DXとSDGsを繋ぐ、富士通のデータ活用:2つの革新事例

地球とデジタルネットワークが融合するイメージの扉絵画像

かつては経験や勘が私たちの行動を左右していました。しかし、現代社会においては、データこそが私たちの生活、そしてビジネスを大きく形作る中心的な存在となっています。市場の動向を正確に把握し、製品の生産計画や流通を最適化することで、企業はかつてない効率性と競争力を手に入れることができます。データはもはや単なる情報ではなく、ビジネスを駆動する重要な資源へと進化したのです。今回は、このデータドリブンな社会において、企業が持続可能なビジネスを実現するために富士通が行っている支援についてご紹介します。

目次
  1. データが秘める力
  2. データドリブン社会
  3. AI時代のデータ戦略
  4. データと倫理
  5. データが切り拓く未来のビジネス
  6. 富士通のDXへの取り組み
  7. データが創造する未来

データが秘める力

ビジネスの意思決定は、かつてはその道のスペシャリストの経験や勘に頼ることが多くありました。しかし、現代では、膨大なデータが日々生み出され、その活用がビジネスの変革を加速させています。
インターネットの普及、IoTデバイスの進化、そしてスマートフォンの爆発的な普及により、私たちの行動や消費に関するデータが、かつてない規模と頻度で収集されるようになりました。例えばオンラインショッピングの履歴、位置情報、SNSでの活動、スマート家電の使用状況など、あらゆるデータがデジタル空間で記録され、ネットワークを通じて流通し、加工・演算されて分析可能な形に整理されています。
これらのデータは、従来のビジネスモデルでは得られなかった貴重なインサイトを提供しています。顧客のニーズや行動パターンを深く理解することで、よりパーソナライズされた商品やサービスを提供できるようになります。また、市場の動向をリアルタイムに把握し、迅速な意思決定を可能にすることで、競合他社を出し抜く戦略的な行動を促進します。

様々なデバイスからデータが生成され集結するイメージの挿絵画像

データドリブン社会

外出時に天気予報や時刻表を確認するように、いまやビジネスではますます多くの重要な判断を膨大なデータに基づいて行うようになっています。たとえば市場を正確に把握し、製品の生産計画や流通の最適化したり、企業経営の中で根拠や再現性を持った意思決定をするなど、データが世の中を駆動していると言っても過言ではありません。
データの重要性が高まるにつれて、信頼性を担保しながらデータ収集し、高速に分析し、わかりやすく可視化する必要性も高まっています。実際に企業は、データ分析の専門知識を持つ人材の確保や、最新鋭のデータ分析ツールへの投資など、データ戦略への取り組みを強化しています(※1)。

AI時代のデータ戦略

近年、注目すべきデータ動向として、データ再収集の動きの活発化が挙げられます。騒ぎになっていないのは、だれもが水面下でひっそりと行っているからではないでしょうか。
AI技術の進化は、データの活用方法に大きな変化をもたらしました。当初は、企業が保有していたデータをAIで処理することが中心でした。ところがAIの利用が進むにつれて、AIに入力する学習データこそが、重要な要素であることが明らかになってきました。
つまりより優れたAIを構築するためには、より正確で信頼性や精度の高いデータ、そして予測に必要な多種多様なデータを提供する必要があります。AIの利用目的が変われば、必要なデータの品質も変化するため、データの取得方法や種類も多様化しています。だからこそデータの再収集の競争が始まっているのです。
AIの進化に伴い、企業は従来のデータ収集方法を見直し、AIの学習に最適化されたデータの収集と処理を行う必要に迫られています。これは、一定以上のデータが必要な領域では、競争原理が働く重要な領域であり、多くの企業が水面下でデータ戦略を強化しています。

AIがデータから学習し分析結果を可視化するイメージの挿絵画像

データと倫理

データは現代ビジネスにおいてかけがえのない資源であり資産です。しかし、データを利用する際には、そのリスクも十分に理解し、倫理的な観点から責任ある利用を心がける必要があります。
個人データやプライバシーに関する法律や規制は、国内外で強化されています。特に、欧州のGDPRのような厳密な規制は、データ利用に対する制約や違反に対する厳しい罰則を強化しており、企業はデータの取り扱いについて、法令遵守と倫理的な責任を負う必要性を認識する必要があります。
AIの領域においてもデータの倫理的な扱い方は重要な課題となっています。データを利用する上で、こうした利用に関するリスクもきちんと理解し、対応していかなければならない局面にきているといえます。富士通はAI倫理ガバナンスを重視しており、安全・安心なAIが社会実装されるように常に配慮してきました。AIがなぜそう判断したのかも解るよう説明できるAI技術にも取り組んでいます。

データが切り拓く未来のビジネス

データは、実世界と仮想空間上を繋ぐ重要な役割を担っています。仮想空間上に実世界が写像され、仮想空間上で処理された情報を元に、私たちは実世界の物事を判断したり制御したりするようになっています。デジタルツインなどの技術は、この流れを加速させる重要な要素として注目されています。
つまり、正確で高い精度のデータを高速に処理できる企業が、より大きな力を持ち、新たなビジネスモデルを作り出す時代が到来しているのです。私たちの身の回りでも、データビジネスの変革によって社会を大きく変貌させている企業が台頭してきました。GAFA(※2)/MATANA(※3)/GOMA(※4)などの企業群は、データ戦略を駆使してビジネスを拡大し、世界に大きな影響を与えています。
ITだけでなく、不動産、金融、医療など、様々な産業がデータに基づいて変革を遂げています。複雑な手続きをデジタル化することで、業界全体のあり方が大きく変化しています。

  • ※2
    Google, Amazon, Facebook(現Meta), Apple
  • ※3
    Microsoft, Amazon, Tesla, Alphabet, NVIDIA, Apple
  • ※4
    Google, OpenAI, Microsoft, Anthropic

富士通のDXへの取り組み

2020年、経済産業省は、データの活用には3段階(※5)あると示しています。それらを簡潔に表現すると、以下のように言い換えることができます。

図 DXレポート2(経済産業省、令和2年12⽉28⽇)を基に作成
  • デジタイゼーション:アナログをデジタル化する
  • デジタライゼーション:プロセスをデジタル化する
  • デジタルトランスフォーメーション(DX):デジタル化でビジネス変革を行う

富士通は,2019年の経営方針で「IT企業からDX企業への転換」を発表し、データを活用した様々な取り組みやサービスの提供を行っています。もともと富士通が得意としていたデジタイゼーションにとどまらず、社内問合せや各種申請作業など従来メールやファイルを利用していたプロセスのデジタライゼーション、またブロックチェーン技術の将来性に早くから着目し、データによる業界のビジネス変革にも取り組んでいます。ここではお客様と共創した2つのビジネスモデル変革の先端事例をご紹介します。

不動産業界:不動産所有権の変革

ベルギーのスタートアップ企業FraktionX社は、富士通と協力して、不動産をトークン化し、より多くの人が不動産投資をしやすいプラットフォーム「Fraktion」を開発しました。同社は、従来の不動産投資における複雑な手続きを簡素化し、有価証券によるリスクを分散化させています。
富士通は、同社にブロックチェーン技術の開発・運用・アドバイスのサービスを提供し、プラットフォームの設計、開発、リスク評価などを行い、その安全性と信頼性の確保を支援しています。
FraktionX社は、Fraktionを通じて不動産投資をより身近なものにし、不動産市場に革新をもたらしています。富士通はFraktionX社とのパートナーシップを通じて、不動産トークンの安全性と信頼性をデータの安全性と信頼性で支えています(※6)。

ブロックチェーンをイメージした挿絵画像

製造業界:新たな水資源を提供する

富士通は、食品製造過程で排出された水を回収・精製するBotanical Water Technologies社の「Botanical Water Exchange (BWX)」プロジェクトに参画しています。同社は、水取引の透明性と安定性を確保するため、富士通のブロックチェーンプラットフォーム「Fujitsu Track and Trust」を採用しています。このプラットフォームは、水の精製から販売、購買、引渡し、使用まで、すべてのプロセスを可視化し、トレーサビリティを確保しています。
同社は富士通の専門性とサステナビリティへの取り組みを評価し、このパートナーシップによって、水不足に悩む地域へのさらなる貢献を目指しています。BWXは、水取引の透明性を高め、持続可能な水資源の利用を促進する革新的な取り組みです。水を必要とする場所に水を運搬するのではなく、水源を近郊に作るという新たなビジネスモデルを富士通はデータの透明性で支えています(※7)。

データが創造する未来

データは、私たちの生活やビジネスを大きく変革する力を持っています。データを用いて実世界をデジタル空間に写像し、デジタル空間で処理することで、より容易に安全に業務を行うことができるようになり、今後も多くの産業がデータによって変革されていくと思います。
データ戦略を強化し、データの倫理的な利用を意識することで、企業は新たな価値を創造し、持続可能な成長を実現することができます。データが創造する未来は、私たちの手によって形作られるのです。
AI時代において、データ戦略はもはや企業の競争力を左右する重要な要素です。自社のデータ戦略を改めて見直し、競合他社との差別化を図るための具体的な施策を検討しましょう。

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