「Forget-me-not (尾崎豊の曲)」の版間の差分
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| Artist = [[尾崎豊]] |
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| B-side = 「[[OH MY LITTLE GIRL]]」 |
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| Recorded = 1985年<br />[[ソニー・ミュージックスタジオ#ソニー・ミュージック信濃町スタジオ|ソニー信濃町スタジオ]] |
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| Genre = [[ロック (音楽)|ロック]]<br />[[バラード]] |
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| Length = 5分14秒 |
| Length = 5分14秒 |
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| Label = [[ソニー・ミュージックレコーズ]] |
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| Writer = 尾崎豊 |
| Writer = 尾崎豊 |
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| Last single = 「[[卒業 (尾崎豊の曲)|卒業]]」<br />([[1999年]]) |
| Last single = 「[[卒業 (尾崎豊の曲)|卒業]]」<br />([[1999年]]) |
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| This single = 「'''Forget-me-not/OH MY LITTLE GIRL'''」<br />(2001年) |
| This single = 「'''Forget-me-not/OH MY LITTLE GIRL'''」<br />(2001年) |
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|title = A面 |
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|1 = 1.「路上のルール」 |
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|2 = 2.「失くした1/2」 |
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|3 = 3.「'''Forget-me-not'''」 |
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# 「彼」 |
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|4 = 4.「彼」 |
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|5 = 5.「米軍キャンプ」 |
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;B面 |
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「'''Forget-me-not'''」(フォーゲット・ミー・ノット)は、 |
「'''Forget-me-not'''」(フォーゲット・ミー・ノット)は、日本の[[シンガーソングライター]]である[[尾崎豊]]の18枚目の[[シングル]]。 |
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[[2001年]][[4月25日]]に[[ソニー・ミュージックレコーズ]]から「[[OH MY LITTLE GIRL]]」([[1994年]])とのダブルA面シングルとしてリリースされた。作詞・作曲は尾崎、プロデュースは[[須藤晃]]が担当している。前作「[[風にうたえば (曲)|風にうたえば]]」([[1999年]])からおよそ2年2か月ぶりのリリースとなった。元々は3枚目のアルバム『[[壊れた扉から]]』([[1985年]])の収録曲であり、アルバムリリースから16年後に改めて[[リカット]]される事となった。 |
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尾崎が十代最後にレコーディングした曲<ref name=ozaki2>{{Cite news |title=ハイレゾで尾崎豊が蘇る【第二章】あの“瞬間”が蘇る |newspaper=SONY公式サイト |date=2014-08-16 |url=https://www.sony.jp/high-resolution/special/ozaki/vol2.html |accessdate=2015-5-1}}</ref><ref group="注釈">尾崎の誕生日は1965年11月29日で、3日後に20歳を迎えた。</ref>。 |
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『壊れた扉から』制作時に作詞が難航したために最後にレコーディングされた作品であり、尾崎としては10代最後にレコーディングされた作品となった。作詞の段階で須藤から[[ワスレナグサ|勿忘草]]というイメージを与えられた尾崎が後に歌詞を完成させており、歌詞は過去に交際していた女性に花の名前を教えられた事を思い出している内容となっている。須藤は尾崎の他のバラード曲よりも哀しみの度合いが深く、10代最後の作品が本作であった事に関して「どうしようもなくせつなくて、やるせなかった」と述べている{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。 |
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「Forget-me-not」とは「[[ワスレナグサ|勿忘草]]」のことであるが、このタイトルになった経緯は、プロデューサーである[[須藤晃]]がデモテープのメロディーを聞いた際に、「小さな花のようなイメージ、勿忘草」というキーワードを出したところ、それを基に尾崎が歌詞を作成した<ref name="ozaki">長緒隆也 -『尾崎豊物語』(2002年)</ref>。 |
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シングル盤は[[オリコンチャート]]では最高位52位となった。映画『[[LOVE SONG (映画)|LOVE SONG]]』(2001年)において「OH MY LITTLE GIRL」と共に主題歌として使用された他、[[槇原敬之]]や[[CHEMISTRY]]など著名なミュージシャンによってカバーされている。 |
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須藤はこの曲について「すごいですよね。リズムのノリがおかしいところとかもいっぱいあるんだけど、そんなの関係ないですもんね。尾崎さんは全部で71曲を録音したんですけど、後にも先にもスーツを着てネクタイを締めて歌ったのはこれだけです。なんだか、この曲を歌うために尾崎さんは存在した、っていう気さえしますね。自分にとっては実はとても重たい曲で、デリケートな曲でもあるんです。Forget-me-not=僕を忘れないで、ですからね。尾崎さんの死は、僕にとってとても悲しいことだったわけですから」と語っている<ref name="ozaki2" />。 |
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== 録音 == |
== 録音 == |
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3枚目のアルバム『[[壊れた扉から]]』(1985年)の制作に当たって尾崎と須藤のプライベートでの合意事項として、尾崎にとって10代最後の日となる1985年11月28日にリリースする事が決定していた{{Efn|尾崎の誕生日は1965年11月29日であり、1985年11月29日に20歳となった。}}{{Sfn|須藤晃|1998|p=32|ps= - 「第一章 尾崎豊 追憶」より}}。10代の内に3枚目のアルバムをリリースする事に関して当初尾崎は反発しており、須藤にリリースの意義を問いただす事が何度もあったが、須藤による「あとになっておまえにとっては、意味を持つだろう」と諭された事から条件を飲む事となった{{Sfn|須藤晃|1995|p=97|ps= - 「『壊れた扉から』 失くした1/2」より}}。また尾崎は条件を飲んだ理由として、「スタッフの裏側の気持ちが、痛いほどボクに伝わってきたからって気がしてる」と述べている{{Sfn|山内順仁|1989|p=55|ps= - 「WORDS 1984 - 1988」より}}。 |
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アルバム『[[壊れた扉から]]』の制作は、尾崎が20歳の誕生日を迎える前のリリースを目指していたため、ライブツアーの合間を縫って曲作りとレコーディングを行うという強行スケジュールの中で進行していた。しかし、マスターテープの完成日直前になりながらも、アルバムに収録する最後のバラードが決まらず、尾崎は悩んだあげく、歌手人生で初めて歌詞のないメロディだけを吹き込んだデモテープを須藤に持って行った<ref group="注釈">平成24年(2012年)11月25日 - [[BSプレミアム]]「[[尾崎豊#死後の特集番組|ヒーローたちの壮絶人生]]」より。また、同番組内でバックバンド「[[Heart Of Klaxon]]」のメンバーである吉浦芳一は「尾崎の曲は常に出来上がっていた状態だった。この時尾崎はよっぽど悩んで苦しんでいたのではないか。」と語っている。</ref>。そして、レコーディング最終日を迎えるも歌詞が納得のいくものにならず、夕方にレコーディングスタジオを抜け出している内に歌詞を完成させ<ref group="注釈">平成24年(2012年)11月25日にBSプレミアムで放送された「ヒーローたちの壮絶人生」の番組内で須藤は「恐らく、家に帰って今まで書き溜めたものを読んで言葉を選っていたのではないか。」と語っている。</ref>、朝になってスタジオに戻りすぐにレコーディングを行い完成したというエピソードがある<ref name="ozaki"></ref><ref name="ozaki2"></ref>。後に須藤はこのときのことを、「'''明け方5時ぐらいですかね。いきなり、スーツを着て、ネクタイも締めて、ワインを2本と寿司の折り詰めを持って、尾崎さんが入ってきたんですよね。『みんなでこれ食べてください』って言うから、『何言ってんだよ。歌詞はできたの?』って訊いたら『できました』って、それですぐに歌ってもらったのがあれです。もう身体の震えが止まらないぐらいすごくて……この人、このまま死んじゃうのかなと思うぐらいすごかった。あれが僕にとっての、尾崎豊の最も鮮烈な思い出ですね。'''」と語っている<ref name="ozaki2"></ref>。そのために、一発で録音したというのは誤りで須藤は「実際には『Forget-me-not』は2回歌いましたね。1回目のテイクをOKにしましたけど」といっている<ref name="ozaki2" />。 |
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その後アルバムリリースから先行する形で決定したコンサートツアー「LAST TEENAGE APPEARANCE」のリハーサル作業の合間を縫うようにしてレコーディングが進められていた。レコーディングが終了した曲の[[ミキシング|ミックスダウン]]が着々と完了していく中、マスターテープの完成日直前になりながらもアルバムに収録する最後のバラードが決まらず、尾崎は悩んだあげくにデビュー以来初めて歌詞のないメロディだけを吹き込んだデモテープを須藤の元へ持参した{{Efn|テレビ番組『ヒーローたちの壮絶人生』内でバックバンド「[[Heart Of Klaxon]]」のメンバーである吉浦芳一は「尾崎の曲は常に出来上がっていた状態だった。この時尾崎はよっぽど悩んで苦しんでいたのではないか。」と語っている<ref name="hero20121125">[[2012年]][[11月25日]]放送の[[BSプレミアム]]番組『[[尾崎豊#死後の特集番組|ヒーローたちの壮絶人生]]』より。</ref>。}}。結局最後に残った1曲となった本作であったが、尾崎の歌詞制作が頓挫しているためスタッフは全員泊まり込み状態となり、着替えを用意して何日もかかりっきりの状態となった{{Sfn|須藤晃|1998|p=40|ps= - 「第一章 尾崎豊 追憶」より}}。 |
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その日の内に歌入れをすませて完成させなければ11月28日にリリースできなくなるという状況下で、真夜中に尾崎は廊下に寝そべって歌詞を考えていた{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}{{Sfn|須藤晃|1998|p=40|ps= - 「第一章 尾崎豊 追憶」より}}。その後、午後6時もしくは7時頃に尾崎は一度帰宅したいと要望し、12時までに戻らなければ間に合わないと念を押した上で須藤は帰宅を許可した<ref name="sony20140816">{{Cite web |author= |date=2014-08-16 |url=https://www.sony.jp/high-resolution/special/ozaki/vol2.html |title=ハイレゾで尾崎豊が蘇る【第二章】あの“瞬間”が蘇る |website=SONY公式サイト |publisher=[[ソニーマーケティング]] |accessdate=2015-05-01}}</ref>。しかし尾崎は12時を過ぎてもスタジオに戻らず、スタッフも半ば諦めかけていたが明け方の5時頃にスーツを着てネクタイを締めた尾崎がスタジオに現れた<ref name="sony20140816"/>。尾崎はワイン2本と折詰の寿司と共に「Forget-me-not」の詞を書いた大学ノートを抱えていた{{Sfn|須藤晃|1998|p=41|ps= - 「第一章 尾崎豊 追憶」より}}。尾崎は「みんなでこれ食べてください」と述べスタッフに寿司を振舞ったが、須藤から「何言ってんだよ。歌詞はできたの?」と問われ、「できました」と回答{{Efn|須藤は後に「恐らく、家に帰って今まで書き溜めたものを読んで言葉を選っていたのではないか」と述べている<ref name="hero20121125"/>。}}<ref name="sony20140816"/>。その直後に録音したものがアルバムに収録されているテイクとなった{{Sfn|須藤晃|1998|p=41|ps= - 「第一章 尾崎豊 追憶」より}}<ref name="sony20140816"/>。また、本作は2回歌入れが行われたが1回目のテイクが採用される事となった<ref name="sony20140816"/>。須藤はレコーディング中に身体の震えが止まらないほど感動し、「この人、このまま死んじゃうのかなと思うぐらいすごかった。あれが僕にとっての、尾崎豊の最も鮮烈な思い出ですね」と述べている<ref name="sony20140816"/>。 |
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歌入れの終了後にはすぐにミックスダウンが行われ、その後アシスタント・ディレクターである田和一樹によって静岡にあるレコードのプレス工場へと運ばれた{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。本来であれば『壊れた扉から』には10曲収録する予定であったが、結果として9曲のみ収録される事となった{{Sfn|見崎鉄|2018|p=288|ps= - 「第三部 尾崎豊という事件(尾崎諭のためのノート)」より}}。また、本作が尾崎の10代最後のレコーディング作品となった<ref name="sony20140816"/>。 |
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== 音楽性と歌詞 == |
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歌詞制作が難航していた尾崎に対し、須藤は本作のデモテープを聴いた印象として「小さな花」のイメージがあると伝え、また[[ジョン・レノン]]の楽曲「[[マインド・ゲームス (ジョン・レノンの曲)|マインド・ゲームス]]」([[1973年]])の詩の一片である「君がはぐくむべき花は愛なんだ」という歌詞を引用した上で尾崎に対し「名前もわからないようなその花ってなんだろうね」と疑問を投げかけた{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。その後須藤と尾崎は自身の愛好する花について語り合っていたが、その際に須藤は「そういえば尾崎、"Forget-me-not"という花があるんだよ」と尾崎に語り、日本名が[[ワスレナグサ|勿忘草]]である事を告げられた尾崎はそこからインスピレーションを得てスタジオの床に寝そべって歌詞を書き始めた{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。完成した歌詞のタイトルには「わすれな草」と書かれていたが、歌入れの前に須藤がタイトルを「Forget-me-not」に変更するよう尾崎に依頼、尾崎は「そうですね、『わすれな草』は[[演歌]]みたいだし」と笑っていたという{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。 |
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須藤は本作のイメージとして「温かいものや、ぬくもりに触れることによって、自分の手が冷たかったことを知るという歌」であると述べた他、「人を好きになって愛しても、どこか心が寂しい」という尾崎の人間性について触れている{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。また本作が尾崎にとって10代最後に作詞した作品になった事に関して、「どうしようもなくせつなくて、やるせなかった」とも述べている{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。須藤によれば本作はメロディーが美麗であり[[ストリングス]]を挿入した事によって叙情性豊かな仕上がりになっていたが、アルバム『壊れた扉から』の他の収録曲の傾向から尾崎がもっと「ツジツマの合わない狂ったような詞を書いてきてもおかしくはなかった」と考えていた{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。完成した歌詞では、尾崎が作詞する中で自身が歌い始めた当初に交際していた女性と見た夕陽の光景を思い出して書いたのではないかと須藤は推測し、実際に女性がわすれな草を尾崎に教えた訳ではないがその思いが痛いほど伝わったと述べている{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。 |
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尾崎のバラードには「[[I LOVE YOU (尾崎豊の曲)|I LOVE YOU]]」や「[[OH MY LITTLE GIRL]]」などがあるが、須藤は本作について「作品が含有している哀しみの度合いはこの曲がもっとも深い」と述べ、尾崎の曲でここまで過去を振り返った曲はないと断言した上で「彼が失ってしまったものは、よほど大きかったんだろう」と述べている{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。結果として、プロデューサーとして須藤が関与した最後の曲が本作となっており、その後尾崎は本作を最後に作詞が出来ずに数年間作品を発表できなくなった{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。須藤は1枚目のアルバム『[[十七歳の地図 (アルバム)|十七歳の地図]]』([[1983年]])の収録曲である「街の風景」から尾崎の音楽活動は始まり、本作で10代としての作品が完了した事に触れ、「はいつくばりながら街を見渡していって、最後に、街の風景の中に本当に眼をこらして見なきゃわからないような、小さな花のことを歌って終えたのは、ひとつの非常に美しい物語の終末だったという気がする」と述べている{{Sfn|須藤晃|1995|p=101|ps= - 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より}}。その他にも須藤は本作にはリズムのノリがおかしい所が多くあると指摘したがそれが問題ないほどすごい曲であると述べ、また尾崎がスーツにネクタイの姿で歌った曲は本作だけであった事から「なんだか、この曲を歌うために尾崎さんは存在した、っていう気さえしますね」と述べた他、「Forget-me-not」というタイトルが「僕を忘れないで」という意味であるとした上で「自分にとっては実はとても重たい曲で、デリケートな曲でもあるんです」と述べている<ref name="sony20140816"/>。 |
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== リリース == |
== リリース == |
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元々は3枚目のアルバム『[[壊れた扉から]]』([[1985年]])に収録されていたバラード曲であるが、映画主題歌として使用されたため、「[[OH MY LITTLE GIRL]]」との両A面として初めてシングルカットされ、尾崎の10回忌である[[2001年]][[4月25日]]に[[ソニー・ミュージックレコーズ]]より[[コンパクトディスク|12センチCD]]で発売された。 |
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また、同時収録された「OH MY LITTLE GIRL」は、シングル「[[十七歳の地図 (曲)|十七歳の地図]]」([[1984年]])、「OH MY LITTLE GIRL」([[1994年]])に続き、3度目のシングル収録となっている。この音源はリマスターされ音質が向上している。 |
また、同時収録された「OH MY LITTLE GIRL」は、シングル「[[十七歳の地図 (曲)|十七歳の地図]]」([[1984年]])、「OH MY LITTLE GIRL」([[1994年]])に続き、3度目のシングル収録となっている。この音源はリマスターされ音質が向上している。 |
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== チャート成績 == |
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本作のシングル盤は[[オリコンチャート]]において最高位52位、登場回数は3回、売り上げ枚数は1.7万枚となった。 |
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== ミュージック・ビデオ == |
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== ライブ・パフォーマンス == |
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本作は全国コンサートツアー「TREES LINING A STREET」において7曲目、1夜限りの復活コンサートとなった[[東京ドーム]]公演「LIVE CORE」において8曲目に演奏されたが、[[1991年]]のコンサートツアー「TOUR 1991 BIRTH」では演奏されていない{{Sfn|地球音楽ライブラリー|1999|pp=180 - 182|ps= - 「YUTAKA OZAKI TOUR LIST」より}}。 |
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== メディアでの使用 == |
== メディアでの使用 == |
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[[ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (日本)|ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント]]配給映画『[[LOVE SONG (映画)|LOVE SONG]]』(2001年)の主題歌として使用され |
[[ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (日本)|ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント]]配給による映画『[[LOVE SONG (映画)|LOVE SONG]]』(2001年)の主題歌として使用され、同映画にて須藤は音楽プロデューサーを担当している<ref>{{Cite web |author= |date= |url=https://www.allcinema.net/cinema/234479 |title=映画 LOVE SONG (2001)について |website=[[allcinema]] |publisher=スティングレイ |accessdate=2021-11-20}}</ref>。 |
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== カバー == |
== カバー == |
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*[[槇原敬之]] - [[トリビュート・アルバム]]『[["BLUE" A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI]]』(2004年)に収録<ref>{{Cite web |author= |date=2004-03-16 |url=https://tower.jp/article/news/2004/03/16/100002770 |title=尾崎豊トリビュート、公式ページにて特典映像ほか |website=TOWER RECORDS ONLINE |publisher=[[タワーレコード]] |accessdate=2021-10-10}}</ref>。 |
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*[[槇原敬之]] - 『[["BLUE" A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI]]』(2004年) |
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*[[CHEMISTRY]] - 『[[Hot Chemistry]]』(2005年) |
*[[CHEMISTRY]] - [[コンセプト・アルバム]]『[[Hot Chemistry]]』(2005年)に収録。 |
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*[[謝霆鋒]] - 『毋忘我』(2006年 |
*[[謝霆鋒]] - アルバム『毋忘我』(2006年)に収録。[[広東語]]によるバージョン。 |
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*[[美吉田月]] - 『pure flavor #2~key of love~』(2008年) |
*[[美吉田月]] - アルバム『pure flavor #2~key of love~』(2008年)に収録。 |
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*[[清水翔太]] - 3枚目のアルバム『COLORS』(2011年)に収録<ref>{{Cite web |author= |date=2011-02-09 |url=https://natalie.mu/music/news/44765 |title=清水翔太ニューアルバムは尾崎豊の名曲カバー含む充実作 |website=[[ナタリー (ニュースサイト)|音楽ナタリー]] |publisher=ナターシャ |accessdate=2021-10-10}}</ref><ref>{{Cite web |author= |date=2011-02-09 |url=https://tower.jp/article/news/2011/02/09/75164 |title=清水翔太、ニュー・アルバム『COLORS』で尾崎豊の名曲をカヴァー |website=TOWER RECORDS ONLINE |publisher=[[タワーレコード]] |accessdate=2021-10-10}}</ref>。 |
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*[[清水翔太]] - 『COLOS』(2011年) |
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*[[Infinix]] - 『[[尾崎豊が教えてくれたこと]]』(2012年) |
*[[Infinix]] - カバーアルバム『[[尾崎豊が教えてくれたこと]]』(2012年)に収録。 |
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*[[Ms.OOJA]] - カバーアルバム『[[MAN -Love Song Covers 2-]]』(2013年)に収録<ref>{{Cite web |author= |date=2013-10-21 |url=https://natalie.mu/music/news/101850 |title=Ms.OOJA、ラブソング縛りのカバーアルバム“男性編”完成 |website=[[ナタリー (ニュースサイト)|音楽ナタリー]] |publisher=ナターシャ |accessdate=2021-10-17}}</ref>。 |
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*[[Ms.OOJA]] - 『[[MAN -Love Song Covers 2-]]』(2013年) |
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*[[遠藤舞]] - シングル「[[Baby Love (遠藤舞の曲)|Baby Love]]」(2014年)に収録<ref>{{Cite web |author= |date=2014-07-25 |url=https://www.barks.jp/news/?id=1000106014 |title=遠藤舞、3rdシングル収録のカバー曲「Forget-me-not」で親子共演 |website=[[BARKS]] |publisher=ジャパンミュージックネットワーク |accessdate=2021-10-10}}</ref>。 |
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*[[遠藤舞]] - 「[[Baby Love (遠藤舞の曲)|Baby Love]]」(2014年) |
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*[[Acid Black Cherry]] - 「[[君がいない、あの日から…]]」(2014年) |
*[[Acid Black Cherry]] - シングル「[[君がいない、あの日から…]]」(2014年)に収録<ref>{{Cite web |author= |date=2016-08-09 |url=https://natalie.mu/music/news/197655 |title=Acid Black Cherryカバー集でサザン、AKB48、絢香、ブルハ、ミスチル歌う |website=[[ナタリー (ニュースサイト)|音楽ナタリー]] |publisher=ナターシャ |accessdate=2021-10-10}}</ref>。 |
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* [[山崎育三郎]] - カバーアルバム『1936 〜your songs〜』(2016年 |
* [[山崎育三郎]] - カバーアルバム『1936 〜your songs〜』(2016年)に収録<ref>{{Cite web |author= |date=2016-06-22 |url=https://natalie.mu/stage/news/191709 |title=山崎育三郎カバーアルバムに「女々しくて」「モーツァルト!」劇中歌など11曲 |website=[[ナタリー (ニュースサイト)|音楽ナタリー]] |publisher=ナターシャ |accessdate=2021-11-20}}</ref><ref>{{Cite web |author= |date=2016-06-25 |url=https://natalie.mu/stage/news/192208 |title=山崎育三郎「1936」より、「君は薔薇より美しい」を歌い上げる動画公開 |website=[[ナタリー (ニュースサイト)|ステージナタリー]] |publisher=ナターシャ |accessdate=2021-10-17}}</ref> |
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*[[ジェジュン]] - カバーアルバム『Love Covers』(2019年)に収録。[[フジテレビ系列|フジテレビ系]]音楽番組『[[FNS歌謡祭|2018 FNS歌謡祭]]』(2018年)にて歌唱した<ref>{{Cite web |author=村上夏菜 |date= 2018-12-12 |url= https://realsound.jp/2018/12/post-291933.html |title=ToshIとジェジュン、『FNS歌謡祭』で尾崎豊の名曲どうカバーする? シンガーとしての魅力に迫る |website= [[リアルサウンド (ニュースサイト)|リアルサウンド]] |publisher= blueprint |accessdate=2021-11-20}}</ref>。 |
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*[[ジェジュン]] - 『Love Covers』(2019年) |
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== シングル収録曲 == |
== シングル収録曲 == |
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== スタッフ・クレジット == |
== スタッフ・クレジット == |
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=== 参加ミュージシャン === |
=== 参加ミュージシャン === |
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* |
*滝本季延 - [[ドラムセット|ドラムス]] |
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*本田達也 - [[ベース (弦楽器)|ベース]] |
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*[[鳥山雄司]] - [[ギター]] |
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*[[西本明]] - [[キーボード (楽器)|キーボード]] |
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*友田グループ - [[ストリングス]] |
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=== スタッフ === |
=== スタッフ === |
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*[[須藤晃]] - プロデューサー |
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*助川健 - レコーディング、ミックス・エンジニア |
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*[[田島照久 (デザイナー)|田島照久]] - デザイン、アート・ディレクション、写真撮影 |
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*渡邉茂実 - セカンド・エンジニア |
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*大野邦彦 - セカンド・エンジニア |
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*中村悦弘 - アシスタント・エンジニア |
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*鈴木浩二 - アシスタント・エンジニア |
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*田和一樹 - アシスタント・ディレクター |
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*笠井鉄平 - マスタリング・エンジニア |
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*浜野啓介 - ソニー・レコード・プロモーション・スタッフ |
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*『[[壊れた扉から]]』([[1985年]]) |
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*『[[愛すべきものすべてに]]』([[1996年]]) |
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*『[[WEDNESDAY 〜LOVE SONG BEST OF YUTAKA OZAKI]]』([[2008年]]) |
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*『[[I LOVE YOU〜BALLADE BEST]]』([[2011年]]) |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書 |author = 山内順仁 |authorlink = 山内順仁 |title = 尾崎豊写真集 [WORKS] |date = 1989-07-31 |publisher = [[ソニー・マガジンズ]] |page = 55 |isbn = 9784789704670 |ref = harv}} |
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* {{Cite book|和書 |author = 須藤晃 |authorlink = 須藤晃 |title = 尾崎豊が伝えたかったこと |date = 1995-04-24 |publisher = [[主婦と生活社]] |pages = 97, 101頁 |isbn = 9784391117417 |ref = harv}} |
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* {{Cite book|和書 |author = 須藤晃 |authorlink = 須藤晃 |title = 尾崎豊 覚え書き |edition = 書籍『時間がなければ自由もない―尾崎豊覚書―』(ISBN 9784789707497) 文庫版 |date = 1998-01-01 |publisher = [[小学館文庫]] |origdate = 1994-05-17 |pages = 32 - 41 |isbn = 9784094021011 |ref = harv}} |
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* {{Cite book|和書 |author = |title = 地球音楽ライブラリー 尾崎豊 |date = 1999-11-29 |publisher = [[エフエム東京|TOKYO FM出版]] |pages = 180 - 182 |isbn = 9784887450417 |ref = {{SfnRef|地球音楽ライブラリー|1999}}}} |
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* {{Cite book|和書 |author = 見崎鉄 |title = 盗んだバイクと壊れたガラス 尾崎豊の歌詞論 |date = 2018-06-10 |publisher = アルファベータブックス |page = 288 |isbn = 9784865980554 |ref = harv}} |
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[[Category:1985年の楽曲]] |
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[[Category:2001年のダブルA面シングル]] |
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[[Category:楽曲 ふ|おおけつとみいのつと おさきゆたか]] |
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[[Category:日本映画の主題歌]] |
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2021年11月20日 (土) 10:33時点における版
「Forget-me-not」 | |||||||
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尾崎豊 の シングル | |||||||
初出アルバム『壊れた扉から』 | |||||||
B面 | 「OH MY LITTLE GIRL」 | ||||||
リリース | |||||||
規格 | マキシシングル | ||||||
録音 |
1985年 ソニー信濃町スタジオ | ||||||
ジャンル |
ロック バラード | ||||||
時間 | |||||||
レーベル | ソニー・ミュージックレコーズ | ||||||
作詞・作曲 | 尾崎豊 | ||||||
プロデュース | 須藤晃 | ||||||
チャート最高順位 | |||||||
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尾崎豊 シングル 年表 | |||||||
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EANコード | |||||||
EAN 4988009507590 |
「Forget-me-not」(フォーゲット・ミー・ノット)は、日本のシンガーソングライターである尾崎豊の18枚目のシングル。
2001年4月25日にソニー・ミュージックレコーズから「OH MY LITTLE GIRL」(1994年)とのダブルA面シングルとしてリリースされた。作詞・作曲は尾崎、プロデュースは須藤晃が担当している。前作「風にうたえば」(1999年)からおよそ2年2か月ぶりのリリースとなった。元々は3枚目のアルバム『壊れた扉から』(1985年)の収録曲であり、アルバムリリースから16年後に改めてリカットされる事となった。
『壊れた扉から』制作時に作詞が難航したために最後にレコーディングされた作品であり、尾崎としては10代最後にレコーディングされた作品となった。作詞の段階で須藤から勿忘草というイメージを与えられた尾崎が後に歌詞を完成させており、歌詞は過去に交際していた女性に花の名前を教えられた事を思い出している内容となっている。須藤は尾崎の他のバラード曲よりも哀しみの度合いが深く、10代最後の作品が本作であった事に関して「どうしようもなくせつなくて、やるせなかった」と述べている[1]。
シングル盤はオリコンチャートでは最高位52位となった。映画『LOVE SONG』(2001年)において「OH MY LITTLE GIRL」と共に主題歌として使用された他、槇原敬之やCHEMISTRYなど著名なミュージシャンによってカバーされている。
録音
3枚目のアルバム『壊れた扉から』(1985年)の制作に当たって尾崎と須藤のプライベートでの合意事項として、尾崎にとって10代最後の日となる1985年11月28日にリリースする事が決定していた[注釈 1][2]。10代の内に3枚目のアルバムをリリースする事に関して当初尾崎は反発しており、須藤にリリースの意義を問いただす事が何度もあったが、須藤による「あとになっておまえにとっては、意味を持つだろう」と諭された事から条件を飲む事となった[3]。また尾崎は条件を飲んだ理由として、「スタッフの裏側の気持ちが、痛いほどボクに伝わってきたからって気がしてる」と述べている[4]。
その後アルバムリリースから先行する形で決定したコンサートツアー「LAST TEENAGE APPEARANCE」のリハーサル作業の合間を縫うようにしてレコーディングが進められていた。レコーディングが終了した曲のミックスダウンが着々と完了していく中、マスターテープの完成日直前になりながらもアルバムに収録する最後のバラードが決まらず、尾崎は悩んだあげくにデビュー以来初めて歌詞のないメロディだけを吹き込んだデモテープを須藤の元へ持参した[注釈 2]。結局最後に残った1曲となった本作であったが、尾崎の歌詞制作が頓挫しているためスタッフは全員泊まり込み状態となり、着替えを用意して何日もかかりっきりの状態となった[6]。
その日の内に歌入れをすませて完成させなければ11月28日にリリースできなくなるという状況下で、真夜中に尾崎は廊下に寝そべって歌詞を考えていた[1][6]。その後、午後6時もしくは7時頃に尾崎は一度帰宅したいと要望し、12時までに戻らなければ間に合わないと念を押した上で須藤は帰宅を許可した[7]。しかし尾崎は12時を過ぎてもスタジオに戻らず、スタッフも半ば諦めかけていたが明け方の5時頃にスーツを着てネクタイを締めた尾崎がスタジオに現れた[7]。尾崎はワイン2本と折詰の寿司と共に「Forget-me-not」の詞を書いた大学ノートを抱えていた[8]。尾崎は「みんなでこれ食べてください」と述べスタッフに寿司を振舞ったが、須藤から「何言ってんだよ。歌詞はできたの?」と問われ、「できました」と回答[注釈 3][7]。その直後に録音したものがアルバムに収録されているテイクとなった[8][7]。また、本作は2回歌入れが行われたが1回目のテイクが採用される事となった[7]。須藤はレコーディング中に身体の震えが止まらないほど感動し、「この人、このまま死んじゃうのかなと思うぐらいすごかった。あれが僕にとっての、尾崎豊の最も鮮烈な思い出ですね」と述べている[7]。
歌入れの終了後にはすぐにミックスダウンが行われ、その後アシスタント・ディレクターである田和一樹によって静岡にあるレコードのプレス工場へと運ばれた[1]。本来であれば『壊れた扉から』には10曲収録する予定であったが、結果として9曲のみ収録される事となった[9]。また、本作が尾崎の10代最後のレコーディング作品となった[7]。
音楽性と歌詞
歌詞制作が難航していた尾崎に対し、須藤は本作のデモテープを聴いた印象として「小さな花」のイメージがあると伝え、またジョン・レノンの楽曲「マインド・ゲームス」(1973年)の詩の一片である「君がはぐくむべき花は愛なんだ」という歌詞を引用した上で尾崎に対し「名前もわからないようなその花ってなんだろうね」と疑問を投げかけた[1]。その後須藤と尾崎は自身の愛好する花について語り合っていたが、その際に須藤は「そういえば尾崎、"Forget-me-not"という花があるんだよ」と尾崎に語り、日本名が勿忘草である事を告げられた尾崎はそこからインスピレーションを得てスタジオの床に寝そべって歌詞を書き始めた[1]。完成した歌詞のタイトルには「わすれな草」と書かれていたが、歌入れの前に須藤がタイトルを「Forget-me-not」に変更するよう尾崎に依頼、尾崎は「そうですね、『わすれな草』は演歌みたいだし」と笑っていたという[1]。
須藤は本作のイメージとして「温かいものや、ぬくもりに触れることによって、自分の手が冷たかったことを知るという歌」であると述べた他、「人を好きになって愛しても、どこか心が寂しい」という尾崎の人間性について触れている[1]。また本作が尾崎にとって10代最後に作詞した作品になった事に関して、「どうしようもなくせつなくて、やるせなかった」とも述べている[1]。須藤によれば本作はメロディーが美麗でありストリングスを挿入した事によって叙情性豊かな仕上がりになっていたが、アルバム『壊れた扉から』の他の収録曲の傾向から尾崎がもっと「ツジツマの合わない狂ったような詞を書いてきてもおかしくはなかった」と考えていた[1]。完成した歌詞では、尾崎が作詞する中で自身が歌い始めた当初に交際していた女性と見た夕陽の光景を思い出して書いたのではないかと須藤は推測し、実際に女性がわすれな草を尾崎に教えた訳ではないがその思いが痛いほど伝わったと述べている[1]。
尾崎のバラードには「I LOVE YOU」や「OH MY LITTLE GIRL」などがあるが、須藤は本作について「作品が含有している哀しみの度合いはこの曲がもっとも深い」と述べ、尾崎の曲でここまで過去を振り返った曲はないと断言した上で「彼が失ってしまったものは、よほど大きかったんだろう」と述べている[1]。結果として、プロデューサーとして須藤が関与した最後の曲が本作となっており、その後尾崎は本作を最後に作詞が出来ずに数年間作品を発表できなくなった[1]。須藤は1枚目のアルバム『十七歳の地図』(1983年)の収録曲である「街の風景」から尾崎の音楽活動は始まり、本作で10代としての作品が完了した事に触れ、「はいつくばりながら街を見渡していって、最後に、街の風景の中に本当に眼をこらして見なきゃわからないような、小さな花のことを歌って終えたのは、ひとつの非常に美しい物語の終末だったという気がする」と述べている[1]。その他にも須藤は本作にはリズムのノリがおかしい所が多くあると指摘したがそれが問題ないほどすごい曲であると述べ、また尾崎がスーツにネクタイの姿で歌った曲は本作だけであった事から「なんだか、この曲を歌うために尾崎さんは存在した、っていう気さえしますね」と述べた他、「Forget-me-not」というタイトルが「僕を忘れないで」という意味であるとした上で「自分にとっては実はとても重たい曲で、デリケートな曲でもあるんです」と述べている[7]。
リリース
元々は3枚目のアルバム『壊れた扉から』(1985年)に収録されていたバラード曲であるが、映画主題歌として使用されたため、「OH MY LITTLE GIRL」との両A面として初めてシングルカットされ、尾崎の10回忌である2001年4月25日にソニー・ミュージックレコーズより12センチCDで発売された。
また、同時収録された「OH MY LITTLE GIRL」は、シングル「十七歳の地図」(1984年)、「OH MY LITTLE GIRL」(1994年)に続き、3度目のシングル収録となっている。この音源はリマスターされ音質が向上している。
チャート成績
本作のシングル盤はオリコンチャートにおいて最高位52位、登場回数は3回、売り上げ枚数は1.7万枚となった。
ミュージック・ビデオ
2001年には尾崎のアートディレクターをつとめた田島照久によるミュージック・ビデオが製作され、ベスト・アルバム『13/71 - THE BEST SELECTION』(2004年)の初回限定盤に「FORGET-ME-NOT IMAGE CLIP BY TERUHISA TAJIMA」として収録されている。
ライブ・パフォーマンス
本作は全国コンサートツアー「TREES LINING A STREET」において7曲目、1夜限りの復活コンサートとなった東京ドーム公演「LIVE CORE」において8曲目に演奏されたが、1991年のコンサートツアー「TOUR 1991 BIRTH」では演奏されていない[10]。
メディアでの使用
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給による映画『LOVE SONG』(2001年)の主題歌として使用され、同映画にて須藤は音楽プロデューサーを担当している[11]。
カバー
- 槇原敬之 - トリビュート・アルバム『"BLUE" A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI』(2004年)に収録[12]。
- CHEMISTRY - コンセプト・アルバム『Hot Chemistry』(2005年)に収録。
- 謝霆鋒 - アルバム『毋忘我』(2006年)に収録。広東語によるバージョン。
- 美吉田月 - アルバム『pure flavor #2~key of love~』(2008年)に収録。
- 清水翔太 - 3枚目のアルバム『COLORS』(2011年)に収録[13][14]。
- Infinix - カバーアルバム『尾崎豊が教えてくれたこと』(2012年)に収録。
- Ms.OOJA - カバーアルバム『MAN -Love Song Covers 2-』(2013年)に収録[15]。
- 遠藤舞 - シングル「Baby Love」(2014年)に収録[16]。
- Acid Black Cherry - シングル「君がいない、あの日から…」(2014年)に収録[17]。
- 山崎育三郎 - カバーアルバム『1936 〜your songs〜』(2016年)に収録[18][19]
- ジェジュン - カバーアルバム『Love Covers』(2019年)に収録。フジテレビ系音楽番組『2018 FNS歌謡祭』(2018年)にて歌唱した[20]。
シングル収録曲
全作詞・作曲: 尾崎豊、全編曲: 西本明。 | ||
# | タイトル | 時間 |
---|---|---|
1. | 「Forget-me-not」 | |
2. | 「OH MY LITTLE GIRL」 | |
合計時間: |
スタッフ・クレジット
参加ミュージシャン
スタッフ
- 須藤晃 - プロデューサー
- 助川健 - レコーディング、ミックス・エンジニア
- 田島照久 - デザイン、アート・ディレクション、写真撮影
- 渡邉茂実 - セカンド・エンジニア
- 大野邦彦 - セカンド・エンジニア
- 中村悦弘 - アシスタント・エンジニア
- 鈴木浩二 - アシスタント・エンジニア
- 田和一樹 - アシスタント・ディレクター
- 笠井鉄平 - マスタリング・エンジニア
- 浜野啓介 - ソニー・レコード・プロモーション・スタッフ
リリース履歴
No. | 日付 | レーベル | 規格 | 規格品番 | 最高順位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2001年4月25日 | ソニー・ミュージックレコーズ | 12センチCD | SRCL5075 | 52位 | 「OH MY LITTLE GIRL」との両A面シングル |
収録アルバム
- スタジオ音源
- 『壊れた扉から』(1985年)
- 『愛すべきものすべてに』(1996年)
- 『13/71 - THE BEST SELECTION』(2004年)
- 『WEDNESDAY 〜LOVE SONG BEST OF YUTAKA OZAKI』(2008年)
- 『I LOVE YOU〜BALLADE BEST』(2011年)
- 『ALL TIME BEST』(2013年)
- ライブ音源
- 『MISSING BOY』(1997年) - 1987年8月30日の有明コロシアム公演から収録。
- 『LIVEBEAT BOX』(2012年) - 1987年8月29日の有明コロシアム公演から収録。
- 『LIVE CORE LIMITED VERSION YUTAKA OZAKI IN TOKYO DOME 1988/9/12』(2013年) - 1988年9月12日の東京ドーム公演から収録。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m 須藤晃 1995, p. 101- 「『壊れた扉から』 Forget-me-not」より
- ^ 須藤晃 1998, p. 32- 「第一章 尾崎豊 追憶」より
- ^ 須藤晃 1995, p. 97- 「『壊れた扉から』 失くした1/2」より
- ^ 山内順仁 1989, p. 55- 「WORDS 1984 - 1988」より
- ^ a b 2012年11月25日放送のBSプレミアム番組『ヒーローたちの壮絶人生』より。
- ^ a b 須藤晃 1998, p. 40- 「第一章 尾崎豊 追憶」より
- ^ a b c d e f g h “ハイレゾで尾崎豊が蘇る【第二章】あの“瞬間”が蘇る”. SONY公式サイト. ソニーマーケティング (2014年8月16日). 2015年5月1日閲覧。
- ^ a b 須藤晃 1998, p. 41- 「第一章 尾崎豊 追憶」より
- ^ 見崎鉄 2018, p. 288- 「第三部 尾崎豊という事件(尾崎諭のためのノート)」より
- ^ 地球音楽ライブラリー 1999, pp. 180–182- 「YUTAKA OZAKI TOUR LIST」より
- ^ “映画 LOVE SONG (2001)について”. allcinema. スティングレイ. 2021年11月20日閲覧。
- ^ “尾崎豊トリビュート、公式ページにて特典映像ほか”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード (2004年3月16日). 2021年10月10日閲覧。
- ^ “清水翔太ニューアルバムは尾崎豊の名曲カバー含む充実作”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2011年2月9日). 2021年10月10日閲覧。
- ^ “清水翔太、ニュー・アルバム『COLORS』で尾崎豊の名曲をカヴァー”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード (2011年2月9日). 2021年10月10日閲覧。
- ^ “Ms.OOJA、ラブソング縛りのカバーアルバム“男性編”完成”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2013年10月21日). 2021年10月17日閲覧。
- ^ “遠藤舞、3rdシングル収録のカバー曲「Forget-me-not」で親子共演”. BARKS. ジャパンミュージックネットワーク (2014年7月25日). 2021年10月10日閲覧。
- ^ “Acid Black Cherryカバー集でサザン、AKB48、絢香、ブルハ、ミスチル歌う”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2016年8月9日). 2021年10月10日閲覧。
- ^ “山崎育三郎カバーアルバムに「女々しくて」「モーツァルト!」劇中歌など11曲”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2016年6月22日). 2021年11月20日閲覧。
- ^ “山崎育三郎「1936」より、「君は薔薇より美しい」を歌い上げる動画公開”. ステージナタリー. ナターシャ (2016年6月25日). 2021年10月17日閲覧。
- ^ 村上夏菜 (2018年12月12日). “ToshIとジェジュン、『FNS歌謡祭』で尾崎豊の名曲どうカバーする? シンガーとしての魅力に迫る”. リアルサウンド. blueprint. 2021年11月20日閲覧。
参考文献
- 山内順仁『尾崎豊写真集 [WORKS]』ソニー・マガジンズ、1989年7月31日、55頁。ISBN 9784789704670。
- 須藤晃『尾崎豊が伝えたかったこと』主婦と生活社、1995年4月24日、97, 101頁頁。ISBN 9784391117417。
- 須藤晃『尾崎豊 覚え書き』(書籍『時間がなければ自由もない―尾崎豊覚書―』(ISBN 9784789707497) 文庫版)小学館文庫、1998年1月1日(原著1994年5月17日)、32 - 41頁。ISBN 9784094021011。
- 『地球音楽ライブラリー 尾崎豊』TOKYO FM出版、1999年11月29日、180 - 182頁。ISBN 9784887450417。
- 見崎鉄『盗んだバイクと壊れたガラス 尾崎豊の歌詞論』アルファベータブックス、2018年6月10日、288頁。ISBN 9784865980554。