日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、2021年1月25日までに公表された各種経済指標の情報を織り込んだ予測によると、20年度の実質成長率はマイナス5.2%、21年度は4.6%の見通しになった。

20年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は前期比1.8%増と、2四半期連続のプラス成長になったもよう。輸出が好調だったほか、消費も11月前半までは比較的順調に推移したとみられる。生産の回復に伴い、設備投資は3四半期ぶりの増加となりそうだ。

ただ、21年1~3月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、実質成長率が再びマイナスに落ち込む公算が大きい。政府は21年1月上旬に東京都や大阪府など11都府県で2月7日まで緊急事態宣言を発令した。1~3月期の個人消費は落ち込みが避けられず、実質成長率は前期比マイナス0.8%になるとみている。

1~3月期の消費は大幅マイナスの公算

20年4~5月の緊急事態宣言時は全国で商業施設などの休業が求められ、急速に消費が冷え込んだ。今回は飲食店での感染防止に重点が置かれ、まずは営業時間の短縮が中心で、対象地域も限定されている。本予測では、交通や外食・宿泊サービスなどへの支出が減少する一方、巣ごもり消費で食料などには多少の増加を見込んだ。

最新のデータを織り込んだ予測
NEEDS日本経済モデルによる
2020年10〜12月期、2020年度以降は予測

対象地域の県内総生産(17年度)が全国の6割を占めることを踏まえ、緊急事態宣言による消費の落ち込みを7000億円程度(年率で2.9兆円程度)と試算した。21年1~3月期の個人消費はこれまでも前期比マイナスを想定していたが、本予測では前期比3.3%減に下方修正した。

感染拡大は、回復の兆しのあった雇用情勢にも水を差す。厚生労働省公表の有効求人倍率や総務省公表の完全失業率は11月に改善がみられたが、緊急事態宣言の発令や「Go To トラベル」の一時停止などで、サービス業を中心に雇用情勢は再び悪化に転じる見通しだ。20年度の個人消費は前年度比6.8%減に落ち込む。21年度の回復は緩やかなものとなり、同3.1%増にとどまりそうだ。

世界経済の回復で輸出は増加が続く

日銀算出の実質輸出(季節調整値)は、20年10~12月期は前期比12.7%増の大幅な増加となった。GDPベースの実質輸出は前期比10.3%増となる見込み。

緊急事態宣言再発令で消費は大幅減
NEEDS日本経済モデル予測

輸出が好調を維持しているのは、海外経済の回復が続いているためだ。中国では国家統計局が発表した10~12月期の実質GDPが、前年同期比6.5%増と3四半期連続のプラス成長となった。米国も前期比で2四半期連続のプラス成長が続いたとみている。感染が再拡大する中でも、生産活動は回復が続いている。米連邦準備理事会(FRB)が発表した米国の20年12月の鉱工業生産は前月比1.6%上昇した。サービス業は打撃を受けているが、製造業では回復が続く。

日本のGDPベースの輸出も1~3月以降、前期比でプラスが続きそうだ。20年度の実質輸出は前年度比11.0%減となるものの、21年度は同15.0%増と見込んでいる。

設備投資は底堅く推移する

製造業を中心に企業の経常利益は回復が続き、設備投資は底堅く推移する見通し。内閣府が発表した20年11月の機械受注統計では、「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比1.5%増だった。10月の同17.1%増に続き、2カ月連続の増加となった。また、経済産業省が発表した国内向け資本財出荷(除く輸送機械、季節調整値)は、10~11月平均が7~9月平均に比べ14.2%上昇と急速に回復している。

企業の経常利益は21年度に大きく改善し、今後も設備投資の回復を後押しするとみている。実質設備投資は、20年度に前年度比7.1%減となった後、21年度は同5.1%の増加を予測している。

なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが20年12月に公表した改訂短期予測をベースにしている。

(日本経済研究センター 山崎理絵子、デジタル事業 情報サービスユニット 渡部肇)