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サイクリン依存性キナーゼ2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
CDK2
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1AQ1, 1B38, 1B39, 1BUH, 1CKP, 1DI8, 1DM2, 1E1V, 1E1X, 1E9H, 1F5Q, 1FIN, 1FQ1, 1FVT, 1FVV, 1G5S, 1GIH, 1GII, 1GIJ, 1GY3, 1GZ8, 1H00, 1H01, 1H07, 1H08, 1H0V, 1H0W, 1H1P, 1H1Q, 1H1R, 1H1S, 1H24, 1H25, 1H26, 1H27, 1H28, 1HCK, 1HCL, 1JST, 1JSU, 1JSV, 1JVP, 1KE5, 1KE6, 1KE7, 1KE8, 1KE9, 1OGU, 1OI9, 1OIQ, 1OIR, 1OIT, 1OIU, 1OIY, 1OKV, 1OKW, 1OL1, 1OL2, 1P2A, 1P5E, 1PF8, 1PKD, 1PW2, 1PXI, 1PXJ, 1PXK, 1PXL, 1PXM, 1PXN, 1PXO, 1PXP, 1PYE, 1QMZ, 1R78, 1URC, 1URW, 1V1K, 1VYW, 1VYZ, 1W0X, 1W8C, 1W98, 1WCC, 1Y8Y, 1Y91, 1YKR, 2A0C, 2A4L, 2B52, 2B53, 2B54, 2B55, 2BHE, 2BHH, 2BKZ, 2BPM, 2BTR, 2BTS, 2C4G, 2C5N, 2C5O, 2C5V, 2C5X, 2C5Y, 2C68, 2C69, 2C6I, 2C6K, 2C6L, 2C6M, 2C6O, 2C6T, 2CCH, 2CCI, 2CJM, 2CLX, 2DS1, 2DUV, 2EXM, 2FVD, 2G9X, 2I40, 2IW6, 2IW8, 2IW9, 2J9M, 2JGZ, 2R3F, 2R3G, 2R3H, 2R3I, 2R3J, 2R3K, 2R3L, 2R3M, 2R3N, 2R3O, 2R3P, 2R3Q, 2R3R, 2R64, 2UUE, 2UZB, 2UZD, 2UZE, 2UZL, 2UZN, 2UZO, 2V0D, 2V22, 2VTA, 2VTH, 2VTI, 2VTJ, 2VTL, 2VTM, 2VTN, 2VTO, 2VTP, 2VTQ, 2VTR, 2VTS, 2VTT, 2VU3, 2VV9, 2W05, 2W06, 2W17, 2W1H, 2WEV, 2WFY, 2WHB, 2WIH, 2WIP, 2WMA, 2WMB, 2WPA, 2WXV, 2X1N, 2XMY, 2XNB, 3BHT, 3BHU, 3BHV, 3DDP, 3DDQ, 3DOG, 3EID, 3EJ1, 3EOC, 3EZR, 3EZV, 3F5X, 3FZ1, 3IG7, 3IGG, 3LE6, 3LFN, 3LFQ, 3LFS, 3MY5, 3NS9, 3PJ8, 3PXF, 3PXQ, 3PXR, 3PXY, 3PXZ, 3PY0, 3PY1, 3QHR, 3QHW, 3QL8, 3QQF, 3QQG, 3QQH, 3QQJ, 3QQK, 3QQL, 3QRT, 3QRU, 3QTQ, 3QTR, 3QTS, 3QTU, 3QTW, 3QTX, 3QTZ, 3QU0, 3QWJ, 3QWK, 3QX2, 3QX4, 3QXO, 3QXP, 3QZF, 3QZG, 3QZH, 3QZI, 3R1Q, 3R1S, 3R1Y, 3R28, 3R6X, 3R71, 3R73, 3R7E, 3R7I, 3R7U, 3R7V, 3R7Y, 3R83, 3R8L, 3R8M, 3R8P, 3R8U, 3R8V, 3R8Z, 3R9D, 3R9H, 3R9N, 3R9O, 3RAH, 3RAI, 3RAK, 3RAL, 3RJC, 3RK5, 3RK7, 3RK9, 3RKB, 3RM6, 3RM7, 3RMF, 3RNI, 3ROY, 3RPO, 3RPR, 3RPV, 3RPY, 3RZB, 3S00, 3S0O, 3S1H, 3S2P, 3SQQ, 3SW4, 3SW7, 3TI1, 3TIY, 3TIZ, 3TNW, 3ULI, 3UNJ, 3UNK, 4ACM, 4BCK, 4BCM, 4BCN, 4BCO, 4BCP, 4BCQ, 4BGH, 4EK3, 4EK4, 4EK5, 4EK6, 4EK8, 4EOI, 4EOJ, 4EOK, 4EOL, 4EOM, 4EON, 4EOO, 4EOP, 4EOQ, 4EOR, 4EOS, 4ERW, 4EZ3, 4EZ7, 4FKG, 4FKI, 4FKJ, 4FKL, 4FKO, 4FKP, 4FKQ, 4FKR, 4FKS, 4FKT, 4FKU, 4FKV, 4FKW, 4FX3, 4GCJ, 4I3Z, 4II5, 3WBL, 4BZD, 4CFM, 4CFN, 4CFU, 4CFV, 4CFW, 4CFX, 4D1X, 4D1Z, 4KD1, 4LYN, 4NJ3, 4RJ3, 5A14, 5CYI, 5D1J, 5FP6, 5FP5, 5K4J, 5IF1, 5AND, 5ANG, 5ANI, 5ANK, 5ANE, 5IEX, 5IEV, 5ANJ, 5ANO, 5IEY

識別子
記号CDK2, cyclin-dependent kinase 2, A630093N05Rik, CDKN2, p33(CDK2), cyclin dependent kinase 2
外部IDOMIM: 116953 MGI: 104772 HomoloGene: 74409 GeneCards: CDK2
遺伝子の位置 (ヒト)
12番染色体 (ヒト)
染色体12番染色体 (ヒト)[1]
12番染色体 (ヒト)
CDK2遺伝子の位置
CDK2遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点55,966,781 bp[1]
終点55,972,789 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
10番染色体 (マウス)
染色体10番染色体 (マウス)[2]
10番染色体 (マウス)
CDK2遺伝子の位置
CDK2遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点128,533,808 bp[2]
終点128,540,900 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 トランスフェラーゼ活性
protein kinase activity
ヌクレオチド結合
cyclin-dependent protein serine/threonine kinase activity
histone kinase activity
金属イオン結合
血漿タンパク結合
ATP binding
キナーゼ活性
protein serine/threonine kinase activity
cyclin binding
cyclin-dependent protein kinase activity
protein domain specific binding
magnesium ion binding
細胞の構成要素 細胞質
エンドソーム
カハール体
cyclin-dependent protein kinase holoenzyme complex
transcription regulator complex
X染色体
Y染色体
微小管形成中心
テロメア
細胞骨格
condensed chromosome
細胞核
細胞質基質
cyclin A1-CDK2 complex
cyclin A2-CDK2 complex
cyclin E1-CDK2 complex
cyclin E2-CDK2 complex
核質
中心体
生物学的プロセス DNA damage response, signal transduction by p53 class mediator resulting in cell cycle arrest
リン酸化
centrosome duplication
cellular response to DNA damage stimulus
細胞分裂
positive regulation of transcription, DNA-templated
DNA複製
potassium ion transport
G2/M transition of mitotic cell cycle
positive regulation of DNA-dependent DNA replication initiation
peptidyl-serine phosphorylation
mitotic G1 DNA damage checkpoint signaling
細胞周期
cellular response to nitric oxide
Ras protein signal transduction
centriole replication
regulation of signal transduction by p53 class mediator
DNA修復
negative regulation of transcription by RNA polymerase II
多細胞個体の発生
positive regulation of cell population proliferation
有機物への反応
regulation of G2/M transition of mitotic cell cycle
タンパク質リン酸化
減数分裂
G1/S transition of mitotic cell cycle
anaphase-promoting complex-dependent catabolic process
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001290230
NM_001798
NM_052827

NM_016756
NM_183417

RefSeq
(タンパク質)

NP_001277159
NP_001789
NP_439892

NP_058036
NP_904326

場所
(UCSC)
Chr 12: 55.97 – 55.97 MbChr 12: 128.53 – 128.54 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

サイクリン依存性キナーゼ2(サイクリンいぞんせいキナーゼ2、: cyclin-dependent kinase 2、略称: CDK2)は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)ファミリーに属するセリン/スレオニンキナーゼである。ヒトではCDK2遺伝子にコードされる[5][6]。CDK2は、ヒトのCDK1や、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaecdc28分裂酵母Schizosaccharomyces pombecdc2の遺伝子産物ときわめて類似している。CDK2はサイクリン/CDK複合体の触媒サブユニットとして機能し、その活性は細胞周期G1/S期に限定される。この期間に細胞は有糸分裂DNA複製に必要なタンパク質の合成を行う。CDK2はサイクリンEサイクリンAなどの調節サブユニットと結合し、それらによる調節を受ける。サイクリンEとの結合は、G1期からS期への進行に必要とされる。一方、サイクリンAとの結合はS期を通じて細胞周期の進行に必要とされる[7]。CDK2の活性はリン酸化によっても調節される。複数のスプライスバリアントや複数の遺伝子転写開始部位が存在することも報告されている[6]。近年、CDK2を欠失した細胞でもG1期からS期への移行が起こることが報告され、この過程におけるCDK2の必要性には疑問が呈されている[8]

正常に機能している組織における必要性

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培養細胞に基づいた実験では、CDK2の阻害によってG1/S期の移行の時点で細胞周期が停止することが示されていた[9]。後のマウス胚線維芽細胞を用いた実験では、CDK2の欠失によってG1期が延長することが示された。しかし、この期間の後にはS期への進行が起こり、細胞周期の残りの期間を完了することも可能であった[10]。マウスでCDK2を欠失させたときには、生存は可能であるが体のサイズは小さくなる。一方、オスとメスの双方で減数分裂が阻害された。このことは、CDK2は健康な細胞の細胞周期には必須ではないものの、減数分裂や生殖には必須であることを示唆している[11]。CDK2のノックアウトマウスの細胞は分裂回数が少なく、そのため体のサイズが小さくなると考えられる。また、生殖細胞は減数分裂の前期で分裂を停止するため、不妊となる[10]。現在では、減数分裂の機能を除いた多くの面で、CDK2の欠失の影響はCDK1によって補償されていると考えられている[11]

活性化機構

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CDK2は2つのローブからなる構造をしている。N末端側のローブ(Nローブ)は多くのβシートを含む一方、C末端側のローブ(Cローブ)はαヘリックスに富む[7]。CDK2は多種のサイクリンと結合することができ、サイクリンABE、そしておそらくサイクリンCとも結合する[11]。近年の研究では、CDK2はサイクリンA、Eに、CDK1はサイクリンA、Bに対し優先的に結合することが示唆されている[12]

Cdk2 (blue) and its binding partner, cyclin A (red).
CDK2(水色)とその結合パートナーのサイクリンA(赤)[13]

CDK2は、NローブとCローブの間に位置する活性部位にサイクリンが結合したときに活性化状態となる。この活性部位の配置のため、パートナーとなるサイクリンはCDK2の双方のローブと相互作用する。CDK2のNローブには重要なαヘリックスが存在し、CヘリックスまたはPSTAIREヘリックスと呼ばれている。Cヘリックスとサイクリンは疎水的相互作用を行う。活性化に伴ってコンフォメーションの変化が起こり、Cヘリックスは回転してNローブのコアの近くへ移動する。これによってCヘリックスのグルタミン酸残基と近接するリジン残基との間でイオン対が形成される。また、このコンフォメーション変化によって活性化ループ(Tループ)と呼ばれる領域がCローブ側へ再配置され、ATP結合部位が露出して新たな相互作用が可能な状態となる。活性化ループが触媒部位から移動すると、活性化ループのスレオニン残基のリン酸化が行われる。リン酸化されたスレオニン残基は、酵素の最終的なコンフォメーションを安定化する[13]。この活性化過程を通じて、CDK2に結合したサイクリン側にはコンフォメーション変化は起こらない[7][14]

CDK2(水色)とその結合パートナーのサイクリンE(橙)[15]

DNA複製における役割

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細胞分裂過程が成功するかどうかは、細胞と組織の双方のレベルでの正確な調節に依存している。細胞内のタンパク質とDNAの複雑な相互作用によって、ゲノムDNAは娘細胞へ伝達される。そして細胞と細胞外マトリックスタンパク質との相互作用によって、新たな細胞は既存の組織中へ組み込まれる。細胞レベルでは、細胞分裂過程はCDKとサイクリンによって制御されている。DNA損傷などの欠陥が修復されるまで細胞周期の進行を遅らせる手段として、細胞はさまざまな細胞周期チェックポイントを利用する[16]

CDK2は細胞周期のG1期とS期を通じて活性があり、G1/S期のチェックポイントの制御を行う。G1期に先立って、CDK4CDK6のレベルがサイクリンDとともに上昇する。これによってG1期の初期にはRbタンパク質の部分的なリン酸化が行われ、転写因子E2Fの抑制が部分的に解除される。その結果サイクリンEの合成が促進されてCDK2の活性が上昇する。G1期の終わりにはサイクリンE-CDK2複合体の活性は最大レベルに達し、S期の開始に大きな役割を果たす[17]。G1/S期の移行時にはRbタンパク質とp27タンパク質がサイクリンA/E-CDK2複合体によってリン酸化され、完全に不活性化される[18]。それに伴い、E2FによってS期への進入を促進する遺伝子の発現が行われる[18][19][20]。さらに、サイクリンE-CDK2複合体の基質であるNPAT英語版がリン酸化され、ヒストン遺伝子の転写を活性化する[21]。これによってクロマチンの主要なタンパク質構成要素であるヒストンの合成が増大し、S期に行われるDNA複製をサポートする。S期の終わりに、サイクリンEはユビキチン-プロテアソームシステムによって分解される[10]

がん細胞の増殖

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CDK2は正常に機能している細胞での細胞周期の進行に必要不可欠な要素ではないが、がん細胞の異常な成長過程には重要である。CCNE1遺伝子は、CDK2の主要な2つの結合パートナーのうちの1つであるサイクリンEを産生する。CCNE1の過剰発現は多くの腫瘍細胞で見られ、これらの細胞の生存はCDK2とサイクリンEに依存している[12]。サイクリンEの異常な活性は、乳がん肺がん大腸がん胃がん、骨のがん、白血病リンパ腫でも見られる[17]。同様に、サイクリンA2の異常な発現は染色体不安定性や腫瘍増殖と関係しており、その阻害によって腫瘍の成長は低下する[22]。そのため、CDK2とそのパートナーとなるサイクリンは新たながん治療法の治療標的となる可能性がある[12]。前臨床モデルでは腫瘍成長の抑制に予備的な成功がみられており、現行の化学療法薬の副作用を減少させることも観察されている[23][24][25]

CDK2に対する選択的阻害薬の同定は、CDK2と他のCDKの活性部位の類似性、特にCDK1との極度の類似性のため困難である[12]。CDK1は細胞周期に必須な唯一のCDKであり、その阻害によって意図しない副作用が生じる可能性がある[26]。CDK2阻害薬候補の大部分はATP結合部位を標的としており、タイプIとタイプIIの2つの主要なクラスに分類される。タイプIの阻害薬は活性部位のATP結合部位に対して競合的に機能する。タイプIIの阻害薬はサイクリン非結合状態のCDK2を標的とし、ATP結合部位やキナーゼ内の疎水的ポケットのどちらかを占有する。タイプIIの阻害薬の方が選択性が高いと考えられている[24]。近年、CDKの新たな結晶構造が発表され、Cヘリックスの近傍にアロステリック結合部位が存在する可能性が示された。このアロステリック部位を標的とした阻害薬はタイプIIIに分類される[27]。他に標的として可能性があるのはCDK2のTループである。サイクリンAがCDK2に結合するとNローブが回転し、ATP結合部位は活性化され、Tループと呼ばれる活性化ループの位置が切り替えられる[28]

阻害因子

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既知のCDK阻害因子としては、p21Cip1CDKN1A)やp27Kip1CDKN1B)がある[29]

ロスマリン酸メチル(rosmarinic acid methyl ester)は植物由来のCDK2阻害剤で、マウス再狭窄英語版モデルにおいて血管平滑筋細胞の増殖を抑制し、内膜新生を低下させることが示されている[30]

遺伝子調節

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メラニン細胞では、CDK2遺伝子の発現は小眼球症関連転写因子(MITF)によって調節されている[31][32]

相互作用

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CDK2は次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

[編集]
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  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000025358 - Ensembl, May 2017
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関連文献

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外部リンク

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