中学生が英検®を受けるメリットとは?
〜その理由と英語力を上げる勉強法を解説!〜
いま、「実用英語技能検定(英検®)」の受検者数が増えています。
英検®は、効率よく英語学習を進めるための物差しになります。高校受験・大学受験を問わず、文系・理系を問わず、英語は受験の重要科目。英語を得意科目にするための上手な英検®活用法を、英語指導のプロがアドバイスします。
この記事のポイント
中学校の英語学習環境の変化
2020年度からの学習指導要領改訂によって小学校での英語が教科化され、そこで扱う英単語数は600~700語と定められました。しかしこれは単語の「書き取り」までを求めているものではなく、子どもは必ずしもスペルを覚えるまで習熟しているわけではありません。
一方、中学校で学ぶ英単語数は、学習指導要領改訂前の1200語から、1600~1800語になりました。しかもこの中には小学校で扱う600~700語は含まれていません。つまり、中学英語は「小学校で習う単語は習得済み」という前提で始まるのです。
その結果、中学校で学ぶ単語数は約2400語にのぼり、いきなり大量の新しい単語に出くわすことになるのです。これが英語を苦手にする原因の一つになっています。
実際に、中学1年生の英語の成績分布をみると、できる子どもとできない子どもの差がはっきりしていることが伺えます。多くの科目の場合、「富士山」のように、平均値を中央にしてほぼ左右均等に出現します。しかし、英語は「ふたこぶラクダ」のように、できる子どもとできない子どもが2分化しているのです。
こうした環境下、「小学校のうちから学校の授業以外でも英語をしっかり勉強させたい」という保護者が増え、とりわけ小学生の英検®受検者が増えています。
(資料:英検「受験の状況」より)
小学生以下 | 中学・高等学校 (高専含む) |
大学 (短大・専門学校含む) |
その他 | 合計 | |
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2022年度実施分 志願者数 (2022年4月1日~ 2023年3月31日) |
524,833人 | 3,102,592人 | 54,624人 | 523,871人 | 4,205,920人 |
※実用英語技能検定、英検IBA、英検Jr.の志願者数の合算
(資料:英検「受験の状況」より)
中学生が英検®を受けるメリット
学年に合った英語の基礎学力が身につく
なぜ、英検®の受検者数が増えるのか。その理由は、英検®が学習指導要領を踏まえているからです。現在、英検®は5級から1級までの全7段階(準2級/準1級を含む)でレベル分けされています。(2025年度からは準2級プラス(準2級と2級の間)が導入される予定)
それぞれの級は概ね学年のレベルに準拠しており、「中1で5級」、「中2で4級」、「中3で3級」に合格できれば、少なくとも英語の基礎が身についている、という目安になります。
習得目標 | 級 | 推奨目安 | 出題目安 | 出題形式 |
---|---|---|---|---|
使える英語の登竜門 ・基礎力定着 ・高校入試レベル |
5級 | 中学初級程度 | 英語を習い始めた方の最初の目標。 家族のこと、趣味やスポーツなど身近な話題が出題されます。 英語の基礎固めに最適です。 スピーキングテストも受験可能です。 |
筆記 リスニング 録音形式のスピーキングテスト |
4級 | 中学中級程度 | 出題形式や内容が、より実用的に。
身近なトピックを題材とした読解問題が加わります。 基礎力をぐんぐん伸ばしていきましょう。スピーキングテストも受験可能です。 |
筆記 リスニング 録音形式のスピーキングテスト |
|
3級 | 中学卒業程度 | 二次試験でスピーキングテスト。英語で考えを伝えましょう。 筆記試験の題材は、海外の文化など少し視野が広がります。 中学卒業段階の英語力の達成目標:3級(文部科学省) |
筆記 リスニング 面接 |
(資料:英検Webサイトより)
いまの英語力と弱点が正確にわかる
英検®の試験結果には、「合否」のみならず、CEFR(外国語運用能力を測る国際的枠組み)に対応した「英検CSEスコア」も記載されています。つまり、受検結果からいまの英語力と弱点が正確にわかり、補強対策も立てやすいのです。
とりわけ小学生のうちは、通知表以外に「いまの英語の習熟度を測る基準」がないため、「何ができて、何が足りないのか」をわかる手段がありません。そこで、英検®をその物差しとして使いたいと考える保護者が増えているのです。
受験を有利に進められる(中学受験・高校受験編)
「小学4年で英検®3級」や「高校受験前に英検®2級」をめざすケースも
さらに地域によっては、「英検®受検の前倒し」が起きており、首都圏では「難関中学の受験準備が本格化する前の小学3・4年までに3級」を取得しておくケースや、大阪では「難関高校受験前に2級」の取得をめざすケースも出てきています。
《TOPICS! 大阪府の「高校受験前に
英検®2級」はなぜ起きる?》
これは、全国的にも特殊なケース。大阪府の高校受験では、受験校のレベルに応じて難易度の異なる問題が3種類用意されている。
上位校の受験では、平均的な難易度の問題では差がつきにくく、受験者の学力を正確に測れない事態も起きる。大阪府では上位校志望者には難しい問題で競わせ、それによって学力差を明確にしている。
しかし、そこには試験の出来・不出来に関わらず、「英検®2級所持者は8割得点できたとみなす」という制度もある。実際に、こうした難関高校受験者はほぼ2級を取得している。英検®2級が「保険」の役割を果たすため、受験に備えてあらかじめ取得しておくケースが増えることとなる。
受験を有利に進められる (大学受験編)
大学入試の英語は実用英語に重点を置く傾向。難易度もアップ!
ここまでは、おもに中学校の英語学習環境の変化について述べましたが、2020年度からの学習指導要領改訂に伴う高校英語、とりわけ大学受験を意識した時の英語の学び方についても考察してみましょう。
2020年度からの学習指導要領改訂に伴う受験英語のおもな変化は、以下の2つです。
①共通テストは「聞く・読む」の2技能を評価する方向へ!難易度は総じて上昇
②学校推薦型選抜・総合型選抜試験で英検®を活用する大学が増加
前回の共通テスト改革時には、英語試験に英検®やTOEIC®TESTなどの民間英語検定を導入することが検討されました。約50万人が受験する共通テストの試験会場で、一人ひとりの「話す」力を測ることはほぼ不可能ですから、そこを民間検定に委ねようとしたことには、一理ありました。
結局、全国的にみたときに「検定を受けられる生徒・受けられない生徒の差が生まれ、機会の不平等を招く」という理由で導入には至りませんでした。しかし、実はこの一連の動きによって、共通テストの英語試験に「不都合」も生まれています。
共通テストの文法問題が消滅、リスニング・リーディング比重が高まる
「不都合」の一つがこれです。なぜこうなったのか?
もともと、4技能のうちの「話す(Speaking)・書く(Writing)」力の測定は、民間検定を活用することを前提としていました。そのうちの「書く(Writing)」力には、語彙や品詞、構文や時制といったいわゆる「文法知識」が必要です。となれば、文法知識を測るのも民間検定のスピーキング・ライティングテストに委ね、共通テストでは出題しないという選択をする方が自然です。しかし結局、民間検定は導入されないことに。そうして共通テストからは文法問題が消え、「聞く(Listening)・読む(Reading)」を中心とした問題構成になったのです。
得点しやすい文法問題が減り、結果的に難易度が上がった
文法問題がなくなると、どんな「不都合」が生じるか?
まず、得点しやすい問題がなくなり、結果として全体の難易度が上がりました。それ自体は必ずしも不都合とも言えませんが、そこで一番困ったのは、『英語を勉強するとっかかり』を失った英語が苦手な生徒たちです。
文法問題は「覚えれば確実に得点できる問題」でもあるため、英語を勉強するきっかけにはなっていたのですが、それがなくなってしまった。さて、何から手を付ければよいのか、途方に暮れる事態が起きたのです。
学校推薦型選抜・総合型選抜でも英語は重要科目。しかも4技能重視に
もう一つの変化は、大学入試における推薦比率の増加に伴い、英検®を出願条件や入試優遇条件に採用している大学が増加したことです。
いま、私立大学入学者の約6割は、総合型選抜などの推薦入試で入学しています。この推薦入試は、日ごろの学習成績(評定点)が大学の定める基準以上あれば、必要書類の提出や、高校の推薦を受けるなどして受験できる入学試験で、受験科目も小論文や面接などの少ない科目数で受験できるのが特徴です。
【大学推薦入試とは?複雑になった仕組みと種類・特徴を解説!】
この推薦選抜、なかでもグローバル系学部においては、聞く・話すといった「使える英語力」がより重視される傾向にあります。こうした英語力を測るために、「英検®を持っていれば優遇する」という受験制度を持つ大学が増えています。
英検®を利用している大学の受験を視野に入れている場合は、早いうちから英検®を取得して、選択肢を広げておくと良いでしょう。
1級 | 早稲田大学 国際教養学部 <一般選抜 → 加点> |
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法政大学グローバル教養学部 <一般選抜 → 出願資格> |
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一橋大学 商・法・経済・社会学部 <公募推薦 → 出願資格> |
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準1級 | 国際教養大学 国際教養学部 <総合型選抜/一般選抜 → 出願資格/得点加算/試験免除> |
上智大学 文・法・外国語学部 <公募推薦 → 出願資格> |
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中央大学 法・商・文・総合政策学部 <総合型選抜/一般選抜/一般選抜 → 出願資格> |
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2級 | 千葉大学 法政経・園芸・国際教養・看護 <公募推薦/総合型選抜 → 出願資格/加点> |
青山学院大学 総合文化政策・コミュニティ人間科学部 <公募推薦/一般選抜 → 出願資格> |
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立命館大学 経済・経営・文・国際関係・スポーツ健康科学部 <総合型選抜/一般選抜 → 出願資格/得点加点/試験免除>など |
(2024年8月7日現在)
英語4技能を客観的に評価できる
こうしていまの大学入試全体を見渡してみると、英語力には「読む・書く」にとどまらない「話す・聞く」も含めた4技能が求められ、英検®はこれらを客観的に評価できる「物差し」として活用されており、だからこそ高校生でも受検者が増加しているのです。
では、同じ民間検定のTOEIC®TESTやTOEFL®TESTと何が違うのでしょう?
これらは英語ができる人もできない人も同じ問題に取り組む試験です。そして中学生・高校生にとってはやや難易度が高く、受検しても問題冊子は持ち帰れず、解答も公開されないため、弱点分析や復習を行うことができません。
英語を得意にする勉強法
わかる・できることを増やすことから始める
高校受験・大学受験を問わず、あるいは文系・理系問わず、英語は受験の重要科目です。苦手科目にしてしまうと、何かと選択肢が限られてしまいます。では、苦手にしないためにはどうすればよいのでしょう?
そもそも、どうして苦手になるのか?これは何も英語に限った話ではありませんが、その原因の多くは、「わからないから」です。わからないから楽しくない、楽しくないから勉強しない、そうしてますます苦手意識が強くなる。
この悪循環を良循環に反転させるには、まず「わかる・できることを増やす」ことから始めましょう。そのためにも、まずは自分の現在地を知ること、学習の成果・結果を実感すること、そうして続けるモチベーションを保ちながら一つひとつを積み上げていく。そうすれば必ず伸びます。英検®は、その「物差し」として使えるのです。
まずは「大量の音」をInputし、それを体系的に理解する
英語を効率よく学習するための手順としては、まずは大量の音の情報をインプットすることを心がけてください。特に小学生や中学校での習い始めの時期には、さまざまな英語の音に触れることが大切です。
ともすると、文法などの「ルール」を先に覚えたほうが効率的に勉強できるような気もしますが、それは必ずしも正しくありません。ルールはあくまで「いろんな事実を体系的にまとめた結果」です。多くの事実を知らなければ分類することもできませんし、ルールが持つ意味自体を理解できないのです。
目を通さずとも教科書を諳んじることができるまで暗誦する
音をインプットする勉強法としてお勧めしたいのが、徹底的な教科書の暗誦です。どれぐらいのレベルの暗誦かといえば、目を通さずとも諳んじることができるレベル、それを全ページでできるレベルです。ここまで英語を音として定着させれば、単語や品詞、構文や時制などの文法的なルールも抵抗なく理解でき、そのルールで裏打ちされることによって、より深く英語を理解できるようになります。
英語は積み上げるべきことを積み上げていけば、一定レベルまでは確実に伸ばすことができる科目です。こうした積み重ねこそ、学力アップの何よりの近道なのです。
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この記事を書いた人
英検準2・2級担当
笠井 照彦 講師
受験対策のエキスパート
(英検1級、TOEIC990点満点)