ブリティッシュテーラードを意識したタキシードスタイル
トム フォード(TOM FORD)といえば、伝統ある英国紳士のスタイルを大切にしながら、エレガントなエッセンスを添えるラグジュアリーブランドの一つだ。映画「007」シリーズでダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが美しくスーツを着こなしていたことでも、一躍注目を浴びた。
啓太さんもまた、「ベタなのですが、僕がトム フォードというブランドを知ったのは映画『007』のシリーズがきっかけなんです」と話す。昔から、ジェームス・ボンドが凛と着こなすスーツ姿に憧れがあったという。
「結婚式でどのタキシードを着るかという話になったときに、妻が『あなたは絶対トム フォードが似合うから』と言ってくれたんです。映画を通してずっとかっこいいなと思っていたブランドでしたし、ファッションを知り尽くしている妻が推してくれるのであれば、ということで今回トム フォードでタキシードをオーダーメイドすることになりました」
普段からジャケットやセットアップが大好きだという啓太さん。サイズの関係もあり、スーツはオーダーメイドすることがほとんどだそう。トム フォードでのオーダーメイドは今回が初めてだと話す啓太さんに、どのような違いを感じたのか尋ねてみた。
「トム フォードのタキシードジャケットは襟が幅広なのですが、そういったちょっとしたデザインのこだわりが自分の体型に合っていると感じました。元々僕は古き良き時代のファッションが好きなのですが、トム フォードのアイテムにはクラシックでエレガントな雰囲気が漂っているので、そういう意味でも自分にとって理想的でした」
厚みや光沢感、重さなど数多くの種類がある生地選びは誰もが迷うところ。啓太さんも悩みながら、最終的には自分がそれを着て舞台に立つことをイメージして直感で決めたという。同じく様々な選択肢があるライニングは、最終的にダーク レッドを選んだ。
「華やかな場なので明るい色で遊びを効かせることも考えました。ですが、初めてトム フォードでオーダーメイドするタキシードであり、一生思い出に残る舞台だからこそブランドのクラシックさと自分のスタイルを組み合わせていこうと思い、深い色を選びました」
オーダーメイドする中で、啓太さんが最も気にかけていたのはパンツのラインだ。ラグビーで鍛えられた脚を活かすことのできるシルエットにこだわった。
「僕はラグビー選手なので人よりも脚の筋肉がついているため、細いシルエットのパンツではあまり綺麗に見えないんです。無理にピタッとさせるよりも、パンツも昔ながらのオーソドックスなスタイルに仕上げようということでトム フォードの方とも意見が一致しました」
カラーやカフスに関しては、トム フォードのスタイルに委ねた。
「カラーやカフスも種類がたくさんあるのですが、そこに関してはトム フォードのスタイルに委ねて、僕は手を触れないようにしました。シューズは普段からローファーが好きなので、迷いなく選びました。結婚式という場所を考えて、素材もパテントレザーにしました」
そして啓太さんが、少しはにかみながらインナーポケットの内側に隠された秘密を教えてくれた。
「インナーポケットの内側に結婚式の日付を刺繍していただきました。インナーの見えるところにオーダーでイニシャルを入れることはよくあると思うのですが、僕の場合はインナーポケットのさらに内側に刺繍を入れてあるので、普通は絶対に見えないんです。そのさりげなさがまた自分らしく、大切な一着になりました」
自分らしさと、トム フォードの大切にするクラシカルなスタイルがマッチしたという今回のオーダーメイドタキシード。一生に一度の大切な思い出が刻まれた、スペシャルな一着となった。
Photos: Kaname Teruya Text: Airi Nakano Editor: Kyoko Osawa