JP3872230B2 - 吸排気弁の電磁駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用内燃機関の吸排気弁を主として電磁力で開閉駆動する電磁駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の電磁駆動装置としては、例えば特開平8−21220号公報等に記載されているものが知られている。
【0003】
図12に基づいて概略を説明すれば、機関のシリンダヘッド1に摺動自在に設けられた吸気弁2と、吸気弁2を開閉駆動する電磁駆動機構3とを備えている。
【0004】
前記吸気弁2は、吸気ポート4の開口端を開閉する傘部2aと、該傘部2aの上端部に一体に設けられたバルブステム2bとを有している。
【0005】
前記電磁駆動機構3は、シリンダヘッド1上に固定されたケーシング5内に挿通されたバルブステム2bの上端部に円板状のアーマチュア6が固定されていると共に、ケーシング5の内部上下位置に前記アーマチュア6を吸引して吸気弁2を開閉作動させる閉弁用電磁石7及び開弁用電磁石8が配置されている。
【0006】
また、ケーシング5の上壁とアーマチュア6の上面との間には、吸気弁2を開方向へ付勢する開弁側スプリング9が弾持され、一方、シリンダヘッド1上面のシート溝底面とアーマチュア6の下面との間には、吸気弁2を閉方向へ付勢する閉弁側スプリング10が弾持されている。さらに、前記各電磁石7,8は、夫々のコイルに増幅器11を介して電子制御ユニット12からの制御電流が出力されるようになっている。
【0007】
この電子制御ユニット12は、機関回転数センサ13や閉弁用電磁石7の温度検出センサ14からの検出信号に基づいて両電磁石7,8の通電量を制御するようになっている。なお、図中15は電源である。
【0008】
そして、前記2つのスプリング9,10のばね力と2つの電磁石7,8による吸引力とによって、各スプリング9,10に蓄力して位置エネルギーとして保持し、電磁力の開放,吸引を交互に繰り返すことによって吸気弁2を開閉駆動させるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の電磁駆動装置にあっては、吸気弁2の開閉時に各電磁石7,8の電磁吸引力が、該吸引力に対抗する各スプリング9,10のばね力よりも増大してしまうため、閉弁時には傘部2aがバルブシート4aに激しく衝突し、また開弁時にはアーマチュア6が開弁用電磁石8に衝突してしまうおそれがある。
【0010】
すなわち、図13A,Bに基づいて各電磁石7,8の吸引力増加原理を説明すれば、図13Bは、吸気弁2開閉時の電磁吸引力特性とスプリング9,10のばね力特性を示しており、まず、閉弁時に閉弁用電磁石7の吸引力にアーマチュア6が上方に吸引される。よって、吸気弁2が上方へ摺動すると、閉弁側スプリング10が伸長される一方、開弁側スプリング9が圧縮されてばね力が増大し、ばね力が蓄えられる。
【0011】
次に、開弁時には、閉弁用電磁石7にOFF信号(非通電信号)が出力される一方、開弁用電磁石8にON信号(通電信号)が出力されて、アーマチュア6が下方へ吸引される。これによって、吸気弁2が下方へ摺動すると、開弁側スプリング9が伸長される一方、閉弁側スプリング10が圧縮されてばね力が増大しばね力が蓄えられる。
【0012】
したがって、閉弁時及び開弁時には、開弁側,閉弁側の各コイルスプリング9,10の増大したばね力で吸気弁2の摺動速度が減速させられるが、かかる開,閉切換時には圧縮及び伸長したばね反力に加えて吸引側の電磁石7,8の吸引力が急激に増加する。つまり、各電磁石7,8の電磁吸引力は、アーマチュア6と電磁石7,8の各固定コア7a,8aとの間の距離のほぼ2乗に反比例して増大する。したがって、かかる増大した吸引力が各スプリング9,10の圧縮,伸長側の合成ばね力に打ち勝ってアーマチュア6を十分に減速させることなく、上方あるいは下方向へ急激に移動させる。
【0013】
したがって、吸気弁2は、図11Aに示すように、最大開時と閉時に急激なリフト,ダウン変化し、この結果、閉時には傘部2aがバルブシート4aに衝突し、開時にはアーマチュア6が開弁用電磁石8に衝突して、夫々大きな打音を発生させると共に、アーマチュア6やバルブシート4a等の摩耗や破損を惹起するおそれがある。
【0014】
また、従来の装置では、吸気弁2の傘部2aをバルブシート4aに対して適切な面圧で当接させるために、閉弁用電磁石7の吸引力と開弁側スプリング9のばね力とを適度にバランスさせる必要がある。しかし、各スプリング9,10の経時変化によるへたりやバルブステム2bの熱膨張、及びバルブシート4aの摩耗等に起因してアーマチュア6と電磁石7の固定コア7aのギャップ変化が生じて電磁力が大きく変化してしまう。
【0015】
この結果、十分な閉弁保持力が得られず、傘部2aとバルブシート4aとの間にクリアランスが発生してシール性が失われたり、またはシート部に異物が堆積しやすくなって、バルブの放熱性が悪化してバルブの溶損などを招くおそれがある。
【0016】
さらに、従来例にあっては、装置をシリンダヘッド1上に組み付けるには、まず吸気弁2をシリンダヘッド1下方から挿入して、バルブステム2b上端部に、開弁用電磁石8を取り付けた後、該バルブステム2bにアーマチュア6を固定しなければならない。つまり、シリンダヘッド1上で電磁駆動機構3を組み付けなければならないため、その組み付け作業が煩雑となる。特に、かかる組み付け中に前記のように適正な閉弁保持力を得るためにアーマチュア6の上限,下限位置の正確な調整が要求されるので、さらに組み付け作業能率が低下するおそれがある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来装置の課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、機関の吸排気弁に連係するアーマチュアと、該アーマチュアを吸引して前記吸排気弁を開作動及び閉作動させる開弁用,閉弁用の電磁石とを備えた吸排気弁の電磁駆動装置において、前記アーマチュアの往復動に連動しかつ一対のフォロア面を有するフォロア部材と、アーマチュアの上下動に伴いフォロア部材の各フォロア面に転接して吸排気弁の開閉作動の終端域における開閉速度を制動するカム面をそれぞれ有する一対の揺動カムと、該各揺動カムを、それぞれ対応する前記各フォロア面方向に付勢する付勢部材とを備えた制動機構を設けたことを特徴としている。
【0018】
したがって、本発明によれば、機関始動時にアーマチュアが開弁用電磁石によって吸引され、かつ例えば開弁側ばね部材のばね力により下降してフォロア部材が一方の揺動カムを下方へ押圧すると、この揺動カムのカム面のランプ部が一方のフォロア面に転接し、やがてベース部に達してフォロア部材の下降を停止させる。同時にフォロア部材は、例えば吸気弁のバルブステムを押圧して下降、つまり開弁停止させる。
【0019】
一方、吸気弁の閉時には、開弁用電磁石が非通電され、閉弁用電磁石に通電されてアーマチュアが該閉弁用電磁石に吸引されると共に、例えば閉弁側ばね部材によって吸気弁も閉弁方向へ上昇する。
【0020】
そして、かかる吸気弁の開閉作動時には、フォロア部材の上下動に伴って各揺動カムのそれぞれのカム面が対向する各フォロア面上を転接して、吸気弁の開閉作動の終端域では、一方のフォロア面に対する一方のカム面の当接位置がベース部側からランプ部を経てリフト部側へ転接すると、他方のフォロア面に対する他方のカム面の当接位置がリフト部側からランプ部を経てベース部側へ転移する。
【0021】
このため、開閉弁用ばね部材のばね力などがフォロア部材を介して各揺動カムに伝達されることによって生じる該各揺動カムの回転中心まわりのモーメントは零に近づく。したがって各揺動カムは、徐々に回転速度が小さくなって停止する。これに伴ってアーマチュアは、そのストロークエンドでその速度が可及的に小さくなると共に、吸排気弁は、同じくそのストロークエンドで大きな衝突音の発生を防止できる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記アーマチュアのほぼ中央位置に、矩形枠状に形成された前記フォロア部材を連結すると共に、該フォロア部材の上下端壁の対向する内面をそれぞれフォロア面に形成し、かつ該フォロア部材の内部に、それぞれのカム面が前記各フォロア面に転接する前記2つの揺動カムを収容したことを特徴としている。
【0023】
請求項3に記載の発明は、前記各カム面のベース部と各フォロア面との当接位置で、前記アーマチュアの上下面と対向する前記各電磁石との間に微小隙間を形成するようにしたことを特徴としている。
【0024】
請求項4に記載の発明は、前記付勢部材を両揺動カムの間に設けられた1つの捩りコイルばねによって構成したことを特徴としている。
【0025】
請求項5に記載の発明は、前記一対の揺動カムを、一本のカム支軸に同軸上に支持したことを特徴としている。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記アーマチュアとフォロア部材の上端部とをガイドロッドを介して連結すると共に、前記フォロア部材の下端部に吸排気弁のバルブステム上端部を連繋し、かつ前記カム支軸の軸心を、前記ガイドロッドの軸線上とバルブステムの軸線上の少なくともいずれか一方に交差する位置に配置したことを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の吸排気弁の電磁駆動装置を吸気側に適用した第1の実施形態を示し、シリンダヘッド21内に形成された吸気ポート22の開口端を開閉する吸気弁23と、該吸気弁23を開閉作動させる電磁駆動機構24と、吸気弁23と電磁駆動機構24との間に介装された制動機構25とを備えている。
【0028】
前記吸気弁23は、燃焼室に臨む吸気ポート22開口端の環状バルブシート22aに離着座して該開口端を開閉する傘部23aと、該傘部23aの上面中央に一体に設けられてバルブガイド26を介してシリンダヘッド21内を摺動する弁軸であるバルブステム23bとを備えている。また、この吸気弁23は、バルブステム23bのステムエンド23cにコッタを介して固定されたリテーナ23dと、シリンダヘッド21内に形成された保持孔27底面との間に弾装された閉弁用ばね部材である閉弁側スプリング28のばね力で閉方向に付勢されている。
【0029】
前記電磁駆動機構24は、シリンダヘッド21上に設けられたケーシング29と、該ケーシング29内に上下動自在に収納された円板状のアーマチュア30と、ケーシング29内のアーマチュア30を挟んだ上下位置に固定された上側の閉弁用電磁石31及び下側の開弁用電磁石32と、アーマチュア30などを介して吸気弁23を開方向に付勢するばね部材である開弁側スプリング33とを備えている。
【0030】
前記ケーシング29は、図1に示すように、シリンダヘッド21上に4本のボルト34で固定された金属製の本体29aと、該本体29aの上端部にビス35で固定された非磁性材のカバー29bとからなり、該カバー29側の内周面に非磁性材の筒状ホルダー36が配置されている。また、この筒状ホルダー36は、開口上端に閉弁用電磁石31を保持した段差径状の非磁性材の蓋部37が固定されていると共に、下端部に開弁用電磁石32を保持した底壁36aを一体に有している。尚、前記蓋部37の中央には、エア抜き孔37aが貫通形成されている。
【0031】
前記アーマチュア30は、上下面が両電磁石31,32に対向配置され、中央には下方へ延出した支軸であるガイドロッド38の上端部38aがナット固定されていると共に、このガイドロッド38の下端部に制動機構25の後述するフォロア部材45が一体に設けられている。前記ガイドロッド38は、底壁36aの中央に有する筒壁36b内に嵌挿固定された筒状ガイド部39を介して上下摺動自在に支持されていると共に、その軸心Xが吸気弁23のバルブステム23bの軸心Yと同軸心上に配置されている。
【0032】
前記開閉弁用の電磁石31,32は、固定コア31a,32aが横断面略U字形に形成され、互いにアーマチュア30を介して所定の比較的小さな隙間をもって対向配置され、固定コア31a,32aの内部に電磁コイル31b,32bが巻装されている。この電磁コイル31b,32bには、後述する電子制御ユニット40からの通電−非通電信号が出力されて、アーマチュア30を上方あるいは下方へ吸引あるいは吸引を解除するようになっている。
【0033】
前記開弁側スプリング33は、アーマチュア30の上面中央と蓋部37の下面との間に弾装されて、そのばね力が各電磁石31,32の消磁時には、前記閉弁側スプリング28のばね力とバランスしてアーマチュア30を両電磁石31,32のほぼ平衝中立位置に保持するようになっており、その状態で吸気弁23は閉弁位置及び開弁位置のほぼ中間位置に保持される。
【0034】
前記電子制御ユニット40は、機関のクランク角センサ41,機関回転数センサ42,閉弁用電磁石31の温度を検出する温度センサ43及び機関負荷を検出するエアフローメータ44からの夫々の検出値に基づいて、閉弁用,開弁用電磁石31,32に通電−非通電を相対的に繰り返し出力している。ここで、前記クランク角センサ42からの回転角検出値は、吸気弁23の開閉タイミングをクランクシャフトの回転と同期制御するためのものであり、機関回転数検出センサ43からの検出値つまりクランクシャフトの回転数の検出値は、該回転数によって変化する各電磁石31,32の吸引許容時間に対処するために利用され、さらに、温度センサ43の検出値は、温度上昇による閉弁用電磁石31の電磁コイル31bの通電抵抗増大に対処するためのものである。また、エアフローメータ44による機関負荷検出値は、機関回転数検出値とともに吸気弁23の開閉タイミングを最適に制御するために利用するものである。
【0035】
そして、前記制動機構25は、図1及び図2に示すように前記ガイドロッド38の下端部38bに一体に設けられたフォロア部材45と、このフォロア部材45の内部に回動自在に保持された2つの揺動カム46、47と、該各揺動カム46、47をフォロア部材45の後述するフォロア面45a,45b方向へ付勢する付勢部材である2つの捩りコイルばね48、49とから主として構成されている。
【0036】
前記フォロア部材45は、ほぼ正方形の矩形枠状に形成され、対向する上端壁の下面と下端壁の平坦な上面が夫々第1フォロア面45aと第2フォロア面45bとして構成されており、上端壁の上面中央に前記ガイドロッド38の下端部が一体に連結されていると共に、下端壁の下面中央に有する突起部45cの先端がバルブステム23bのステムエンド23cに当接している。
【0037】
前記各揺動カム46、47は、図2に示すように本体29aの内面に突出した対向ボス部50a,50b間に貫通固定されたカム支軸51に中央孔46a,47aを介して回転自在に支持されている。つまり、両揺動カム46、47は、カム支軸51に同軸上に設けられて、互いに摺接状態に隣接配置されている。また、前記カム支軸51は、その軸線Qが前記ガイドロッド38の軸線X及びバルブステム23bの軸線Yと交差する位置に配置されている。さらに、各揺動カム46、47は、図3A,Bにも示すように正面ほぼ雨滴状に形成されて、第1揺動カム46の上半分の上面全体が前記第1フォロア面45aに転接する弁開き側の第1カム面52として構成され、第2揺動カム47の下半分の下面全体が第2フォロア面45bに転接する弁閉じ側の第2カム面53として構成されている。
【0038】
そして、この第1,第2カム面52,53は、それぞれ所定のプロフィールに形成され、それぞれベース部である第1,第2基円部52a,53a側の第1,第2ランプ部52b,53bが緩やかな凸面に形成されていると共に、先端側の第1,第2リフト部52c,53cが第1,第2ランプ部52b,53bの曲率より小さな曲率の凸面に形成され、さらに第1、第2リフト部52c,53cより先端側に曲率の大きな凸面の第3,第4ランプ部52d.53dが形成されている。
【0039】
したがって、各揺動カム46、47の回転角θに対するフォロア部材45のリフト曲線は、図4に示すようなS字曲線特性となるように設定されており、前記第3,第4ランプ部52d.53dの存在によって第1,第2カム面52,53と第1,第2フォロア面45a,45bの接触点移動長さが小さくなるため、フォロア部材45も小型化できると共に、アーマチュア30の上下動の切り換え時における各カム面52,53の摺動方向切換を滑らかに行うことができる。
【0040】
さらに、各揺動カム46、47は、図5,図6に示すように各カム面52,53の基円部52a,53aが各フォロア面45a,45bに当接した位置で、前記アーマチュア30の上下面と対向する各電磁石31,32の上下面との間に微小隙間Go,Gcを形成するように基円部52a,53aの外径が設定されている。
【0041】
また、前記各捩りコイルばね48、49は、図2に示すようにカム支軸51の外周に巻装されて、各一端部48a、49aが両ボス部50a,50b内に挿通係止されている一方、他端部48b,49bが各揺動カム46、47の先端側カムノーズ部の中央位置に挿通係止されている。したがって、各揺動カム46、47は、該各捩りコイルばね48、49のばね力によって各カム面52、53が対応する各フォロア面45a,45bに弾接するように付勢されている。
【0042】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず機関停止時には、両電磁石31,32の各電磁コイル31b,32bに電子制御ユニット40から通電信号が出力せず、非通電状態となっている。このため、アーマチュア30は、図1に示すように、両スプリング28,33の相対的なばね力によって隙間S内のほぼ平衝中立位置に保持され、したがって、吸気弁23もバルブシート22aから若干離れた中立位置になっている。この時点での各揺動カム46、47は、捩りコイルばね48、49のばね力で両カム面52,53が各フォロア面45a,45bに弾接している。
【0043】
機関が始動されて、電子制御ユニット40から開弁用電磁石32の電磁コイル32bに通電信号が出力されると、図5に示すようにアーマチュア30が該電磁石32に吸引され、かつ開弁側スプリング33のばね力によって下降する。このため、フォロア部材45もガイドロッド38を介して下降して下端部38bでステムエンド23dを下方へ押圧する。これによって、吸気弁23は、閉弁側スプリング28のばね力に抗して下降ストローク、つまり開弁方向へストロークする。
【0044】
一方、吸気弁23の閉時には、開弁用電磁石32への通電が遮断され、閉弁用電磁石31の電磁コイル31bに通電されるため、アーマチュア30は、図6に示すように電磁石31の吸引力と閉弁側スプリング28とのばね力によって開弁側スプリング33のばね力に抗してフォロア部材45を上昇させる。これによって吸気弁23は、閉弁側スプリング28のばね力によって上昇して傘部23dがバルブシート22aに着座して閉弁する。
【0045】
そして、この吸気弁23の開閉時における第1、第2揺動カム46、47は、前記フォロア部材45の上昇あるいは下降に伴って捩りコイルばね48、49のばね力に抗して各カム面52,53が各フォロア面45a,45bに転接しつつカム支軸51を中心に時計方向あるいは反時計方向へ回動するため、図7に示すように吸気弁23の開閉作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0046】
すなわち、吸気弁23の閉作動時には、電磁吸引力と閉弁側スプリング28のばね力とによってバルブステム23bが上昇するに連れて第2揺動カム47との当接点Pは、図5及び図6に示すように第2ランプ部53dから基円部53a側に転移する。このため、図7に示すように、捩りコイルばね49が、揺動カム47とフォロア面45bを介してフォロア部材45を押し下げようとする力が増大する。この押し下げ力がアーマチュア30と吸気弁23の閉ストロークの終端域で制動力となり、アーマチュア30と吸気弁23を緩やかに減速し、やがて基円部53aにフォロア面45bが当たって停止する。したがって、アーマチュア30と吸気弁23は閉ストロークの終端域で効果的に制動される。
【0047】
そして、かかる特異な作用は開弁時にも生じる。したがって、基本的に揺動カム46の第3ランプ部52dから基円部52aで機械的にアーマチュア30の急激な動きを抑制することが可能になり、この結果、吸気弁23は、開ストロークの終端域でなだらかな作動特性が得られる。要するに、各揺動カム46、47が開閉側スプリング33,28と各電磁石31,32の吸引力によって揺動し、回転モーメントが作用することによって制動力が大きくなり、緩衝作用が得られるのである。
【0048】
しかも、前述のように両スプリング28,33及び各捩りコイルばね48、49のアーマチュア30に作用するばね合力は、図7Bに示すようにアーマチュア30の上限,下限付近からそれぞれ急激に増大する特性となり、この増大特性がそれぞれ吸気弁23の開時及び閉時の終端域の制動力として有効に作用する。
【0049】
したがって、吸気弁23は、図7A(特に丸破線)に示すように開閉作動時に安定した緩衝作用が得られる。この結果、傘部23aとバルブシート22a及びアーマチュア30と開弁電磁石32との激しい衝突が回避され、打音や摩耗あるいは破損等の発生が防止される。
【0050】
さらに、本実施形態では、図5,図6に示すようにアーマチュア30の最大上昇,下降時において、各揺動カム46、47によってアーマチュア30の上下面と各電磁石31,32の対向面とに間に積極的な微小隙間Go,Gcを形成したため、アーマチュア30と各電磁石31,32との衝突を一層確実に回避することができる。
【0051】
また、本実施形態では、電磁駆動機構24と吸気弁23とは別体に設けられ、フォロア部材45が吸気弁23を押し下げていない時(閉弁時)、すなわちガイドロッド下端部38bとステムエンド23dの当接点に極微小な隙間を有する状態では、吸気弁23は閉弁用スプリング28のばね力によって安定かつ確実に閉弁方向に付勢することができるため、常に傘部23aとバルブシート22aとの確実な密着性が得られる。
【0052】
さらに、吸気弁23や閉弁側スプリング28の配置構成は、従来から採用されているカムシャフト式の動弁構造と同じであるから、これらのシリンダヘッド21への組み付けが容易になると共に、電磁駆動機構24と制動機構25がケーシング29内に一体的に取り付けられ、これらを予めユニット化した上で、シリンダヘッド21上に組み付けることができるため、従来のようにシリンダヘッド上での細かな組み付け作業が不要となり、装置全体の機関への搭載性(組付作業性)が良好になる。
【0053】
また、この実施形態にあっては、2つの揺動カム46、47を設けて、各カム面52、53が捩りコイルばね48、49のばね力によって各フォロア面45a,45bに常時弾接させるようにしたため、該各カム面52、53と各フォロア面45a,45b間の隙間管理が不要になる。この結果、該各摺動面の高い加工精度が要求されないので、加工作業が容易になり、加工コストの高騰を抑制できる。
【0054】
また、2つの揺動カム46、47のカムプロフィールを個々に設定することができるため、アーマチュア30の上昇時と下降時にそれぞれ最適な制動特性を得ることができる。
【0055】
さらに、前記各カム面52、53と各フォロア面45a,45bとの間に、経時的に摩耗が発生しても、両者は常時弾接されているため、前記優れた制動機能が損なわれることはない。
【0056】
また、前記カム支軸51は、その軸線Qが前記ガイドロッド38の軸線X及びバルブステム23bの軸線Yと交差する位置に配置されているため、揺動カム46、47の摺動時におけるガイドロッド38の倒れが防止される。
【0057】
すなわち、前述した吸気弁23の例えば閉ストローク時の終端域において第1カム面53に大きな荷重が作用するが、この作用点は、揺動カム46の揺動に伴い第2ランプ部53bから移動して第2基円部53aに達した点であり、軸線Qの真下に位置する。そして、この作用点が、ガイドロッド38の軸線Xから外れた場合、あるいはバルブステム23bの軸線Yから外れた場合のいずれにおいても、フォロア部材45にモーメントが発生してガイドロッド38が倒れるため、該ガイドロッド38が筒状ガイド39の内周面に片当たりして両者間に大きなフリクションや摩耗が発生するおそれがある。
【0058】
しかし、本実施形態では、軸線Qが、軸線X及び軸線Yと交差するように配置されていることから、ガイドロッド38の倒れ現象が回避されるため、前述した大きなフリクションや摩耗の発生が防止される。
【0059】
また、かかる倒れを防止効果は、軸線Qが、軸線Xあるいは軸線Yのいずれか一方に交差するように配置されれば有効に発揮される。
【0060】
なお、本発明では、軸線Qを軸線Xあるいは軸線Yに対して、例えば、図1に示す配置で若干左方向にずらせてフォロア部材45を、軸線Xを中心としてほぼ対称形状に形成することも可能である。この場合、ガイドロッド38の倒れが若干生じるものの、該フォロア部材38のコンパクト化が図れると共に、フォロア部材38の組み付け時に横方向の向きを特定する必要がなくなるため、組付性が良好になる。
【0061】
図8及び図9は本発明の第2の実施形態を示し、制動機構25の両揺動カム46、47を各フォロア面45a,45b方向へ付勢する付勢部材を1つの捩りコイルばね54によって構成したものである。
【0062】
すなわち、捩りコイルばね54は、両揺動カム46、47の間に配置されて、螺旋状の中央部54aがカム支軸51の外側に配置されていると共に、一端部54bが第1揺動カム46の係止孔46aに横方向から係止されている一方、他端部54cが第2揺動カム47の同じく係止孔47aに横方向から係止されている。これによって、両揺動カム46、47を互いに上下反対方向に付勢して、各カム面52,53を各フォロア面45a,45bに弾接させるようになっている。
【0063】
このように、付勢部材を1つの捩りコイルばね54で構成したため、第1実施形態のように2つ設ける場合に比較して、省設置スペース化が図れると共に、製造作業能率の向上とコストの低廉化が図れる。
【0064】
図10及び図11は本発明の第3の実施形態を示し、開弁用、閉弁用スプリング28、33を廃止すると共に、フォロア部材45の下端突起部45cがバルブステム23bのステムエンド23cに連結されている。すなわち、前記突起部45cは、図11に示すように横方向溝60aを有するフック部60になっている一方、ステムエンド23cは、縦方向から切欠された切割溝61aを有する二股部61間にピン62が挿通されており、前記フック部60を、横方向溝60aを介して切割溝61aの横方向からピン62に係止させて連結するようになっている。また、前記各捩りコイルばね48、49は、その軸径が第1、第2実施形態のものよりも大きく形成されてばね力が同じく大きく設定されており、この大きなばね力によって各揺動カム46、47を介して吸気弁23を開弁用、閉弁用スプリング28、33と同じくストローク中央位置に保持するようになっている。
【0065】
したがって、この実施形態によれば、前記開弁用及び閉弁用のスプリング28、33が不要になるため、構造が簡素化されると共に、部品点数の削減により製造作業能率の向上とコストの低廉化が図れる。
【0066】
本発明は、吸気弁側に限らず、排気弁側のみに適用することも可能であり、排気弁側に適用した場合は、排気弁の開時の急激な動きを規制できることによって燃焼ガスの急激な排出が抑制され、この結果、排気音を低減させることが可能になる。
【0067】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る吸排気弁の電磁駆動装置によれば、特に揺動カムによって吸排気弁の開閉終端域における急激な開閉作動を十分に制動できるため、傘部とバルブシート、並びにアーマチュアと開閉弁用電磁石との激しい衝突が緩和される。この結果、激しい衝突打音の発生や摩耗あるいは破損等の発生が防止される。
【0068】
さらに、吸排気弁やバルブリテーナ等を電磁駆動機構とは別体とし、かつ電磁駆動機構と制動機構とをケーシング内に一体に収納してユニット化できるため、装置のシリンダヘッドへの組み付け作業性が向上し、搭載性が良好になる。
【0069】
しかも、この発明によれば、2つの揺動カムを設けて、互いのカム面が付勢部材の付勢力によって各フォロア面に常時弾接させるようにしたため、該各カム面と各フォロア面との間の隙間管理が不要になる。この結果、該各摺動面の高い加工精度が要求されないので、加工作業が容易になり、加工コストの高騰を抑制できる。
【0070】
さらに、前記各カム面と各フォロア面との間に、経時的に摩耗が発生しても、両者は常時弾接されているため、前記優れた制動機能が損なわれることはない。
【0071】
請求項2記載の発明によれば、アーマチュアとフォロア部材とを連結しかつ該フォロア部材内に2つの揺動カムを収容配置したため、制動機構全体のコンパクト化が図れると共に、アーマチュアのストロークの位置精度が出し易くなる。
【0072】
請求項3記載の発明によれば、アーマチュアの最大上昇、下降時において、各揺動カムによりアーマチュアの上下面と各電磁石との対向面との間に、積極的に微小隙間を形成したため、アーマチュアと各電磁石との衝突を一層確実に回避することができる。
【0073】
請求項4記載の発明によれば、1つの捩りコイルばねとして部品点数を少なくしたことにより、省設置スペース化が図れ、装置を小型化できると共に、製造作業能率の向上とコストの低廉化が図れる。
【0074】
請求項5記載の発明によれば、2つの揺動カムをカム支軸に同軸上に設けたため、別個の支軸にそれぞれ設けた場合に比較して制動機構全体のコンパクト化が図れると共に、各揺動カムとアーマチュアとの相対的な位置決めが容易になるので、該アーマチュアのストローク位置精度が向上する。
【0075】
請求項6記載の発明によれば、カム支軸をその軸線をガイドロッドなどとの軸線と交差する位置に配置したため、吸排気弁の開閉ストローク時におけるガイドロッド等の倒れが防止される。この結果、大きなフリクションや摩耗の発生が効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】Aは本実施形態に供される第1揺動カムを示す拡大図、Bは同第2揺動カムを示す拡大図。
【図4】アーマチュアの上下ストロークに対する揺動カムの回転角を示す特性図
【図5】開弁時の作用を示す縦断面図。
【図6】閉弁時の作用を示す縦断面図。
【図7】Aは吸気弁の開閉時期特性図、Bは各電磁石の吸引力と各スプリングのばね力特性図。
【図8】第2の実施形態を示す要部断面図。
【図9】本実施形態の要部分解斜視図。
【図10】本発明の第3実施形態を示す縦断面図。
【図11】本実施形態の要部分解斜視図。
【図12】従来の装置を示す縦断面図
【図13】Aは吸気弁の開閉時期特性図、Bは各電磁石の吸引力と各スプリングのばね力特性図。
【符号の説明】
21…シリンダヘッド
22a…バルブシート
23…吸気弁
23a…傘部
23b…バルブステム
24…電磁駆動機構
25…制動機構
28…閉弁側スプリング
29…ケーシング
30…アーマチュア
31…閉弁用電磁石
32…開弁用電磁石
33…開弁側スプリング
45…フォロア部材
46、47…第1、第2揺動カム
52…第1カム面
53…第2カム面
Claims (6)
- 機関の吸排気弁に連係するアーマチュアと、該アーマチュアを吸引して前記吸排気弁を開作動及び閉作動させる開弁用,閉弁用の電磁石とを備えた吸排気弁の電磁駆動装置において、
前記アーマチュアの往復動に連動しかつ一対のフォロア面を有するフォロア部材と、アーマチュアの上下動に伴いフォロア部材の各フォロア面に転接して吸排気弁の開閉作動の終端域における開閉速度を制動するカム面をそれぞれ有する一対の揺動カムと、該各揺動カムを、それぞれ対応する前記各フォロア面方向に付勢する付勢部材とを備えた制動機構を設けたことを特徴とする吸排気弁の電磁駆動装置。 - 前記アーマチュアのほぼ中央位置に、矩形枠状に形成された前記フォロア部材を連結すると共に、該フォロア部材の上下端壁の対向する内面をそれぞれフォロア面に形成し、かつ該フォロア部材の内部に、それぞれのカム面が前記各フォロア面に転接する前記2つの揺動カムを収容したことを特徴とする請求項1記載の吸排気弁の電磁駆動装置。
- 前記各カム面のベース部と各フォロア面との当接位置で、前記アーマチュアの上下面と対向する前記各電磁石との間に微小隙間を形成するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の吸排気弁の電磁駆動装置。
- 前記付勢部材を両揺動カムの間に設けられた1つの捩りコイルばねによって構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸排気弁の電磁駆動装置。
- 前記一対の揺動カムを、一本のカム支軸に同軸上に支持したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸排気弁の電磁駆動装置。
- 前記アーマチュアとフォロア部材の上端部とをガイドロッドを介して連結すると共に、前記フォロア部材の下端部に吸排気弁のバルブステム上端部を連繋し、かつ前記カム支軸の軸心を、前記ガイドロッドの軸線上とバルブステムの軸線上の少なくともいずれか一方に交差する位置に配置したことを特徴とする請求項5に記載の吸排気弁の電磁駆動装置。
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