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F-22 (航空機)

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F-22 ラプター

F-22A

F-22A

F-22は、ロッキード・マーティンボーイングが共同開発した、レーダー赤外線探知装置などからの隠密性が極めて高いステルス戦闘機[3]愛称猛禽類の意味のラプター(Raptor)。空戦による戦闘空域の制圧を任務とする制空戦闘機として、開発元のロッキード・マーティンはAir Dominance(航空支配)というキャッチフレーズを用いている[4]

概要

F-22A

アメリカ空軍F-15C/D制空戦闘機の後継機として、ロッキード・マーティン先進戦術戦闘機計画(ATF)に基づいて開発した、第5世代ジェット戦闘機に分類される世界初のステルス戦闘機。ミサイル爆弾胴体内搭載などによるステルス特性や、ミリタリー推力での超音速巡航(スーパークルーズ)能力を特徴とする。そのステルス性の高さなどから、世界最高クラスの戦闘能力を持つとされる[5]

同空軍が運用するF-15E 戦闘爆撃機と同じく多用途戦術戦闘機に分類されるが、ステルス性能の追求を優先したため対地兵装の搭載能力は限定的であり、ステルス特性を生かして効果的に対空装備を無力化したり、より空戦能力側に振った能力を生かすことにより、先代のF-15の航空優勢制空権)を超え戦域全体の支配を目指す航空支配戦闘機(Air Dominance Fighter)と言える[6]

冷戦下に開発が行われ、アメリカ空軍の試算では1996年からの調達で最終的には750機の配備を予定していた。しかし、開発の遅れや冷戦の終結に伴って、機種転換訓練向けに2003年から配備が開始され、実戦部隊が運用を開始したのは2005年12月だった。最終的な装備機数は187機(EMD試験機1機を含めた量産準備試験機以降の装備機数。試作機のYF-22も含めた総製造数は197機)[1] で、開発費の高騰や生産数の大幅縮小により、一機当たりのコストは約1億5,000万ドルに達している[7]

当初は転換訓練などのための複座型としてF-22Bを生産する予定だったが、予算の縮小や地上シミュレータで完全に代替可能とされたため生産されていない。また、F-22をベースとした派生型の開発も計画されていたが、コスト高などから実現していない。冷戦終結後の国防予算削減政策に加えアメリカ合衆国の財政悪化やコストの高騰、さらに米国のサブプライムローンに起因する2007年の世界金融危機も重なったことから、2009年度の調達分により当初予定を大きく繰り上げて生産終了が決定し、2011年末に最終号機である195号機がロールアウト、2012年5月2日に引き渡しが行われた。

開発経緯

YF-22の1号機及び2号機
YF-23と共に
量産型1号機

アメリカ空軍は、1985年10月にアメリカ国内航空機メーカー7社に対して要求したATF(先進戦術戦闘機)のコンセプトデザインから1986年7月にロッキードノースロップの2案を選定の上で実機開発を5社2チームへ発注し、ロッキードのチームはYF-22、ノースロップのチームはYF-23をそれぞれ2機ずつ製造した。

搭載するエンジンについても競争試作としてプラット・アンド・ホイットニーYF119-PW-100とGE(ゼネラル・エレクトリック)のYF120-GE-100を開発した。

評価試験は2種の試作機と2種のエンジンの組み合わせからなる4機で進め、1991年に評価の詳細を非公開としたままでYF-22とYF119-PW-100の組み合わせの正式採用を決定した。YF-22およびYF-23の4機の試作機、及びYF119とYF120両エンジンの開発には、約38億ドルの費用が費やされた[8]

F-22選定後、1991年8月にロッキードは先行量産型開発の契約を受け単座量産型と複座量産型の設計作業を開始する。製作された2機の試作機も量産機開発のために引き続き投入され、試作1号機は技術立証機となり、2号機はエドワーズ空軍基地にて同年10月23日より飛行試験を開始したものの1992年4月に飛行試験中の墜落事故主翼尾翼を一部破損した上に火災も起こした(パイロットは無傷)。

1992年6月に終了した単座・複座量産型の設計作業ではエアブレーキの廃止や空中給油口の追加、各部の寸法変更を行った。基本レイアウトの変更はないものの主翼後退角を48°から42°へ減らし、合わせて水平尾翼の後退角も42°とし、垂直安定板は外側に28°傾け、各翼の面積や形状も変更している[9]

1993年4月の先行量産型1号機の製造開始時点で、冷戦の終結に始まる国防費の削減やアメリカ軍全体の再編等の影響から調達数は750機から648機へ削減されている。

1994年3月には実物大模型(モックアップ)による試験でレーダー反射断面積(RCS:Radar Cross Section)の目標超過(未達成)が判明し、原因となったパネルの形状を変更した。

1995年2月に量産機の組み立て作業が承認され、先行機を使用したエンジンや電子機器類などのチェック作業と並行しての組み立てが進み、1997年4月9日に量産型1号機がロールアウトした。この間にも、モックアップの製作まで行われた複座型のF-22Bの導入中止[10] や451機への調達機数の削減など、導入計画の縮小が進んだ。

設計と性能

F-22は『ステルス性が高いこと』『アフターバーナーを使用しないでスーパークルーズ(超音速巡航)ができること[注 1]』『STOL(短距離離着陸)が可能なこと』という3つのSの要求通りの性能を持っている。

ステルス性を高めることで、相手のレーダーの探知距離を相対的に短くして、相手がこちらを発見する前にこちらのレーダーで相手を発見して、視程外射程(BVR)の空対空ミサイルで攻撃する戦法が可能になり、ドッグファイトに持ち込まれる可能性は低いとされている。開発元のロッキードマーチン社では「先制発見・先制攻撃・先制撃破(First Look・First Shoot・First Kill)」と呼んでいる。さらに、約1,000mという短距離での離陸を可能としている。(離陸距離に関しては、滑走開始から数百mで離陸している映像が公開されている。[11]

基本構造

アンドルーズ空軍基地で、その上昇力を披露するF-22(2008年)

一般的なセミモノコック構造を採用し[9]、素材別の機体重量比はチタニウム6-4 36%、熱硬化性複合素材24%、アルミニウム16%、鋼鉄6%、チタニウム6-22-22 3%、熱可塑性材料1%、その他15%となっている[12][注 2][13]

F-22ではF-117B-2などの攻撃機爆撃機戦略爆撃機)と比較して、より高度なオール・アスペクト(全方位)のステルス設計[注 3] となっている。レーダー探知を可能な限り避けるため、レーダー波を吸収するレーダー波吸収素材(RAM)を使用するだけではなく、吸収しきれなかったレーダー波を内部反射と減衰を繰り返して吸収するレーダー波吸収構造(RAS)も採用した。機体表面にはレーダー波吸収素材を含んだ塗料が用いられ、レーダー波は熱へと変換され、これもレーダー反射断面積を低減させる[14]

また、キャノピー全体、機体外板の継ぎ目、胴体側面、胴体下面の兵器庫扉の前後などを、三角形を組み合わせた形状とし、レーダー反射を特定の方向へ集中させるようになっており、レーダー反射断面積は0.001-0.01m2程度と推定されている[15]。さらに、空気取入れ口ダクト、コクピット、火器管制レーダーなどの電子機器、兵装プラットフォーム、エンジン排気システムなどに被発見性を低下させる工夫が盛り込まれている。

ストレーキの採用や主翼と水平尾翼の間に若干外側に傾けた垂直尾翼を配置するという全体構成は、F/A-18などの従来の戦闘機に先例がある。そのため、先進戦術戦闘機計画にて対抗馬となったYF-23に比べ、驚くほど平凡な外形となった。しかしながら細かく見ると、主翼は複雑な六角形の変形デルタ翼であり、前縁後退角は42度、後縁は17度の前進角となっており、さらに先端付近では42度となっている。前縁は3.25度の下反角が、主翼付け根部で0.5度、翼端で-3.1度の捻りがそれぞれ付けられており、前縁には前縁フラップ、後縁には外側に補助翼と内側にフラッペロンを装備している。照射されたレーダー波を特定方向に反射するために機体を構成する角度は可能な限り同一になっている。更には主翼の後縁の若干の前進角と垂直尾翼とエアインテーク部分についてもほぼ同角度の傾斜を持たせている。機体の平面と平面を繋ぐ曲面部分は「コンティニュアス・カーバチャー」と呼ばれる連続的な曲率を用いたデザインとするなど、随所にステルス性向上のための高度な設計を施している[9]1980年代以降の主流ともいえるカナード付きデルタ翼形式を採用せず、あえて時代に逆行したかのような設計になっているのも、ステルス性を優先した結果である。

水平尾翼は全体が可動する全遊動式であり、垂直尾翼の方向舵は左右の方向舵を内側に向けることでエアブレーキとして機能する。これにより、YF-22では機体背部にエアブレーキを搭載していたのを、F-22ではこれを廃止した[14]。また、燃料タンクは機体前部、及び左右の主翼内部に備わっている。


キャノピーは厚さ9.5mmのポリカーボネートを2枚重ね合わせて成形されており、F-117と同じようにを蒸着コーティングすることでコックピット内部へのレーダー波の進入を防いでいる[8]

機体の部品点数は従来機に比べて非常に少なく、F-15Eの三分の一以下しかない。これは機体構造のフレームピッチが広くなり個々の機体部品が大型化したこと、ステルス化のために機体外板の継ぎ目を減らすことを必要としたことによる。このため、部品製作の工作機械に対する初期投資が大きくなっている。部品点数の少なさは大量生産時の生産効率の向上に寄与するものの生産数が少ないためにその効果は現れず、また、生産設備コストが開発コストと並び機体単価の多くの割合を占めるに至っている。

エンジン

F119-PW-100

エンジンプラット・アンド・ホイットニーのF119-PW-100を2基搭載する。ミリタリー出力でのスーパークルーズ能力を実現するため、従来の低バイパスターボファンエンジンよりも更にバイパス比を小さくしているとされる。アフターバーナー使用時の最大推力は35,000 lb(155.7 kN)とされるが[16]、不使用時のミリタリー最大推力は未公開である。 スーパークルーズについては、アフターバーナーの使用なしで最大巡航速度マッハ1.58となっている。ただし、マッハ1.7まで到達したという発表もある[17]。短時間で大量に燃料を消費するアフターバーナーを使用しないスーパークルーズには、従来の戦闘機以上に高機動運動を長時間にわたって行うことが可能であるとともに、赤外線放出量を抑えて赤外線誘導型の敵ミサイルからの追尾を避ける効果もある。

常用高度4万フィートでのスーパークルーズという、方向舵や昇降舵など空気力学的機体制御の効果の低い超音速域や大気密度の低い高高度飛行時において運動性を確保することを目的として、F-15 S/MTDの実験で開発された上下方向に20度まで推力軸を傾けることができる二次元式の推力偏向(TV)パドルを採用している[18]。これは、速度や主翼の迎え角とは関係なく機体のピッチング(上下方向)制御を可能とするものであり、低速または大迎え角での飛行時では水平安定板(昇降舵)の効きが低下するため、その際のピッチ操縦において使用される[注 4]。TV排気ノズルを低速度・低高度域でも積極的に使用して機動性向上を目指しているロシア戦闘機とは主目的が異なるため、複雑な作動をするロシア製TVノズルと異なり非常にシンプル機構となっている。パドル自体は、耐熱セラミックとマトリックス製の電波吸収材が使用されており、形状も平板にして、エンジンからの排気ガスを素早く拡散できるようにしている[19]。操作系統は通常のフライ・バイ・ワイヤの操縦ソフトウェアに組込まれており、パイロットは推力偏向のための特別な操作を行う必要はない。そのため、遷音速域でもF-15を上回る旋回性能を発揮し、パイロットの技量に頼らず高い格闘戦性能を誇る。

遠心力は速度の二乗に比例し半径に反比例するため、超音速域での旋回では容易に高い遠心力を生じる。そのため、パイロットの体を保護する新型の耐GスーツCE-ATAGS(COMBAT EDGE and Advanced Technology G Suit)を機体と併せて開発した。

アビオニクス

F-22Aのグラスコックピット

アクティブ・フェーズド・アレイ(APA)方式のAN/APG-77火器管制用レーダーとして機首に搭載している[20]。レーダー自体はステルス性とは相容れないものであるが、APA方式は電波の横漏れ(サイドロープ)が少なく電磁輻射を低く抑えることで、従来の機械走査式レーダーに比べて自己の位置を暴露しにくい[20]。また、周波数拡散技術により特定周波数での出力が低く抑えられたLPI英語版(低被探知)レーダーとなっており[注 5]、また、約250km先の目標を探知できる能力と多様なモードとの組み合わせにより、広いレーダー視野、長い捜索・追跡距離能力、信頼性を持っており[21]、「ファーストルック・ファーストショット(先に見つけて、先に撃つ)」の最重要要素となっている[9]。また、レーダーが探知した目標の種類を特定して、その情報を三次元で画像化することも可能とされている。対電子妨害能力を有しており、広い周波数帯の妨害電波を全方位に発信するが、新しいタイプでは、目標が使用しているレーダーの周波数帯に合わせた妨害電波を発信することが可能となっている。また、相手の発するレーダーや通信電波を逆探知して方向を解析するESM(Electronic Support Measures)を備えている[20]

EW(電子戦)システムは、レーダー警戒機能とミサイル発射探知機能を有しており、無線周波数警戒および妨害とミサイル発射探知機能などを持つAN/ALR-94電子戦サブシステムとフレアーを納めるAN/ALE-52フレアー・ディスペンサーで構成されている。AN/ALR-94は、広い周波数帯でのレーダー電波を受信する装置であり、機体各所に埋め込まれた30個以上の探知用のアンテナにより、機体全周360度の探知や監視能力を持っている。また、460km以上先から発信されるレーダー電波を探知することが可能とされているが、詳細は不明である。

電子機器はリスク分散のため複数搭載されており、電子機器モジュールには列線交換ユニットの採用により整備性を高めている。また、電子機器の冷却には、空気を機外から取り込んでから放出する方式では、超音速飛行時において冷却用の空気を取り込むことが難しいのと熱の帯びた冷却用の空気が赤外線で探知されるため、環境制御システム(ECS)により冷却用の空気を内部循環させる方式としている[19]。飛行操縦系統には3重のフライ・バイ・ワイヤ(FBW)を使用しており、パイロットがオーバーGを起こすような操縦をしても、機体の動きを止めて自動的に飛行可能領域内に戻すことができる自動構造荷重制限機能や推進装置(ジェット・エンジン)の制御機能を統合した機体管理システム(VMS)を備えており、飛行姿勢の安定性は高い。また、パイロットブラックアウトレッドアウトを起こしたり、平衡感覚が狂ったりした場合には、操縦桿を離すことで機体を自動的に水平状態に復帰させる機能もある[22]

F-22の電子機器システムは2基の『CIP(共通統合プロセッサー)』によって制御され、それぞれ各サブシステムと光ファイバーのデータバスで繋がっている。CIPは1基に付き66のモジュールスロットがあり、それが2基装備されている。CIPは同一のバックプレーンを持ち、F-22の処理要件はすべて7種類のプロセッサのみで処理可能である。CIPモジュールは、自動再プログラミング機能を有しており、電子機能のいずれかをエミュレートする能力を有する。例えば、無線機能のCIPモジュールが死ぬと、他のモジュールの1つが自動的にそれを引き継ぐようになっている。処理能力は700MIPS(毎秒7億回の命令を実行可能)。現在、CIP 1の66スロットのうち19スロットとCIP 2の66スロットの22スロットは使用されておらず、また各モジュールは設計によってその機能の75%に制限されている。そのため将来的にそれらを使用することでさらに性能を向上させることが可能で、30%の拡張性を持つ。最大で2000MIPSまで処理能力を引き上げることが可能だという。既存の機器に変更は必要なく加えて第3のCIPのためのスペース、電力、冷却システムの準備がされており200%まで拡張することも可能である[23][24]

ネットワーク機能の充実も大きな特徴である。CNIシステムと呼ばれており、飛行内データ・リンク(IFDL:In Flight Data Link)、統合戦術情報分配システム(JTIDS)、MK X Ⅱ敵味方識別装置で構成されている。飛行中のF-22は互いに、飛行内データ・リンクで戦術情報を交換し、連携して戦闘行動を取ることができる。また、索敵範囲を超える敵機及び友軍機の情報を、統合戦術情報分配システムを用いることで、他のF-22飛行隊や早期警戒管制機レーダーサイトイージス艦、陸上の小隊の端末、司令部アメリカ国防総省など、広域データリンク網によってあらゆる情報を受信できる[25]。自ら発するレーダー波に頼らずに外部からの情報で位置確認や索敵を行う能力は、ステルス性を発揮する上では必須といえる。

より高性能な双方向データリンクMADL英語版の搭載計画があったが取り消されたため、現状では他機種や他軍種の部隊とのデータリンク接続能力はない[26]

ネットワーク機能に対応するためコックピットは複数の多目的ディスプレイで構成されるグラスコックピットが導入された。

アビオニクスのソフトウェアは1983年にMIL規格となったアメリカ国防総省の標準高等言語であるAdaで開発された[16]。開発規模は実装のソフトウェア依存度が高まったことにより、F-15Aのソフトウェアの20万行(開発言語不明)に比べて220万行と激増した。ソフトウェアの内訳は航法28%、レーダー12%、電子戦14%、通信14%の四分野で全体の7割近くを占めている。また、レーダーと電子戦装置だけで全体の消費電力の90%を占めている。

近年ではソフトウェア開発が武器開発に占める割合が激増しており、AIM-120でも数十万行(開発言語不明)、F-35に至っては430万行を超えるソースコード作成が作業工数全体の40%以上を占めると言われている。一般的にソフトウェア開発規模の増大は要員増以外の効果的対策がないものの、ソフトウェア自体が機密指定されることから増員は難しく、開発コストを著しく押し上げる。開発コストは生産数を多くすることで機体単価に占める割合を押さえることが可能だが、調達機数は削減され続け、最終的に効果を得るほどの生産数を確保することが出来ないまま生産が終了した。

武装

F-22の下面(兵器庫を開いた状態)
AIM-9M発射の瞬間
GBU-32を投下するラングレー空軍基地第27飛行隊所属機
フレアを放出するラングレー空軍基地所属のF-22

固定武装としてゼネラル・エレクトリック社製のM61A1を軽量・長銃身化した改良型であるM61A2 機関砲(装弾数480発[18])を装備している。機関砲発射口はステルス性を考慮して普段は閉じられており、発射時のみ展開する。そのため、パイロットが引金を引いてから初弾が発射されるまでの時間差は若干増している。

また、ステルス性をフルに発揮するための運用の場合は、全兵装は胴体の下面1箇所と側面2箇所の計3箇所のウェポンベイ(兵器庫)に搭載される。これによって搭載量は犠牲となるが、空気抵抗を減らすことができるというメリットがある。

下面ウェポンベイ内にはLAU-142/A AVEL(AMRAAM Vertical Eject Launcher)と呼ばれる空気圧式ランチャーが備わっており、兵装はウェポンベイ内で切り離して自由落下させるのではなく、このランチャーによってウェポンベイ内から機外へと放出される機構となっている。

左右側面2箇所の短距離空対空ミサイル専用のウェポンベイには、AIM-9M/Xを搭載する[18]。しかし機体自体の旋回性能が卓越していることと、使用優先順位が低いなどの理由からAIM-9Xの搭載は見送られている[27]サイドワインダー使用時は扉を開き、シーカーを機体の外に露出させなければならないため、ステルス性は著しく低下する。ちなみにこの時、サイドワインダーは斜め横を向いた状態にセットされる。サイドワインダー収容部後方には、発射時のブラストが機体に当たるのを防ぐため、ブラストを外に逃がすためのディフレクターが装備されている。

下面ウェポンベイには中距離空対空ミサイルAIM-120A/Bを4発、もしくはF-22用に翼とフィンを縮小したAIM-120Cを6発搭載する[18]。ステルス性は低下するものの、主翼下には最大4発のAIM-9M/X、またはAIM-120A/B/Cを搭載可能。

AIM-120はINSによる中間誘導とアクティブ・レーダー・ホーミングによる撃ち放し能力(Fire-and-forget)を持ち、72km(AIM-120Cの場合)の射程を持つ。

F-22の短距離ミサイル×2と中距離ミサイル×6の計8発という構成は、双方共に4発の計8発だったF-15と比較し、遠距離からミサイルを発射して敵機を撃墜することに比重を置いていることが分かる。これはF-22自身の高いステルス性とレーダー、更には早期警戒管制機や僚機とのデータリンクにより「First look, first shot, first kill(先制発見、先制攻撃、先制撃破)」を意図した構成とされる。

空対地攻撃用にはGPS/INS誘導方式の統合直接攻撃弾薬JDAM)GBU-32を搭載する。また、F-22のウェポンベイのサイズを考慮した小直径爆弾(SDB)を開発中である[18]

なお、ステルス性を考慮しない運用の場合、翼下に600ガロンの燃料タンクを2本とミサイルを4発装備することができる。空対地装備として対レーダーミサイルAGM-88、GBU-22の搭載も可能である。また、フェリー飛行時には燃料タンク4本を装備した上に、燃料タンク吊下用パイロンの両側面に1発ずつ、計8発のAIM-120Cを取り付けて輸送することができる(機体の兵装として発射することはできない)。

戦闘能力

プラントル・グロワート・シンギュラリティで発生した雲を纏うF-22

高いステルス性と先制攻撃を前提とした運用・戦闘スタイルから、世界最高水準の戦闘能力を有するとされる[28]2006年アラスカで行われた「ノーザン・エッジ演習」においては、延べ144機を「仮想撃墜」し、F-22は1機の損害も出さなかった[29]

近年迄においてF-22には実戦経験は無かったが、2014年9月22日夜のシリアにおけるテロ組織ISILの施設空爆作戦にて初めて実戦参加を果たした[30]。ただ、この作戦では誘導爆弾による地上施設への爆撃を行っただけで、対戦闘機戦闘は発生しなかった。F-22の投入はISIL関連施設への空爆を黙認しつつも未だ不安定な関係にあるシリア政府軍の防空システムへの威嚇という側面があり、F-35が実戦配備されていれば任せられるものだった[31]

F-15を超える機動性や旋回性能などから、有視界戦闘(レーダーに頼らず、目視での戦闘)においても卓越した戦闘力を持つ。なお、F-22は味方機同士でリンクされているため識別は可能となるが、他の航空機や地上のレーダーでは捉えにくいためフェリーなどではレーダーを反射しやすいパーツを取り付けて飛行する。

膨大な演習回数の中には、数少ないながらもF-22が撃墜判定を取られたこともある。アメリカ空軍で行われた模擬空中戦で、電子戦術機EA-18GAIM-120 空対空ミサイルで撃墜されたと判定された記録がある[32]。このEA-18GにはF-22のキルマークが描かれた[33]。また格闘戦となった際には赤外線捜索追尾システムや目視で捕捉でき、電子装備よりもパイロットの技量が大きく影響するなど機体のコンセプトとは合致しないため、2012年のレッドフラッグにおいてドイツ空軍ユーロファイターに敗北している[34]。このほかにも領空侵犯に対するスクランブルでは対象へ警告と確認のために目視距離まで接近する必要があり、迎撃任務ではアドバンテージが少ないとされる[35]

名称

F-22は対地攻撃用戦術戦闘機という初期構想からF-15の後継機として制空戦闘を主目的とされていたが、再度対地攻撃の比重が増えるものとされて2002年9月に型式をF-22から攻撃機を意味するA(Attacker)の文字を加えたF/A-22へ変更された[36]。しかし、2005年12月に初期作戦能力を得る際に名称をF-22に戻している[注 6][20]。現在でも、名称変更に伴う要求性能の変更などは特に発表されていない。従って現在までアメリカ軍機で「F/A-」の形式番号を持つのはF/A-18A-DF/A-18E/Fのみである[注 7]

愛称については、一旦、第二次世界大戦中に活躍したP-38ライトニングにちなみ「ライトニングII」(Lightning II)と名付けられたが、後に「ライトニング」の名はP-38を製造したロッキード社を中心とした共同開発のF-35統合打撃戦闘機に譲られた。1997年4月9日のロールアウトの際に、F-22には猛禽類を意味する「ラプター」(Raptor)の愛称を付けられた[9][注 8]。また、この際に航空支配戦闘機(Air Dominance Fighter)というキャッチフレーズを明らかにし、航空優勢(エア・スペリオリティ)や絶対的航空優勢(エア・スプレマシー)以上の意気込みを示した[37]

生産数

冷戦終結に起因する調達数の削減により一機当たりの開発費負担が増加したために機体単価が増大し、さらなる調達数削減を招くという悪循環に陥った結果、当初予定に対して著しく調達数を減らしていることもF-22について特筆すべき事項となっている。

1989年アメリカ空軍試算では先進戦術戦闘機計画で開発した戦闘機1994年度の会計予算から調達を開始し、2007年度の会計予算までに750機の発注と見込んでいた。この発注数はアメリカ空軍によるF-15の発注数すべてを置き換えるのに十分な数とされた。さらに当時のアメリカ海軍のNATF(アメリカ海軍先進戦術戦闘機)としても546機の受注を期待していた。これらにより目標単価はF-15よりも低い3,500万ドルを実現可能とされていた[38]

各社の生産開発範囲
ロッキードが前中胴部・主翼・尾翼・動翼部
ボーイングが(緑)後胴部・主翼
プラット・アンド・ホイットニーがエンジン部を担当

F-22選定後は開発元のロッキード・マーティン社、ジェネラル・ダイナミクス社、ボーイング社の三社による共同生産として1995年中盤頃までに13機の開発用機の初号機を初飛行させ、1996年末から量産を開始し最終的には航空団5.5個分に相当する648機のF-22Aを受領するとの見通しを立てた。そして1991年度予算でロッキードに対し、単座型F-22Aを9機と複座型F-22Bを2機の計11機を技術製造開発(EMD)試験機として発注した。

だが冷戦の終結でF-22導入の意義が薄れ始めた中で、技術的問題などによる計画自体の遅滞、それに伴う開発費の高騰と問題が山積した。このため、1996年に複座型のF-22Bの導入を中止した上、計画全体でEMD試験機9機と量産型442機の計451機まで削減した。さらに2001年8月15日に国防調達委員会(DAB)は、F-22の調達自体は承認したものの生産数は295機まで削減するとした。アメリカ空軍はこれを333機まで増やすために様々な経費削減策を講じたが、結局2005年の配備直前での生産予定数は277機とされた[10]

実戦配備開始後、主要先進国を襲った世界同時恐慌もあって約150億ドルの費用削減のため生産数を183機へと削減された(2010年時点で187機を予定)ため、さらなる機体単価の高騰を招いている。187機限りの生産とした場合は2011年に生産を完了し、ラインが閉鎖される見込みとなる。このためF-15は全機代替されずに、2025年まで第一線で運用されることとされた。だが、2007年11月2日に起きたミズーリ空軍州兵所属のF-15Cの空中分解事故で、機体疲労に対する全機点検の結果、相当数の機体の老朽化が判明した。この際、応急的にF-16で対処している主力制空戦闘機の穴を埋めるため、F-22の導入予定の前倒しと増産が検討されたが[39]、代替機種としてF-35を充てることとなり、F-22の増産は行われないことが決定した[40]

2009会計年度の調達分の機体に関しては、既に最終生産機の各部品の製造は担当各企業ではほぼ終了し、そのほとんどがジョージア州マリエッタにある最終組み立て施設に運び込まれた。2011年12月にはマリエッタ工場で最終号機である187号機がロールアウトし、生産が終了した[41]

アメリカ議会や国防総省内では、F-35計画の遅延や性能に対する不安から、F-22を194機[42] 再生産する案が浮上しているが、空軍参謀副長のジェームズ・ホルムズ中将は、2016年3月8日に上院軍事委員会で「20年前の技術で開発された戦闘機に巨額の予算を投じて再生産するのは意味がなく、最新技術を使用して将来にわたり有効な第6世代の戦闘機を開発すべきだ」と反対している[43]

輸出

アメリカ空軍への配備以前よりロッキード社は同盟国への輸出を検討していた。対象となったのは、F-15の導入実績のあった日本航空自衛隊イスラエルイスラエル空軍だった。当時の軍事雑誌などにはロッキード社の作成した日本仕様のF-22とイスラエル仕様のF-22のイラストが掲載されたりもした。2001年にはクリントン米国大統領(当時)がイスラエルへF-22を優先的に輸出するとの書簡を送っている[44]

しかし軍事機密の塊となったF-22の技術漏洩が懸念され、1998年会計年度のアメリカ防衛予算法に「オビー修正条項」が明記された。「オビー修正条項」は機密漏洩の対策が確立するまで、F-22の輸出を禁止するものである。2007年には輸出に向けて条項撤廃の動きがあったものの、アメリカ合衆国下院歳出委員会は輸出禁止条項を継続させる決議を採択している[45]アメリカ合衆国議会2006年9月27日に、F-22の輸出を2015年まで禁止する条項を国防歳出法に明示している。しかし、2009年4月の北朝鮮によるミサイル発射実験2ヵ月後の地下核実験の強行、2010年の韓国海軍哨戒艦沈没事件延坪島砲撃事件の発生、F-35の開発の遅れなど情勢の変化に伴い、その都度日本への輸出解禁の動きや生産継続の議論が行われるなど、流動的であった。

アメリカ空軍は製造ラインの閉鎖が予定される2010年代以降も、「F-22J-Ex(後述)」などの輸出機により生産ラインを維持した上で追加購入を取り付けたいとの思惑があった。F-4EJ改の後継として次期主力戦闘機を選定中の航空自衛隊がF-22を採用する場合は、50-100機前後の需要が見込まれたために、ロッキード社からも輸出解禁を求める声も挙がっていた。ただし、日本側は三菱重工業F-2の製造ラインが2011年に閉鎖するのを受け、製造部署維持のためにライセンス生産が望ましいとの見解を示していたため、双方の思惑は一致しなかった。輸出許可の可能性もゼロではなかったため、ある程度の説明活動は行われていたものの、F-22に関する日米間のSA(保全合意)は交わされていなかったため、その内容は詳しいものではなかった。なお、F-35に関してSAが交わされたのは2011年11月のことである[41]

その後、バラク・オバマ米国大統領が2011会計年度以降でのアメリカ空軍向けの調達を行わない事を決定し、その結果輸出の必要性もなくなりF-Xには提案されないこととなった[41]。結局、日本の第4次次期主力戦闘機選定に関しては「F/A-18E/F」、「F-35」、「タイフーン」の3機種が候補となり、2011年12月にF-35Aが選定された。ただ、F-22はF-X選定作業開始前から、そのステルス技術や電子機器類といった高度技術流出が懸念されていたことから、F-Xに提案されたとしても日本国内での生産は不可能であることが日本側に伝えられていた[41]

イスラエルはライセンス生産の意向はなかったが、こちらも輸出禁止処置の為に協議は難航し、実現しなかった。代替としてイスラエルもF-35の導入を予定した。2006年オーストラリア空軍がF-22の導入を検討しているとされた[46][47]2008年2月には国防長官ロバート・ゲーツオーストラリアへのF-22を輸出を容認する発言をしているが、やはり輸出禁止措置により現実とはならず、オーストラリアもF-35の導入を決定した。

運用コスト

第95戦闘飛行隊所属機

F-22を当初の750機導入する計画の時点では、全体の計画コストは約650億ドルと見込まれていたが、2010年会計年度において既に599億ドルを消化している。また、技術製造開発(EMD)試験機9機の生産時には189億ドルもの費用を要し、先述したATF選定作業時のコストを合わせると、227億ドル(日本円で2兆円以上)となる[8]

一飛行時間あたりの列線整備は、0.3-0.7人/時とされる。整備の際は携帯型整備支援装置(PMA)の端末を機体に接続し、自己診断が行われる。通常の様な技術指令書を参照しながらの整備ではなく、整備員はPMAの指示に従い異常のあるモジュールの交換のみを行うだけで、整備は完了となる。また、B-2の様な機体表面のコーティングの塗り直し作業は必要としない[48]。 一方で、軍では十分なメンテナンスが出来ない箇所もあるため保守に関連する費用、ハード・ソフト共に機密部分が多いため情報保全の費用など、既存の戦闘機より増加した固定費も負担となっている。また、一部のパーツの腐食や、機体構造の問題を補修する費用についても高騰傾向にある[49]

B-2のように定期的な研磨は必要とされないが、レーダー波吸収皮膜は雨や擦り傷に弱く、最近の試験結果によると1飛行時間当たり30時間以上と44,000ドル以上の経費を掛けた整備を必要としていた[50]


アップグレード

戦闘可能なブロック3.0ソフトウェアを搭載した初号機は2001年に飛行した。[51]

インクリメント2
最初のアップグレードプログラムであるインクリメント2は、2005年にブロック20以降の機体に実施され、統合直接攻撃弾(JDAM)の使用を可能にした。2007年3月には空対地モードを備えた改良型レーダーAN/APG-77(V)1の認証が完了し、生産ロット5以降の機体に搭載された[52]
インクリメント3
ブロック30以降向けのインクリメント3.1では、合成開口レーダーによるマッピングとラジオエミッターによる方向探知、電子攻撃、小口径爆弾(SDB)の統合により地上攻撃能力が向上した。2009年に試験が開始され、2011年に最初のアップグレード機が納入された[53][54]。 酸素欠乏症の問題に対処するため、F-22は2012年から自動バックアップ酸素システム(ABOS)と改良型生命維持装置を装備した[55]
ブロック35/40以降向けのインクリメント3.2はAとBの2つの部分からなるアップグレードプロセスである。3.2Aは電子戦、通信、識別に焦点を当てたものとなる。3.2Bはジオロケーションの改善とAIM-9XとAIM-120Dを完全に統合するための新しいストア管理システムを含むものである[56][57]
他のプラットフォームとの双方向通信を可能にするために、F-22はBACN(Battlefield Airborne Communications Node)をゲートウェイとして使用することができる。当初予定されていたMADL(Multifunction Advanced Data Link)の統合は、開発の遅れと米空軍プラットフォーム間での普及が進まなかったために中止された。
2019年5月にインクリメント3.2Bと暗号機能とアビオニクスの安定性のためのソフトウェアのアップグレードが開始された。従来のLink-16受信専用ボックスに代わるMIDS-J(Multifunctional Information Distribution System-Joint)無線機は、2020年までに運用を開始する予定となっている。

その後のアップグレードでは、より迅速な将来の拡張を可能にするために、オープンなアーキテクチャとアジャイルなソフトウェア開発を持つことにも注力している[58][59]。 2024年には、F-22のミッドライフ・アップグレード(MLU)のための資金調達が始まり、それには新しいセンサーやアンテナ、ハードウェアの刷新、コックピットの改良、ヘルメット・マウント・ディスプレイとキューイング・システムなどが含まれると予想されている。その他の強化点としては、AN/AAR-56ミサイル発射探知機(MLD)のIRST機能や、F-35のものをベースにしたより耐久性の高いステルスコーティングなどが開発されている[58][60][61]。 F-22は8,000飛行時間の耐用年数を想定して設計されており、3億5,000万ドルの「レトロフィットプログラム」が実施されている[62]。 さらに耐用年数を延ばすための更新についても調査が行われている[63]。 2021年1月までに、すべてのF-22ラプターはF-22レトロフィットプログラムにより使用可能な寿命が8,000飛行時間延長されることとなるが[64]、最終的には「次世代航空支配(NGAD)」プログラムによる第6世代ジェット戦闘機で置き換えられると予想されている[65][66]

アメリカ空軍での運用

概要

ホロマン空軍基地所属のF-22
KC-135からF-15と共に空中給油を受けるF-22

F-15の後継機種として順次配備が進んでおり、F-15とF-16との「Hi Lo Mix(ハイローミックス)」運用を、現在配備中のF-35と共に引き継ぐ予定である。 2003年フロリダ州ティンダル空軍基地第325戦闘航空団が初めてF-22を受領し機種転換訓練を開始し、2005年12月15日バージニア州ラングレー空軍基地にある第1戦闘航空団第27戦闘飛行隊が最初の実戦配備完了を発表した[36]。以降、アラスカ州グアムに展開する部隊への配備を進めている。2007年には、日本沖縄県嘉手納空軍基地に初のアメリカ国外配備を暫定的ながら実施し、2009年には沖縄への再配備に加え、グアム島のアンダーセン米空軍基地への配備を行っている。

2012年最終号機引き渡し時点では、転換訓練飛行隊・第43戦闘飛行隊(43d FS)(フロリダ州ティンダル空軍基地)と合わせて、合計7個戦闘飛行隊(州兵含む)の配備となっている。それ以外に、機体を保有しない人員のみで構成される飛行隊が、現役と予備役、そして州兵に合わせて4個飛行隊が編成されている。これらの飛行隊は、同じ基地に同居しているF-22を保有する飛行隊の機体を共同運用して訓練などを行っている。

調達

F-22のEMD試験機9機(製造番号4001-4009)は1991年度予算で発注され、1997年9月7日に1号機が初飛行を成功させる。以降、2号機(1998年6月29日進空))、3号機(2000年3月6日)、4号機(同年11月15日)、5号機(2001年1月5日)、6号機(同年2月5日)、7号機(同年10月25日)、8号機(2002年2月14日)、9号機(同年4月15日)と、約5年(発注から約11年)を掛けて整備試験用として納入された。1号機はカリフォルニア州エドワーズ空軍基地空軍飛行試験センター第412試験航空団(AFFTC/412TW)のF-22合同試験部隊(CTF)に配備され、1998年5月17日から本格的な試験飛行を開始した。以降のEMD試験機全機がCTFに配備された[67]。EMD試験機の完成時期は約5年と間があるため製造時期により仕様が異なり、1,2号機をBlock 1、3号機をBlock 2、4号機から9号機までをBlock 10と呼んでいる。

EMD試験機に続き、アメリカ空軍は追加試験機の発注を開始した。1999年度予算で第1期量産準備試験機(PRTV-1)として2機(4010,4011)、2000年度にはPRTV-2を6機(4012-4017)、2001年度は第1期低率初期生産(LRIP-1)型を10機(4018-4027)、2002年度はLRIP-2を13機(4028-4040)と発注を続け、全機を第325戦闘航空団(325th FW)(フロリダ州ティンダル空軍基地)の転換訓練飛行隊に配備した。

2003年度にはBlock 20にあたるLRIP-3を、21機(4041-4061)発注した。これらは2005年12月15日バージニア州ラングレー空軍基地の第1戦闘航空団(1st FW)第27戦闘飛行隊(27th FS)へと配備され、初の実戦部隊として初期作戦能力を獲得した。2004年度には22機のLRIP-4(4062-4083)、2005年度に24機のLRIP-4(4084-4107)を発注した[67]

アメリカ空軍は実戦配備を目前とした2005年に、2006年度に26機、2007年-2010年度に32機、2011年度に25機の発注を行い、最終的にPRTVと量産型総計で277機を調達するとの見通しを立て、277機のうち8機をネバダ州ネリス空軍基地で運用試験評価に用い、LRIP-1/2の23機は機種訓練用、そして残る246機を24機編成の10個飛行隊に配備運用するとした。予備機が6機と限られるため事故等での消耗を想定し定数を18機とする、または飛行隊数を減らすことも検討した[68]。この検討の内容は、さらなる調達減で後に現実のものとなった。

2007年7月31日に締結した生産ロット7、8、9の60機の多年度契約により183機までの生産が確定した。その後、同年度で製造を継続する場合のつなぎ措置として4機の製造が了承され、翌年度に追加発注された。国防省は2010年度の予算編成に関する記者会見で、既に発注している187機で調達を中止すると発表した。前述した通り、バラク・オバマ大統領が2011会計年度以降でのアメリカ空軍向けの調達を行わない事を決定し、正式に生産の終了が決定する。

引渡しは年20機程度ずつ行われ、2007年8月29日の式典では、100機目のF-22(05-4100)が引き渡された。

2番目の配備先はアラスカ州エルメンドルフ空軍基地第3航空団(3d WG)であり、F-15Eを運用していた第90戦闘飛行隊(90th FS)に対して2007年から配備が開始されている[69]。同年10月には同戦闘航空団に第525戦闘飛行隊(525th FS)が再編され2008年から配備が開始された。3番目の配備先となったのはニューメキシコ州ホロマン空軍基地の第49戦闘航空団(49th FW)で、それまで運用していたF-117Aに代わり配備が行われ、まず第7戦闘飛行隊(7th FS)、翌2009年からは第8戦闘飛行隊(8th FS)へ配備された(その後、2010年7月29日にアメリカ空軍はF-22配備計画の見直しを発表、ホロマン空軍基地へのF-22配備を中止することを決定した。翌2011年5月に第8戦闘飛行隊が解散、残る第7戦闘飛行隊はティンダル基地へ移動する予定)。

2010年からはF-22最後の実働部隊となるハワイ州ヒッカム空軍基地に所属する州兵空軍第154航空団(154th WG)第199戦闘飛行隊(199th FS)、及び現役の第15航空団(15th WG)第19戦闘飛行隊(19th FS)へ配備された。なお、通常F-22の部隊は一つの基地に機体を保有する現役部隊、そしてそれを共用する機体を持たない人員のみの州兵もしくは予備役部隊が編成されるが、ヒッカム空軍基地に限っては、州兵である第199戦闘飛行隊が機体を保有し、現役である第19戦闘飛行隊がそれを共用する形になっている。

実働部隊以外では前述した第412試験航空団、及び第325戦闘航空団のほか、ネリス空軍基地の第57航空団第443兵器飛行隊や同基地第53航空団第422試験評価飛行隊などに配備されている。

2012年5月2日に最終号機である195号機の引き渡しが行われ、そのセレモニーがジョージア州マリエッタ工場で開催された。最終号機はアラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地の第3航空団に配備される予定である[70]。2012年の時点で、179機保有している。

運用形態

F-15と共に飛行するF-22

アメリカ空軍は現在のF-15F-16での「Hi Lo Mix」運用を、F-22とF-35が引き継ぐ予定である。ロッキード・マーティン側も、空対空任務を得意とするF-22と、それを補佐したうえで空対地任務も担うF-35による2機種混合の配備をする方が、1機種で戦力を構築するよりも効率的としている。アメリカ空軍が保有する第4世代ジェット戦闘機と比較しても、同じ作戦能力を確保するのに必要な機数も減少する。合わせて全体のライフサイクルコストも低くなる。第4世代ジェット戦闘機440機を必要とする防衛能力を確保する場合、第5世代ジェット戦闘機であればF-22約50機とF-35を約200機で充当可能であるため、30年間の全体のライフサイクルコストは49%低減されるとしている[71]

F-35についてアメリカ空軍は、通常離着陸(CTOL)型を1,763機導入する計画である。この場合、F-22とF-35の調達機数比は1:9.6となる。F-15(911機)とF-16(2,244機)の調達比率1:2.46、F-35に転換されることになるA-10(715機)を加えて1:3.24、さらにF-15E(236機)まで加えても1:3.5、F-15ではなくF-15C(483機)を対象としても1:6.6であることに鑑みると、作戦機に占めるF-22の割合は著しく小さいものとなる。

現在では、この「ハイ・ロー」に代わって「フォース・ミックス」という新たな概念に基づいて調達が行われている[注 9]。つまりF-22とF-35による2機種混合はコストのみならず、効率良く有機的な航空作戦を行うための編成と言える[45]

ラングレー空軍基地では配備された機体による曲技飛行隊F-22 Raptor Demo Team」を結成し、航空祭で機動飛行を披露する他、コックピットからの映像をYouTubeなどに投稿している[72]

事故・損失

2009年3月25日にはエドワーズ空軍基地から北西へ約60キロ離れた地点で墜落事故をおこし、テストパイロットであるデイビッド・クーレー(49歳)が死亡した[73]

2010年11月16日にはエルメンドルフ空軍基地から北方へ160km地点で墜落。パイロットは発見されなかったが、残骸からフライトスーツの一部が見つかり、死亡と結論づけられた。

また、2011年5月より約3ヶ月間、全機に飛行禁止措置がとられていることが2011年7月30日アメリカ空軍の発表によって明らかになった。飛行中のパイロットが一酸化炭素中毒に陥り、意識障害が起きるなどの事態が14件確認されたからである。排ガスなどがコックピットへ紛れ込んで一酸化炭素中毒などを起こした可能性が疑われていたが、原因は耐Gスーツのバルブとフィルターにあったことが判明した。

2012年11月15日パナマ市南、ティンダル空軍基地近くで墜落。パイロットは怪我も無く脱出に成功。原因不明[74]

2012年12月7日199要撃飛行隊のF-22は、着陸中に2枚の水平尾翼を損壊しながら、真珠湾-ヒッカム共同航空基地に着陸した。航空機は真珠湾攻撃の71周年記念イベントでミッシングマンフォーメーションに参加後の帰還だった。修理費用は180万ドル[75]

2018年10月10日10月12日にアメリカ南部を襲ったハリケーン「マイケル」フロリダ州にあるティンダル空軍基地所属の機体が少なくとも17機大破した[76]。同基地には55機が配備されており、ハリケーンの襲来に備えて33機がオハイオ州の基地に避難していたが、残りの22機はティンダル空軍基地に待機していた。

2020年5月15日 - フロリダ州エグリン空軍基地北東にある訓練場で1機が墜落。パイロットは緊急脱出して無事[77][78]

2021年3月15日-フロリダ州エグリン空軍基地で飛行中に緊急事態を経験した一機が無事基地に戻ってきたが、ノーズギアの問題で機首が滑走路に接地した状態で着陸。 

配備基地

アメリカ空軍は2022年8月現在、183機のF-22を保有・運用している。[79]第43戦闘飛行隊が2002年にティンダル空軍基地にて再編され2003年以降パイロットのF-22への機種転換訓練を実施している[80]

航空戦闘軍団
ラングレー空軍基地(バージニア州) 第1戦闘航空団
- 第27戦闘飛行隊 "Fightin'Eagles"
-第71戦闘飛行隊"The Ironmen"(乗員訓練飛行隊)

- 第94戦闘飛行隊 "Hat in the Ring"

エグリン空軍基地(フロリダ州) 第53航空団
- 第422試験評価飛行隊 "Green Bats"[81]
ネリス空軍基地(ネバダ州) 第57航空団
- 第433兵器飛行隊"Satan's Angels"
太平洋空軍
エルメンドルフ空軍基地(アラスカ州) 第3航空団
- 第90戦闘飛行隊 "Pair-o-Dice"
- 第525戦闘飛行隊 "Bulldogs"
ヒッカム空軍基地(ハワイ州) 第15航空団
- 第19戦闘飛行隊 "Fighting Gamecocks"(人員のみ/機体は第154航空団と共用)
空軍予備役軍団
エルメンドルフ空軍基地(アラスカ州) 第477戦闘航空群
- 第302戦闘飛行隊 "Hellions"(人員のみ/機体は第3航空団と共用)
アメリカ空軍州兵
ラングレー空軍基地(バージニア州) 第192戦闘航空団
- 第149戦闘飛行隊 "Rebel Riders"(人員のみ/機体は第1戦闘航空団と共用)
ヒッカム空軍基地(ハワイ州) 第154航空団
- 第199戦闘飛行隊 "The Kukaiumoku"
空軍資材軍団
エドワーズ空軍基地(カリフォルニア州) 第412試験航空団
- 第411飛行試験飛行隊

日本への一時配備

2007年

嘉手納基地に到着したF-22A(2007年)

2007年1月、アメリカ政府は戦域安全策の一環としてF-22飛行隊を日本に暫定的に配備することを公表し、バージニア州ラングレー空軍基地に所属する第1戦闘航空団英語版第27戦闘飛行隊英語版のF-22A(12機)を、沖縄県嘉手納空軍基地に2007年2月17日から5月10日まで暫定配備を行った。これはF-22最初の国外配備となった[82]。これに対して、基地周辺の住民からの騒音問題を危惧する声が上がった[82]。騒音について同飛行隊隊長ウェード・トリバー中佐は、第18航空団の騒音削減手順に従って飛行を行う事、騒音レベルがF-15F-16と同程度である事、アフターバーナーを使用しない事など低騒音化が図れるとの見解を示した[82]

F-22Aは2月7日に経由地であるハワイ州ヒッカム空軍基地に到着したものの、10日に予定されていた嘉手納への到着は天候不良を理由に翌日に延期され、翌2月11日も「運用上の理由」として延期された。その後、2月17日になって先遣隊の2機が先行して嘉手納に到着、続いて8機が2月18日に到着、残りの2機は遅れて2月21日に到着した[82]。1機に発電機の不具合が生じたためだという。

2月11日に発生した「運用上の理由」について、アメリカ空軍広報局は2月13日に「ナビゲーションシステムに影響するソフトウェアの不具合が見つかった」ためと説明したが、2日後の2月15日読売新聞は、2月13日まで行われた六者会合北朝鮮アメリカにF-22Aの嘉手納空軍基地への暫定配備を中止するよう求めたという報道を行ったため、アメリカの北朝鮮政策の軟化の表れという見方も出た。

これに対して広報局は3月6日に再度「ナビゲーションシステムに影響するソフトウェアの不具合」が、搭載コンピューターの日付更新処理の不具合によるものだったと発表した。詳細な発表は下記の通り。

  • 嘉手納空軍基地への移動のため太平洋を横断中、日付変更線を越えた瞬間ナビゲーションシステムに障害が発生した。
  • パイロットはシステムの再起動を試みたものの回復しなかったため、航法支援を受けヒッカム基地へと帰還した。
  • 基地でのその後の調査により、この障害は搭載コンピューターの日付更新処理の不具合によるものということが判明し、帰還後数時間以内に解決された。
  • この手のマイナートラブルは、新型機の配属初期にはよくあることなので、特に重要視しておらず、また、追加のテストを行う予定もない。

嘉手納に展開したF-22Aは、「日米の戦術技量と共同対処能力の向上」を目的として、4月26日27日に沖縄本島南方空域で航空自衛隊のF-15JF-4EJ改 戦闘機(各2-4機)、E-767 早期警戒管制機(1機)と共同訓練を行った。訓練にはアメリカ空軍のF-15C(2-4機)とE-3C早期警戒管制機(1機)も参加した[83]。共同訓練は4月26日にアメリカ空軍パイロット7名が那覇基地を訪問して飛行前打ち合わせが行われ、飛行を伴う訓練は4月27日の朝から実施された[83]。4月27日の訓練は、対戦闘機戦闘で日米の対戦形式で行われた。

5月9日にアメリカ政府は日本政府に対して、F-22Aの日本展開を翌日に終了する旨を通告、5月10日午前3時過ぎから昼前までに全機が嘉手納を去った。

2009年

2009年8月横田基地に飛来した第94戦闘飛行隊所属のF-22

その後、2008年12月16日アメリカ空軍は、F-22を2009年1月から約3ヶ月間に渡って太平洋地域に配備する方針を発表した。沖縄嘉手納基地に12機、グアム島のアンダーセン空軍基地に12機がそれぞれ配備される予定。アメリカ空軍では今回の配備は西太平洋地域における「地域安全保障パッケージ(Theater Security Package)」に基づくものだと説明している。

日本にF-22が飛来するのは2007年2月来、約1年11ヶ月ぶりとなり、2009年1月10日に嘉手納基地にF-22が飛来した。同30日には報道陣に公開された。

来日後、3月16日から19日まで航空自衛隊戦闘機部隊との2度目の日米共同訓練が実施され、航空自衛隊から那覇基地小松基地F-15J、2-4機とアメリカ空軍からF-22、2-4機が訓練に参加した。

5月30日15時28分頃、米バージニア州ラングレー空軍基地所属のF-22が嘉手納基地に飛来した。

7月4日嘉手納基地で行われた『アメリカ・フェスタ2009』にて、日本国内で初めて一般公開された。

8月21日嘉手納基地より横田基地に2機が飛来。これが日本本土初飛来となった。この2機は翌8月22日から8月23日の2日間に渡って開催された『横田基地友好祭2009』に展示され、一般に公開された。なお友好祭終了後、翌日には嘉手納基地へ戻る予定であったが、機体にトラブルが発生して離陸できず[84]、修理完了まで11日間に渡って横田基地に足止めを余儀なくされるという事態が発生した。

2010年

2010年2月11日アラスカ州エルメンドルフ空軍基地所属で、グアムアンダーセン空軍基地へ派遣配備されていたF-22 4機が飛来し、一時配備された [1]

3月25日には同基地所属で、やはりアンダーセン空軍基地へ派遣配備されていた4機が訓練のために飛来した [2]

2011年

エルメンドルフ空軍基地の第3航空団第525戦闘飛行隊所属機が1月12日より順次飛来し、計15機が4ヶ月に渡り一時配備される [3]

2012年

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横田基地友好祭2012で撮影

8月18日から8月19日の2日間に渡って開催された『横田基地友好祭2012』で2機(08-4155、08-4165)が展示され、一般に公開された[85]

2016年

1月20日午後、アラスカ州エルメンドルフ空軍基地所属第3航空団(3WG)第525戦闘飛行隊(525FS)の「F-22Aラプター」8機が横田基地に着陸した。その後、22日午後には14機となり、アメリカ太平洋軍の地域安全保障パッケージ(TSP)の一環として、アラスカの悪天候を避けて沖縄県の嘉手納基地に展開し、同時展開のアイルソン空軍基地所属第354戦闘航空団(354FW)第18仮想敵飛行隊(18AGRS)のF-16x14機と嘉手納基地所属第18航空団(18WG)のF-15E-3KC-135ほか海兵隊のF/A-18との年次演習「フォースフル・タイガー」を含め約5週間に渡り展開した。北朝鮮への新たな牽制で極東アジアの安定を図ろうとしたとみられる。

2022年

10月27日、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は嘉手納基地の第18航空団に所属する第44・67戦闘飛行隊を解隊し、アラスカ州エルメンドルフ空軍基地の第3航空団所属の本機を巡回駐留させ、嘉手納基地に展開するF-15C/Dを置き換えると報じた。実際の駐留開始は不明ながらも、緊張感が高まる台湾有事への対応と思われる。

実戦

2014年9月23日に実施された米国主導のシリア爆撃において実戦に初投入された。

2018年9月、アラスカに接近してきたロシアのTu-95戦略爆撃機とSu-35Sの編隊に対してF-22編隊が緊急発進を行った[86]

2023年2月4日、米空軍はバージニア州ラングレー空軍基地第1戦闘航空団所属のF-22がサウスカロライナ州沖の領海上空にて中国の偵察用気球AIM-9Xを発射し破壊したと発表した[87]。これがF-22の初の対空戦闘における公式の戦果となった。2月10日にはエルメンドルフ空軍基地所属のF-22がアラスカ州の上空およそ1万2000メートルを飛行する小型自動車程度の大きさの飛行物体をミサイルで撃墜した[88]。11日にはカナダユーコン準州上空でも飛行物体を撃墜した[89]

型式・派生型

基本型

YF-22
EMD試験機
F-22A
YF-22
ATF計画で開発された試作機。主翼後退角など、量産機と細部が異なる。2機製造され、1号機(87-0700)にジェネラル・エレクトリック社の「YF120-GE-100」を、2号機(87-0701)にはプラット・アンド・ホイットニー社の「YF119-PW-100」がそれぞれ搭載されており、同じ2種類のエンジンを搭載したYF-23との選考の結果2号機が採用され基本型となる。1号機は1998年3月に国立アメリカ空軍博物館所蔵、2号機も1992年5月26日に展示機として再生される[90]
F-22(F-22A,F/A-22)
基本型。総計187機の製造を予定。「F-22A」は複座型であるF-22Bの開発を予定していた頃の名残であるが、現在でもF-22Aと表記される場合がある。
「F/A-22」は空対地攻撃能力の比重の増大を受けて2002年9月に攻撃機という意味のA(Attacker)が付け加えられた名称。しかし、2005年12月に初期作戦能力を得る際に再度名称をF-22(A)へと戻している。
Block 1
初期量産型でEMD試験機でもある1号機(91-4001)、及び2号機(91-4002)の2機が製造された。1号機は2000年11月2日にライト・パターソン空軍基地へ移動後、戦闘損傷生存性試験に使用される。試験後はヒッカム空軍基地へ移動し、現在は第43戦闘飛行隊にて2号機と共にGF-22(地上設置)として使用中[90]
Block 2
EMD試験機の3号機(91-4003)を1機製造。2004年9月28日にオーバーGを出して以降は飛行せず、2007年にアメリカ空軍博物館に移送・展示される[90]
Block 10
4号機(91-4004)から9号機(91-4009)のEMD試験機、及び第1期量産準備試験機である10号機(99-4010)から11号機(99-4011)、第2期量産準備試験機である12号機(00-4012)から40号機(02-4040)までの37機が製造。14号機(00-4014)が2004年12月20日に、8号機(91-4008)が2009年3月25日に墜落事故を起こし喪失[90]
Block 20
41号機(03-4041)から83号機(04-4083)までの43機が製造[91]
Block 30
84号機(05-4084)から150号機(07-4150)が適用。2010年11月16日に125号機(06-4125)が墜落事故により喪失[91]
Block 35
151号機(08-0151)から適応の最新版[92]
F-22B
機種転換訓練などに用いられる複座型F-22。1996年冷戦の終結に伴う軍備・予算縮小や開発費の高騰、機種転換訓練をシミュレータで代用が可能となったために開発を中止。
F-22J-Ex
輸出型F-22。原案は、2006年2月にロッキード社がF-22の対日輸出に関してアメリカ空軍高官との協議を持った際に作成された。海外輸出禁止政策への対抗を考慮し、性能・装備のスペックダウンを行ったダウングレード型(モンキーモデル)。

派生型

FB-22
ロッキード・マーティン社がアメリカ空軍に提案している派生型の戦闘爆撃機(暫定爆撃プラットフォーム)。
F-22N
アメリカ海軍向けの艦上戦闘機。元々はNATF(Naval Advanced Tactical Fighter)計画として開発が進められたが、後にATFと計画を一本化した。F-22と機体部品を共通させ、可変翼を有するとされた。546機の受注が見込まれていたが、1991年に計画を中止。
ステルス混合型(仮称)[93]
2030年代に退役が始まる航空自衛隊のF-2後継機としてロッキード・マーティンではF-22J-Exのようなモンキーモデルではなく、F-22の機体にF-35のアビオニクスを搭載することで両者の能力を併せ持つハイブリッド戦闘機を提案している[94]。またステルスコーティングなどに関してはF-35より進化しているため性能はF-22/F-35を超えるとされる[95]
F-2後継機としてはボーイングが提案するF-15をベースとした機体、BAEシステムズが提案するユーロファイター タイフーンをベースとした機体、X-2研究成果を反映した国産機の案があるものの、ロッキード・マーティンでは日米同盟や防衛産業を考慮し、日本側の分担比率が50%以上となることを認めている[96] こともあり、本命とされる[93]。しかし想定価格が1機2億ドルと高価なことやソフトウェアなど核心的な技術が開示されるかは不明確なため、2018年を予定していた後継機の方針決定を先送りすることも検討されている。上記のF-2後継機については2019年に閣議決定された2020年予算で新規開発とされF-22改造案は不採用となった[93]

仕様

YF-22

出典: 世界の名機シリーズ F-22ラプター <増補版>

諸元

性能

  • 最大速度: M2.0
  • 実用上昇限度: 15,240m (50,000ft)


お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

F-22

出典: USAF,[97] [79] F-22 Raptor Team web site,[98] and Aviation Week & Space Technology[99]

諸元

性能

  • 最大速度: M2.42, 2,575km/h (1,390kt) (高々度)
  • 巡航速度: M1.82, 1,960km/h (1,060kt) (高々度)
  • フェリー飛行時航続距離: 3,200km (1,740Mile
  • 航続距離: >2,960km with 2 external fuel tanks (1,600Mile
  • 実用上昇限度: >20,000m (65,000ft)
  • 翼面荷重: 377kg/m2
  • 最大推力重量比: 1.08
  • * 翼幅荷重:148.01kg/m2
お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。
武装
兵装総覧
固定武装
空対空戦闘時
  • 短距離空対空ミサイル(空気取り入れ口側面ウェポンベイ)
空対地戦闘時
  • 対地誘導爆弾(以下の二つから選択、胴体下ウェポンベイ)
  • GBU-32 JDAM(1,000ポンドGPS/INS誘導爆弾)×2
  • GBU-39 SDB(285ポンドGPS/INS誘導爆弾)×8
※AIM-120C AMRAAM×2を同時携行可。

登場作品

脚注

注釈

  1. ^ スーパークルーズ(超音速巡航)とは超音速での長時間巡航することを指し、アフターバーナーを使用する・しないは問わない。しかし、アフターバーナーを使用すると戦闘機の搭載能力では長時間巡航を維持できない程の燃料消費となるために本要求となっている。例えば、F-15AのF100-PW-100ではアフターバーナー使用時の燃費率は2.55kg/kg/h程度とされている。これより算出すると外部増槽1本を2分弱で空にしフル装備の全燃料でも12分で使い切ってしまう
  2. ^ YF-22ではアルミニウム33%、チタン24%、グラファイト熱可塑性複合材13%、熱硬化性プラスチック10%、鋼鉄5%、先進アルミニウム2%、その他31%であり、EMD試験機ではチタニウム6-4 37%、熱硬化性複合材23%、硬化エポキシ樹脂複合材10%、チタニウム6-22-22 3%、熱可塑性複合材1%、その他26%であった
  3. ^ 攻撃機や爆撃機は決められた地上目標に対して接近方向や飛行ルートをある程度選択できるため、F-117やB-2は正面からのレーダー面積(RCR)極小化を中心としたステルス設計を行っている。また、攻撃機や爆撃機は激しい機動を行わないためステルス性を優先した機体設計の余地が大きくなっている。これに対して戦闘機のステルス性には高速で移動する空中目標を想定した全方位からの探知への備えを、機動性や操縦性、コックピット視界を制限することなく実現するという非常に厳しい条件となる
  4. ^ 通常の操縦系統だけを使用した場合、主翼の迎角25度までが水平安定板(昇降舵)の効きの限界であり、これを超えると機首下げに入ってリカバリーするようになっているが、これに推力偏向を加えると、ミニタリー推力時での主翼の迎角の限界を最低10度大きくすることができる。また、風洞試験においては、85度を超える迎角でも飛行を実現できた。
  5. ^ 出力の弱いレーダー波を様々な周波数帯で発射することにより、相手のRWR(レーダー警戒装置)には探知されない
  6. ^ 当時、対地攻撃に主眼を置いたF-35の開発が進展していたため、アメリカ議会からF-22より万能性に勝るF-35を採用するようにとの圧力が掛けられるのを警戒し、空軍側がF-22の対地攻撃能力を強調するために行ったとの説もある
  7. ^ F/A-18の場合は、当初戦闘機仕様のF-18と攻撃機仕様のA-18を平行開発したものの、開発が進むにつれ両者の仕様が統合可能となったための処置である。
  8. ^ 短い期間ではあるが、「SuperStar」(スーパースター)や「Rapier」(レイピア)などの愛称も使用された
  9. ^ それぞれ異なった固有の特性を有する複数の機体を配備し、あらゆる任務に対応するという概念。

出典

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参考文献

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関連項目

外部リンク