AIが検索結果の概要を自動生成、Google 検索の「AI Overviews」について知っておくべきこと

Google 検索で、AIが検索結果の概要を生成して表示する新機能「AI Overviews」の一般提供が米国で始まった。生成AIが不正確な情報を表示する可能性を考えると、検索結果の信頼性の低下にもつながりかねない。
Google logos and a person holding a smartphone
Photograph: Leon Neal/Getty Images

いま話題のGoogle 検索の新機能である「AI Overviews」について詳しく知りたいと考えて、Google 検索で調べてみたとしよう。入力した検索ワード(検索クエリ)によってAI Overviewsが作動した場合(クエリによっては作動しない)、検索結果の上位には人工知能(AI)がまとめたこの記事の要約が表示されるかもしれない。

米国のGoogle 検索で新たに表示されることになったAI Overviewsは、入力された検索ワードに対してAIがウェブ上の情報をまとめて回答を自動生成し、ユーザーに提示する機能だ。ユーザーは求める答えを得るためにウェブサイトへのリンクをクリックする必要もなければ、AIが情報源にしたサイトなどの名称を知る必要さえない。

このAI Overviewsについてグーグルは、すでに「生成 AI による検索体験(Search Generative Experience:SGE)」という名称で初期バージョンを試験提供してきたが、これはオプトイン(意思をもって受け入れ)したユーザーのみが利用できるものだった。ところが、新たにAI Overviewsという名称に変更されたうえで、より広範囲にリリースされることがグーグルの開発者会議「Google I/O」で5月14日(米国時間)に発表されたのである。

これに伴い、Google 検索を使ってウェブ検索や質問をする米国内のすべてのユーザーに、AI Overviewsが検索結果のいちばん上に表示されるようになる。繰り返しになるが、対象は要約で回答できる質問に限られる。

ウェブサイトへのリンクだけを表示させたい場合は、どうすればいいのだろうか。残念ながらAI Overviewsは、米国では検索結果のページに標準で組み込まれている。表示しないようにオプトアウト(利用しない意思表示)したり、機能をオフにしたりすることはできない。

Google アカウントでAI Overviewsを完全に無効にする方法はないが、ウェブサイトへのリンクで埋め尽くされた検索結果のページだけを表示するように選択することはできる。そのためには、毎回の検索クエリを入力した後に、特別なフィルター表示を選択する必要がある。

まず、検索結果のページのいちばん上にAI Overviewsがまとめた概要が表示されたら、「もっと見る(More)」のタブ(「画像」「ビデオ」「ショッピング」などの選択肢と並んで表示される)を選び、次に「ウェブ」へと進む。そうすれば、ウェブサイトへのリンクだけを表示した結果ページが表示される。

AI Overviewsが健康に関する質問に関連する回答を生成するときは、いつも結果の下部に次のような免責事項が追加される。「医学的なアドバイスや診断については専門家にご相談ください」といった内容だ。

Google via Reece Rogers

それでは、どのようなクエリで検索した場合に、AIによって自動生成された結果の概要が表示されるのだろうか。

「AI Overviewsは複雑なクエリに対して表示されます」と、グーグルの広報担当者は説明する。「生成AIが特に役立つとシステムが判断した場合、例えば多種多様な情報源から得られる情報を素早く理解したい場合などに、Google 検索の結果にAI Overviewsが表示されます」

ところが、最初に試したときはAI Overviewsはクエリに対してほぼランダムに表示され、簡単な質問でも複雑な質問でも概要として表示されるようだった。広報担当者によると、AI OverviewsはグーグルのAIモデル「Gemini」をカスタマイズしたもので、何十億もの一般的な事実を集めた知識ベース「Google ナレッジグラフ」のようなグーグルの検索システムの構成要素で補完されているという。

AI Overviewsが示した回答のなかには、ウェブページへのリンクがすぐに表示されるものもある。その他のAI Overviewsについては、情報の出所を確認するために「詳細を表示」をクリックする必要があった。

Google via Reece Rogers

検索結果の信頼性の低下につながる懸念

AI Overviewsの展開に関して最も尻込みした点のひとつは、AIが引き起こすハルシネーション(幻覚)、つまり「嘘をつく」現象が今後も発生する可能性があることだろう。

グーグルの会話型AI「Gemini」と対話すると、画面の下部に「Geminiは不正確な情報(人物に関する情報など)を表示することがあるため、生成された回答を再確認するようにしてください」という免責事項が表示される。AI Overviewsの下部にはそのような免責事項は追加されておらず、多くの場合「生成AIはまだ実験段階にあります」とだけ表示される。

AI Overviewsで幻覚の可能性にまったく触れられていない理由について、グーグルの広報担当者は引き続き高品質な検索結果を提供したいと考えている点を強調したうえで、AI Overviewsの潜在的な弱点を発見すべく敵対的攻撃に対するテストを実施したと説明している。

「今回の生成AIの実装は、Google 検索の核となる品質と安全性のシステムに基づいており、低品質な情報や有害な情報が表示されないようにするためのガードレールが組み込まれています」と、広報担当者は説明している。「AI Overviewsは、Google 検索でその裏付けとなる情報を簡単に確認できるような情報を紹介するように設計されています」

そこまで理解していたとしても、ウェブページのリンクをクリックして、AI Overviewsの情報が本当に正しいかどうかを再確認したほうがいいかもしれない。とはいえ、簡単に回答を得ることを求めがちなユーザーの多くが、グーグルのAIが自動生成した回答の情報源に目を通すために余計な時間を費やすとは考えにくい。

グーグルの検索部門の責任者であるエリザベス・リードによると、AI Overviewsは2024年末までに米国以外の多くの国でも導入される予定であり、10億人以上のユーザーが検索結果でAI Overviewsを目にする可能性が高いという。

読者にリンクをクリックしてもらって時間をかけて記事を読んでもらうことを仕事にしている立場にしてみれば、もちろん今回の新機能には不安を感じる。そして、不安を感じているのは自分だけではないのだ。

コンテンツをウェブ上に掲載している関係者からの懸念以外にも、グーグルのAI Overviewsがユーザーに対してほかにどのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない。OpenAIの「ChatGPT」やその他のAIツールは、シリコンバレーのテック界で確かに広く利用されている。だが、AI Overviewsの導入によって、これまでチャットボットを一度も使ったことのない何十億もの人々が、AIによって自動生成されたテキストを初めて目にすることになるだろう。

AI Overviewsはユーザーの時間を節約するように設計されたものだが、検索結果の信頼性の低下につながるかもしれない。

(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)

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