JP3765732B2 - ヒートポンプ及び除湿空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートポンプ及び除湿空調装置、特に動作係数(COP)の高いヒートポンプ及びこのようなヒートポンプを備え、エネルギー消費量当たりの除湿能力の高い除湿空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の空調システムの構成を図8に示す。図8に示すように、従来の除湿空調装置は、冷媒を圧縮する圧縮機201と、圧縮機201により圧縮された冷媒を外気OAで凝縮する凝縮器202と、凝縮された冷媒を膨張弁203で減圧し冷媒を蒸発させて空調空間100からの処理空気を露点温度以下に冷却する蒸発器204と、この露点以下に冷却された処理空気を、凝縮器202の下流側で膨張弁203の上流側の冷媒で再熱する再熱器205とを備えている。これら圧縮機201、凝縮器202、再熱器205、膨張弁203及び蒸発器204によって、蒸発器204を流れる処理空気から凝縮器202を流れる外気OAに熱を汲み上げるヒートポンプHPが構成されている。
【0003】
図9は、従来の除湿空調装置において、冷媒としてHFC134aを用いた場合のヒートポンプHPのモリエ線図である。図9において、点aは蒸発器204で蒸発した冷媒の状態を示しており、このときの冷媒は飽和ガスの状態にある。冷媒の圧力は0.34MPa、温度は5℃、エンタルピは400.9kJ/kgである。点bはガスを圧縮機201で吸込圧縮した状態、即ち圧縮機201の吐出口での状態を示しており、このときの冷媒は過熱ガスの状態にある。
【0004】
点bの状態にある冷媒ガスは、凝縮器202内で冷却され、点cで示される状態に至る。このときの冷媒は飽和ガスの状態であり、その圧力は0.94MPa、温度は38℃である。冷媒はこの圧力下で更に冷却され凝縮して点dで示される状態に至る。このときの冷媒は飽和液の状態であり、その圧力と温度は点cにおける圧力及び温度と同じである。このときのエンタルピは250.5kJ/kgである。
【0005】
この冷媒液は、膨張弁203で減圧され、温度5℃の飽和圧力である0.34MPaまで減圧されて点eで示される状態に至る。点eの状態における冷媒は、5℃の冷媒液とガスの混合物として蒸発器204に至り、蒸発器204において処理空気から熱を奪い、蒸発して、点aで示される状態の飽和ガスとなる。この飽和ガスは再び圧縮機201に吸入され、上述したサイクルが繰り返される。
【0006】
図10は、従来の除湿空調装置における空調サイクルを示す湿り空気線図である。図10において、符号K、L、Mは、図8においてそれぞれの符号を付した経路状態に対応している。図10に示すように、従来の除湿空調装置において、空調空間100からの空気(状態K)は、蒸発器204で露点温度以下に冷却され、乾球温度が低下すると共に絶対湿度が低下して状態Lに至る。この状態Lは湿り空気線図において飽和線上にある。状態Lの空気は再熱器205で再熱され、絶対湿度一定のまま乾球温度が上昇して状態Mに至り、空調空間100に供給される。この状態Mは、状態Kと比べて絶対湿度、乾球温度共に低い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の除湿空調装置においては、露点までの冷却量が多いためヒートポンプの蒸発器における冷凍効果のうち30%程度が顕熱負荷を奪うのに消費され、電力消費量当たりの除湿能力(除湿性能)が低かった。また、ヒートポンプの圧縮機として単段圧縮機を用いる場合には、1段圧縮の圧縮式冷凍サイクルになり、動作係数(COP)が低く、除湿量当たりの電力消費量が大きかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、動作係数(COP)の高いヒートポンプ及びエネルギー消費量当たりの除湿能力の高い除湿空調装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような従来技術における問題点を解決するために、本発明の一態様は、冷媒を昇圧する昇圧機と、上記冷媒を凝縮させて高熱源流体を加熱する凝縮器と、上記冷媒を蒸発させて低熱源流体を冷却する蒸発器と、上記凝縮器と上記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、上記凝縮器の凝縮圧力と上記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を蒸発させて上記低熱源流体を冷却する第1の熱交換手段と、上記凝縮器と上記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、上記凝縮器の凝縮圧力と上記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を凝縮させて上記低熱源流体を加熱する第2の熱交換手段と、上記第1の熱交換手段と上記蒸発器と上記第2の熱交換手段とをこの順番で接続する低熱源流体経路とを備え、上記第1の熱交換手段と上記第2の熱交換手段とを交互に貫通する冷媒経路は、上記第1の熱交換手段内の蒸発セクションと上記第2の熱交換手段内の凝縮セクションとを有し、上記第2の熱交換手段における最後の凝縮セクションが、上記第1の熱交換手段における最後の蒸発セクションよりも大きな伝熱面積を有することを特徴とするヒートポンプである。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、冷媒を昇圧する昇圧機と、上記冷媒を凝縮させて処理空気を加熱する凝縮器と、上記冷媒を蒸発させて処理空気を露点温度以下まで冷却する蒸発器と、上記凝縮器と上記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、上記凝縮器の凝縮圧力と上記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を蒸発させて上記処理空気を冷却する第1の熱交換手段と、上記凝縮器と上記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、上記凝縮器の凝縮圧力と上記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を凝縮させて上記処理空気を加熱する第2の熱交換手段と、上記第1の熱交換手段と上記蒸発器と上記第2の熱交換手段とをこの順番で接続する処理空気経路とを備え、上記第1の熱交換手段と上記第2の熱交換手段とを交互に貫通する冷媒経路は、上記第1の熱交換手段内の蒸発セクションと上記第2の熱交換手段内の凝縮セクションとを有し、上記第2の熱交換手段における最後の凝縮セクションが、上記第1の熱交換手段における最後の蒸発セクションよりも大きな伝熱面積を有することを特徴とする除湿空調装置である。
【0011】
このような構成により、蒸発器での冷却の前に第1の熱交換手段において低熱源流体を予冷でき、その予冷の熱を使って、蒸発器での冷却の後に第2の熱交換手段において低熱源流体を加熱し、また、処理空気を低熱源とし、蒸発器で処理空気を露点温度以下に冷却するようにすれば、除湿量当たりのエネルギー消費量が小さい除湿空調装置を提供することが可能となる。
【0012】
また、第2の熱交換手段における最後の凝縮セクションが、第1の熱交換手段における最後の蒸発セクションよりも大きな伝熱面積を有しているため、この最後の凝縮セクションにおいて冷媒を過冷却して過冷却液とすることができる。従って、蒸発器で利用できるエンタルピ差を大きくすることができ、冷凍効果を向上し、ひいては除湿能力を高めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る除湿空調装置の一実施形態について図1乃至図6を参照して説明する。図1は本実施形態における空調システムの全体構成を示す図、図2は本実施形態における除湿空調装置内のフローを模式的に示す図である。本実施形態における除湿空調装置は、空調空間100内の空気(処理空気)RAをその露点温度以下に冷却して除湿するものであり、内部にヒートポンプHP1を含んでいる。除湿空調装置によって湿度が下げられた処理空気SAが空調空間100に戻されることによって、空調空間100が快適な環境に維持される。
【0014】
除湿空調装置は、図1に示すように、空調空間100内に設置される室内機10と、空調空間100の外部(室外)に設置される室外機20とから基本的に構成されている。除湿空調装置の室内機10は、冷媒を蒸発させる冷媒蒸発器1と、冷媒と処理空気との間で熱交換を行う熱交換器2と、処理空気を循環するための送風機3とを備えている。熱交換器2は、蒸発器1に流入する前後の処理空気同士の間で、冷媒を介して間接的に熱交換を行うものであり、冷媒を蒸発させて処理空気を冷却する第1の熱交換部21と、冷媒を凝縮させて処理空気を加熱する第2の熱交換部22とを備えている。また、除湿空調装置の室外機20は、冷媒を圧縮する昇圧機4と、冷媒を冷却して凝縮させる冷媒凝縮器5と、冷却空気を送風するための送風機6とを備えている。
【0015】
処理空気が流通する経路(処理空気経路)は、図2に示すように、空調空間100と熱交換器2の第1の熱交換部21とを接続する経路30と、第1の熱交換部21と蒸発器1とを接続する経路31と、蒸発器1と熱交換器2の第2の熱交換部22とを接続する経路32と、第2の熱交換部22と送風機3とを接続する経路33と、送風機3と空調空間100とを接続する経路34とから構成されている。このような処理空気経路によって、熱交換器2の第1の熱交換部21と蒸発器1と熱交換器2の第2の熱交換部22とが順番に接続されている。
【0016】
一方、冷媒が流通する冷媒経路は、図2に示すように、蒸発器1と昇圧機4とを接続する経路40と、昇圧機4と凝縮器5とを接続する経路41と、凝縮器5と熱交換器2とを接続する経路42と、熱交換器2と蒸発器1とを接続する経路43とから構成されている。また、熱交換器2内において冷媒経路は第1の熱交換部21と第2の熱交換部22とをそれぞれ交互に貫通しており、第1の熱交換部21内には、冷媒を蒸発させることによって第1の熱交換部21を流れる空気Kを冷却する蒸発セクション61が形成され、第2の熱交換部22内には、冷媒を凝縮させることによって第2の熱交換部22を流れる空気Lを加熱する凝縮セクション62が形成されている。また、熱交換器2の第1の熱交換部21の上流側の冷媒経路42には絞り50が配置され、第2の熱交換部22の下流側の冷媒経路43には絞り51が配置されている。これらの絞り50、51として、例えば、オリフィス、キャピラリチューブ、膨張弁などを用いることができる。
【0017】
また、凝縮器5には、経路46を介して冷却空気としての外気OAが導入される。この外気OAは凝縮する冷媒から熱を奪い、加熱された外気は経路47を経由して送風機6に吸い込まれ、経路48を経由して屋外に排出される(EX)。
【0018】
図3は、図2の除湿装置の熱交換器2内の冷媒経路を示す拡大図である。蒸発セクション61と凝縮セクション62とを含んで構成される冷媒経路は、第1の熱交換部21と第2の熱交換部22とを交互に繰り返し貫通している。即ち、熱交換器2内の冷媒経路は、図3に示すように、凝縮器5側から順番に、蒸発セクション61a、凝縮セクション62a及び62b、蒸発セクション61b及び61c、凝縮セクション62c及び62d、蒸発セクション61d及び61e、凝縮セクション62eを有している。また、第2の熱交換部22内の凝縮セクション62eの後には、更に凝縮セクション62f、凝縮セクション62gが形成されている。このように本実施形態では、第2の熱交換部22における最後の凝縮セクション(62e乃至62g)が、第1の熱交換部21における最後の蒸発セクション(61d及び61e)よりも大きな伝熱面積を有している。
【0019】
このような熱交換器としてサーペンタイン型の熱交換器を用いることができる。図4(a)は、図2の除湿空調装置の熱交換器に用いられるサーペンタイン型の熱交換器を示す平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A線断面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、蒸発器1を通過する前の空気Kを流す第1の熱交換部21と、蒸発器1を通過した後の空気Lを流す第2の熱交換部22とは、別々の直方体空間に収容されており、これらの直方体空間内には、空気の流れに直交する面に複数本の熱交換チューブ70が冷媒経路として平行に配置されている。図2及び図3における各熱交換部内の冷媒経路は、便宜上、簡略化して図示されているが、典型的には図4(a)に示すように、より多くの列の冷媒経路が熱交換チューブ70によって構成されている。
【0020】
図4(b)に示すように、熱交換チューブ70は、内部に複数の流路室71が形成された扁平状のチューブであり、このような熱交換チューブはアルミニウムの押出し成形により形成される。また、各列の熱交換チューブ70の間には、アルミニウム製のフィン72が複数設けられている。そして、図4(a)に示すように、このような熱交換チューブ70によって構成される細管群が、熱交換器2内を蛇行しながら第1の熱交換部21と第2の熱交換部22の内部を通過し、温度の高い空気と温度の低い空気に交互に接触するように構成されている。
【0021】
なお、図1及び図2に示すように、除湿空調装置の室内機10の内部にはドレンパン7が設けられているが、このドレンパン7は蒸発器1だけでなく、熱交換器2の下方もカバーするように設けるのが好ましい。熱交換器2の第1の熱交換部21においては処理空気を主として予冷するが、一部の水分はここで結露することがあるので、特に第1の熱交換部21の下方に設けるのが好ましい。
【0022】
次に、各機器間の冷媒の流れについて図2及び図3を参照して説明する。
昇圧機4により圧縮された冷媒ガスは、昇圧機4の吐出口に接続された冷媒ガス配管41を経由して凝縮器5に導かれ、冷却空気としての外気OAで冷却され凝縮する。凝縮器5を出た冷媒液は、絞り50で減圧され膨張して一部の冷媒液が蒸発(フラッシュ)する。その液とガスの混合した冷媒は第1の熱交換部21の蒸発セクション61aに至り、ここで冷媒液は蒸発セクション61aのチューブの内壁を濡らすように流れる。蒸発セクション61aには液相の冷媒が流入するが、蒸発セクション61aに流入する冷媒は、一部が気化した、気相を僅かに含む冷媒液であってもよい。蒸発セクション61aを流れる間に冷媒液が蒸発し、蒸発器1に流入する前の処理空気が冷却(予冷)され、冷媒自身は加熱され気相を増やす。
【0023】
熱交換器2内の冷媒経路は一連のチューブにより構成されているので、上記蒸発セクション61aにおいて蒸発した冷媒ガス(及び蒸発しなかった冷媒液)は凝縮セクション62aに流入する。凝縮セクション62aでは、蒸発器1で冷却除湿され、蒸発セクション61aの処理空気よりも温度の低くなった処理空気が加熱(再熱)され、冷媒自身は熱を奪われ気相冷媒を凝縮させながら、次の凝縮セクション62bに流入する。冷媒は、凝縮セクション62bを流れる間に、低温の処理空気で更に熱を奪われ気相冷媒を更に凝縮させる。
【0024】
凝縮された冷媒液は、次の蒸発セクション61b及びこれに続く蒸発セクション61cに流入し、上記と同様にして蒸発器1に流入する前の処理空気が冷却(予冷)される。更に凝縮セクション62c及び凝縮セクション62dに冷媒ガスが流入して処理空気が加熱(再熱)される。このように、冷媒は気相と液相の相変化をしながら熱交換器内の冷媒経路を流れ、蒸発器1で冷却される前の処理空気と、蒸発器1で冷却されて絶対湿度を低下させた処理空気との間で間接的に熱交換が行われる。
【0025】
ここで、第2の熱交換部22における最後の凝縮セクション(62e乃至62g)は、第1の熱交換器21における最後の蒸発セクション(61d及び61e)よりも大きな伝熱面積を有しているため、冷媒はこの凝縮セクション62e乃至62gにおいて過冷却されて過冷却液となる。この凝縮セクションにおいて過冷却された冷媒液は、第2の熱交換部22の下流側に配置された絞り51で減圧され膨張して温度が下がる。そして、冷媒は蒸発器1に至り、この蒸発器1において蒸発する。この冷媒の蒸発熱で第1の熱交換部21を通った処理空気が冷却される。蒸発器1で蒸発してガス化した冷媒は、昇圧機4の吸込側に導かれる。そして、上述のサイクルが繰り返される。
【0026】
次に、本実施形態における除湿空調装置に含まれるヒートポンプHP1の作用について説明する。図5は図2の除湿空調装置に含まれるヒートポンプHP1の冷媒モリエ線図である。なお、図5に示す線図においては、冷媒としてHFC134aを用いており、横軸にエンタルピ、縦軸に圧力が取られている。HFC134aに限らず、HFC407CやHFC410Aを冷媒として利用することもでき、これらの冷媒を用いた場合には、作動圧力領域がHFC134aの場合よりも高圧側にシフトする。
【0027】
図5において、点aは図2の蒸発器1で蒸発した冷媒の状態を示しており、このときの冷媒は飽和ガスの状態にある。冷媒の圧力は0.350MPa、温度は5℃、エンタルピは401.5kJ/kgである。点bはこのガスを昇圧機4で吸込圧縮した状態、即ち昇圧機4の吐出口での状態を示しており、このときの冷媒は、圧力が0.963MPaであり、過熱ガスの状態にある。
【0028】
点bの状態にある冷媒ガスは、凝縮器5内で冷却され、点cで示される状態に至る。このときの冷媒は飽和ガスの状態であり、その圧力は0.963MPa、温度は38℃である。冷媒はこの圧力下で更に冷却され凝縮して点dで示される状態に至る。このときの冷媒は飽和液の状態であり、その圧力と温度は点cにおける圧力及び温度と同じである。このときのエンタルピは253.4kJ/kgである。
【0029】
この冷媒液は、絞り50で減圧され、第1の熱交換部21の蒸発セクション61aに流入する。このときの状態は点eで示されており、一部の液が蒸発して液とガスが混合した状態となっている。このときの圧力は、凝縮器5の凝縮圧力と蒸発器1の蒸発圧力との中間圧力であり、本実施形態では、0.963MPaと0.350MPaの間の値となる。
【0030】
そして、蒸発セクション61a内で、上記中間圧力下で冷媒液が蒸発して、同圧力で飽和液線と飽和ガス線の中間に位置する点f1の状態となる。この状態では液の一部が蒸発しているが、冷媒液はかなり残っている。そして、点f1で示される状態の冷媒が、凝縮セクション62a及び62bに流入する。凝縮セクション62a及び62bでは、冷媒は第2の熱交換部22を流れる低温の処理空気Lにより熱を奪われ、点g1の状態に至る。
【0031】
点g1の状態の冷媒は、蒸発セクション61b及び61cにおいて蒸発した後、凝縮セクション62c及び62dにおいて凝縮するが、図5のモリエ線図では、蒸発セクション61b及び61cにおける蒸発、凝縮セクション62c及び62dにおける凝縮の過程を省略している。その後、冷媒は、更に蒸発セクション61d及び61eにおいて蒸発し、点f2の状態に至る。
【0032】
そして、点f2の状態の冷媒は、凝縮セクション62eに流入して凝縮されて液相を増やし、更に凝縮セクション62f及び62gにおける凝縮によって過冷却され、点g2の状態に至る。このときの冷媒は過冷却液の状態となっており、その温度は14℃、エンタルピは219.1kJ/kgである。
【0033】
点g2の状態の冷媒液は、絞り51で、温度5℃の飽和圧力である0.350MPaまで減圧されて点hで示される状態に至る。点hの状態における冷媒は、5℃の冷媒液とガスの混合物として蒸発器1に至り、ここで処理空気から熱を奪い、蒸発して点aで示される状態の飽和ガスとなる。この飽和ガスは再び昇圧機4に吸入され、上述したサイクルが繰り返される。
【0034】
このように、熱交換器2内において、冷媒は、蒸発セクション61では点eから点f1、あるいは点g1から点f2までといったように蒸発の状態変化を、凝縮セクション62では点f1から点g1、あるいは点f2から点g2までといったように凝縮の状態変化をしており、蒸発伝熱と凝縮伝熱が行われているため、熱伝達率が非常に高く、また熱交換効率が高い。
【0035】
ここで、昇圧機4、凝縮器5、絞り50、51及び蒸発器1を含む圧縮ヒートポンプHP1として考えると、本発明に係る熱交換器2を設けない場合には、凝縮器5における点dの状態の冷媒を、絞りを介して蒸発器1に戻すため、蒸発器1で利用できるエンタルピ差は401.5−253.4=148.1kJ/kgしかない。しかし、本発明に係る熱交換器2を設けた場合には、401.5−219.1=182.4kJ/kgとなり、同一冷却負荷に対して圧縮機に循環するガス量を、ひいては所要動力を19%(=1−148.1/182.4)も小さくすることができる。即ち、サブクールサイクルと同様な作用を持たせることができる。
【0036】
上述したように、本実施形態では、第2の熱交換部22における最後の凝縮セクション(62e乃至62g)は、第1の熱交換器21における最後の蒸発セクション(61d及び61e)よりも大きな伝熱面積を有しているため、この最後の凝縮セクション62e乃至62gにおいて冷媒を過冷却して過冷却液とすることができる。従って、蒸発器1で利用できるエンタルピ差を大きくすることができ、冷凍効果を向上し、ひいては除湿能力を高めることができる。
【0037】
図6は図2の除湿空調装置における空調サイクルを示す湿り空気線図である。図6において、符号K、L、M、Xは、図2においてそれぞれの符号を付した経路状態に対応している。
空調空間100からの処理空気(状態K)は、処理空気経路30を通って、熱交換器2の第1の熱交換部21に送り込まれ、蒸発セクション61内で蒸発する冷媒によりある程度まで冷却される。これは蒸発器1で露点温度以下まで冷却される前の予備的冷却であるので予冷と呼ぶことができる。処理空気は、蒸発セクション61で予冷されながら、ある程度は水分を除去され僅かながら絶対湿度を低下させながら飽和線上にある点Xに至る。あるいは予冷段階では点Kと点Xとの中間点まで冷却することとしてもよい。または点Xを越えて、多少飽和線上を低湿度側に移行した点まで冷却されることとしてもよい。
【0038】
第1の熱交換部21で予冷された処理空気は、経路31を通って、蒸発器1に導入される。蒸発器1では、絞り51によって減圧された、低温で蒸発する冷媒によって、処理空気がその露点温度以下に冷却され、水分を奪われながら、絶対湿度を低下させつつ乾球温度を下げて、点Lに至る。図6において、点Xから点Lまでの変化を示す太線は、便宜上飽和線とはずらして描いてあるが、実際は飽和線と重なっている。
【0039】
点Lの状態の処理空気は、経路32を通って熱交換器2の第2の熱交換部22に流入し、凝縮セクション62内で凝縮する冷媒により、絶対湿度一定のまま加熱され点Mに至る。点Mは、点Kよりも絶対湿度は十分に低く、乾球温度は低すぎない、適度な相対湿度の空気である。この点Mの状態の空気は送風機3により吸い込まれ、経路34を通って空調空間100に戻される。
【0040】
ここで、図6の湿り空気線図上に示す処理空気側のサイクルでは、第1の熱交換部21で処理空気を予冷した熱量、即ち第2の熱交換部22で処理空気を再熱した熱量ΔHが熱回収分であり、蒸発器1で処理空気を冷却した熱量分がΔQである。また空調空間100を冷房する、冷房効果がΔiである。
【0041】
上述したように、熱交換器2では、蒸発セクション61での冷媒の蒸発により処理空気を予冷し、凝縮セクション62での冷媒の凝縮により処理空気を再熱する。そして蒸発セクション61で蒸発した冷媒は、凝縮セクション62で凝縮する。このように同じ冷媒の蒸発と凝縮作用により、蒸発器1で冷却される前後の処理空気同士の熱交換が間接的に行われる。
【0042】
このように、本実施形態においては、処理空気を露点以下に冷却する蒸発器と、処理空気を予冷却する予冷却器と、再加熱を行う再加熱器の熱伝達媒体を同じ冷媒を用いるようにしたので、冷媒系が単一に単純化され、また蒸発器、凝縮器間の圧力差を利用できるため循環が能動的になり、更に予冷、再加熱の熱交換に相変化を伴う沸騰現象を応用できるようにしたので、効率を高くすることができる。
【0043】
上述の実施形態においては凝縮器を用いて冷却空気としての外気OAを加熱することとしたが、第2の熱交換部において加熱された空気を凝縮器を用いて更に加熱(レヒート)することとしてもよい。図7には、上述の実施形態の除湿空調装置において、第2の熱交換部22で加熱された空気を凝縮器5で加熱(レヒート)して、これを空調空間100に供給する場合の構成例を示す。
【0044】
さてこれまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいものである。例えば、各冷媒経路の第1の熱交換部における蒸発セクションの数、第2の熱交換部における凝縮セクションの数は図示のものに限られるものではない。また、上述の実施形態においては空調空間を空調する除湿装置を例として説明したが、必ずしも空調空間に限らず、本発明の除湿装置を、他の除湿を必要とする空間に応用することもできる。
【0045】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、蒸発器での冷却の前に第1の熱交換手段において低熱源流体を予冷でき、その予冷の熱を使って、蒸発器での冷却の後に第2の熱交換手段において低熱源流体を加熱することができるので、除湿量当たりのエネルギー消費量が小さい除湿空調装置を提供することが可能となる。
【0046】
また、第2の熱交換手段における最後の凝縮セクションが、第1の熱交換手段における最後の蒸発セクションよりも大きな伝熱面積を有しているため、この最後の凝縮セクションにおいて冷媒を過冷却して過冷却液とすることができる。従って、蒸発器で利用できるエンタルピ差を大きくすることができ、冷凍効果を向上し、ひいては除湿能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る除湿空調システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における除湿空調装置内のフローを模式的に示す図である。
【図3】図2の除湿空調装置の熱交換器における冷媒経路を示す拡大図である。
【図4】図2の除湿空調装置の熱交換器に用いられるサーペンタイン型の熱交換器の具体例を示す図である。
【図5】図2の除湿空調装置に含まれるヒートポンプの冷媒モリエ線図である。
【図6】図2の除湿空調装置における空調サイクルを示す湿り空気線図である。
【図7】本発明の他の実施形態における除湿空調装置内のフローを模式的に示す図である。
【図8】従来の除湿空調装置内のフローを模式的に示す図である。
【図9】従来の除湿空調装置に含まれるヒートポンプの冷媒モリエ線図である。
【図10】従来の除湿空調装置における空調サイクルを示す湿り空気線図である。
【符号の説明】
1 蒸発器
2 熱交換器
3、6 送風機
4 昇圧機
5 凝縮器
7 ドレンパン
10 室内機
20 室外機
21 第1の熱交換部
22 第2の熱交換部
50、51 絞り
30〜34、40〜43、46〜48 経路
61 蒸発セクション
62 凝縮セクション
70 熱交換チューブ
71 流路室
72 フィン
100 空調空間
Claims (2)
- 冷媒を昇圧する昇圧機と、
前記冷媒を凝縮させて高熱源流体を加熱する凝縮器と、
前記冷媒を蒸発させて低熱源流体を冷却する蒸発器と、
前記凝縮器と前記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、前記凝縮器の凝縮圧力と前記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を蒸発させて前記低熱源流体を冷却する第1の熱交換手段と、
前記凝縮器と前記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、前記凝縮器の凝縮圧力と前記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を凝縮させて前記低熱源流体を加熱する第2の熱交換手段と、
前記第1の熱交換手段と前記蒸発器と前記第2の熱交換手段とをこの順番で接続する低熱源流体経路とを備え、
前記第1の熱交換手段と前記第2の熱交換手段とを交互に貫通する冷媒経路は、前記第1の熱交換手段内の蒸発セクションと前記第2の熱交換手段内の凝縮セクションとを有し、
前記第2の熱交換手段における最後の凝縮セクションが、前記第1の熱交換手段における最後の蒸発セクションよりも大きな伝熱面積を有することを特徴とするヒートポンプ。 - 冷媒を昇圧する昇圧機と、
前記冷媒を凝縮させて処理空気を加熱する凝縮器と、
前記冷媒を蒸発させて処理空気を露点温度以下まで冷却する蒸発器と、
前記凝縮器と前記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、前記凝縮器の凝縮圧力と前記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を蒸発させて前記処理空気を冷却する第1の熱交換手段と、
前記凝縮器と前記蒸発器との間の冷媒経路中に設けられ、前記凝縮器の凝縮圧力と前記蒸発器の蒸発圧力との中間の圧力で冷媒を凝縮させて前記処理空気を加熱する第2の熱交換手段と、
前記第1の熱交換手段と前記蒸発器と前記第2の熱交換手段とをこの順番で接続する処理空気経路とを備え、
前記第1の熱交換手段と前記第2の熱交換手段とを交互に貫通する冷媒経路は、前記第1の熱交換手段内の蒸発セクションと前記第2の熱交換手段内の凝縮セクションとを有し、
前記第2の熱交換手段における最後の凝縮セクションが、前記第1の熱交換手段における最後の蒸発セクションよりも大きな伝熱面積を有することを特徴とする除湿空調装置。
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