米スペースXのロケット爆発 打ち上げ前のエンジン試験で
米フロリダ州ケープカナベラル空軍基地で1日、宇宙開発ベンチャーの「スペースX」が打ち上げ準備をしていたロケットが爆発した。けが人は出ていないという。
ロケットエンジンの燃焼試験を行っていた際に起きた爆発で、数キロ離れた建物が揺れたという。
スペースX社は、燃料が積まれていた際に「異常」が起きたと述べた。
3日に打ち上げが予定されていたロケットには、フェイスブックのためにイスラエルで製造された通信衛星が積まれていたが、爆発で破壊されたという。
フェイスブック主導の非営利団体「internet.org」は、インターネット未整備地域での接続拡大に取り組んでおり、その一環として仏衛星企業ユーテルサット・コミュニケーションズと組み、通信衛星「Amos-6」を使ってサハラ砂漠以南アフリカ一帯でインターネット高速通信を実現する計画だった。
アフリカ訪問中のフェイスブック創業者、マーク・ザッカ―バーグ氏は衛星が破壊されたことについて、自身のフェイスブックページで、「非常に残念だ」と書いた。「すべての人にネット環境を提供するという使命実現の強い意思は変わっていない。この衛星が提供するはずだった機会をすべての人が手に入れるまで、努力を続ける」。
イスラエル宇宙局のイサーク・ベン=イスラエル氏は、宇宙産業にとって大きな打撃だと述べた。「Amos-6」は2億ドル(約207億円)以上の価値があり、イスラエルの衛星事業会社スペース・コミュニケーション(スペースコム)が所有していた。
ベン=イスラエル氏は、「イスラエルの通信衛星業界にとっては深刻な打撃で、この状況を切り抜けられなければ、業界の将来があやしくなる」と語った。
ケープカナベラル空軍基地は、スペースXが借りている第40発射台で午前9時(日本時間午後10時)過ぎに「大きな」爆発が起きたと発表した。
スペースXは発表文で、「異常が発生したのは、上部液体酸素タンクの近くで、燃料を充填中だった」と説明し、「通常の運用手順に従い、すべての人員が発射台から避難し、けが人は出なかった。根本的な原因についてデータの見直しを続けている」と述べた。
スペースXはロケット再利用の新たな方法を確立しようとしており、比較的安価な宇宙旅行の実現を目指している。同社は、ロケットの「ファルコン9」を使って国際宇宙ステーションに物資を届けることに成功している。
同社は昨年12月に、搭載された衛星の打ち上げを終えた「ファルコン9」を再び地球に着陸させるという業界初の取り組みに成功した。
ロサンゼルス近郊のホーソーンに本社を置くスペースX社は、ネット事業で富を築いた起業家のイーロン・マスクが創業した。マスク氏は電気自動車のテスラ社も経営している。
<解説>デイビッド・シュクマンBBC科学担当編集長
発射台でどんな問題が起きたのか詳細は置くとしても、最も野心的な宇宙計画のひとつにとって悪いニュースだ。
スペースXは、宇宙の遠くまで行ける旅行を低コストで、かつ頻繁に可能にするという大きな夢を抱いている。今回の燃焼試験は通常の作業で、加速しつつある一連のロケット発射の一環であるはずだった。
さらにスペースXは、地球に無事帰還したロケットの巨大な1段目のひとつを再利用し、新たな歴史を刻もうとしている。また同社には、国際宇宙ステーションに向かう宇宙飛行士を乗せる計画もある。
何より派手な展望としては、火星入植計画がある。同社を率いるイーロン・マスク氏が今月発表する予定で、入植までどのような過程を踏むのかを説明する見通しとなっている。
スペースXが今後数年の間に、無人の火星探索に成功するという話も出ていた。今回の事故で、すべての工程表が危うくなった。