Google では、職場における意思決定の仕組み、ダイバーシティを認める組織文化はどのように築かれ維持されるのか、個人がその振る舞いや文化的貢献をどのように意識的に制御しているのかを把握するための取り組みを、何年にも渡り続けています。その中で、Google は無意識の世界に注目するようになりました。
無意識の偏見とは、情報処理や迅速な判断を行うために自動的にたどる心理的な近道です。人はいつでも何百万という情報に囲まれていますが、そのうち意識的に処理できているのはたったの 40 ほどしかないという研究結果があります。認識というフィルタや経験則(ヒューリスティクス)は、人間が大量の情報を無意識のうちに優先度で振り分け、一般化して片付けるのに役立っています。職場においてこうした近道は、情報や注目度、時間などが限られている中で判断を下す場合には有用ですが、ときには判断を迷わせて予想外の結果を招く恐れもあります。
無意識の偏見があると、十分に客観的な判断を下せなくなることがあります。たとえば、素晴らしいアイデアを見落としたり、個人の潜在能力を駄目にしたり、同僚との仕事に支障をきたしたりする場合もあります。無意識の偏見について理解し、重要な場面でそれを乗り越えることにより、より的確な判断が下せるようになります。経歴にとらわれることなく優れた才能を見出し、発案者が誰であれ素晴らしいアイデアを評価するといったことが可能になり、職場全体で多様な物の見方や貢献のあり方を支援し、奨励し合えるようになります。
無意識の偏見がもたらす悪影響については科学的論文により十分に裏付けられていますが、その軽減方法については学ぶべきことがまだ数多くあります。無意識の偏見に立ち向かうのは容易なことではありません。それは、私たちが瞬時の判断を下すとき、無意識の偏見による誤りを自覚することが難しく、直感的に正しいと受け止めてしまうからです。それでも、多様な考え方、才能、アイデアを支援し奨励する職場を作るためには、無意識の偏見の緩和と、当初の考えを改める機会の提供を表す Google の用語であるアンバイアシング(Unbiasing:偏見の排除)を始めるための土台やツールを社員に提供する必要があります。Google でも偏見を排除する取り組みは始まったばかりですが、誰にとっても居心地の良い、ダイバーシティを認める職場を作るためには、無意識を意識することが重要であることは間違いないと言えます。