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水ポテンシャル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
水ポテンシャル
量記号 Ψw
次元 T-2 L-1 M
SI単位 Pa
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水ポテンシャル(みずぽてんしゃる)は水の標準状態に対する単位体積あたりのポテンシャルエネルギーであり、浸透圧、重力、圧力、毛細管現象によるマトリック効果によって、水が移動するための駆動力を示す。水ポテンシャルの概念は、植物動物土壌の中の水の動きを理解して計算するために重要な概念である。水ポテンシャルは、通常は水の単位体積あたりのポテンシャルエネルギーとして定量化され、国際単位系における単位はPa(パスカル)である。

土壌中の水ポテンシャルが小さいと、土壌に水が強い力で保持されているため、植物にとってはその土壌から水を吸水しにくくなる。そのため、水ポテンシャルは水分ストレスを示す指針として用いられる。

水ポテンシャルの成分

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水ポテンシャルは多くの要因によって決まるため、総ポテンシャルをいくつかの構成要素の和として

と表される。ここで

  • :基準補正
  • :浸透ポテンシャル
  • :圧力ポテンシャル
  • :重力ポテンシャル
  • :湿度によるポテンシャル
  • :マトリックポテンシャル

である。植物や土壌のように分野に応じて若干異なった構成要素の分け方がされる。

圧力ポテンシャル

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圧力ポテンシャルは力学的な圧力によるポテンシャルであり、植物細胞では総ポテンシャルの重要な成分となる。細胞内に水が入ることで、圧力ポテンシャルが上昇する。

通常、植物細胞の水ポテンシャルは正である。原形質分離では、圧力ポテンシャルはほぼゼロとなる。負の水ポテンシャルは木部のように水が外部から吸引されている状態で生じる。

浸透ポテンシャル(溶質ポテンシャル)

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純水の水ポテンシャルはゼロであると定義され、この場合は浸透ポテンシャルは必ず負またはゼロである。溶質のモル濃度と浸透ポテンシャルの間の関係は、次のファントホッフの式で与えられる。

ここで、Mは溶質のモル濃度、iはファントホッフ係数、Rは気体定数、Tは絶対温度である。

浸透ポテンシャルは多くの生物にとって重要な意味を持っている。生物の細胞が高濃度の溶液にさらされると、細胞は外部の負のポテンシャルによって水を奪われがちである。海水中の生物や、塩害の環境下で育つ植物では、このような現象が起きる。

マトリックポテンシャル

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水が土壌中の粘土や砂の粒子のような固体粒子と接しているときには、水と固体の間の分子間力が重要となる。水分子と固体粒子の間、そして水分子の間の分子間力によって、表面張力が生じるため、土壌間隙内にメニスカスが形成される。この水を固体粒子から引き離すためには、メニスカスを壊す力が必要となる。マトリックポテンシャルの大きさは、メニスカスの大きさと土壌粒子表面の化学的な性質に依存する。

多くの場合で、土壌中のマトリックポテンシャルは上記の水ポテンシャルの他の成分よりも絶対値が大きい。マトリックポテンシャルは、固体粒子近くの水のエネルギーを大きく減少させている。土壌粒子表面に吸着している水は純水よりもエネルギー状態が低いため、マトリックポテンシャルは常に負である。マトリックポテンシャルは地下水面よりも上の不飽和土壌にのみ存在する。

関連項目

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