紹介した商品を購入すると、売上の一部が WIRED JAPAN に還元されることがあります。
このレビュー記事にたどり着いたみなさんは、1,000ドル(約15万円)以上を出してまで「iPhone 15 Pro」や「iPhone 15 Pro Max」を買う必要はないと思った人たちだろう。「iPhone 15 Pro」にチタン製フレームが採用されたことや、新たにアクションボタンが追加されたことは気にならず、新進気鋭の映像作家として(コンテンツクリエイターと呼ぶべきか)ソーシャルメディア用の動画を撮ることもない。つまり、普通の人たちなのだ。
特別な愛着をもてるスマートフォンを欲しいわけではなく、ただ「iPhone」が欲しい。そして、できることなら夜になってもバッテリー残量があって、暗闇でもいい写真を撮れるようなiPhoneがいい──。
そういう人たちにとって、「iPhone 15」はぴったりの機種ではないかと思う。
iPhone 15(799ドル、日本では12万4,800円から)は、かなり優れたスマートフォンだ。新型のiPhoneが発売されるたびに、アップルはほどよい具合に新たな要素を追加してくるので、ついつい買い替えたくなってしまう。
iPhone 15は「iPhone 14」よりも高性能である。そして、少なくとも999ドル(日本では15万9,800円から)する「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」は、アップルが開発した最新のチップセットを搭載しているので、iPhone 15より高性能だ。
ところが、昨年発売された「iPhone 14 Pro」とiPhone 15を比べてみると、その差はわずかしかない。それどころか、特定の面においてはiPhone 14 Proのほうが高性能だ。長らくiPhoneを買い替えていない上に、充電ポートがUSB-Cになったことを気にしない人は、もしかするとiPhone 14 Proを買ったほうがいいかもしれない。
iPhone 15とiPhone 14(Proではないほう)の特筆すべき違いはいくつかあり、どれも非常にアップルらしい。例えば、iPhone 15には「素材に色を浸透させた背面ガラス」や「新しいPhotonic Engine」が搭載されている。そして、画面上部にウィジェットを表示する領域「Dynamic Island」も追加された。
アップルのマーケティング部門に「iPhone 15はどの層に向けたスマートフォンですか?」と尋ねれば、きっと「みなさんとても気に入ると思いますよ!」という回答が返ってくることだろう。しかし、レビューする立場から意見を言わせてもらうと、スマートフォンで最も重要なのはそれを気に入るかどうかではない。使いやすいかどうかだ。
USB-Cで充電が便利に
まず、多くの人が気になっていると思われる充電ポートについて語っていこう。iPhone 15シリーズの充電ポートは、すべてLightningではなくUSB-Cになっている。これはおおむね好感のもてる変更点だ。アップルがこの変更を実施するよう働きかけた欧州連合(EU)に感謝したい。
日ごろから多くのガジェットをUSB-Cケーブルで充電している場合、例えば最近のMacBookやiPadを使っている人にとって、iPhoneもUSB-Cで充電できるようになったことはとても便利だ。ここ5日間ほどiPhone 15のレビュー機を借りてテストしているが、バッテリー残量が少なくなるとMacBook Proの充電コードを抜いてそのままiPhone 15に差せる点は非常に素晴らしい。
しかしあるとき、iPhone 15のナビ機能を使いながら長い道のりをクルマで走っていると、バッテリー残量が4%になってしまった。そのときになって初めて、クルマの中に置いておいたUSB-AのLightningケーブルが使いものにならないことに気づいた(何とか家までたどり着くと、すぐ新たなケーブルを買うようメモを書いた)。
それと、市場で売られているUSB-Cケーブルやアダプターはそれぞれ性能が異なることを忘れてはならない。iPhone 15を購入すると両端がUSB-Cになっている短いケーブルが同梱されてくるが、電源アダプターは付属しない。また、iPhone 15のUSB規格はUSB 2なので、転送速度は最大480Mbpsだ。これに対してiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro MaxはUSB 3で、転送速度は最大10Gbpsとなっている。
バッテリーは長持ちに
iPhone 15を短時間で充電し、その転送速度を最大限まで生かそうと思うなら、少なくとも20WのUSB-C電源アダプターが必要になる。ちなみにアップルの純正品は19ドル(日本では2,780円)だ。20Wのアダプターを使えば、30分で50%まで充電できる。
しかし、個人的には67WのMacBook用充電アダプターをそのまま使うほうが便利だった。これを使ってiPhone 15を充電すると、20分で10%を50%まで充電できる。
普段から使っている「iPhone 13 Pro」と比べると、iPhone 15を使っているときはバッテリー切れになる心配をあまりせずに済んだ。参考までにアップルの指標を挙げると、iPhone 13 Proのバッテリー持続時間はiPhone 14と同程度とされている。
あるときは、朝10時のミーティングから次の日の朝8時まで、一度も充電することなく使い続けることができた。この日は長時間にわたってSpotifyで音楽を聴き、マップや通話、メッセージアプリやソーシャルメディアもたくさん使っていたにもかかわらずだ。
iPhone 15より少しサイズが大きい「iPhone 15 Plus」は、30%ほど電池の容量が多いとアップルは説明しているが、今回はこちらをテストしていないので実際のところはわからない。アップルが公表するデータを見る限りでは、iPhone 14 ProのほうがiPhone 15よりバッテリーの持続時間が長いようだ。しかし、アップルとしてはiPhone 14 Proの存在など忘れてiPhone 15を買ってほしいというのが本音だろう。
ちなみに、今回テストしたレビュー機はピンク色だった(あえて選んだわけではない)。背面のカメラモジュールにまで色が浸透していてきれいだが、もしこれが自分のものだったら、きっとケースをつけていただろうと思う。
また、iPhone 15はチタン製フレームではない。チタン製がよければ、iPhone 15 Proを購入するしかない。
カメラの性能はそこまで進化せず
iPhone 15のカメラは、ふたつのレンズで構成されている。これに対してiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは、3つのレンズがついた“Pro仕様”のカメラだ。
出っ張ったレンズもカメラのパフォーマンスには重要だが、もっと重要なのがチップセットの性能である。iPhone 15はアップル独自のチップ「A16 Bionic」を搭載している(これもiPhone 14 Proと同じだ)。これに対してiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは、最新のチップ「A17 Pro」を搭載した。
つまり、iPhone 15よりiPhone 15 Proのほうが、きれいな写真を撮れることは間違いない。搭載しているチップがより強力で、イメージセンサーのサイズが大きいからだ。実際のところ、iPhone 15 ProかiPhone 15 Pro Maxを買えば非常にいい写真を撮れる(詳しくはこちらのレビューを参照してほしい)。しかし、そのぶん写真と動画のファイルサイズは大きくなる。
今回のテストではiPhone 13 Pro、iPhone 14、iPhone 14 Pro、そして「Google Pixel 6 Pro」と比較することで、iPhone 15のカメラの性能を検証した。すると、iPhone 15で撮影した写真は、iPhone 13 Proで撮影したものと比べて格段によく写っていた。iPhone 15で撮影した写真のほうがディテールは細かく、また色彩も実際の色に近い。露出もほどよく調整され、暗い環境で撮影しても時間がかからずに撮れた。
しかし、撮影する場面によっては、 iPhone 14やiPhone 14 Proで撮影した写真と並べて、どれがiPhone 15の写真なのかわからないこともあった(特にiPhone 14 Proの写真と比べるとほとんど同じに見えた)。
暗い照明の火鍋レストランで和牛の載ったひと皿を撮影し、iPhone 15とiPhone 14の写真を比較してみた。すると、iPhone 15のほうがダイナミックレンジは広いことがよくわかる。また、iPhone 15の写真のほうが細かいディテールが表現されていた。
霧がかったビーチで夕日を撮影したときは(サンフランシスコの絶景のひとつだ)、iPhone 14の写真のほうがiPhone 15より少しだけぼやけて写っていた。しかし、iPhone 14 Proの写真と比較するとほとんど同じような写りで、iPhone 14 Proのほうが少しだけよく撮れているようにも感じた。
iPhone 15で撮った写真がiPhone 14と比べて段違いにいいとは言えない。それでもiPhone 15のカメラシステムは、各種設定をこれまでより細かく変更できるようになっている。いちばん特徴的な点は、2,400万画素と4,800万画素の写真を撮影できる点だろう。これは「解像度コントロール」というメニューから設定できる。
しかしこの機能は、ある程度の明るさのなかで1倍の写真を撮ることを前提にしたものだ。0.5倍や超広角で撮影する場合には、自動的に1,200万画素で撮影される。
iPhone 14は0.5倍と1倍でしか撮影できなかったが、iPhone 15には新たに2倍ズームが実装された。さらにiPhone 15はポートレート写真にふさわしい被写体を検知すると、自動でポートレートモードをオンにしてくれる。しかし、今回テストした限りでは、この機能が発動することはなかった。ふさわしい被写体が見つからなかったということだろうか。
また、iPhone 15のポートレートモードでは、被写界深度を調節したり、ズームアウトして背景の割合を増やしたりできる。これらはかなりいい機能だと認めざるを得ない。とはいえ、本当に写真にこだわりたいなら、やはりiPhone 15 Proを買うべきだろう。
iOS 17の新機能は使いやすい
今回発売された新しいiPhoneは、すべて「iOS 17」がインストールされた状態で出荷される。もちろん、旧モデルのiPhoneでもiOS 17を使うことはできる。iOS 17の主要な新機能はこちらの記事にまとめてあるが、個人的に気に入っているのはボイスメッセージを文字起こししてくれる機能と、スペルミスの検出機能が改善されている点だ。
「スタンバイ」モードを使えば、iPhoneをスマートディスプレイのように使える。横向きにすると画面が表示されたままロックされ、「スタンバイ」に対応した充電ドックに置いて画面を眺めることができるのだ。
「Dynamic Island」に触れないでいるのは、レビュワーとしての職務を怠ることになるだろう。これはソフトウェアの新機能であると同時に、ハードウェアの新機能でもある。というのも、アップルは「Dynamic Island」のために、前面のカメラモジュールを変更したからだ。「Dynamic Island」はこれまでiPhone 14 Pro専用の機能だったが、iPhone 15でも使えるようになった。
基本的に「Dynamic Island」はウィジェットを表示するための機能だ。リアルタイムで情報が更新されるほか、タップして操作もできる。いまSpotifyでどの曲を再生しているのか、タイマーの残り時間がどれだけあるか、Uberのドライバーがどこまで来ているのかなどを、画面の上部で確認できるのだ。iPhone 15をテストするまで「Dynamic Island」を使ったことはほとんどなかったが、実際に試してみると驚くほど使いやすく、愛用している。
いや、愛というのは言い過ぎかもしれない。スマートフォンを愛する必要などないのだ。iPhone 15は優れたスマートフォンである。これ以上、ほかに言うことはないだろう。
◎『WIRED』な点
ついにUSB-Cポートを搭載。ディスプレイが美しい。「Dynamic Island」に対応。緊急時にSOSを発信できる。
△「TIRED」な点
カメラが少ししか進化していない。USB-Cの充電ポートは使いやすい反面、新しいケーブルを買わなければならない場合もある。iPhone 14 Proのほうが全体的に優れたスマートフォンに思えるが、アップルのラインナップからは消されてしまった。
(WIRED US/Translation by Ryota Susaki/Edit by Mamiko Nakano)
※『WIRED』によるiPhoneの関連記事はこちら。
次の10年を見通す洞察力を手に入れる!
『WIRED』日本版のメンバーシップ会員 募集中!
次の10年を見通すためのインサイト(洞察)が詰まった選りすぐりのロングリード(長編記事)を、週替わりのテーマに合わせてお届けする会員サービス「WIRED SZ メンバーシップ」。無料で参加できるイベントも用意される刺激に満ちたサービスは、無料トライアルを実施中!詳細はこちら。