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| IUPACName = (2R,3R,4R,5R)-2-(6-アミノプリン-9-イル)- 5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3,4-ジオール |
| IUPACName = (2R,3R,4R,5R)-2-(6-アミノプリン-9-イル)- 5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3,4-ジオール |
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'''アデノシン''' |
'''アデノシン'''(''Adenosine'')とは、[[アデニン]]と[[リボース]]からなる[[ヌクレオシド]]である。アデニンとリボースは、β-N<sub>9</sub>-グリコシド結合している。地球生物の生体内に普遍的に見られる物質の1つである。 |
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== 構造 == |
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アデノシンの分子式はC<sub>10</sub>H<sub>13</sub>N<sub>5</sub>O<sub>4</sub>であるため、分子量は約267である。ところで、アデノシンのアデニンは[[プリン塩基]]の1つであり、平面的な分子であり、構造的に嵩張っている。そして、アデニンの9位の窒素に付いていた水素と、リボースの1位の炭素に付いていたヒドロキシ基とが、[[脱水縮合]]している。 |
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この関係で、リボースに[[グリコシド結合]]した場合には、[[単結合]]であっても、その単結合を軸とした回転が、立体障害のために制限される<ref name="M_G_R_IdHarperBiochemistry_ed27_p320">Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.320 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref>。この結果、アデニンとリボースは、[[シン形]](syn form)と[[アンチ形]](anti form)の2種類の構造を採り得る<ref name="M_G_R_IdHarperBiochemistry_ed27_p320">Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.320 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref>。なお、天然にはシン形もアンチ形の両方が存在するものの、エネルギー的に有利なアンチ形の方が多い<ref><!--間のページは関連性が薄いため、勝手にp.320 - p.337などとせぬ事。-->Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.320、p.336、p.337 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3<!--主に、p.320ですけれど、恐らくp.337の図も見た方がアンチ形が自然だと感覚的に判り易いと思います。また、p.336も参考にすると良いでしょう。--></ref>。 |
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== 生理学・生化学 == |
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[[カフェイン]]や[[エリタデニン]]等のアデノシン[[アナログ]]によって、その作用が抑制される。 |
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アデノシンは、生体内で生合成されるだけでなく、様々な分子の部品の一部として使われている。また、アデノシン自体も、ヒトなどでは生理活性を有する。 |
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=== 生理活性 === |
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アデノシンを配合したクリームや[[マイクロニードル]]加工されたものが、老化による[[皺|シワ]]の改善のために使われており、共に有効とされ約20人が参加した試験では安全性の問題は見られなかった<ref name="pmid30375189">{{cite journal |authors=Kang G, Kim S, Yang H, Jang M, Chiang L, Baek JH, Ryu JH, Choi GW, Jung H |title=Combinatorial application of dissolving microneedle patch and cream for improvement of skin wrinkles, dermal density, elasticity, and hydration |journal=J Cosmet Dermatol |volume= |issue= |pages= |date=October 2018 |pmid=30375189 |doi=10.1111/jocd.12807 |url=}}</ref><ref name="pmid29574973">{{cite journal |authors=Kang G, Tu TNT, Kim S, Yang H, Jang M, Jo D, Ryu J, Baek J, Jung H |title=Adenosine-loaded dissolving microneedle patches to improve skin wrinkles, dermal density, elasticity and hydration |journal=Int J Cosmet Sci |volume=40 |issue=2 |pages=199–206 |date=April 2018 |pmid=29574973 |doi=10.1111/ics.12453 |url=}}</ref>。84人が被験者となりアデノシンクリームとマイクロニードル加工の[[ヒアルロン酸]]を使い、これら単独と併用を比較した試験では、目の周りのシワの改善度に有意な差は見られず、安全性の問題もなかった<ref name="pmid28987023">{{cite journal |authors=Hong JY, Ko EJ, Choi SY, Li K, Kim AR, Park JO, Kim BJ |title=Efficacy and safety of a novel, soluble microneedle patch for the improvement of facial wrinkle |journal=J Cosmet Dermatol |volume=17 |issue=2 |pages=235–241 |date=April 2018 |pmid=28987023 |doi=10.1111/jocd.12426 |url=}}</ref>。 |
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アデノシンは[[アデノシン受容体]]の[[アゴニスト]]である<ref name="KBH_kk_p254">小林 静子、馬場 広子、平井 みどり 編集 『新しい機能形態学 - ヒトの成り立ちとその働き(第2版)』 p.254 廣川書店 2007年3月25日発行 ISBN 978-4-567-51561-0</ref>。ただし、アデノシン受容体にもサブタイプが存在する。例えば、A<sub>1</sub>受容体と、A<sub>2</sub>受容体が存在し、受容体によって作用が異なる。以下に、その例を挙げる。 |
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==== 血管平滑筋 ==== |
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アデノシンは、様々な理由で細胞内から細胞外へ分泌される事が知られている。例えば、異常な低酸素におかれた組織の細胞からも、アデノシンは分泌される<ref name="M_K_Human_Physiology_p32">森本 武利・彼末 一之(編集)『やさしい生理学(改訂第5版)』 p.32 南江堂 2005年10月1日発行 ISBN 978-4-524-23967-2</ref>。低酸素状態に陥った組織の細胞からアデノシンが分泌されると、付近の血管の平滑筋に作用して、これを受けて血管平滑筋が弛緩する事で血管を拡張させて、局所で血流を増加させようとする<ref name="M_K_Human_Physiology_p32" /><ref group="注釈">ただし、局所で血管を拡張させて血流を増加させようとする因子は、アデノシンだけではない。ヒスタミンや一酸化窒素なども、分泌されると血管を拡張させようとする。反対に、エンドセリンやセロトニンなどは、分泌されると血管を収縮させようとする。詳しくは、生理学の教科書などを参照の事。</ref>。また、細胞での代謝活動が亢進した際にも、アデノシンは細胞外へと放出される<ref name="KBH_kk_p254">小林 静子、馬場 広子、平井 みどり 編集 『新しい機能形態学 - ヒトの成り立ちとその働き(第2版)』 p.254 廣川書店 2007年3月25日発行 ISBN 978-4-567-51561-0</ref>。例えば、骨格筋が激しい運動を行っている際にも、アデノシンが細胞外へと放出され、これが周囲の血管平滑筋に作用して、血管を弛緩させる<ref name="KBH_kk_p254" />。骨格筋への血流を増加させる要因の1つである事も知られている。 |
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なお、この血管を弛緩させる作用は、血管平滑筋のA<sub>2</sub>受容体がアデノシンを検知した際の反応である<ref name="KBH_kk_p254" />。実は、腎臓の[[輸入細動脈]]の血管平滑筋には、A<sub>1</sub>受容体が発現しており、こちらにアデノシンが作用すると、逆に輸入細動脈は収縮する<ref name="KBH_kk_p254" />。しかしながら、ほとんどの血管では、A<sub>2</sub>受容体にアデノシンが作用した結果として発生する血管の弛緩作用の方が、より優位である<ref name="KBH_kk_p254" />。 |
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==== 心筋 ==== |
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心筋にもアデノシンA<sub>1</sub>受容体が発現しており、心筋のアデノシンA<sub>1</sub>受容体がアデノシンを検知すると、心臓の活動量を低下させる<ref name="KBH_kk_p254">小林 静子、馬場 広子、平井 みどり 編集 『新しい機能形態学 - ヒトの成り立ちとその働き(第2版)』 p.254 廣川書店 2007年3月25日発行 ISBN 978-4-567-51561-0</ref>。 |
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==== 中枢神経系 ==== |
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アデノシンは神経伝達物質<!--神経伝達物質ではないので、神経伝達物質への内部リンク不要。-->ではないものの、中枢神経系でもニューロンやグリア細胞から細胞外へと遊離して、神経系の活動を調節する物質の1つである事が知られている<ref>小林 静子、馬場 広子、平井 みどり 編集 『新しい機能形態学 - ヒトの成り立ちとその働き(第2版)』 p.128 廣川書店 2007年3月25日発行 ISBN 978-4-567-51561-0</ref>。 |
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[[カフェイン]]はアデノシン受容体をブロックする、[[アンタゴニスト]]の1つである<ref name="N_I_pPharmacology_p193">重信 弘毅・石井 邦雄(編集)『パートナー薬理学』 p.193 南江堂 2007年4月15日発行 ISBN 978-4-524-40223-6</ref>。さらにカフェインは[[血液脳関門]]も突破するため、脳内でも作用する。したがって、カフェインによって、アデノシンの生理作用は抑制される。例えば、[[エリタデニン]]など、カフェイン以外のアデノシン受容体のアンタゴニストでも、同様にアデノシンの生理作用は抑制され、加えて、血液脳関門を突破する場合には、脳内でのアデノシンの生理作用も抑制する。 |
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=== 代謝・排泄 === |
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アデノシンは、[[アデノシンキナーゼ]]によってリン酸化され、[[アデノシン一リン酸|AMP]]に変換される<ref>Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.328 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref><ref group="注釈">AMPは生体内で、様々な場面で利用されるので、本稿では省略する。詳しくは[[アデノシン一リン酸]]の記事などを参照。</ref>。 |
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一方でアデノシンは[[アデノシンデアミナーゼ]]によって、[[プリン|プリン環]]に結合している[[アミノ基]]が取り外され<ref group="注釈">ただし、遺伝子疾患の{{仮リンク|アデノシンデアミナーゼ欠損症|en|adenosine deaminase deficiency}}の場合は、これが上手くゆかない。</ref>、[[イノシン]]に変換される場合もある<ref name="M_G_R_IdHarperBiochemistry_ed27_p332">Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.332 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref><ref group="注釈">なお、名前は似ているものの、[[イノシン]]と[[イノシトール]]は全くの別物である。</ref>。イノシンは、リボースが外されて[[ヒポキサンチン]]に変えられる<ref name="M_G_R_IdHarperBiochemistry_ed27_p332">Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.332 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref>。ヒポキサンチンの一部は、酵素によって[[5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸]]と反応させて、[[イノシン一リン酸|IMP]]に変換し、その後、多段階の反応を経て、AMPやGMPなどとして再利用される<ref>Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 pp.326 - 329 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref>。逆に余剰なヒポキサンチンは、ヒトの場合で[[尿酸]]まで酸化され、余剰な尿酸は尿中へと排泄される<ref group="注釈">一般に、[[ピリミジン|ピリミジン環]]に比べて、[[プリン|プリン環]]は水溶性が低い。このため、ヒトにおけるプリンの代謝物である尿酸は、[[痛風]]の原因物質として悪者扱いされる場合も見られる。しかし、一方で尿酸は、[[抗酸化物質]]として生体を酸化ストレスから守っている側面もある。</ref>。参考までに、[[ウリカーゼ]]を発現している動物は、尿酸を[[アラントイン]]に酸化して、さらに水溶性を高め<ref name="M_G_R_IdHarperBiochemistry_ed27_p332">Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.332 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3</ref>、これを尿中へと排泄する。 |
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== 応用 == |
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アデノシンを配合したクリームや[[マイクロニードル]]加工された製品が、老化による[[皺|シワ]]の改善のために使われており、共に有効とされ約20人が参加した試験では安全性の問題は見られなかった<ref name="pmid30375189">{{cite journal |
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|title = Combinatorial application of dissolving microneedle patch and cream for improvement of skin wrinkles, dermal density, elasticity, and hydration |
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|authors = Kang G, Kim S, Yang H, Jang M, Chiang L, Baek JH, Ryu JH, Choi GW, Jung H |
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|title = Adenosine-loaded dissolving microneedle patches to improve skin wrinkles, dermal density, elasticity and hydration |
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|title = Efficacy and safety of a novel, soluble microneedle patch for the improvement of facial wrinkle |
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|authors = Hong JY, Ko EJ, Choi SY, Li K, Kim AR, Park JO, Kim BJ |
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|journal = J Cosmet Dermatol |volume=17 |issue=2 |pages=235–241 |date=April 2018 |
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}}</ref>。 |
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== 関連分子 == |
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アデノシンに関連する分子は、地球生物の生体内で重要な役割を担っている。 |
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=== アデニン === |
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[[デオキシリボ核酸|DNA]]や[[リボ核酸|RNA]]の塩基の1つとして遺伝情報の記録に用いられている<ref group="注釈">ヒトなどは遺伝情報はDNAに記録してあるものの、ウイルスの中には遺伝情報をRNAに記録している場合がある。なお、遺伝情報を転写したRNAにも、アデノシンは塩基の1つとして用いられている。なお、DNAに関しては、[[リボヌクレオチドレダクターゼ]]も参照。</ref>。また、m-RNAなどの含めた遺伝情報に関連した分子以外に、当然ながら[[リボソーム]]や{{仮リンク|リボザイム|en|ribozyme}}などにも、塩基の1つとして結合している。 |
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=== ATP、ADP、AMP、cAMP === |
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なお、[[ヌクレオチダーゼ]]の作用によって、ATPは[[アデニル酸]]を経て、アデノシンに分解される事も知られている<ref>小林 静子、馬場 広子、平井 みどり 編集 『新しい機能形態学 - ヒトの成り立ちとその働き(第2版)』 p.124 廣川書店 2007年3月25日発行 ISBN 978-4-567-51561-0</ref>。また、植物では[[アデノシン一リン酸|AMP]]を利用して、多段階の反応を経て、植物の発育を調節する[[サイトカイニン]]の合成の際に、アデノシンのプリン塩基の部分を供与するように<ref>幸田 泰則・桃木 芳枝(編著)『植物生理学 - 分子から個体へ』 pp.127 - 129 三共出版 2003年10月25日発行 ISBN 4-7827-0469-0</ref>、動物以外の代謝などにもアデノシンの関連物質は関わっている。 |
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=== S-アデノシルメチオニン === |
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[[S-アデノシルメチオニン]]は、アデノシンのリボースの5位の炭素に、メチオニンの硫黄が結合し、硫黄が正電荷を帯びた分子である。ヒトなどで、[[メチル基]]の供与体として知られる。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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<references group="注釈"/> |
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=== 出典 === |
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== 関連項目 == |
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* [[ヌクレオシド]](nucleoside)と[[ヌクレオチド]](nucleotide) |
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* [[デノボ合成]](''de novo'' synthesis)と[[サルベージ経路]](salvage pathway) |
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{{核酸塩基}} |
{{核酸塩基}} |
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{{Chem-stub}} |
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{{Normdaten}} |
{{Normdaten}} |
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{{DEFAULTSORT:あてのしん}} |
{{DEFAULTSORT:あてのしん}} |
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[[Category:生体物質]] |
[[Category:生体物質]] |
2021年8月30日 (月) 22:42時点における版
アデノシン | |
---|---|
(2R,3R,4R,5R)-2-(6-アミノプリン-9-イル)- 5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3,4-ジオール | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 58-61-7 |
KEGG | C00212 |
| |
特性 | |
化学式 | C10H13N5O4 |
モル質量 | 267.242 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
アデノシン(Adenosine)とは、アデニンとリボースからなるヌクレオシドである。アデニンとリボースは、β-N9-グリコシド結合している。地球生物の生体内に普遍的に見られる物質の1つである。
構造
アデノシンの分子式はC10H13N5O4であるため、分子量は約267である。ところで、アデノシンのアデニンはプリン塩基の1つであり、平面的な分子であり、構造的に嵩張っている。そして、アデニンの9位の窒素に付いていた水素と、リボースの1位の炭素に付いていたヒドロキシ基とが、脱水縮合している。
この関係で、リボースにグリコシド結合した場合には、単結合であっても、その単結合を軸とした回転が、立体障害のために制限される[1]。この結果、アデニンとリボースは、シン形(syn form)とアンチ形(anti form)の2種類の構造を採り得る[1]。なお、天然にはシン形もアンチ形の両方が存在するものの、エネルギー的に有利なアンチ形の方が多い[2]。
生理学・生化学
アデノシンは、生体内で生合成されるだけでなく、様々な分子の部品の一部として使われている。また、アデノシン自体も、ヒトなどでは生理活性を有する。
生理活性
アデノシンはアデノシン受容体のアゴニストである[3]。ただし、アデノシン受容体にもサブタイプが存在する。例えば、A1受容体と、A2受容体が存在し、受容体によって作用が異なる。以下に、その例を挙げる。
血管平滑筋
アデノシンは、様々な理由で細胞内から細胞外へ分泌される事が知られている。例えば、異常な低酸素におかれた組織の細胞からも、アデノシンは分泌される[4]。低酸素状態に陥った組織の細胞からアデノシンが分泌されると、付近の血管の平滑筋に作用して、これを受けて血管平滑筋が弛緩する事で血管を拡張させて、局所で血流を増加させようとする[4][注釈 1]。また、細胞での代謝活動が亢進した際にも、アデノシンは細胞外へと放出される[3]。例えば、骨格筋が激しい運動を行っている際にも、アデノシンが細胞外へと放出され、これが周囲の血管平滑筋に作用して、血管を弛緩させる[3]。骨格筋への血流を増加させる要因の1つである事も知られている。
なお、この血管を弛緩させる作用は、血管平滑筋のA2受容体がアデノシンを検知した際の反応である[3]。実は、腎臓の輸入細動脈の血管平滑筋には、A1受容体が発現しており、こちらにアデノシンが作用すると、逆に輸入細動脈は収縮する[3]。しかしながら、ほとんどの血管では、A2受容体にアデノシンが作用した結果として発生する血管の弛緩作用の方が、より優位である[3]。
心筋
心筋にもアデノシンA1受容体が発現しており、心筋のアデノシンA1受容体がアデノシンを検知すると、心臓の活動量を低下させる[3]。
中枢神経系
アデノシンは神経伝達物質ではないものの、中枢神経系でもニューロンやグリア細胞から細胞外へと遊離して、神経系の活動を調節する物質の1つである事が知られている[5]。
アデノシン受容体のアンタゴニスト
カフェインはアデノシン受容体をブロックする、アンタゴニストの1つである[6]。さらにカフェインは血液脳関門も突破するため、脳内でも作用する。したがって、カフェインによって、アデノシンの生理作用は抑制される。例えば、エリタデニンなど、カフェイン以外のアデノシン受容体のアンタゴニストでも、同様にアデノシンの生理作用は抑制され、加えて、血液脳関門を突破する場合には、脳内でのアデノシンの生理作用も抑制する。
代謝・排泄
アデノシンは、アデノシンキナーゼによってリン酸化され、AMPに変換される[7][注釈 2]。
一方でアデノシンはアデノシンデアミナーゼによって、プリン環に結合しているアミノ基が取り外され[注釈 3]、イノシンに変換される場合もある[8][注釈 4]。イノシンは、リボースが外されてヒポキサンチンに変えられる[8]。ヒポキサンチンの一部は、酵素によって5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸と反応させて、IMPに変換し、その後、多段階の反応を経て、AMPやGMPなどとして再利用される[9]。逆に余剰なヒポキサンチンは、ヒトの場合で尿酸まで酸化され、余剰な尿酸は尿中へと排泄される[注釈 5]。参考までに、ウリカーゼを発現している動物は、尿酸をアラントインに酸化して、さらに水溶性を高め[8]、これを尿中へと排泄する。
応用
アデノシンを配合したクリームやマイクロニードル加工された製品が、老化によるシワの改善のために使われており、共に有効とされ約20人が参加した試験では安全性の問題は見られなかった[10][11]。84人を被験者として、アデノシンクリームとマイクロニードル加工のヒアルロン酸を使い、これら単独と併用を比較した試験では、目の周りのシワの改善度に有意な差は見られなかったものの、安全性の問題も無かった[12]。
関連分子
アデノシンに関連する分子は、地球生物の生体内で重要な役割を担っている。
アデニン
DNAやRNAの塩基の1つとして遺伝情報の記録に用いられている[注釈 6]。また、m-RNAなどの含めた遺伝情報に関連した分子以外に、当然ながらリボソームやリボザイムなどにも、塩基の1つとして結合している。
ATP、ADP、AMP、cAMP
生化学過程でもATPやADPの一部としてエネルギー輸送に関わる。また、ADPなどは情報伝達に関わる事もある。加えて、cAMPは細胞内のシグナル伝達に関わったりする。
なお、ヌクレオチダーゼの作用によって、ATPはアデニル酸を経て、アデノシンに分解される事も知られている[13]。また、植物ではAMPを利用して、多段階の反応を経て、植物の発育を調節するサイトカイニンの合成の際に、アデノシンのプリン塩基の部分を供与するように[14]、動物以外の代謝などにもアデノシンの関連物質は関わっている。
S-アデノシルメチオニン
S-アデノシルメチオニンは、アデノシンのリボースの5位の炭素に、メチオニンの硫黄が結合し、硫黄が正電荷を帯びた分子である。ヒトなどで、メチル基の供与体として知られる。
脚注
注釈
- ^ ただし、局所で血管を拡張させて血流を増加させようとする因子は、アデノシンだけではない。ヒスタミンや一酸化窒素なども、分泌されると血管を拡張させようとする。反対に、エンドセリンやセロトニンなどは、分泌されると血管を収縮させようとする。詳しくは、生理学の教科書などを参照の事。
- ^ AMPは生体内で、様々な場面で利用されるので、本稿では省略する。詳しくはアデノシン一リン酸の記事などを参照。
- ^ ただし、遺伝子疾患のアデノシンデアミナーゼ欠損症の場合は、これが上手くゆかない。
- ^ なお、名前は似ているものの、イノシンとイノシトールは全くの別物である。
- ^ 一般に、ピリミジン環に比べて、プリン環は水溶性が低い。このため、ヒトにおけるプリンの代謝物である尿酸は、痛風の原因物質として悪者扱いされる場合も見られる。しかし、一方で尿酸は、抗酸化物質として生体を酸化ストレスから守っている側面もある。
- ^ ヒトなどは遺伝情報はDNAに記録してあるものの、ウイルスの中には遺伝情報をRNAに記録している場合がある。なお、遺伝情報を転写したRNAにも、アデノシンは塩基の1つとして用いられている。なお、DNAに関しては、リボヌクレオチドレダクターゼも参照。
出典
- ^ a b Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.320 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3
- ^ Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.320、p.336、p.337 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3
- ^ a b c d e f g 小林 静子、馬場 広子、平井 みどり 編集 『新しい機能形態学 - ヒトの成り立ちとその働き(第2版)』 p.254 廣川書店 2007年3月25日発行 ISBN 978-4-567-51561-0
- ^ a b 森本 武利・彼末 一之(編集)『やさしい生理学(改訂第5版)』 p.32 南江堂 2005年10月1日発行 ISBN 978-4-524-23967-2
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