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ヤング・ヴィク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤング・ヴィク
Young Vic
地図
概要
住所 サウス・バンクザ・カット英語版[注 1]
ランベス区ロンドン
イングランドの旗 イングランド
座標 北緯51度30分12秒 西経0度06分27秒 / 北緯51.50323度 西経0.10748度 / 51.50323; -0.10748
所有者 ザ・ヤング・ヴィク・カンパニー(: The Young Vic Company
種類 非営利団体 / Resident company[訳語疑問点]
座席数 メインハウス:420人
スタジオ「マリア」[注 2]:150人
スタジオ「クレア」[注 3]:70人
プロダクション 季節毎のレパートリー・シアター
建設
開業 1970年
再建 2006年 / ハワース・トンプキンス
設計者 ハワース・トンプキンス英語版
ウェブサイト
公式ウェブサイト
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ヤング・ヴィク: Young Vic)は、ランベス区サウス・バンク近くの、ザ・カット英語版に位置する劇場である。2000年からは、デイヴィッド・ラン英語版が劇場の芸術監督を務めている。劇場の理念は "produce great plays for great audiences now and in the future"(訳:今と未来の素晴らしい観客に向けて、素晴らしい演劇を贈ること)である[1]

歴史

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第二次世界大戦直後の1946年ジョージ・ディヴァイン英語版によって、ヤング・ヴィク・カンパニー(: Young Vic Company)が創設された[2]。これはオールド・ヴィク・シアター・スクールから分岐したもので、9歳から15歳までを対象とした古典演劇上演を目的にした劇団だった。

このカンパニーは、1948年にディヴァインや他の劇団員が全員オールド・ヴィクを辞めたことで解散してしまう。その後、1969年フランク・ダンロップ英語版が、ヤング・ヴィク・シアターの初代監督に就任した。彼はモリエールの『スカパンの悪だくみ』を無償で翻案し、ナショナル・シアターとなった新しい劇場のために作品を上演した。この作品はタイトルロールジム・デイル英語版を据えて1970年9月11日に封切られ、舞台芸術をカール・トムズ英語版、衣装をマリア・ビヨルンソン英語版が担当した[3]

当初劇場はロイヤル・ナショナル・シアターの一角を成していたが、1974年に、「ヤング・ヴィク・シアター」として独立した[4]

当時ナショナル・シアターの芸術監督を務めていたローレンス・オリヴィエは次のように述べている。「若い観衆のために演劇を発展させること、作家や役者、演出家のために実験的なワークショップを行うことを考えるべきだ」[注 4] この言葉には、形式張らない環境で、値段を抑えて一流の演劇を観ることのできる劇場を作ろうという意志が込められている。理念は若者層に広く訴えかけるものだったが、この時はまだ児童たちへ訴えかけるものにはなっていなかった。

ヤング・ヴィク・シアター

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フランク・ダンロップは1970年に劇場の建設を終えた。劇場は、ザ・カット英語版の、精肉店跡地・被爆区域を使ってコンクリートで建てられた。元々は5年で取り壊される計画だったが、後から常設の劇場にすることが決められた。

張り出し舞台の付いたオーディトリウムには420人の観客を収容できる。席の形状は、作品の演出によって大きく変更することができる。

ヤング・ヴィクには、メインハウスに加えて、より小さい2つの劇場空間が併設されている。1つ目の「マリア」(: Maria)はデザイナーのマリア・ビヨルンソンに因んで名付けられ、150人分のキャパシティがある。シェフィールドにあるクルーシブル劇場の芸術監督、クレア・ヴェナブルズ[注 5]に因んで名付けられた[5]「クレア」(: Clare)には70人を収容できる。メインハウス同様に、どちらも自由に座席アレンジができ、演出に合わせて組み替えることができる。このため、俳優が観客のすぐ近くで演技をすることも可能になる[6]

ヤング・ヴィクは元々古典演劇のために建てられたが、今では革新的な作品も度々上演されている。ヤング・ヴィクには人気俳優が何人も出演しており、イアン・チャールソンもその1人である。彼は1972年から1974年にかけてヤング・ヴィクに出演し、俳優としての第一歩を踏み出した。またジョン・オズボーンの『怒りをこめてふり返れ英語版』ではジミー・ポーターを演じ、1973年にはトム・ストッパード作『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』の初めての再演でハムレットを演じた。他にもヴァネッサ・レッドグレイヴヘレン・ミレンジュディ・デンチティモシー・ダルトンロバート・リンゼイ英語版ウィラード・ホワイト英語版ジョン・マルコヴィッチマイケル・シーンアーサー・ロウ英語版などが出演している。

ロックバンドのザ・フーは、1971年始めに、この劇場で毎週無料コンサートを行っていた。これは後のアルバム『フーズ・ネクスト』の曲目を試演するためのものだった。このコンサートの1公演がアルバムのデラックス版に収録され発売されている。

劇場南東の角には、1941年ロンドン大空襲の際、劇場の場所に元あった建物に避難し、爆撃で亡くなった54人の犠牲者を偲ぶ記念碑が存在する[7]

1982年には、ヤング・ヴィクをホスト会場に「詩のオリンピック」(: Poetry Olympics)が開催され、コメディアンのパット・コンデル英語版が登場した[8]

受賞歴

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受賞 作品名 備考
2004 ローレンス・オリヴィエ賞
for Outstanding Achievement in an Affiliate Theatre[9]
2008 ローレンス・オリヴィエ賞
最優秀ミュージカル再演賞 (Laurence Olivier Award for Best Musical Revival
モーツァルト魔笛』(翻案)[10]
2013 The Critics' Circle Peter Hepple Award for Best Musical (en "The Scottsboro Boys" (Scottsboro Boys[11]

2004年から2006年の改修

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2003年、ヤング・ヴィクは、劇場の改修費用1250万ポンドを捻出するためキャンペーンを行い、2004年には改修のための閉館期間に入った。

デザインは建築家コンビ、ハワース・トンプキンス英語版が担当した。彼らはロイヤル・コート・シアター英語版リージェンツ・パーク・オープン・エア・シアター英語版アルマイダ・シアター英語版の改修も行っている。また、ジェーン・ワーニック・アソシエーツ(: Jane Wernick Associates)が構造エンジニアを、マックス・フォーダム・LLP(: Max Fordham LLP)が建築コンサルタントを担当し、改修工事は2006年10月に終了した。

メイン劇場はそのまま残されているが、改修を経て技術的に進化している。元々あった肉屋の店構えは、建物のメイン・エントランスや切符売り場に保存されている。

元の1970年代を偲ばせる建築構造は建て替えられ、新しいロビーや楽屋、2つのスタジオ・シアター、ワークショップ空間が作られた。アーツ・カウンシル・イングランド英語版からは、500万ポンドの賞金が与えられた[1]

ヤング・ヴィクは2006年10月11日に再開館し、こけら落としには、ジョナサン・ダヴ英語版作曲、デイヴィッド・ラン英語版脚本のコミュニティ・オペラ『トビアスと天使英語版』が選ばれた[12]

2007年5月16日には、ヤング・ヴィクの改修に対して、『王立英国建築家協会・ロンドン年間建築賞』(: RIBA London Building of the Year Award)が授与された[13]。この賞に続き、同年7月27日には RIBAスターリング賞も授与されている[14][15]

センス・ワールドワイド英語版による2010年の活動は、30年来のポリシー "sit anywhere" を変え、新しいポリシー "It's a big world in here" を打ち出すことに繋がった[16]

上演歴

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ヤング・ヴィク・ショートフィルム

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ヤング・ヴィクは、ガーディアン紙とコラボレーションして5つのショートフィルムを制作した。ヤング・ヴィクで公演された作品に対して、監督・脚本家・俳優たちが、短編で「大胆な」(: "bold"スピンオフ映画を撮影した。作品は現在ガーディアンのYouTubeアカウント上で視聴できる。

"Epithet"(2012年)

"Nora"(2012年)

"Bed Trick"(2013年)

"Connection"(2013年)

"Columbite Tantalite"(2013年)

関連劇団

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ヤング・ヴィクは、"Fevered Sleep"[17]ベラルーシ・フリー・シアター英語版[18]、"1927"[19]、"Regional Theatre Young Director Scheme"[20]の4劇団のホームである。

デジタル・シアター

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ヤング・ヴィクはデジタル・シアター英語版の実施劇場の1つである。このプロジェクトは、劇場で上演された作品を、ビデオ形式でダウンロードできるようにするものである。最初の配信作品には、『カフカの猿』"Kafka's Monkey" と『コンテナ』"The Container" が選ばれた[21]

脚注

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注釈

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  1. ^ : South Bank, the Cut, Lambeth, London
  2. ^ : Maria
  3. ^ : Clare
  4. ^ 原文:"Here we think to develop plays for young audiences, an experimental workshop for authors, actors and producers."
  5. ^ : Clare Venables
  6. ^ : Angus Jackson
  7. ^ : Hattie Morahan
  8. ^ : Nick Payne
  9. ^ : Laura Wade
  10. ^ : Vladimir Shcherban

出典

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  1. ^ a b The Young Vic, London”. LONDON THEATRE DIRECT.. 2016年5月22日閲覧。
  2. ^ Wardle, Irving (1978). The Theatres of George Devine. Cape. ISBN 0-224-01415-3. NCID BA13376534. OCLC 4166546 
  3. ^ Frank Dunlop's CV for Who's Who in the Theatre 17th edition, Gale (1981). ISBN 0-8103-0235-7
  4. ^ Hartnoll, Phyllis (1983). The Oxford Companion to the Theatre. オックスフォード大学出版局. ISBN 0-19-211546-4. OCLC 10752936 
  5. ^ Robin Thornber (2003年10月20日). “Obituary: Clare Venables”. ガーディアン. 2016年5月25日閲覧。
  6. ^ What to Expect”. Young Vic. 1 December 2011閲覧。
  7. ^ Young Vic war memorial plaque rededicated”. Bankside Press (21 June 2007). 1 December 2011閲覧。
  8. ^ “Poets' marathon at Young Vic 'Olympics'”. The Times. (1982年11月30日). http://www.patcondell.net/page2/page10/page10.html 2009年3月24日閲覧。 
  9. ^ London Theatre Guide (2008) (PDF). The Laurence Olivier Awards: Full List of Winners, 1976-2008. 1976-2008. The Society of London Theatre. pp. 20. http://www.officiallondontheatre.co.uk/servlet/file/LOA_fullist.pdf?ITEM_ENT_ID=101095&ITEM_VERSION=1&COLLSPEC_ENT_ID=8 30 August 2008閲覧。. 
  10. ^ Olivier Winners 2008”. Laurence Oliviers 2015. 2016年5月22日閲覧。
  11. ^ “Critics' Circle 2013 Theatre awards winners Announced!”. LondonTheatre.co.uk. (2014年1月28日). http://www.londontheatre.co.uk/londontheatre/news/ltg14/criticscircle159046.htm 2016年5月21日閲覧。 
  12. ^ Tobias and the Angel”. Reviews. The Stage英語版. 2007年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月28日閲覧。
  13. ^ RIBA London Building of the Year Award”. 2007年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
  14. ^ RIBA Stirling Prize shortlist 2007”. 2008年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
  15. ^ RIBA profile of the Young Vic. Retrieved 27 July 2007.[リンク切れ]
  16. ^ Market Research Agency of the Year. Marketing Magazine. (2010-12-08). p. 30 
  17. ^ Fevered Sleep”. 2016年5月28日閲覧。
  18. ^ Belarus Free Theatre”. 2016年5月28日閲覧。
  19. ^ 1927”. 2016年5月28日閲覧。
  20. ^ Regional Theatre Young Director Scheme”. 2016年5月28日閲覧。
  21. ^ Leading theatres launch downloadable shows”. Official London Theatre Guide. 2010年2月15日閲覧。

外部リンク

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座標: 北緯51度30分12秒 西経0度06分27秒 / 北緯51.50323度 西経0.10748度 / 51.50323; -0.10748