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アルトホルン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルトホルン
各言語での名称
tenor horn(英), alto horn(米)
Althorn
bugle alto, saxhorn alto
genis, flicorno contralto
中音号
アルトホルン
分類

金管楽器気鳴楽器

音域
(記譜上)

アルトホルン(alto horn)は金管楽器の一種である。サクソルン属である。一般にE管で、バリトンを小さくしたような形状をしている。

サクソルン属の中音域を担当し、英国式ブラスバンドのようなブラスバンドにおいて使われる。Bコルネットより5度低く、バリトンよりも4度高い。

実際の名称や形状は国、メーカー、時代などによって違いがあるが、本記事では変ホのサクソルン属の金管楽器を総合的に記述する。

名称

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イギリスではこの楽器はテナーホルン(tenor horn)と呼ばれる。アメリカ合衆国日本ではアルトホルンと呼ばれる[1]

サクソルン属の楽器の名称には国と時代により非常に大きな混乱がある。古い時代のフランスイギリスアメリカ合衆国ではこの楽器をテナーと呼んでいた[2]。しかし現在ではイギリス以外でテナーホルンと呼ぶと別の楽器を指すことが多い。

ドイツではこの音域の楽器をアルトホルン(ドイツ語: Althorn)と呼び、テナーホルン(テノールホルン)はそれより低いB管の楽器、すなわちイギリスでいうバリトンと同じ高さの楽器をいう[2]

メキシコの大衆音楽バンド (Banda musicでも使われ、アルト、サクソル(saxor)、チャルチェタ(charcheta)、アルモニア(armonía)などの名称で呼ばれている[3]:76

楽器の構造

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アルトホルンは移調楽器であり、実音は記譜よりも長6度低くなる[2]

サクソルン属の中音域を担当し、管長は約2メートルである。第2倍音はE3であり、3本ピストンの場合その増4度下のA2まで出すことができる(いずれも実音)。

バンドで実際によく使われる音域は実音でC3からC5まで(記譜上でA3からA5まで)である。ペダルトーンは滅多に使われない[2]。使われる音域はフレンチホルンに近いが、管長はずっと短く、したがって低次の倍音が使用される。

もっとも普通の形状はユーフォニアムを小型にしたような形をしている[2]。朝顔は上を向き、通常3本のピストンを有する。

ドイツスイスおよび東ヨーロッパのアルトホルンの形状としてはさまざまのものがあり、コルネットのように朝顔が前を向いたもの、朝顔が上を向いたもの、楕円形に丸められたもの、より珍しいがフレンチホルン風の丸い形状のものの4種類に大別される[4]

アルトホルンとだいたい同じ管長の金管楽器にメロフォンバストランペットアルトトロンボーンがある。

楽器の使用

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吹奏楽での使用

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現在のイギリスの軍楽隊では使われない。しかし英国式ブラスバンドでは3本のテナーホルン(アルトホルン)が使われ、それぞれ「ソロ・ホルン」「第1ホルン」「第2ホルン」と呼ばれて重要な役割を果たす[2]

ヨーロッパ大陸ではフランス式編成の軍楽隊で使われ、この編成はイタリアでも使われた。しかしアメリカのジョン・フィリップ・スーザは音が悪いとしてアルトホルンやバリトンのようなサクソルン属の楽器を削除または削減し、かわりにフレンチホルンを増やした[5]

戦前の日本の吹奏楽では標準的に使われていたが、昭和30年代になると編成に変化が生じ、アルトホルンにかわってメロフォンが使われるようになり、さらにフレンチホルンに置き換えられた[6]

管弦楽での使用

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管弦楽曲でアルトホルンが使われることはほとんどない。ベルリオーズのオペラ『トロイアの人々』の初稿で使われたが(改訂版ではフレンチホルンに置きかえられた)、楽譜には「saxhorn tenor en Mi flat」と書かれている。ダンディの『鐘の歌』作品18では「saxhorn alto」と呼ばれている[7]

ヒンデミットのソナタ

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パウル・ヒンデミットは1940年代にアメリカ合衆国に滞在したが、1943年に『アルトホルン・ソナタ』を作曲している。ただし、1956年にショット社から出版された楽譜には、Eアルトホルンのほかにフレンチホルン、アルトサクソフォーンでも代替できるように書かれており、現実の演奏ではアルトホルンを使って演奏されることは少ない[7]

製造メーカー

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ヤマハ ジュピター (楽器メーカー) マルカート

その他

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現在のイタリアではアルトホルンはあまり使われないが、ウンベルト・エーコフーコーの振り子』の中でアルトホルンについて言及されている[8]

脚注

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  1. ^ サクソルン属の楽器』YAMAHAhttps://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/tuba/structure/structure004.html 
  2. ^ a b c d e f Baines, Anthony B.; Herbert, Trevor (2001). “Tenor horn”. The New Grove Dictionary of Music and Musicians. 25 (2nd ed.). Macmillan Publishers. p. 291. ISBN 1561592390 
  3. ^ Simonett, Helena. “Strike up the Tambora: A Social History of Sinaloan Band Music”. Latin American Music Review 20 (1): 59-104. JSTOR 780165. 
  4. ^ Baines, Anthony B.; Herbert, Trevor (2001). “Althorn”. The New Grove Dictionary of Music and Musicians. 1 (2nd ed.). Macmillan Publishers. p. 427. ISBN 1561592390 
  5. ^ 『新版吹奏楽講座7 吹奏楽の編成と歴史』音楽之友社、1983年、33頁。ISBN 4276026075 
  6. ^ 秋山紀夫『吹奏楽の歴史』ミュージックエイト、2013年、82頁。ISBN 9784871643139 
  7. ^ a b Jennifer Ann Hemken (2015). The Mystery of the Althorn (Alto Horn) Sonata (1943) by Paul Hindemith (PDF) (D.M.A. thesis). University of North Texas.
  8. ^ Giuliano Zampieri, Dentrola Musica: Il colore del suono, http://www.utesandonatosangiuliano.org/STAMPATI%20DOCENTI%2018-19/STRUM%20MUSIC/Strumenti%20-%20Testo%20Lezione%201%20-%20Introduzione%20-%20CORNI%20e%20FLICORNI.pdf 

関連項目

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