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2024年メットガラのドレスコード「時間の庭(The Garden of Time)」とは──過ぎゆく時間、自然界の美しさを讃えて

メットガラ2024のドレスコード、「The Garden of Time(時間の庭)」。参加者たちは、メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートに眠る貴重なアーカイブピースに光を当てながら、過ぎゆく時間、自然界の美しさを讃える。

メットガラ2024のドレスコード「The Garden of Time(時間の庭)」を理解するには、5月6日(現地時間)にメトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートで開かれる特別展のコンセプト、「Sleeping Beauties: Reawakening Fashion(眠れる美への追憶──ファッションがふたたび目覚めるとき)」を深堀りする必要がある。

このコンセプトはグリム童話集やディズニー映画とは関係なく、二度と着ることができないほどデリケートな服、つまり、コスチューム・インスティテュートが入念に保管するアーカイブのなかで「眠れる美しい服」を指すものだ。キュレーターであるアンドリュー・ボルトンは、こうしたファッションを蘇らせる“プリンス”と例えてもよいだろう。

ドレスコードのもうひとつのインスピレーションとなったのが、J・G・バラードが1962年に書いた同名の短編小説だ。この作家の名を、スティーブン・スピルバーグによって映画化された小説『太陽の帝国』で知る人も多いかもしれない。彼が描いたディストピア的な世界観もまた、ここでの鍵を握ることになりそうだ。

メトロポリタン美術館によれば、展示されるファッションの歴史は17世紀の英国エリザベス朝時代にまで遡り、自然界の美しさ、そしてその儚さと避けられない腐敗を体現するものになるという。より現代的な作品も同時に展示され、「陸」、「海」、「空」の3つのサブテーマに分けられる。

ゲストたちは何を着る? 「時間の庭」を表すファッションとは

チャールズ・フレデリック・ワースによるイブニングコート。1889年製。

Photo: the Metropolitan Museum of Art

ドリス・ヴァン・ノッテン 2014年春夏コレクションより。

Photo: Vogue Runway

しかし一体、このコンセプトを表すファッションとはどういったものだろう?

展示が予定されているアイテムのひとつに、チャールズ・フレデリック・ワースが1889年に制作したイブニングコートがある。最もわかりやすいのは、このアイテムのようにフローラルモチーフなど「庭」の要素を取り入れたものだろう。例えば、ドリス ヴァン ノッテンDRIES VAN NOTEN2014年春夏コレクションに登場した、ワースのそれを想起させるチューリップ刺繍をあしらったものや、フラワーアーティストの東信がランウェイを飾った2017年春夏コレクションショーなどは、このイメージにぴったりだ。

また、先月披露された2024年春夏オートクチュールコレクションのなかには、フローラルを大々的にフィーチャーしたルックがいくつかあった。銀色のバラを手にしたモデルたちがランウェイを歩いた、シモーン・ロシャ(SIMONE ROCHAによるジャンポール・ゴルチエJEAN PAUL GAULTIERのショーや、印象派の絵画に見るような光景が描かれたジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLIルック36を思い出してほしい。

これらの最新ルック以外に、カール・ラガーフェルドが手がけたシャネルCHANEL2015年春夏オートクチュールコレクションもこのドレスコードに当てはまると言えるだろう。

ジャンポール・ゴルチエ 2024年春夏オートクチュールコレクションより。

Photo: Vogue Runway

ジャンバティスタ・ヴァリの2024年春夏オートクチュールコレクションより。

Photo: Vogue Runway

バラードの短編小説を読めば、花以外のヒントも見えてくる。例えば、主人公のひとりである伯爵夫人が、破滅が迫っているにもかかわらずチェンバロでモーツァルトやバッハを弾いているシーン。ヴァレンティノVALENTINOの2014年春夏コレクションに登場した、楽譜を刺繍したルックがその描写にふさわしい。

ヴァレンティノ 2014年春夏コレクションより。

Photo: Vogue Runway

モスキーノ 2022-23年秋冬コレクションより。

Photo: Vogue Runway

時間──その逆転とそれに対する私たちの無力さ──は、探求すべきもうひとつのテーマだ。カルティエCARTIERのサルバドール・ダリの代表作「記憶の固執」にインスパイアされた「クラッシュ」や、モスキーノMOSCHINOの2022-23年秋冬コレクションから時計をプリントしたシュールなルックなども、候補に挙げられるかもしれない。

クリスチャン・ディオール 1949-50年秋冬コレクションより。「ヴィーナス」と「ジュノン」。

Photo: the Metropolitan Museum of Art

このドレスコードは少しの謎解きが必要だが、ファッション理論抜きにしてメットガラは語れない。ジェニファー・ロペスゼンデイヤバッド・バニークリス・ヘムズワース、そしてコンデナストのチーフ・コンテンツ・オフィサー兼グローバル・エディトリアル・ディレクターのアナ・ウィンターが共同ホストを務めることがわかっているが、ゲストリストには誰がいるのか、また彼らが何を着るのか──今から期待が高まる。

Text: Lilah Ramzi Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.COM