言葉を交わすドナルド・トランプ米大統領(左)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領

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サラ・レインズフォード東欧特派員、ロバート・グリーンオール記者

アメリカのドナルド・トランプ大統領は22日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナでの戦争を終わらせなければ、ロシアに高関税と追加制裁で対応すると警告した。

トランプ氏は、自分は戦争終結を推進し、ロシアとロシア大統領に「非常に大きな便宜」を図っていると、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

ロシアのウクライナ全面侵攻についてトランプ氏はかねて、自分が大統領に就任すれば1日以内に停戦合意を仲介すると主張していた。

ロシアはこれまでのところ、トランプ氏の発言に反応していない。しかし、ロシアの複数高官はここ数日、ロシア政府がアメリカの新政権と取引するための、わずかな可能性の余地が生まれたと述べている。

ロシアが2014年にウクライナ南部クリミアを一方的に併合して以降、両国の争いは続いている。プーチン氏は、ウクライナとの戦争終結を交渉する用意はあるものの、ロシア占領下にあるウクライナ領を、ウクライナ側がロシアのものとして認める必要があると繰り返している。

現在、ウクライナ領土の約20%がロシアの支配下にある。プーチン氏は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟も認めないとしている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア占領下にあるウクライナ領を一時的に譲らなくてはならないかもしれないと認めているが、ウクライナ政府は領土を手放すつもりはないという姿勢を見せている。

プーチン氏と会談の意向

トランプ氏は21日の記者会見で、プーチン氏と「とても近いうちに」話をするつもりだと述べ、プーチン氏が話し合いのテーブルにつかない場合は追加制裁を加えるという展開が「あり得る」と話していた。

22日には、さらに踏み込んだ内容をトゥルース・ソーシャルに投稿。「経済が後退しつつあるロシアとプーチン大統領に、とても大きい手助けをしてあげるつもりだ」とした(太文字は原文ですべて大文字)。

「今すぐ和解して、このばかげた戦争をやめろ! もっとひどいことになるだけだ。『取引』しないなら、それもすぐにしないなら、私は、ロシアがアメリカやほかの様々な参加国に売るものすべてに、高い水準の税金、関税、制裁を加えるしかなくなる」

さらに続けて、「自分が大統領だったら、そもそも始まらなかったはずのこの戦争を終わらせよう! 簡単な方法でも難しい方法でもできるが、いつだって簡単な方法の方がいいに決まっている。今こそ『取引をまとめる』時だ」とも、大統領は書いた。

ロシアのドミトリー・ポリアンスキー国連次席大使は以前、ロシア政府は交渉を進める前に、トランプ氏が停戦へ向けた取引で何を望んでいるのかを知る必要があると、ロイター通信に話していた。

「アメリカ抜きはありえない」

こうした中、ゼレンスキー大統領は21日、世界経済フォーラム年次総会(WEF、ダヴォス会議)で、どのような合意を結んだとしても、少なくとも20万人規模の平和維持軍の派遣が必要になると語った。

また、ロシアに対する現実的な抑止力を持つには、ウクライナに派遣される平和維持軍にはアメリカ軍も参加しなくてはならないと、米ブルームバーグに述べた。

「アメリカ抜きではありえない(中略)たとえ欧州の友人の一部が、それでも可能だと思っているとしても、それはありえない」とゼレンスキー氏は述べ、アメリカ抜きでこうした動きを取るリスクを冒す者などいないと付け加えた。

ウクライナの指導者たちは、強気な発言をするトランプ氏を評価するかもしれない(ウクライナ政府幹部は常々、プーチン氏は力しか理解しないという意見だ)。しかし、トランプ氏の発言に対するウクライナ側の反応を見る限り、彼らが求めているのは言葉ではなく行動のようだ。

トランプ氏はロシアに追加の経済制裁をいつ、何に対して科すのか明言していない。ロシアの対米輸出は、ウクライナ侵攻を開始した2022年以降減少しており、すでに様々な厳しい制限が設けられている。

現在のロシアからアメリカへの主な輸出品は、リン酸肥料とプラチナだ。

ウクライナ南部ザポリッジャの前線近くで榴弾砲を発射するウクライナ兵

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ロシアが想定していた「勝利」と現状

トランプ氏の発言に対するウクライナの人たちの反応は、ソーシャルメディア上では全般的に手厳しいものだった。ロシアによる侵略への対応として、追加制裁は手ぬるいという指摘が多く見られた。しかし、大半の人は何より、どのような和平交渉になるにせよ、プーチン氏がウクライナ側と一体何を話し合う用意があるのかを疑問視している。

他方、ロシア側がかつて想定していた「勝利」には、ウクライナ南西部の港湾都市オデーサまでロシアの戦車を進めることなどが含まれていた。しかし今のロシア政府はそれより小規模の「勝利」を国民に受け入れさせようとしているようだと、一部のロシア人は指摘している。

プーチン氏を支持する、ロシア国営メディア「RT」のマルガリータ・シモニャン編集長はこのところ、戦争終結のための「現実的な」条件について言及している。同編集長は、現在の前線での戦闘停止が含まれる可能性があるとしている。

この場合、プーチン氏が2022年に一方的な「編入」を宣言した、ウクライナの東部ルハンスク、ドネツク、南部ザポリッジャ、ヘルソンの4州が、部分的にウクライナに支配されたままでいることになる。

こうした「敗北主義的行為」に、ロシアの強硬派たちは激怒している。

トランプ氏は投稿の中で、関税と制裁強化という脅しを、ロシア国民への「愛」という言葉で表現し、旧ソヴィエト連邦が第2次世界大戦で被った犠牲をいかに尊敬しているか強調した(大戦でのソ連の犠牲は、プーチン氏にとって神聖なものに近い話題だ)。

ただし、トランプ氏が旧ソ連の犠牲者数として投稿した数字は、実際の人数を大幅に上回っている。また、旧ソ連は現在のロシアのみで構成されていたと、トランプ氏は考えているようだ。先の大戦では、何百万人ものウクライナ人や、ほかの構成国の市民も命を落としている。

トランプ氏はかつて、ウクライナのNATO加盟をロシアが懸念するのは「理解できる」と発言していた(この言い分はウクライナにとっては、プーチン氏は挑発されて否応なく行動したのだと言うに等しい)。しかし、トランプ氏は論調を変えつつあるようだ。

トランプ氏の姿勢は重要だ。しかし、ロシアと11年も戦争し続け、相次ぐ和平合意が破綻するのを経験してきたウクライナ人は、ことさらに希望を抱いてはいない。