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シルフィード (鉄道車両)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
485系「シルフィード」
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
種車 189系サロ189形
改造所 新津車両所
改造年 1990年(平成2年)8月11日[1]
改造数 3両
運用開始 1990年(平成2年)9月1日[2](シルフィード)
運用終了 2001年(平成13年)6月24日[4](シルフィード[4]
2018年1月7日(NO.DO.KA)
廃車 2018年1月11日[3]
投入先 上沼垂運転区→新潟車両センター
主要諸元
編成 3両編成
軌間 1,067 mm狭軌
電気方式 直流1,500 V
交流20,000 V(50・60 Hz
最高運転速度 120 km/h
車両定員 24人(クロ484-1)
30人(モロ484-1)
27人(クモロ485-1)
車両重量 46.5 t(クロ484-1)
47.3 t(モロ484-1)
45.5 t(クモロ485-1)
全長 先頭車 21,250 mm
中間車 20,500 mm
全幅 先頭車 2,946 mm
中間車 2,956 mm(最大幅)
車体幅 2,900 mm
全高 4,066 mm(最大高さ)
3,996.8 mm(パンタグラフ折りたたみ)
車体高 3,650 mm(屋根高さ)
床面高さ 1,225 mm
車体 普通鋼
台車 軸箱守(ウイングばね)方式空気ばね台車
DT32E形・TR69H形
主電動機 直流直巻電動機 MT54D形
主電動機出力 120 kW × 4
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比 22:77 (1:3.50)
定格速度 72.0 km/h (全界磁)・116.0 km/h (40 %界磁)
制御方式 抵抗制御・直並列組合せ・弱め界磁
制御装置 CS15F形主制御器
制動装置 発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(SELD)
直通予備ブレーキ
保安装置 ATS-PATS-S
備考 出典1:『鉄道ピクトリアル』通巻535号「特集 広島電鉄」(1990年11月・電気車研究会)p.56 - p.58
出典2[5][6][7]
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シルフィード(Sylphide)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が1990年平成2年)から2001年(平成13年)まで運用していた鉄道車両電車)で、ジョイフルトレインと呼ばれる車両の一種である。

2001年に再改造を行い、NO.DO.KA(のどか)として2018年(平成30年)まで運用していた。

本項ではNO.DO.KAへの再改造後についても解説を行う。

概要

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「NO.DO.KA」 (旧「シルフィード」)
「NO.DO.KA」
(旧「シルフィード」)
車体側面のロゴマーク
車体側面のロゴマーク

JR東日本新潟支社では、日本国有鉄道(国鉄)時代から継続して12系を改造した6両編成の和式(お座敷)客車(1985年昭和60年)にサロンカー「サロン佐渡」1両を追加)と、キハ28形・キハ58形カーペット車を運用していた。1987年(昭和62年)には欧風車両である「サロンエクスプレスアルカディア」の運行を開始したが、1988年(昭和63年)3月30日に火災事故を起こし、使用不能となっていた。

当時、新潟支社のジョイフルトレインは、分割民営化以後に首都圏への乗り入れが増加していたが、それまでのジョイフルトレインは一部を除いて客車気動車であった。このうち客車の場合は機関車の付け替えなどによる要員確保が必要であるほか、気動車の場合は機動性については申し分ないものの走行性能は電車と比べて低いほかブレーキ性能も異なるといった制約があった。

そこで、ベースを交直流電車とした上で非電化線区ではディーゼル機関車による牽引を可能にすることで、新潟地区の非電化線区[注釈 1]から電化線区への一貫した走行を可能としつつ、前述の問題を解決することになった。

車両

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1号車 クハ484-701 (旧 クロ484-1)
1号車 クハ484-701
(旧 クロ484-1)
2号車 モハ484-701 (旧 モロ484-1)
2号車 モハ484-701
(旧 モロ484-1)
3号車 クモハ485-701 (旧 クモロ485-1)
3号車 クモハ485-701
(旧 クモロ485-1)

いずれの車両も編成短縮化により余剰となっていたサロ189形を種車とした改造車名目ではあるが、車体は新製されており、種車からは一部の部品が流用されたにすぎない。また制御装置・電動機台車などの走行機器は、485系1000番台の予備品が使用されたことから、485系の形式番号が付与された。ジョイフルトレインでは初めての交直流電車であり、形式は先頭車がクロ484形とクモロ485形、中間車はモロ484形である。改造は車体鋼体をそれぞれ近畿車輛東急車輛製造新潟鐵工所で新製し、新津車両所(現在:総合車両製作所新津事業所)で最終的な艤装工事が行われた。この時点では全車両がグリーン車扱いであった。

  • 1号車 クロ484-1(旧 サロ189-4):定員24人(展望車・電源車)
  • 2号車 モロ484-1(旧 サロ189-3):定員30人
  • 3号車 クモロ485-1(旧 サロ189-2):定員27人(展望車)

塗装デザインは、車体下半分を、上半分をベージュとし、その境目に黄緑(パープル)の帯を入れたものとした。

改造内容

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車体は、上述のように全て新製である。先頭部分は前面展望を考慮し、「パノラマエクスプレスアルプス」とほぼ同様の形状とした。冷房装置は、全車両とも通勤形電車用のAU75F形集中式冷房装置を搭載した。

集電装置(パンタグラフ)取り付け部分は、建築限界の小さいトンネルが存在する中央東線への乗り入れを考慮した低屋根構造(雨樋より上部をほぼフラット)としたほか、信越本線横川 - 軽井沢間の通過対策(横軽対策)についても施工された。また、日本海縦貫線の気象条件に対応して耐寒耐雪構造を強化しているほか、保安装置としては当初よりATS-P形を装備した。編成両端の連結器は密着自動連結器とした。

客室内は、座席は45度刻みで360度回転が可能なリクライニングシートを2列-1列の配置で設置した。1人がけ座席側の荷物棚は省略された代わりに、2人がけ座席側の荷物棚はハットラック式(蓋付)とした。

クロ484-1

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1号車に連結される車両で、展望室を有する。展望室はフリースペースとなっており、内側向きにソファーが並べられている。客室の座席は前後8列配置。2号車モロ484-1との間の貫通路は拡幅されている。

本車両の最大の特徴は、非電化線区での運行に対応した4VKT10.5形ディーゼル発電機関を搭載したことで、国鉄・JRの電車でディーゼル発電機関が搭載されるのはこれが初めてである。出力は100kVAで3両分の給電能力を有する。また、本車両には190kVAの出力を有する電動発電機(MG)も搭載しているため、自重は46.5tと、電動車並みの車両重量となった(クモロ485形より重い)。

モロ484-1

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2号車に連結される車両で、トイレ洗面所・女性向けドレッサー室を設置する。客室座席は前後10列配置。自重は47.3t。

クモロ485-1

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3号車に連結される車両で、クロ484-1同様にフリースペースとなった展望室を有するが、本車両では車体中心線から外向きにソファーが並べられている。客室の座席は前後9列配置。自重は45.5t。

  • 車内の様子(全て「NO.DO.KA」への改造後)

運用

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シルフィード

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上沼垂運転区(現在:新潟車両センター)に配置され、1990年9月1日より営業運行を開始し[8][2]、9月24日には早速磐越西線DD51の牽引により非電化線区へ乗り入れ[2]、さらに10月には交流電化区間にも入線するなど、車両の特徴を生かした団体専用列車を中心に運用され、さらには東海旅客鉄道西日本旅客鉄道北越急行の区間への入線実績もあった。

なお、専用機関車として、DE10 1701がシルフィードカラーに変更されている[2]

1991年には新潟 - 酒田間で同名の臨時特急にも使用された。

2001年(平成13年)1月には、客室設備はそのままに普通車に格下げされ、次のように改番された。

  • 1号車 クハ484-701(旧クロ484-1):展望車・電源車
  • 2号車 モハ484-701(旧モロ484-1)
  • 3号車 クモハ485-701(旧クモロ485-1):展望車

その後、2001年(平成13年)6月24日に信越本線新潟 - 妙高高原間を1往復するさよなら運転を行い、シルフィードしての運用を終了した[4][9]

NO.DO.KA

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2001年10月には、カーペット車両に改装し、同時に愛称を「NO.DO.KA」に変更した[10]。この際、便所増設と塗装変更を行い、非電化線区用の発電機器類はそのまま残され、その後も団体専用列車を中心に運用されていた。

2017年7月25日に、新潟支社は「NO.DO.KA」が老朽化に伴い2018年1月中に引退する予定であると発表し[11]、2018年1月7日に臨時団体列車「惜別 NO.DO.KA」をもって運行を終了[12]。1月10日に新宿駅経由で長野総合車両センターへ廃車回送され[13][14]、1月10日付で廃車された[15]

脚注

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注釈

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  1. ^ 磐越西線米坂線只見線等。

出典

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  1. ^ 交友社『鉄道ファン』1991年8月号特集「JR車両 file91」p.61。
  2. ^ a b c d 交友社『鉄道ファン』1990年12月号POST「シルフィード 磐越西線を機関車けん引で全線走破」p.125。
  3. ^ 交友社『鉄道ファン』2018年7月号特集「JR車両ファイル2018」別冊付録「JRグループ 車両のデータバンク2017/2018」p.35。
  4. ^ a b c 交友社『鉄道ファン』2001年9月号POST「6/24,さよならシルフィード運転される」p.148。
  5. ^ 交友社『鉄道ファン』1990年10月号新車ガイド3「JR東日本 シルフィード登場」pp.60 - 63。
  6. ^ 交友社『鉄道ファン』1990年11月号形式図「JR東日本 シルフィード」。
  7. ^ 鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』1991年10月臨時増刊号新車年鑑1991年版「東日本旅客鉄道 485系 シルフィード 」pp.46 - 47・221・229。
  8. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '91年版』ジェー・アール・アール、1991年8月1日、191頁。ISBN 4-88283-112-0 
  9. ^ 『JR気動車客車編成表 02年版』 185頁
  10. ^ 『JR気動車客車編成表 02年版』 186頁
  11. ^ “JR新潟支社 来年1月「NO・DO・KA」運用終了へ”. 交通新聞 (交通新聞社). (2017年8月14日) 
  12. ^ “『終幕 NO.DO.KA』運転”. 鉄道ファン. railf.jp鉄道ニュース (交友社). (2018年1月7日). http://railf.jp/news/2018/01/07/202500.html 
  13. ^ 乗りものニュース編集部 (2018年1月10日). “新潟の展望車形ジョイフルトレイン「NO.DO.KA」が上京 引退の旅路”. 乗りものニュース. https://trafficnews.jp/post/79411 2018年1月4日閲覧。 
  14. ^ “「NO.DO.KA」が長野へ”. 鉄道ファン. railf.jp鉄道ニュース (交友社). (2018年1月11日). http://railf.jp/news/2018/01/11/164500.html 
  15. ^ ジェー・アール・アール編 (2018). 『JR電車編成表』2018夏. ジェー・アール・アール、交通新聞社. p. 356. ISBN 9784330884189 

参考文献

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  • 鉄道ダイヤ情報』通巻78号(1990年10月号)
  • 鉄道ピクトリアル』通巻535号「特集 広島電鉄」(1990年11月・電気車研究会)p56-p58「JR東日本485系「シルフィード」」(東日本旅客鉄道(株)新潟支社運輸部検修課 加藤 洋)
  • 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '02年版』ジェー・アール・アール、2002年7月1日。ISBN 4-88283-123-6