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治療継続のモチベーションは 「子どもたちのために健康になりたい」という思い

「近くの席にいた若いグループが、食事している私を見ながら『あんな風にはなりたくないね』と話していて、とても悔しくて、悲しかったです。それ以外にも、見知らぬ人からすれ違いざまに『あの人すごく太っているね』と言われたこともあり、外出が怖くなった時期もありました」——M・Mさん

整形外科手術をきっかけに体重が増加。 体型をからかわれて、落ち込むことも…

太り始めたのは中学3年生からです。足や腰が痛くなり病院を受診、良性の骨腫瘍(こつしゅよう)と診断され、手術を受けることになった際に「運動は一切しないように」と医師に指示されたことがきっかけでした。子どもの頃は「ガリガリだね」と言われるほどやせ型だったのですが、思春期に体を動かせなくなったことで一気に太り始め、45キロほどだった体重は60キロ近くにまで増えました。10代ですから見た目が気になりますし、女性らしいファッションもしたかったのですが、太ったことで市販の洋服のサイズが合わなくなり、母がスカートを手作りしてくれました。

術後の経過は順調でしたが、元々ぜんそくがあって激しい運動は控えていたこともあり、就職してからも体重に変化はありませんでした。「妊娠何ヵ月?」などと体型をからかう同僚もいて、一度や二度ならやり過ごせても何度も言われると気持ちも落ち込み、ストレスを感じていました。

23歳で結婚して、24歳のときに長女を出産しました。妊娠中に増えた体重は出産後も戻らず、妊娠前より10キロ増加。5年後に長男を出産したあとはさらに10キロ増えてしまいました。子どもたちを連れてショッピングモールのフードコートに出かけたとき、近くの席にいた若いグループが、食事している私を見ながら「あんな風にはなりたくないね」と話していて、とても悔しくて、悲しかったです。それ以外にも、見知らぬ人からすれ違いざまに「あの人すごく太っているね」と言われたこともあり、外出が怖くなった時期もありました。

食事・運動療法を続けるも成果が出ず、投げやりな気持ちに

肥満症の治療を始めたのは2011年からです。頭痛やめまいがひどくて近所のクリニックを受診したのですが原因がわからず、大学病院の総合内科を紹介され、精密検査を受けました。検査では特に異常はなかったのですが、担当の医師から肥満を指摘され、「太り過ぎると心臓への負担が大きくなり、命にかかわる危険もあるから」と、肥満症の治療を提案されました。栄養指導を受け、筋力トレーニングも始めたのですが、体重に変化なし。ぜんそくの治療でステロイド剤を使用していたため、体重が増えやすかったのかもしれません。元々食事量が多いわけではなく、普段も家事や小・中学生だった子どもたちの習い事の送り迎え、私の母の通院に付き添うなど毎日忙しくしていたにもかかわらず体重は増え続け、気づけば100キロを超えていました。

2019年に血液検査で血糖値が高くなったことをきっかけに、これまでの総合内科から糖尿病・代謝内科に移ることになり、主治医も肥満症治療が専門の医師に変わりました。主治医からは、「糖尿病のほうは薬物治療をするほどではないので、今まで通り食事・運動療法を続けて経過を見ていきましょう」と言われたのですが、「血糖値が安定しているのなら、肥満症の治療は一度お休みしたい」と申し出ました。

私は肥満症以外にも、めまいやぜんそく、婦人科系の病気があり、複数の医療機関を受診しています。既に子どもたちに手はかからなくなっていたものの、母の通院の付き添いは続いていて、さらに自分の通院と毎日の家事などに追われ疲れが慢性的に続いている状態。何よりも、これまで長期間治療を続けてきたにもかかわらずやせないことで、投げやりな気持ちにもなっていました。

体重減少の兆しが見え始め、気持ちも前向きに

そんな私の事情をくんでくださったのか、しばらくして主治医から減量・代謝改善手術を提案されました。手術には怖いイメージがありましたが、それでもやせるならやりたいと思い2023年に手術を受けました。手術前の体重は124キロで、手術するにあたって119キロまで減量し、術後は103キロまで減りました。その後、手術から1年ほど経って、肥満症治療薬の使用を勧められ、現在使用し始めて半年ほど経っています。1)

1)  薬の使用は必ず専門家の指導の下、服用ください。ご自身の判断では絶対に服用しないでください。

家族や病院のスタッフの方は顔や背中が小さくなった、歩き方が変わったなどと声をかけてくれて、自分でも以前より体が動くようになったと感じています。自宅から駐車場まで少し距離があり、以前は駐車場まで歩くだけで息切れしてしまい、一休みしてからでないと車を出せなかったのですが、最近はすぐに出発できるようになりました。気持ちの面でも前向きになってきて、おしゃれや旅行を楽しむなど、今までできなかったことにチャレンジしていきたいと思っています。体が重いと長時間歩けなくて、旅行先も限られていましたし、外出すると人目が気になって「心ここにあらず」ということもありました。今後は子どもたちと一緒に旅行を楽しめたらいいなと思っています。

何もやらずに後悔するのはもったいない

娘も息子も成人していますが、それぞれにやりたいことがあって目標に向かってがんばっています。これまで子どもたちに「がんばって」と言葉では励ましていても、自分は体がだるくてソファーに横になっていることもありました。今後、もっとやせていけばフットワークも軽くなって、子どもたちのサポートもしやすくなるのではないかと期待しています。子どもたちの夢を全力で支えてあげたい、そのためにも私自身が健康でいられるよう、治療を続けていきたいと思っています。

減量・代謝改善手術も肥満症治療薬も、提案されたときは不安だったのですが、元々好奇心が旺盛で「どんなものなのか試してみたい」という気持ちがありました。もしかしたら自分には合わなくてうまくいかないこともあるかもしれないけれど、何もやらずに後悔するのはもったいないと思ったのです。状況や立場は人それぞれなので一概には言えませんが、もし医師から治療を提案されて、始められそうな状況であれば、怖がらずに挑戦してほしいと思います。

*肥満症の治療の効果には個人差があります。全ての方が同様の結果を示すものではありません。また、治療の選択肢は患者さんの状態によって異なりますので、医師と相談して決定してください。

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