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Tokyo Gendai:世界水準のアートフェアは何をもたらすか

7月5日からの3日間、パシフィコ横浜で国際アートフェア「Tokyo Gendai」が開催される。昨年の初開催にしてすでに、国内外のアートコミュニティに大きなインパクトを残した現代アートのイベントが、質量ともにスケールアップ。鑑賞し、交流し、購入する。“世界水準”のフェアならではの体験がここに。
Tokyo Gendai:世界水準のアートフェアは何をもたらすか
Carsten Nicolai Portrait, Photo: Alberto Novelli

Carsten Nicolai
カールステン・ニコライはベルリンを拠点に、人の知覚や自然のもつ特性、科学的システムや数学パターン、記号論などをモチーフとして、アート、音楽、科学の領域を横断する作品を制作するアーティスト。アルヴァ・ノト名義で実験的な電子音楽を制作・発表することでも知られている。なかでも坂本龍一とは親交はあつく、映画『レヴェナント:蘇えりし者』のサウンドトラックの共作や、cyclo(池田亮司も加わったユニット)での活動も行なってきた。今回のTokyo Gendaiでは「Galerie EIGEN + ART Leipzig/Berlin」のスペースで特別なインスタレーションを展示。http://www.carstennicolai.com

優れたアートは未来を予言する、とよくいわれる。例えば「将来、誰でも15分間は有名になれる」というアンディ・ウォーホルの言葉は、SNSがたやすくバズる現代にあっては宣託どころか一般常識だし、反復して多量に“生成”された缶スープやセックスシンボルのプリントは、そのまま生成AI によるイメージのようですらある。

というわけで、わたしたちは優れたアートを体感し続けるべきで、開催が目前に迫った「Tokyo Gendai」はその重要な選択肢になる。初開催となった昨年は3日間で20,000人を超える入場者を記録。今回は70のギャラリーが世界の18カ国から出展し、そのなかにはペースギャラリーといったメガギャラリーもある。

そのほかにも“世界水準”の理由がある。例えば出展されるアーティストや作品、ギャラリーの選出についても厳正な審査を経ている。フェアディレクターの高根枝里は語る。

「わたしたちは国際的に活躍するギャラリーで組織した選考委員会の相互評価を行ないます。作品の質はもちろん 、作家の文化的アイデンティティ、ジェンダーなども評価することで、グローバルなプレゼンテーションとなることを期待しています。10,000m²もの会場の広さ、設備や空間の設計も世界水準の質を追求したものです」

その経済規模に比べると、日本のアートマーケットが小さ過ぎることは長らく指摘されてきた。Tokyo Gendaiが注目されるのは、それを変化させる可能性を宿すからだ。そのために必要なのは「自分らしく楽しく経験してもらう」ことだと高根は語った。

「パブリックプログラムはさらに充実し、特別な展示も多くご用意しています。わたしたちは日本 やアジアは成長の余地がまだまだあると考えています。そのためにもアートの基盤を着実につくっていくことを大切にしたいのです」

Rafaël Rozendaal
ラファエル・ローゼンダールは、オランダ出身でオンラインやヴァーチャル空間を表現の場とするアーティスト。2000年頃より活動を開始し、シンプルな形とモーション、多彩な色で構成されたウェブサイトそのものを作品とすることで知られている。制作発表の場であるホームページは年間数千万ものアクセスがあるとか。 Tokyo Gendaiではレンチキュラー(角度によって絵柄が変化して見える特殊印刷)の作品を発表する予定。https://www.newrafael.com


Julian Opie

ロンドンが拠点のジュリアン・オピーは、ひと目で彼とわかるミニマルな視覚言語 体系で、さまざまな人物や風景を描いてきた。パブリックアートとしても人気が あり、多くの都市の壁面を彩っているが、 近年は立体作品も注目を集める。Tokyo Gendai では絵画と彫刻作品を出展する。https://www.julianopie.com


TOKYO GENDAI
国際的な現代アートギャラリーが出展し作品の展示・販売を行なうアートフェア。特設展覧会やアートトーク、子ども向けのワークショップなどパブリックプログラムも豊富だ。日本、アジア、世界をつなぐ新しいアートのプラットフォームとなりつつある。主催 は世界トップクラスのアートイベントを 数多く創設してきたThe Art Assembly

  • 会期:2024年7月5日〜7日(7月4日は VIPプレビュー/ヴェルニサージュ)
  • 会場:横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)ホールC/D
  • チケット:ArtStickerにて販売中。
  • OFFICIAL WEB

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