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島山安昌浩級潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
島山安昌浩級潜水艦
基本情報
種別 通常動力型潜水艦
建造所 大宇造船海洋(設計・建造)
現代重工業(建造)
運用者  大韓民国海軍
就役期間 2021年 - (現在)
計画数 6隻
前級 孫元一級 (214型)
次級 KSS-III計画艦バッチ2
要目 (KSS-III計画艦バッチ1)
水中排水量 3,800トン[1]
長さ 83.5 m
9.6 m
吃水 7.62 m
機関方式 ディーゼル・エレクトリック方式燃料電池AIP
速力 約20ノット
航続距離 10,000 海里
航海日数 50日
乗員 50名
兵装
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島山安昌浩級潜水艦 (トサンアンチャンホきゅうせんすいかん、英語: Dosan Ahn Chang-ho-class submarine) は韓国海軍通常動力型潜水艦の艦級。韓国型潜水艦第3段階(KSS-III)計画のバッチ1として建造されたもので[2]潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の運用にも対応しているといわれる[1]。建造費用は7億ドル(約780億円)[3]

来歴

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韓国海軍は1980年代特殊潜航艇を取得したのち、本格的潜水艦の取得計画に着手したが、その第1段階(KSS-I)としてドイツ209型潜水艦を選定した[4]。この際、韓国海軍は3隻ずつを1つのバッチとして3バッチを発注したが、このように1バッチ3隻とする建造計画は以後も踏襲されることになった[1]キール造船所(ホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船)で1番艦「張保皐」を建造する際には大宇造船海洋(DSME)の技術者たちが派独されて建造技術を学び、2・3番艦はドイツから送られたパッケージを同社の玉浦造船所で組み立てるかたちで建造されており、以後のバッチでも同様の形態でDSMEが国内建造を行った[1]。これにより、潜水艦の乗員を養成して運用法を確立するとともに、建造技術をも習得して、真の潜水艦運用能力の獲得にむけて踏み出した[5]

これに続く第2段階(KSS-II; 張保皐-II)計画では、209型をもとに非大気依存推進(AIP)システムを導入するなどした発展型である214型が採択されたが、そのバッチ1の建造者としては、それを熱望していたDSMEではなく、潜水艦建造経験のない現代重工業(HHI)が選定され[1]、2000年に契約が締結された[2]。この結果、1番艦では過大な航走雑音やAIPシステムの停止などの課題を生じたものの、以後はDSMEとHHIが交互に建造していくことで潜水艦建造技術を向上させ、国産比率も高められ、209型の輸出を行うまでになった[1]

2007年2月、防衛事業庁は第3段階(KSS-III; 張保皐-III)計画の推進を発表した[2]。この計画においては、設計から建造までの全工程を国内で行うことになっており[1]、2012年にはDSMEが設計を受注した[6]。これによって建造されたのが本級であり、1番艦は2014年11月27日に起工され、2018年9月14日に進水した[2]。また本級(バッチ1)に続くバッチ2建造分についても、基本設計が2016年7月からの2年半で完了している[7]

設計

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本級は「3,000トン級中型潜水艦」と位置付けられた[2]。水中排水量は3,800トンで、1,829トンであった214型(孫元一級)と比して相当の大型化となった[1]。これによって下記のようにVLSの搭載が実現したほか、AIPシステムの性能向上とともに水中潜航時間も延伸された[2]。ただし、対北朝鮮ではここまで大型である理由に乏しく、対日本を意識した措置である可能性が指摘されている[8][9]

艦型拡大に伴うターゲット・ストレングス(TS)増大を補うため、ステルス化にも配慮がなされた。上部構造物の外板はやや傾斜しており、アクティブ・ソナーからの探信音を受けた場合に、反射音の方向をそらす効果を狙ったものとみられている[10]。また垂直に立ち上がったセイル部分には、これを補うための音響タイルが貼付されており、これらのアクティブ・ソナー対策は海上自衛隊おやしお型潜水艦と同様のものである[10]

機関は、本級(バッチ1)では孫元一級と同じく、ディーゼル・エレクトリック方式を基本としつつ、燃料電池による非大気依存推進(AIP)システムも搭載するが、燃料電池は性能向上が図られている[2]。続くバッチ2では、従来の鉛蓄電池にかえてリチウムイオン蓄電池が導入されることになっており[1]、水中作戦能力と運用時間の向上が期待される[11]。また韓国の報道では、バッチ3を原子力潜水艦とする可能性にも言及されている[1][注 1]

装備

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兵装については、艦首に533mm魚雷発射管8門を備える点は張保皐級・孫元一級と同様である[1]。ここから発射する魚雷としては、従来から用いられてきた打ち放し式・電池式魚雷である白鮫に加えて、電池の性能を向上させるとともに有線誘導にも対応した虎鮫も搭載されるといわれている[1]

そして本級の大きな特徴が、セイル後方に6セルのVLSを搭載した点である[1]。これは艦対地ミサイルのための発射機であり、当初は巡航ミサイルである玄武-3Cを収容するといわれていたが、後には玄武-2Bを元にした潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と報じられるようになった[1]。2021年9月15日には、本級1番艦において玄武4-4の試射が行われた[14]。また、バッチ2ではVLSは10セルに増備される予定である[15]

なおセンサーについては、電子光学マストはフランスのサフラン、フランクアレイソナーはLIG Nex1、戦闘管理システムはハンファが供給するとされる[9][15][16]

同型艦一覧

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バッチ 艦番号 艦名 造船所 起工 進水 就役
1 SS-083 島山安昌浩
ROKS Dosan Ahn Changho
大宇造船海洋
(玉浦)
2016年
5月17日
2018年
9月14日
2021年
8月13日
SS-085 安武
ROKS Ahn Mu
2018年
4月17日
2020年
11月10日
2023年
4月26日
SS-086 申采浩
ROKS Shin Chae-ho
現代重工業
(蔚山)
2019年
4月11日
2021年
9月28日
2024年
4月5日
2 SS-087 n/a 大宇造船海洋
(玉浦)
2023年
3月30日
SS-088 2024年
7月12日
SS-089 発注済

脚注

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注釈

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  1. ^ 2019年10月10日、韓国海軍の沈勝燮海軍参謀総長が原子力潜水艦の必要性に言及した。韓国海軍が原子力潜水艦について公に言及するのは2003年に盧武鉉政権下で鉠永吉国防部長官が原子力潜水艦3隻を2020年前に実戦配備するという「362事業」を報告して以来[12]。また、記事はバッチ3を原子力潜水艦の候補として挙げており、7年内に1兆3,000億ウォン(約1,180億円)-1兆5,000億ウォンの予算(362事業に関わった海軍大佐は4,000トン級の原子力潜水艦は1隻につき約1兆6,000億ウォン必要としている)[13]で国内開発が可能としている。他方、韓米原子力協定のために原子力潜水艦は難しいという意見もある[12]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 小林 2021.
  2. ^ a b c d e f g 신인호 2019.
  3. ^ 韓国初のミサイル潜水艦が進水、文氏は「力を通じた平和」強調」『AFPBB News』2018年9月14日。2021年11月3日閲覧。
  4. ^ 海人社 2009.
  5. ^ 香田 2009.
  6. ^ 韓国の独自設計による3000トン級潜水艦「島山安昌浩」が進水」『中央日報日本語版』2018年9月14日。2021年11月3日閲覧。
  7. ^ 次期3千トン級潜水艦の基本設計完了 19年後半から建造予定=韓国」『ソウル聯合ニュース』2018年12月26日。2021年11月3日閲覧。
  8. ^ 牧野愛博「韓国海軍初の3千トン級潜水艦 念頭に北朝鮮?日本?」『朝日新聞』2018年9月14日。
  9. ^ a b 北村淳「臆測呼ぶ、韓国が強力な最新潜水艦を開発する理由」『朝日新聞GLOBE』2019年4月5日。2021年11月3日閲覧。
  10. ^ a b 海人社 2021.
  11. ^ 韓国海軍、2028年までにイージス艦3隻追加建造」『中央日報日本語版』2019年5月1日。2021年11月3日閲覧。
  12. ^ a b 韓国海軍総長「原子力潜水艦が必要、北SLBM撃滅に最も有用」」『中央日報日本語版』2019年10月11日。2021年11月3日閲覧。
  13. ^ 韓国大統領、原子力潜水艦の説明聞いて「それが海軍の夢か」」『中央日報日本語版』2017年8月9日。2021年11月3日閲覧。
  14. ^ 韓国のK-SLBMの開発完了」『世界の艦船』2021年10月18日。2021年11月3日閲覧。
  15. ^ a b “ROK Navy’s 1st 3000 Tons KSS-III Submarine ‘Dosan Ahn Chang-Ho’ Started Sea Trials”. NAVALNEWS. (2019年6月23日). https://www.navalnews.com/naval-news/2019/06/rok-navys-1st-3000-tons-kss-iii-submarine-dosan-ahn-chang-ho-started-sea-trials/ 2021年11月3日閲覧。 
  16. ^ “DSME Launched ROK Navy's 1st 3000 tons KSS-III Submarine Dosan Ahn Chang-ho”. NAVY RECOGNITION. (2018年9月17日). https://www.navyrecognition.com/index.php/news/defence-news/2018/september-2018-navy-naval-defense-news/6491-dsme-launched-rok-navy-s-1st-3000-tons-kss-iii-submarine-dosan-ahn-chang-ho.html 2021年11月3日閲覧。 

参考文献

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  • 海人社(編)「韓国新型艦の技術的特徴 (特集・韓国海軍の現況)」『世界の艦船』第704号、海人社、2009年4月、86-93頁、NAID 40016485798 
  • 海人社(編)「韓国初のSSB!?新型潜水艦「トサン・アン・チャンホ」就役」『世界の艦船』第959号、海人社、2021年11月、56-57頁。 
  • 香田洋二「韓国海軍 その現況と将来」『世界の艦船』第704号、海人社、75-81頁、2009年4月。 NAID 40016485796 
  • 小林正男「韓国新型潜水艦「トサン・アン・チャンホ」 その技術的特徴を概観する」『世界の艦船』第959号、海人社、112-113頁、2021年11月。 
  • 신인호, 기자 (2019年10月10日). “대한민국 군함 이야기 <60> 손원일급·도산안창호급 잠수함 [大韓民国軍艦物語 <60> 孫元一級・島山安昌浩級潜水艦]” (朝鮮語). 国防日報 (国防広報院). https://kookbang.dema.mil.kr/newsWeb/20190930/1/BBSMSTR_000000010206/view.do