米名門大の学長辞任 学内の反ユダヤ発言の是非を「文脈次第」と下院で発言、非難浴びる

米ペンシルヴェニア大学のエリザベス・マギル学長

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パレスチナ自治区ガザ地区での戦争を機に、アメリカの名門大学で高まる反ユダヤ主義の言動について、米連邦議会下院公聴会で学長たちがその是非は「文脈による」と発言したことがアメリカ国内で波紋を呼んでいる。ハーヴァード大学の学長は発言を謝罪し、ペンシルヴェニア大学の学長は9日、辞任した。

アメリカ各地の大学キャンパスでは、ガザでの戦争に関連した抗議行動が続いている。アメリカではさらに、ユダヤ人差別の事件も急増している。こうした状況の中、連邦下院で5日、教育・労働委員会の公聴会が開かれ、証人として出席したペンシルヴェニア大、ハーヴァード大、マサチューセッツ工科大(MIT)の学長3人に多数党・共和党のエリーズ・ステファニク議員(ニューヨーク州選出)が質問した。

約6時間に及ぶ公聴会の終盤で、ステファニク議員は「ユダヤ人のジェノサイドを呼びかけることは、あなた方の大学では、いじめや嫌がらせを禁止する学則違反に該当するか」と学長たちに質問した。それに対し、ペンシルヴェニア大学のエリザベス・マギル学長、ハーヴァード大のクローディーン・ゲイ学長、MITのサリー・コーンブラス学長はそれぞれ、繰り返し、ユダヤ人差別はおぞましいことだと強調したうえで、個別の発言が学則違反にあたるかどうかは発言の「文脈による」と答えた。

ハーヴァード大のゲイ学長はさらに、発言が「いじめやいやがらせや威圧に相当するものに至った」場合にのみ、ハーヴァードは大学として対応すると説明した。これに先立ち、一部の親パレスチナ派が頻繁に使う反ユダヤ・スローガンについてどう思うか、ステファニク議員が質問すると、ゲイ学長は「おぞましい」スローガンだと思うと答えていた。

MITのコーンブラス学長は、そうしたユダヤ人に対する攻撃的な発言は、特定の個人に対して執拗(しつよう)にされた場合に、大学として調査に乗り出すとした。

しかし、議会公聴会でのこうした回答について、「ユダヤ人のジェノサイド」を呼びかける言動を一刀両断して非難しなかったと、学長たちに対して非難が高まっていた。

ホワイトハウスのアンドリュー・ベイツ報道官は6日、学長3人の発言を受けて、「次のことを、わざわざ言わなくてはならないとは信じられない。ジェノサイドを求めるのは、恐ろしいことで、この国が象徴するあらゆることに反する。ユダヤ人の組織的殺害を主張する発言はどのようのものでも、危険でおぞましいものだ」と声明を発表した。

ペンシルヴェニア大のマギル学長についてはさらに、同大へ多額の寄付をしていた支援者が、学長の発言に「がくぜんとした」として、1億ドルの寄付金を引き上げていた。

7日には同大で学ぶユダヤ系の学生2人が訴えを起こし、ペンシルヴェニア大学のキャンパスが「ユダヤ人に対するすさまじい憎悪、いやがらせと差別の温床と化している」と主張した。

マギル学長はすでに議会での発言を謝罪していた。大学は9日、マギル氏が「自ら進んで辞表を提出した」と発表。後任が決まるまで留任するという。同大のスコット・L・ボク理事長は、マギル氏が学長は退くものの「同大法科大学院の終身雇用教員として在籍し続ける」と説明した。

大学が公表した声明でマギル氏は、「この素晴らしい教育機関に奉仕できるのは、ありがたいこと」だとして、「ペンシルヴェニア大の重要なミッションを推進するため、この大学の教員や学生やスタッフ、卒業生、コミュニティーの人たちと働いてきたのは、光栄でした」と述べた。

ハーヴァード大学のクローディン・ゲイ学長

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ハーヴァード大学のゲイ学長も、下院公聴会での自分の発言について謝罪している。学生新聞「クリムゾン」のインタビューで学長は、「申し訳ない」と謝った。

「言葉は大事です。自分の言葉が人の動揺や苦しみを増幅させたなら、後悔するしかない」とゲイ博士は述べ、「(公聴会の)あの時点で、大学の方針や手続きに関して長々と、対決的にやり取りを重ねた挙句のことで、その空気に巻き込まれてしまった」のだと説明した。

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