コンテンツにスキップ

ベルギー海洋構成部隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ベルギー海洋構成部隊(ベルギーかいようこうせいぶたい、オランダ語: Marinecomponentフランス語: Composante Maritime)は、ベルギー海軍組織。

概要

[編集]

2007年時点で現役1,605人[1]

2002年に海軍から海洋構成部隊に改編している。任務は通常の海軍としての軍事活動のみならず、捜索救難、海洋調査、税関や警察の支援、漁業管理、海洋汚染対策など多岐にわたる。

歴史

[編集]

19世紀

[編集]

1831年王立海軍として設立される。これ以降ベルギーの歴史に連動しつつ様々な局面で活躍した。1830年ベルギー独立革命後にオランダ艦隊はスヘルデ川三角江を封鎖しようとした。この脅威に対抗するためベルギー議会はブリガンティンを2隻を建造するように命じた。この2隻は「コングレ(Congrès)」と「レ・カトル・ジョルネー(Les Quatre Journées)」と命名される。1832年エティエンヌ・モーリス・ジェラール陸軍元帥en:Étienne Maurice Gérard)が率いるフランス軍がアントワープの砦を占領した後にオランダの砲艦はベルギー軍により排除された。1840年に政府はスクーナー「ルイーズ=マリー(Louise-Marie)」を、1845年にはブリッグ「デュク・ド・ブラバント(Duc de Brabant)」を購入した。しかし、1865年に政府は海軍を廃止し最小限度の海軍政策を追求した。このため第一次世界大戦時にはベルギーに海軍は存在しなかった。

20世紀

[編集]

第一次世界大戦により政府は従来の政策を変更することになる。1917年になり駆逐艦と水兵を整備した。再興されたベルギー海軍は要員をフランスの掃海艇に乗艇させたり、砲兵要員を自国籍商船に提供した。ヴェルサイユ条約調印後、海軍は魚雷艇11隻と掃海艇26隻が割り当てられた。しかし、予算上の問題のため再び海軍は廃止される。

1939年第二次世界大戦が勃発し、迫り来るナチス・ドイツに脅威に対抗するため、新たに海軍部隊(Naval Corps)として復活させた。新生海軍の整備は1940年5月のドイツ軍侵攻に辛うじて間に合った。海軍部隊の将兵の多くは漁民や商船員と共にイギリスに脱出し、ドイツ占領軍と戦うための準備をする。イギリス海軍はこの機会にベルギー人船員達を別々のグループに分けて徴募した。1940年から1946年までイギリス海軍ベルギー部隊を編成し2隻のコルベット「バターカップ(Buttercup)」、「ゴデチア(Godetia)」と、3隻の掃海艇「プロンティス(Phrontis)」、「エレクトラ(Electra)」、「カーノット(Kernot)」に乗り込ませた。戦後の1946年にイギリスは再建されるベルギー海軍基幹の為に艦艇を乗員と共に無償供与した。

冷戦終結後の1990年代初めにベルギー政府は新たなる脅威に対応するためにベルギー軍の再編成を始めた。これは軍の削減を伴い、海軍ではウィーリンゲン級フリゲート1隻の削減と、トリパルタイト型機雷掃討艇3隻がフランスに売却される事になる。

21世紀

[編集]

2002年、単一の統合軍として再編成されることになり海軍は海洋構成部隊(COMOPSNAV)に改編された。2005年7月20日にベルギー政府は、残り2隻となっていたウィーリンゲン級フリゲートを更新するためオランダ海軍からカレル・ドールマン級フリゲート2隻の購入を決定する。2隻は12月21日に約250万ユーロで売買され、「レオポルド1世」と「ルイーズ=マリー」と命名された。一方、2隻のウィーリンゲン級フリゲートは10月にブルガリア海軍に掃海艇1隻とともに正式に引き渡された。

組織

[編集]

海洋構成部隊司令官の下で以下のような組織がある。

  • 海洋構成部隊司令部
    • 人事部
    • 情報部
    • 作戦部
    • 役務部
    • 広報部
  • 海洋管理局
  • 高圧センター

国際部門

[編集]

ベルギー=オランダ共同機関

  • ベネルクス海軍本部(ABNL)
  • ベルギー=オランダ作戦学校(NL-BE Opsschool)
  • ベルギー=オランダ海軍機雷戦学校(EGUERMIN)
  • ベルギー=オランダ供給専門技術支援センター(CC Sp Dept Catering BENL)
  • ダメージコントロール・センター(DCC)
  • 機雷戦艦艇運用訓練部(Most)

北大西洋条約機構

航空部隊

[編集]

航空構成部隊所属

  • 海洋ヘリコプター飛行隊

特定非営利団体

[編集]

以下は海軍が支援する特定非営利団体(ASBL)。

  • 海軍機関誌「ネプテューヌス(Neptunus)」
  • 海軍共済組合
  • 王立軍事史館海軍課
  • 海軍退役者全国協会
  • ベルギー海洋画家会
  • 海軍および海兵隊年金親善会
  • ベルギー海軍後援者ラジオ協会
  • 海軍士官候補生対象「一つの人生経験」事業
  • ブリュッセル王立歴史芸術博物館所有帆船「メルカトル(Mercator)」

階級

[編集]
日本語 オランダ語 フランス語 NATO階級符号
士官
海軍大将 Admiraal Amiral OF-9
海軍中将 Vice-admiraal Vice-amiral OF-8 
海軍少将 Divisieadmiraal Amiral de division OF-7  
海軍代将 Flottieljeadmiraal Amiral de flottille OF-6  
海軍大佐 Kapitein-ter-zee Capitaine de vaisseau OF-5 
海軍中佐 Fregatkapitein Capitaine de frégate OF-4 
海軍少佐 Korvetkapitein Capitaine de corvette OF-3 
海軍上級大尉 Luitenant-ter-zee 1ste klasse Lieutenant de vaisseau de 1ère classe OF-3 
海軍大尉 Luitenant-ter-zee Lieutenant de vaisseau OF-2
海軍中尉 Vaandrig-ter-zee Enseigne de vaisseau OF-1
海軍少尉 Vaandrig-ter-zee 2de klasse Enseigne de vaisseau de 2e classe OF-1 
准士官および下士官
海軍最先任准尉長 Oppermeester-chef Maître-principal-chef OR-9
海軍准尉長 Oppermeester Maître-principal OR-9
海軍准尉 1ste Meester-chef 1e Maître-chef OR-8 
海軍上級兵曹長 1ste Meester 1e Maître OR-7 
海軍兵曹長 Meester-chef Maître-chef OR-6 
海軍一等兵曹 Meester Maître OR-6 
海軍二等兵曹 2de Meester 2e Maître OR-5
兵卒
海軍先任上級水兵長 1ste Kwartiermeester-chef 1er Quartier-maître-chef OR-4
海軍上級水兵長 Kwartiermeester-chef Quartier-maître-chef OR-4
海軍水兵長 Kwartiermeester Quartier-maître OR-3
海軍一等水兵 1ste Matroos 1er Matelot OR-2
海軍二等水兵 Matroos Matelot OR-1

主要基地・施設

[編集]

装備

[編集]

艦艇

[編集]

出典のない部分は『Jane's Fighting Ships 2011-2012』より。

過去に就役した艦艇については「ベルギー海軍艦艇一覧」を参照。

フリゲート
レオポルド1世(F930 Leopold I) - 2007年再就役
ルイーズ=マリー(F931 Louise-Marie) - 2008年再就役
哨戒艇
キャスター(P901 Castor) - 2014年
ボルックス(P902 Pollux) - 2015年
機雷掃討艇
ベリス(M916 Bellis) - 1986年
クロキュス(M917 Crocus) - 1987年
ロベリア(M921 Lobelia) - 1989年
ナルシス(M923 Narcis) - 1990年
プリミュラ(M924 Primula) - 1991年
水路調査艦
  • ベルギカ(A962 Belgica)[2] - 1984年
練習帆船
  • ゼノブ・グラム(A958 Zenobe Gramme)[2] - 1961年
指揮後方支援艦
  • ゴデチア(A960 Godetia) - 1966年
支援艦
  • シュテルン(A963 Stern) - 1980年
航洋曳船
  • ヴァルケ(A950 Valcke) - 1960年
  • アルバトロス(A996 Albatros) - 1967年
港内曳船
  • 各種×3隻
(A952 Wesp)、(A954 Zeemeeuw)、(A955 Mier)
ホバークラフト
  • バーバラ(A999 Barbara)

航空機

[編集]

海洋活動向けの機体も航空構成部隊の所属となっている[2]

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ Military Balance 2007
  2. ^ a b c d e f The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15). The Military Balance 2023: The International Institute for Strategic Studies. Routledge. p. 75 

参考文献

[編集]
  • Christopher Langton, Military Balance 2007, Routledge
  • Jane's Fighting Ships 2011-2012

外部リンク

[編集]
  • (フランス語)/(オランダ語) Marinecomponent 海洋構成部隊