南洋のシャチが、強烈な一撃でイルカを「空中に弾き飛ばす」瞬間を撮影...残酷で完璧な狩りのスキル
Orca Matriarch Seen Throwing Dolphin Into Air During Hunt
写真はイメージです Patricia VanOver/Shutterstock
<個体群によって餌にするものも狩りの方法も多種多様なシャチだが、一部は獲物を空中に弾き飛ばすほどの強烈な一撃で魚や海洋哺乳類をしとめるという>
南米のチリ沖で、獲物を捕まえようとするシャチの集団が、「冷酷」な方法で狩りをしている姿が観察された。海洋科学ジャーナル「フロンティアーズ・イン・マリーン・サイエンス」で発表された論文によると、この群れを率いるメスのシャチは狩りの最中にハラジロカマイルカ1頭を空中へと放り投げて仕留め、仲間がその肉を分け合って食べていたという。
■【写真】【動画】珍しくも「残酷」なシャチの狩り...イルカを「空中に弾き飛ばして」しとめるレアな捕食シーン
シャチの群れの捕食習性を詳細にとらえた観察情報は、チリ沖に生息するこの個体群と、南半球の他の個体群との関係解明、ならびに、保護活動の取り組み促進に役立つ可能性がある。
論文共著者で、チリのアントファガスタ大学の研究者アナ・ガルシア=セガラは声明で、以下のように述べている。「自然環境に生息するシャチの研究は実に困難だ。シャチは、海の生態系の頂点に立つ捕食動物であり、移動距離が長く、岸から離れた沖合に生息しているため、観察が難しい」
「しかし、海洋環境でシャチが果たす役割を解明することは、不明な点が多いフンボルト海流のシャチを保護するうえで不可欠だ」とガルシア=セガラは述べた。
獲物を尾びれで叩き、空中に弾き飛ばす狩りの方法も
シャチの狩り技術は高度かつ多様で、その方法は群れによってさまざまだ。これまでに、主に魚類などの獲物を尾びれで叩き、気絶させたりケガをさせたりするやり方が確認されている。その威力はすさまじく、獲物が空中に弾き飛ばされて、すぐさま気絶したり即死したりすることがあるほどだ。
波を起こして狩ることもある。集団で海氷に向かって突進し、手前で体をねじって水中に潜る。そうやって大きな波を起こして、海氷上にいたアザラシを押し流して海に落とすのだ。集団で狩りをする場合は、シロナガスクジラやコククジラといった大物を狙うこともある。連携プレーでは、幼い個体や弱い個体に狙いを定め、協力して獲物が疲れ果てるよう仕向けることも多い。
シャチは、世界的な絶滅危惧種として分類されているわけではない。しかし、特定の獲物に依存していたり、人間活動との接触、生息環境の悪化といった理由で、重大な脅威にさらされている個体群もいる。
個体群が異なると、食べるものも異なる。魚しか食べない群れも存在するし、アザラシや、ときにはクジラといった大きめの獲物を好む群れもある。南半球に生息するシャチの生態型は5つで、タイプAとタイプB1は海洋哺乳類を好む。