1.5リットルのガソリン車
WR-Vは、インドで生産する逆輸入車。パワーユニットは排気量1.5リットルのガソリンエンジン(118馬力)のみで、ハイブリッドの設定はない。駆動方式も前輪駆動(FF)のみに割り切っている。
装備によって三つのグレードがあり、最も簡素な「X」は209万8800円と、軽乗用車の最上級グレードに少し予算を足せば購入できるような価格。革巻きステアリングやLEDフォグライト、17インチアルミホイールなどを装備する中間グレードの「Z」が234万9600円、外装が豪華になる「Z+」が248万9300円となっている。
発売から1カ月の受注は約1万3千台となり、月間販売計画(3千台)の4倍以上と好調なスタートを切った。受注の比率は、中間グレードの「Z」が55%を占め、「Z+」が30%、「X」が15%となっている。
堂々とした外観
WR-Vの外寸は全長4325mm、全幅1790mm、全高1650mm。同じホンダのSUV「ヴェゼル」(4330×1790×1580mm)と比べると全長は5mm短いだけでほぼ同じ。全高はWR-Vの方が70mm高い。
ヴェゼルがクーペスタイルの都市型SUVであるのに対して、WR-Vは分厚いフロントグリルに代表される力強いデザインが特徴。「これが200万円台前半の車?」と疑うほど堂々としている。
ヴェゼルは4月のマイナーチェンジで、ガソリンエンジン車のFFを廃止し、四輪駆動のみの設定にした。WR-Vとすみ分けをしたのだろう。ヴェゼルの主力であるハイブリッド車は288万~377万円という価格帯になり、WR-Vの上級車に位置付けられる。
欠点の少ない優等生
試乗車は装備が充実したZ+。価格が安いといっても「安物」ではなく、実際に乗ってみると欠点の少ない優等生だった。
118馬力の1.5リットル4気筒エンジンは特別に力があるわけではないが、大きな車体を過不足なく走らせてくれる。アクセルを深く踏み込むと大きめのエンジン音が響くが、決して不快ではない。エンジンルームを見ると、ボンネットの裏やキャビンとの仕切りには吸音材がきちんと設置されていた。車内の静粛性も高く、高速走行でもエンジン音の侵入は少なかった。
足回りはスムーズに動き、荒れた路面でも大小の凹凸を上手に吸収してくれる。カーブでは、車が外側に引っ張られるアンダーステアを少し感じるが、操縦性は素直だ。
室内はとても広く、荷室も大きい。身長172cmのリポーターが運転席のポジションを合わせてから後部座席に座ると、膝の前には握り拳縦二つ半の空間ができた。後部座席にはエアコンの吹き出し口があり、ドリンクホルダー付きのアームレストも備えている。荷室容量は458リットルあり、1.5リットルクラスのSUVで最大クラスだ。
内装は、ダッシュボードやフロントドアの要所要所に表面が柔らかいソフトパッドを採用。シフトレバーの握る部分には本革が使われており、ブーツも装着されている。後部座席はさすがにプラスチックを多用しているが、黒で統一されたデザインは悪くない。
安全装備として、ホンダセンシングを全グレードに標準装備。衝突軽減ブレーキはもちろん、路外逸脱抑制機能や歩行者事故低減ステアリング、高速道路で適切な車間を保って走行するアダプティブクルーズコントロール(Acc)などを備える。パーキングブレーキが電子式でないため、Accは全速度追従にならず、時速30km以下になると解除される。
1.5リットルクラスのSUVでガソリン車を設定しているのはトヨタの人気車種ヤリスクロスやマツダのCX-3など。いずれもWR-Vより一回り小さいので直接の比較は難しい。
ヤリスクロスの3気筒エンジンは120馬力を発生し燃費に優れるが、スムーズさではWR-Vの4気筒が勝る。室内の広さはWR-Vの圧勝。一方でヤリスクロスのAccは全速度追従なので、高速道路で渋滞に巻き込まれた時などは疲労が少なくて済む。価格は中間グレードの「G」で215万円。CX-3の1・5Sツーリングは227万9200円。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴49年。紀伊民報制作部長