「和歌山毒物カレー事件」の版間の差分
加筆・出典追加 タグ: サイズの大幅な増減 |
|||
2行目: | 2行目: | ||
{{Infobox 事件・事故 |
{{Infobox 事件・事故 |
||
| 名称 = 和歌山毒物カレー事件 |
| 名称 = 和歌山毒物カレー事件 |
||
| 場所 = {{JPN}}・[[和歌山県]][[和歌山市]]園部1013番地の5(事件現場:[[夏祭り]]の会場){{Sfn|和歌山地裁|2003|p=2}} |
| 場所 = {{JPN}}・[[和歌山県]][[和歌山市]]園部1013番地の5(事件現場:[[夏祭り]]<ref group="注" name="夏祭り"/>の会場){{Sfn|和歌山地裁|2003|p=2}} |
||
| 画像 = {{Infobox mapframe|frame-width=300|zoom=11|type=point}} |
| 画像 = {{Infobox mapframe|frame-width=300|zoom=11|type=point}} |
||
| 緯度度=34 |緯度分=15 |緯度秒=35.6544 |
| 緯度度=34 |緯度分=15 |緯度秒=35.6544 |
||
14行目: | 14行目: | ||
| 武器 = [[亜ヒ酸]]{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
| 武器 = [[亜ヒ酸]]{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
||
| 攻撃側人数 = 1人{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
| 攻撃側人数 = 1人{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
||
| 標的 = |
| 標的 = 夏祭りに集まった園部地区の住民 |
||
| 死亡 = 4人{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
| 死亡 = 4人{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
||
| 負傷 = 63人{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
| 負傷 = 63人{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}} |
||
23行目: | 23行目: | ||
| 刑事訴訟 = [[日本における死刑|死刑]](上告棄却により確定<ref name="中日新聞2009-05-21"/> / [[日本における収監中の死刑囚の一覧|未執行]]) |
| 刑事訴訟 = [[日本における死刑|死刑]](上告棄却により確定<ref name="中日新聞2009-05-21"/> / [[日本における収監中の死刑囚の一覧|未執行]]) |
||
| 管轄 = |
| 管轄 = |
||
* [[和歌山県警察]]([[刑事部 |
* [[和歌山県警察]]([[刑事部|捜査一課]]・[[和歌山東警察署]])<ref name="読売新聞1998-07-27"/> |
||
* [[和歌山地方検察庁]]・[[大阪高等検察庁]] |
* [[和歌山地方検察庁]]・[[大阪高等検察庁]] |
||
}} |
}} |
||
'''和歌山毒物カレー事件'''(わかやまどくぶつカレーじけん)とは、[[1998年]]([[平成]]10年)[[7月25日]]夕方に[[和歌山県]][[和歌山市]]園部で発生した毒物混入・大量殺傷事件である。またこの事件は[[冤罪]]の可能性も指摘されている。冤罪の可能性については後述を参照。 |
'''和歌山毒物カレー事件'''(わかやまどくぶつカレーじけん)とは、[[1998年]]([[平成]]10年)[[7月25日]]夕方に[[和歌山県]][[和歌山市]]園部で発生した毒物混入・大量殺傷事件である。またこの事件は[[冤罪]]の可能性も指摘されている。冤罪の可能性については後述を参照。 |
||
地区で行われた[[夏祭り]]において提供された[[カレーライス]]に[[毒|毒物]]が混入され、カレーを食べた67人が急性[[ヒ素中毒]]になり、うち4人が死亡した<ref>{{Cite news|title=和歌山「毒物カレー事件」から22年 現場の空き地で静かに祈り|newspaper=[[NHKニュース]]|date=2020-07-25|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200725/k10012532021000.html|publisher=[[日本放送協会]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200725021724/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200725/k10012532021000.html|archivedate=2020年7月25日}}</ref>。'''和歌山カレー事件'''とも呼ばれる<ref>{{Cite news |
地区で行われた[[夏祭り]]{{Efn2|name="夏祭り"|夏祭りは住民の親睦を図るため<ref name="毎日新聞1998-07-27"/>、1992年(平成4年)に園部第14自治会が主導して毎年7月の最終土曜日に開催していた<ref>『読売新聞』1998年7月28日東京夕刊第4版第一社会面11頁「青酸カレー 定番メニュー狙う? 段取り熟知か 30分前には混入」(読売新聞東京本社) - 『読売新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1399頁</ref>。ただし、1997年(平成9年)は[[病原性大腸菌|病原性大腸菌O157]]の影響で中止されていた<ref name="毎日新聞1998-07-27"/>。事件後、自治会の夏祭りは開かれていない<ref name="中日新聞2018-07-24"/>。}}において提供された[[カレーライス]]に[[毒|毒物]]が混入され、カレーを食べた67人が急性[[ヒ素中毒]]になり、うち4人が死亡した<ref>{{Cite news|title=和歌山「毒物カレー事件」から22年 現場の空き地で静かに祈り|newspaper=[[NHKニュース]]|date=2020-07-25|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200725/k10012532021000.html|publisher=[[日本放送協会]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200725021724/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200725/k10012532021000.html|archivedate=2020年7月25日}}</ref>。'''和歌山カレー事件'''とも呼ばれる<ref>{{Cite news|title=林死刑囚の再審請求、地裁が棄却 和歌山カレー事件|newspaper=[[朝日新聞デジタル]]|date=2017-03-29|author1=真田嶺|author2=白木琢歩|url=http://www.asahi.com/articles/ASK3X7WFLK3XPTIL059.html|accessdate=2021-02-23|publisher=朝日新聞社|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210223071548/https://www.asahi.com/articles/ASK3X7WFLK3XPTIL059.html|archivedate=2021年2月23日}}</ref>。後に混入された毒物は[[亜ヒ酸]]{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}}と判明し、[[被疑者]]として[[逮捕 (日本法)|逮捕]]・[[被告人]]として[[起訴]]され、殺人・殺人未遂・詐欺の罪に問われた{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009}}主婦の'''林 眞須美'''(はやし ますみ)は[[無罪]]を訴えたが、第一審で[[日本における死刑|死刑]][[判決 (日本法)|判決]]を受け、[[控訴]]・[[上告]]も棄却されたため、[[2009年]]に[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]で死刑が[[確定判決|確定した]]。 |
||
[[2020年]]([[令和]]2年)[[9月27日]]時点で{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=271}}林眞須美は[[死刑囚]]として[[大阪拘置所]]に[[日本における収監中の死刑囚の一覧|収監されている]]{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}}<!--←の日付「2020年9月27日」は『年報・死刑廃止2020』p.271、「大阪拘置所に収監されている」の記述は同書p.263とそれぞれ関連付けられた記述です。出典を置き去りにして本文の日付などだけを書き換えないでください(日付を更新したければより新しい出典を探してきて、出典ごと更新してください)。-->一方、2009年7月22日付で[[和歌山地方裁判所|和歌山地裁]]に[[再審]]請求を提起している<ref name="中日新聞2009-07-22"/>。 |
[[2020年]]([[令和]]2年)[[9月27日]]時点で{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=271}}林眞須美は[[死刑囚]]として[[大阪拘置所]]に[[日本における収監中の死刑囚の一覧|収監されている]]{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}}<!--←の日付「2020年9月27日」は『年報・死刑廃止2020』p.271、「大阪拘置所に収監されている」の記述は同書p.263とそれぞれ関連付けられた記述です。出典を置き去りにして本文の日付などだけを書き換えないでください(日付を更新したければより新しい出典を探してきて、出典ごと更新してください)。-->一方、2009年7月22日付で[[和歌山地方裁判所|和歌山地裁]]に[[再審]]請求を提起している<ref name="中日新聞2009-07-22"/>。 |
||
== 事件発生 == |
== 事件発生 == |
||
[[ファイル:Aerial photograph of the area around the Wakayama Poison Curry Incident, May 3, 2008.jpg|サムネイル|300px|事件現場周辺の航空写真(2008年撮影)。オレンジ枠で囲われた場所が事件現場の空き地(園部1013番地の5){{Sfn|和歌山地裁|2003|p=2}}、水色の★印はカレーが調理されていたガレージの箇所。赤枠で囲った場所は林眞須美の家(園部1014番地の1)<ref name="東京新聞1998-10-05"/>の跡地。『朝日新聞』 (2017) を参考に作成<ref>{{Cite news|title=林死刑囚の再審請求、地裁が棄却 和歌山カレー事件 > 事件発生当時の和歌山市園部地区|newspaper=朝日新聞デジタル|date=2017-03-29|author=真田嶺|author2=白木琢歩|url=https://www.asahi.com/articles/photo/AS20170329003507.html|accessdate=2021-02-23|publisher=朝日新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210223071543/https://www.asahi.com/articles/photo/AS20170329003507.html|archivedate=2021年2月23日}}</ref>。]] |
|||
1998年7月25日、和歌山市園部地区の新興住宅地にある自治会(和歌山市園部第14自治会)が主催した夏祭りで{{Sfn|和歌山地裁|2003|pp=1-2}}、提供されたカレーを食べた未成年者30人を含む'''合計67人'''{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}}が[[腹痛]]や[[吐き気]]などを訴えて病院に搬送された。異変に気付いた者が「カレー、ストップ!」と祭りのスタッフにそのカレーを出すのを直ちに止めるよう命じ、一連の嘔吐がカレーによるものと発覚した。 |
1998年7月25日、和歌山市園部地区の新興住宅地にある自治会(和歌山市園部第14自治会)が主催した夏祭り<ref group="注" name="夏祭り"/>で{{Sfn|和歌山地裁|2003|pp=1-2}}、提供されたカレーを食べた未成年者30人を含む'''合計67人'''{{Efn2|当初発表では患者数は66人とされていたが<ref name="毎日新聞1998-07-27"/>、7月27日になって新たに1人(軽症)が入院した<ref>『[[朝日新聞]]』1998年7月27日東京夕刊第4版第一社会面19頁「新たに1人入院」([[朝日新聞東京本社]]) - 『朝日新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1359頁</ref>。}}{{Sfn|最高裁第三小法廷|2009|p=1}}が[[腹痛]]や[[吐き気]]などを訴えて病院に搬送された<ref name="毎日新聞1998-07-27"/>。異変に気付いた者が「カレー、ストップ!」と祭りのスタッフにそのカレーを出すのを直ちに止めるよう命じ、一連の嘔吐がカレーによるものと発覚した。 |
||
中毒症状を起こした被害者67人のうち |
中毒症状を起こした被害者67人のうち、園部第14自治会の自治会長男性A(当時64歳)および副会長男性B(当時53歳)[[和歌山市立有功小学校]]4年生の男子児童C(当時10歳)と、[[開智中学校・高等学校 (和歌山県)|私立開智高校]]1年の女子生徒D(16歳)の'''計4人が死亡'''した<ref name="読売新聞1998-07-27">『[[読売新聞]]』1998年7月27日東京朝刊第14版一面1頁「カレーに青酸 4人死亡 夏祭り会場で混入 和歌山 66人中毒、42人入院 無差別殺人で捜査」([[読売新聞東京本社]]) - 『読売新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1425頁</ref>。被害者は会場で食べた者や、自宅に持ち帰って食べた者などで、嘔吐した場所も様々だったという。 |
||
[[和歌山県警察]]および<ref name="毎日新聞1998-07-27"/>和歌山市[[保健所]]は事件発生当初、集団[[食中毒]]を疑っていた{{Efn2|和歌山市保健所には25日22時ごろ、患者が搬送された一病院から「青酸化合物特有の瞳孔が閉じている症状が出た」という連絡があったが、他の病院に問い合わせても同様の報告はなかったため、保健所は毒物対応を具体的に指示しなかった<ref name="毎日新聞1998-07-27"/>。}}<ref>『[[毎日新聞]]』1998年7月27日東京朝刊第14版第二社会面30頁「「食べやんといて」 対応遅れ「99%食中毒と…」」([[毎日新聞東京本社]]) - 『毎日新聞』[[新聞縮刷版|縮刷版]] 1998年(平成10年)7月号1096頁</ref>が、和歌山県警[[科学捜査研究所]]が被害者の[[吐瀉物]]や容器に残っていたカレーを検査したところ、[[シアン化物|青酸化合物]]の反応が検出された<ref name="毎日新聞1998-07-27">『毎日新聞』1998年7月27日東京朝刊第14版一面1頁「和歌山・夏祭り カレーに青酸 4人死亡 何者かが混入の疑い 62人手当て、うち39人入院」(毎日新聞東京本社) - 『毎日新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1067頁</ref>。和歌山県警[[刑事部|捜査一課]]は「何者かが毒物を混入した無差別殺人事件の疑いが強い」と断定し、[[和歌山東警察署]]に捜査本部を設置した<ref name="読売新聞1998-07-27"/>。 |
|||
当初、[[保健所]]は[[食中毒]]によるものと判断したが、[[和歌山県警察]]は[[吐瀉物]]を検査し、[[青酸]]の反応が出たことから青酸中毒によるものと当初は判断された。しかし、症状が青酸中毒と合致しないという指摘を受け、[[警察庁]]の[[科学警察研究所]]が改めて調査した結果、[[亜ヒ酸]]の混入が判明した。この際、使用された毒物の組成を調べるために、[[SPring-8]]が使用された。亜ヒ酸に含まれる特定の不純物元素の量を比較して、異同識別が行われた。この為の重元素不純物の検出には『SPring-8の性能が必要』とされたためである<ref>{{cite web|url=http://www.spring8.or.jp/ja/about_us/whats_sp8/faq/#chap7|title=(7-1)和歌山毒物カレー事件の砒素分析はどのビームラインで、どの様に行われたかのでしょうか?|accessdate=2016-06-04}}</ref>。 |
|||
毒物については当初、死亡した自治会長Aの遺体を[[司法解剖]]した結果、心臓の血液や胃の内容物から青酸化合物が検出されたため、死因を[[シアン化物中毒|青酸化合物中毒]]と判断<ref name="読売新聞1998-07-27"/>。また、事件発生直後の鑑定では、青酸化合物を使った農薬などの二次製品に含まれる他の物質は検出されなかったため、県警は混入された毒物を「純粋な青酸化合物」に絞り、県外も含めて盗難・紛失事件がなかったか否かを捜査していた一方、[[ヒ素]]など他の毒物の検査は行っていなかった<ref>『中日新聞』1998年8月3日朝刊三面3頁「核心 青酸カレーヒ素混入 見直し迫られる犯人像 検出遅れ捜査に打撃」(中日新聞社)</ref>。しかし、A以外の死者3人の遺体からは青酸化合物は検出されなかった一方、Aの胃の内容物や、Bの吐瀉物、Cの食べ残しカレーからそれぞれヒ素が検出され<ref name="中日新聞1998-08-14"/>、8月2日には捜査本部が「食べ残しのカレーからヒ素が検出された」と発表<ref name="毒物カレー事件の経過"/>。同月6日には「混入されたヒ素は、[[亜ヒ酸]]またはその化合物」と発表された<ref name="毒物カレー事件の経過">『東京新聞』1998年10月25日朝刊社会面25頁「毒物カレー事件の経過」(中日新聞東京本社)</ref>。 |
|||
⚫ | |||
これを受け、捜査本部から「死因はヒ素中毒だった疑いがある」と報告を受けた[[警察庁]][[科学警察研究所]]が新たに鑑定を実施した結果、4人の心臓および自治会長以外の3人の心臓から採取した血液から、それぞれヒ素が検出された{{Efn2|この際、使用された毒物の組成を調べるために、[[SPring-8]]が使用された。亜ヒ酸に含まれる特定の不純物元素の量を比較して、異同識別が行われた。この為の重元素不純物の検出には『SPring-8の性能が必要』とされたためである<ref>{{cite web|url=http://www.spring8.or.jp/ja/about_us/whats_sp8/faq/#chap7|title=(7-1)和歌山毒物カレー事件の砒素分析はどのビームラインで、どの様に行われたかのでしょうか?|accessdate=2016-06-04}}</ref>。}}<ref name="中日新聞1998-08-14">『中日新聞』1998年8月14日朝刊第一社会面27頁「毒物カレー 4人の体内からヒ素 警察庁鑑定で検出 死因の変更を検討」(中日新聞社)</ref>。これを受け、捜査本部は10月5日、4人の死因を当初の「青酸中毒(およびその疑い)」から「ヒ素中毒」に変更した<ref>『東京新聞』1998年10月5日朝刊社会面23頁「死因は「ヒ素中毒」 カレー事件 県警が変更 和歌山カレー事件」(中日新聞東京本社)</ref>。 |
|||
⚫ | |||
=== 逮捕・起訴 === |
=== 逮捕・起訴 === |
||
49行目: | 54行目: | ||
|alias = |
|alias = |
||
|birth_date = {{生年月日と年齢|1961|7|22}}{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}} |
|birth_date = {{生年月日と年齢|1961|7|22}}{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}} |
||
|birth_place = {{JAP}}・[[和歌山県]][[有田市]](矢櫃地区)<ref>{{Cite web|url=https://www.akishobo.com/akichi/yagisawa/v8|title=殺人風土記 - 漁師町の女――和歌山毒物カレー事件|accessdate=2021-02-23|publisher=[[亜紀書房]]|author=[[八木澤高明]]|date=2017-04-19|website=ウェブマガジン「あき地」|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20201217180748/https://www.akishobo.com/akichi/yagisawa/v8|archivedate=2020-12-17}} - 『日本殺人巡礼』(2017年7月発汗)の著者によるウェブマガジン。</ref> |
|||
|birth_place = {{JAP}}・[[和歌山県]][[有田市]] |
|||
|住居 = {{JAP}}・和歌山県和歌山市園部1014番地の1(逮捕当時)<ref name="東京新聞1998-10-05">『[[東京新聞]]』1998年10月5日朝刊一面1頁「保険金疑惑の夫婦逮捕 和歌山 妻には殺人未遂容疑 知人の食事にヒ素混入 夫も別の詐欺容疑で 容疑は否認 カレー事件関連捜査 和歌山事件」([[中日新聞東京本社]])</ref> |
|||
|death_date = |
|death_date = |
||
|death_place = |
|death_place = |
||
62行目: | 68行目: | ||
|beginyear = [[1998年]][[7月25日]] |
|beginyear = [[1998年]][[7月25日]] |
||
|endyear = |
|endyear = |
||
|apprehended = [[1998年]][[10月4日]] |
|apprehended = [[1998年]][[10月4日]]<ref name="中日新聞1998-10-05"/> |
||
|occupation = |
|occupation = 元保険外交員<ref name="中日新聞1998-10-05"/> |
||
|conviction = [[2009年]]([[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]) |
|conviction = [[2009年]]([[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]) |
||
|sentence = [[日本における死刑|死刑]] |
|sentence = [[日本における死刑|死刑]] |
||
|配偶者 = 林 健治<ref group="注" name="林健治"/><ref name="中日新聞1998-10-05"/> |
|||
|収監場所 = [[大阪拘置所]]{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}}(2020年9月27日時点){{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=271}} |
|収監場所 = [[大阪拘置所]]{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}}(2020年9月27日時点){{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=271}} |
||
}} |
}} |
||
1998年10月4日、知人男性に対する殺人未遂と保険金詐欺の容疑で、元保険外交員で主婦の'''林 眞須美'''(はやし ますみ、[[1961年]]〈[[昭和]]36年〉7月22日{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}} - 、事件当時37歳)が、別の詐欺および同未遂容疑をかけられた元シロアリ駆除業者の夫・林健治{{Efn2|林健治は2014年、実名で妻・眞須美や篠田博之(月刊『創』編集長)とともに著書『和歌山カレー事件 獄中からの手紙』([[創出版]])を出版している{{Sfn|林眞須美|林健治|篠田博之|2014}}。}}とともに和歌山県警捜査一課・[[和歌山東警察署]]による捜査本部に逮捕され |
1998年10月4日、知人男性に対する殺人未遂と保険金詐欺の容疑で、元保険外交員で主婦の'''林 眞須美'''<ref name="中日新聞1998-10-05"/>(はやし ますみ、[[1961年]]〈[[昭和]]36年〉7月22日{{Sfn|年報・死刑廃止|2020|p=263}} - 、事件当時37歳)が、別の詐欺および同未遂容疑をかけられた元シロアリ駆除業者の夫・林健治{{Efn2|name="林健治"|林健治は2014年、実名で妻・眞須美や篠田博之(月刊『創』編集長)とともに著書『和歌山カレー事件 獄中からの手紙』([[創出版]])を出版している{{Sfn|林眞須美|林健治|篠田博之|2014}}。}}とともに和歌山県警捜査一課・[[和歌山東警察署]]による捜査本部に逮捕され<ref name="中日新聞1998-10-05">『[[中日新聞]]』1998年10月5日朝刊一面1頁「「保険金疑惑」の夫婦逮捕 詐欺容疑、妻は殺人未遂も 和歌山 ヒ素、知人の食事に 夫婦は全面否認」([[中日新聞社]])</ref>、2人とも同月25日に[[和歌山地方検察庁]]から[[起訴]]された。 |
||
10月26日には、眞須美が別の殺人未遂{{Efn2|知人男性(当時35歳)にヒ素入りのうどんを食べさせて殺害しようとした容疑<ref name="あの事件"/>。}}および詐欺容疑で、健治も眞須美と同じ詐欺容疑{{Efn2|林夫婦が共謀し、健治の病状を偽って高度障害保険金約1億3,700万円を詐取したとされる容疑<ref name="あの事件"/>。}}でそれぞれ再逮捕され、11月17日に追起訴された<ref name="あの事件">『中日新聞』1998年12月31日朝刊特集一面5頁「あの事件あの感動 主なニュース98年(6/6) 和歌山の毒物カレー事件」(中日新聞社)</ref>。 |
|||
11月18日、眞須美は健治らに対する殺人未遂容疑などで、健治も詐欺容疑で再逮捕され<ref name="あの事件"/>、12月9日には眞須美と健治がそれぞれ詐欺罪で起訴されたほか、眞須美は健治らを被害者とする殺人未遂罪でも追起訴された<ref>『東京新聞』1998年12月10日朝刊一面1頁「毒カレー事件から138日 真須美容疑者らを再逮捕 殺人容疑、ヒ素混入動機特定せず」(中日新聞東京本社)</ref>。 |
|||
さらに12月9日には、カレー |
さらに12月9日には、カレーの鍋に亜ヒ酸を混入した[[殺人罪 (日本)|殺人]]と殺人未遂の容疑で眞須美が再逮捕された<ref>『中日新聞』1998年12月9日夕刊一面1頁「真須美容疑者 毒物カレーで再逮捕 殺人と未遂 亜ヒ酸混入の疑い 和歌山県警 状況証拠重ね特定」(中日新聞社)<!--中日新聞では「'''真'''須美」表記--></ref>。同年末の12月29日に眞須美は和歌山地検により、殺人と殺人未遂の罪で[[和歌山地方裁判所]]へ起訴された<ref>『中日新聞』1998年12月9日朝刊一面1頁「真須美容疑者を起訴 毒物カレー 容疑否認のまま殺人罪 和歌山地検 動機は特定せず」(中日新聞社)<!--中日新聞では「'''真'''須美」表記--></ref>。 |
||
== 刑事裁判 == |
== 刑事裁判 == |
||
78行目: | 89行目: | ||
裁判で和歌山地方検察庁が提出した[[証拠]]は約1,700点。1審の開廷数は95回、約3年7か月に及んだ。直接証拠もなく、動機の解明もできていない状況の中、上告審では弁護側が「地域住民に対して無差別殺人を行う動機は全くない」と主張したのに対し、最高裁は判決で「動機が解明されていないことは、被告人が犯人であるとの認定を左右するものではない」と述べ、動機を解明することにこだわる必要がないという姿勢を示した<ref>[http://k1fighter2.web.fc2.com/Enzai/wakayamaCurry/wakayamaCurry090422.htm] 中日新聞 2009年4月22日</ref>。 |
裁判で和歌山地方検察庁が提出した[[証拠]]は約1,700点。1審の開廷数は95回、約3年7か月に及んだ。直接証拠もなく、動機の解明もできていない状況の中、上告審では弁護側が「地域住民に対して無差別殺人を行う動機は全くない」と主張したのに対し、最高裁は判決で「動機が解明されていないことは、被告人が犯人であるとの認定を左右するものではない」と述べ、動機を解明することにこだわる必要がないという姿勢を示した<ref>[http://k1fighter2.web.fc2.com/Enzai/wakayamaCurry/wakayamaCurry090422.htm] 中日新聞 2009年4月22日</ref>。 |
||
[[2002年]](平成14年)12月11日に開かれた第一審判決公判で和歌山地裁(小川育央裁判長)は被告人・林の殺意とヒ素混入を認めた上で「4人もの命が奪われた結果はあまりにも重大で、遺族の悲痛なまでの叫びを胸に刻むべきだ」と断罪し検察側の求刑通り被告人・林に'''死刑判決'''を言い渡した<ref name="中日新聞2002-12-12">『中日新聞』2002年12月12日朝刊 |
[[2002年]](平成14年)12月11日に開かれた第一審判決公判で和歌山地裁(小川育央裁判長)は被告人・林の殺意とヒ素混入を認めた上で「4人もの命が奪われた結果はあまりにも重大で、遺族の悲痛なまでの叫びを胸に刻むべきだ」と断罪し、検察側の求刑通り被告人・林に'''死刑判決'''を言い渡した<ref name="中日新聞2002-12-12">『中日新聞』2002年12月12日朝刊一面1頁「林真須美被告に死刑 毒物カレー事件和歌山地裁判決 ヒ素混入と殺意認定 激高説否定 動機不明のまま 被告側が即日控訴」(中日新聞社)<!--中日新聞では「'''真'''須美」表記--></ref>。被告人・林は判決を不服として[[大阪高等裁判所]]に即日[[控訴]]した<ref name="中日新聞2002-12-12"/>。 |
||
===控訴審=== |
===控訴審=== |
||
142行目: | 153行目: | ||
和歌山毒物カレー事件では、報道で「毒入りカレー」の文字が前面に出ていたため、[[カレーライス]]のイメージが悪化し、食品会社はカレーのCMを自粛し、料理番組でもカレーライスのレシピ紹介を取りやめた。また、テレビアニメ『[[たこやきマントマン]]』と『[[浦安鉄筋家族]]』では、ストーリーにカレーライスが出る回が放送されなかった{{Efn2|これらの回は、前者は再放送時に初放送され、後者は[[VHS]]ソフト化の際に収録された。}}。そして、日本ではちょうど[[夏祭り]]が各地で開催される時期だったことから、犯人逮捕前は、各地の夏祭りで食事の提供が自粛されるなどの騒動に発展した。 |
和歌山毒物カレー事件では、報道で「毒入りカレー」の文字が前面に出ていたため、[[カレーライス]]のイメージが悪化し、食品会社はカレーのCMを自粛し、料理番組でもカレーライスのレシピ紹介を取りやめた。また、テレビアニメ『[[たこやきマントマン]]』と『[[浦安鉄筋家族]]』では、ストーリーにカレーライスが出る回が放送されなかった{{Efn2|これらの回は、前者は再放送時に初放送され、後者は[[VHS]]ソフト化の際に収録された。}}。そして、日本ではちょうど[[夏祭り]]が各地で開催される時期だったことから、犯人逮捕前は、各地の夏祭りで食事の提供が自粛されるなどの騒動に発展した。 |
||
この他、前述の犠牲者である小学4年生の男子児童は |
この他、前述の犠牲者である小学4年生の男子児童は事件当時、[[和歌山市立有功小学校]]に通学していたが<ref name="isao_elementary_School">{{Cite web|url=https://www.wakayama-wky.ed.jp/isao-es/学校概要/沿革史/|title=沿革史|trans-title= |accessdate=2020-04-09|last= |first= |author= |authorlink= |coauthors= |year= |date=2010年(最終更新)|month= |format= |website=[[和歌山市立有功小学校]] 公式ウェブサイト|work=|publisher=和歌山市立 有功小学校|page=|pages=|quote=|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200409092450/https://www.wakayama-wky.ed.jp/isao-es/%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E6%A6%82%E8%A6%81/%E6%B2%BF%E9%9D%A9%E5%8F%B2/|archivedate=2020-04-09|deadlinkdate= |doi= |ref=}}</ref>、同小学校では事件発生から2017年時点でも、[[学校給食]]の献立でカレーライスが出されていない{{Efn2|2017年に有功小学校の校長は『[[産経新聞]]』記者の取材に対し、その理由を「'''何年たってもわが子を失った痛みは消えない。重く受け止めたい'''」と述べている<ref name="sankei_west-20170724"/>。}}<ref name="sankei_west-20170724">{{Cite news|title=和歌山毒物カレー事件から19年 犠牲の男児の通学先、今も給食にカレーのメニューなし|newspaper=産経新聞|date=2017-07-24|url=https://www.sankei.com/west/news/170724/wst1707240064-n1.html|publisher=産業経済新聞社|accessdate=2021-01-04|page=1|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210104154907/https://www.sankei.com/west/news/170724/wst1707240064-n1.html|archivedate=2021年1月4日}}</ref>。 |
||
=== 模倣犯の出現 === |
=== 模倣犯の出現 === |
||
162行目: | 173行目: | ||
* 逮捕前、自宅を取り囲む報道関係者たちに笑いながらホースで放水している姿を撮った映像が繰り返し使用され、ふてぶてしい印象付けがメディアによりなされたが、これについて後に夫は、報道が過熱し夜中中取り囲まれたが、彼らが蚊に刺されないよう殺虫剤を持って行ったりしたにもかかわらず、郵便受けから郵便を抜き取ったり、塀にはしごをかけ2階の子供部屋を[[盗撮]]したりされたため、真須美に「あいつらのぼせ上ってるから、[[記者会見]]する言うて集めて、上からいっぺん頭冷やしたれ」と命令したとした上で、「いかにもカレーに毒入れそうなおばはんの「絵」」にされたと語っている<ref>{{Cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56582|title=現代ビジネス - 和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか 決め手の「ヒ素鑑定」が揺らいでいる 田中ひかる 歴史社会学者|accessdate=2020-2-11}}</ref>。 |
* 逮捕前、自宅を取り囲む報道関係者たちに笑いながらホースで放水している姿を撮った映像が繰り返し使用され、ふてぶてしい印象付けがメディアによりなされたが、これについて後に夫は、報道が過熱し夜中中取り囲まれたが、彼らが蚊に刺されないよう殺虫剤を持って行ったりしたにもかかわらず、郵便受けから郵便を抜き取ったり、塀にはしごをかけ2階の子供部屋を[[盗撮]]したりされたため、真須美に「あいつらのぼせ上ってるから、[[記者会見]]する言うて集めて、上からいっぺん頭冷やしたれ」と命令したとした上で、「いかにもカレーに毒入れそうなおばはんの「絵」」にされたと語っている<ref>{{Cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56582|title=現代ビジネス - 和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか 決め手の「ヒ素鑑定」が揺らいでいる 田中ひかる 歴史社会学者|accessdate=2020-2-11}}</ref>。 |
||
* [[フジテレビ]]『[[ニュースJAPAN]]』で、キャスターの[[安藤優子]]が事件の注目人物であった逮捕前の林に電話インタビューを試みている。逮捕前だったこともあり、注目人物であった林の名前を自主規制音を被せて名前を匿名化していたが、編集ミスで1か所だけ自主規制音が入っていなかったためその部分だけ「林さんは…」という言葉がのって放送されてしまった。そのため、林から「おかげで外に買い物にも行けない。どうしてくれるのか?」と、猛抗議を受けた。 |
* [[フジテレビ]]『[[ニュースJAPAN]]』で、キャスターの[[安藤優子]]が事件の注目人物であった逮捕前の林に電話インタビューを試みている。逮捕前だったこともあり、注目人物であった林の名前を自主規制音を被せて名前を匿名化していたが、編集ミスで1か所だけ自主規制音が入っていなかったためその部分だけ「林さんは…」という言葉がのって放送されてしまった。そのため、林から「おかげで外に買い物にも行けない。どうしてくれるのか?」と、猛抗議を受けた。 |
||
* 林夫婦が住んでいた家(木造2階建て住宅・約180 [[平方メートル|㎡]])は2人の逮捕後、無人となり、壁などに落書きされたり、無断で敷地内に侵入したりする者が相次いでいたため、和歌山東署がパトロールを継続していたが<ref>『朝日新聞』2000年2月16日夕刊第一社会面15頁「和歌山カレー事件の林被告宅が全焼 1年以上無人、放火か」(朝日新聞東京本社)</ref>、2000年(平成12年)2月16日未明に[[放火]]され、全焼した{{Efn2|放火犯の男は同年4月3日に和歌山県警に[[非現住建造物等放火罪|非現住建造物等放火]]容疑で逮捕されたほか<ref name="朝日新聞2000-04-04"/>、放火する4日前(2月12日)には林宅に侵入して現金やセカンドバッグ・腕時計など(時価合計約21万3,500円相当)を盗んだとして、[[窃盗罪|窃盗]]容疑でも追送検された<ref>『朝日新聞』2000年4月26日大阪朝刊第一社会面35頁「林被告宅に放火4日前、窃盗も 逮捕の男、容疑で追送検 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)</ref>。男はそれらの罪で和歌山地裁に起訴され<ref>『朝日新聞』2000年6月16日大阪朝刊和歌山県版第一面31頁「被告、起訴事実認める 林真須美被告宅放火事件初公判 /和歌山」(朝日新聞大阪本社・和歌山総局)</ref>、2001年9月6日に「窃盗は計画的な犯行で、放火の手段も巧妙。また、住民に著しい危険・恐怖を与えた」として懲役8年を求刑されたが<ref>『朝日新聞』2001年9月7日大阪朝刊和歌山県版第一面29頁「「住民に恐怖」 眞須美被告宅を放火の被告に懲役8年求刑 /和歌山」(朝日新聞大阪本社・和歌山総局)</ref>、同年10月30日に和歌山地裁(小川育央裁判長)から「放火は衝動的・快楽的な犯行だが、犯行時は[[責任能力#責任無能力と限定責任能力|心神耗弱]]状態だった」として、懲役4年の実刑判決を受けた<ref>『朝日新聞』2001年10月31日大阪夕刊第一社会面15頁「被告に懲役4年 林真須美被告宅放火で和歌山地裁判決【大阪】」(朝日新聞大阪本社・和歌山総局)</ref>。}}<ref name="朝日新聞2000-04-04">『[[朝日新聞]]』2000年4月4日大阪朝刊第一社会面35頁「37歳の男逮捕 和歌山市のカレー毒物混入事件の林被告宅全焼 【大阪】」([[朝日新聞大阪本社]])</ref>。そのニュースを聞かされた獄中の林は「ああ、そう」と答えた。林宅はその後解体され<ref>『東京新聞』2000年4月22日朝刊社会面35頁「自宅取り壊しも保険金 放火で全焼した林真須美被告宅」(中日新聞東京本社)</ref>、跡地(約360 ㎡)は競売に出された結果、2004年春に地元自治会が住民からの寄付を募って380万円で買い取った<ref>『中日新聞』2004年6月18日夕刊社会面15頁「毒物カレー事件 真須美被告 自宅跡 今は空き地 自治会が所有 事件の舞台…足踏み入れぬ人も」(中日新聞東京本社)</ref>。そして、住民たちの協議により花壇として整備された{{Efn2|事件から20年となる2018年(平成30年)には、事件の風化を防ごうと植樹する計画が持ち上がったが、被害者から「事件を思い出すのが辛い」という反対の声が上がり、中止された<ref name="中日新聞2018-07-24">『中日新聞』2018年7月24日夕刊第三社会面24頁「毒物カレー20年 苦悩今も 地元「風化防ぐ」「忘れたい」」(中日新聞社 記者:豊田直也)</ref>。}}<ref>『東京新聞』2005年6月27日夕刊第二社会面8頁「カレー事件 あす控訴審判決 真須美被告宅 跡地は花壇に」(中日新聞東京本社)</ref>。 |
|||
* 事件後、無人となった林の自宅の塀や壁に「人殺し」などの大量の落書きがされるようになった。林宅はその後2000年2月に[[放火]]により全焼。そのニュースを聞かされた獄中の林は「ああ、そう」と答えた。解体され、跡地は自治会が買い取り、近隣住民により草花が植えられている<ref>[http://news.livedoor.com/article/detail/10451734/ 1998年に起こった和歌山の毒カレー事件 現地には今も暗い影]ライブドア 2015年8月10日</ref>。なお放火犯は後に、警察に逮捕されており裁判の結果実刑判決を受けている。 |
|||
== 関連書籍 == |
== 関連書籍 == |
||
184行目: | 195行目: | ||
'''刑事裁判の判決文''' |
'''刑事裁判の判決文''' |
||
* 第一審判決骨子 - {{Cite 判例検索システム|裁判所=[[和歌山地方裁判所]]|裁判形式=判決|事件番号=平成10年(わ)第465号・平成10年(わ)第500号・平成10年(わ)第532号・平成10年(わ)第580号|事件名=[[殺人罪 (日本)|殺人,殺人未遂]],[[詐欺罪|詐欺]]被告事件|裁判年月日=2002年(平成14年)12月11日|判例集=|判示事項=|裁判要旨=|url=https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=7418|ref={{SfnRef|和歌山地裁|2002}}}} |
* 第一審判決骨子 - {{Cite 判例検索システム|裁判所=[[和歌山地方裁判所]]|裁判形式=判決|事件番号=平成10年(わ)第465号・平成10年(わ)第500号・平成10年(わ)第532号・平成10年(わ)第580号|事件名=[[殺人罪 (日本)|殺人,殺人未遂]],[[詐欺罪|詐欺]]被告事件|裁判年月日=2002年(平成14年)12月11日|判例集=|判示事項=|裁判要旨=|url=https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=7418|ref={{SfnRef|和歌山地裁|2002}}}} |
||
** 判決内容:カレー毒物混入事件について死刑・ヒ素混入による保険金殺人未遂については無罪(求刑:死刑) |
** 判決内容:カレー毒物混入事件について死刑・ヒ素混入による保険金殺人未遂1件については無罪(求刑:死刑) |
||
** [[裁判官]]:[[小川育央]]([[裁判長]]) |
** [[裁判官]]:[[小川育央]]([[裁判長]]) |
||
** 被告人:林眞須美 |
** 被告人:林眞須美 |
2021年2月23日 (火) 09:14時点における版
本記事の死刑囚・林眞須美は実名で著書を出版しており、WP:DP#B-2の「削除されず、伝統的に認められている例」に該当するため実名を掲載しています。 |
和歌山毒物カレー事件 | |
---|---|
場所 | 日本・和歌山県和歌山市園部1013番地の5(事件現場:夏祭り[注 1]の会場)[1] |
座標 | |
標的 | 夏祭りに集まった園部地区の住民 |
日付 |
1998年(平成10年)7月25日[1][2] 17時50分ごろ(夏祭りの開始時刻)[1] – 19時ごろ(終了時刻)[1] |
概要 | 夏祭りで提供されたカレーライスに毒物(亜ヒ酸)が混入され、カレーを食べた67人が急性ヒ素中毒を発症[3]。うち4人が死亡した[3]。 |
攻撃手段 | カレーライスに毒物を混入[2] |
攻撃側人数 | 1人[3] |
武器 | 亜ヒ酸[3] |
死亡者 | 4人[3] |
負傷者 | 63人[3] |
犯人 | 林 眞須美(冤罪を主張) |
容疑 | 殺人・殺人未遂・詐欺[4] |
動機 | 未解明[5] |
対処 | 和歌山県警が林を被疑者として逮捕・和歌山地検が林を被告人として起訴 |
刑事訴訟 | 死刑(上告棄却により確定[6] / 未執行) |
管轄 |
和歌山毒物カレー事件(わかやまどくぶつカレーじけん)とは、1998年(平成10年)7月25日夕方に和歌山県和歌山市園部で発生した毒物混入・大量殺傷事件である。またこの事件は冤罪の可能性も指摘されている。冤罪の可能性については後述を参照。
地区で行われた夏祭り[注 1]において提供されたカレーライスに毒物が混入され、カレーを食べた67人が急性ヒ素中毒になり、うち4人が死亡した[11]。和歌山カレー事件とも呼ばれる[12]。後に混入された毒物は亜ヒ酸[3]と判明し、被疑者として逮捕・被告人として起訴され、殺人・殺人未遂・詐欺の罪に問われた[4]主婦の林 眞須美(はやし ますみ)は無罪を訴えたが、第一審で死刑判決を受け、控訴・上告も棄却されたため、2009年に最高裁判所で死刑が確定した。
2020年(令和2年)9月27日時点で[13]林眞須美は死刑囚として大阪拘置所に収監されている[14]一方、2009年7月22日付で和歌山地裁に再審請求を提起している[15]。
事件発生
1998年7月25日、和歌山市園部地区の新興住宅地にある自治会(和歌山市園部第14自治会)が主催した夏祭り[注 1]で[18]、提供されたカレーを食べた未成年者30人を含む合計67人[注 2][3]が腹痛や吐き気などを訴えて病院に搬送された[8]。異変に気付いた者が「カレー、ストップ!」と祭りのスタッフにそのカレーを出すのを直ちに止めるよう命じ、一連の嘔吐がカレーによるものと発覚した。
中毒症状を起こした被害者67人のうち、園部第14自治会の自治会長男性A(当時64歳)および副会長男性B(当時53歳)和歌山市立有功小学校4年生の男子児童C(当時10歳)と、私立開智高校1年の女子生徒D(16歳)の計4人が死亡した[7]。被害者は会場で食べた者や、自宅に持ち帰って食べた者などで、嘔吐した場所も様々だったという。
和歌山県警察および[8]和歌山市保健所は事件発生当初、集団食中毒を疑っていた[注 3][20]が、和歌山県警科学捜査研究所が被害者の吐瀉物や容器に残っていたカレーを検査したところ、青酸化合物の反応が検出された[8]。和歌山県警捜査一課は「何者かが毒物を混入した無差別殺人事件の疑いが強い」と断定し、和歌山東警察署に捜査本部を設置した[7]。
毒物については当初、死亡した自治会長Aの遺体を司法解剖した結果、心臓の血液や胃の内容物から青酸化合物が検出されたため、死因を青酸化合物中毒と判断[7]。また、事件発生直後の鑑定では、青酸化合物を使った農薬などの二次製品に含まれる他の物質は検出されなかったため、県警は混入された毒物を「純粋な青酸化合物」に絞り、県外も含めて盗難・紛失事件がなかったか否かを捜査していた一方、ヒ素など他の毒物の検査は行っていなかった[21]。しかし、A以外の死者3人の遺体からは青酸化合物は検出されなかった一方、Aの胃の内容物や、Bの吐瀉物、Cの食べ残しカレーからそれぞれヒ素が検出され[22]、8月2日には捜査本部が「食べ残しのカレーからヒ素が検出された」と発表[23]。同月6日には「混入されたヒ素は、亜ヒ酸またはその化合物」と発表された[23]。
これを受け、捜査本部から「死因はヒ素中毒だった疑いがある」と報告を受けた警察庁科学警察研究所が新たに鑑定を実施した結果、4人の心臓および自治会長以外の3人の心臓から採取した血液から、それぞれヒ素が検出された[注 4][22]。これを受け、捜査本部は10月5日、4人の死因を当初の「青酸中毒(およびその疑い)」から「ヒ素中毒」に変更した[25]。
事件を受け、地元自治会や学校では臨時の会議が行われ、今後の対応について話し合われた[要出典]。
逮捕・起訴
林 真須美 | |
---|---|
生誕 |
1961年7月22日(63歳)[14] 日本・和歌山県有田市(矢櫃地区)[26] |
住居 | 日本・和歌山県和歌山市園部1014番地の1(逮捕当時)[16] |
職業 | 元保険外交員[27] |
配偶者 | 林 健治[注 5][27] |
殺人 | |
犯行期間 | 1998年7月25日– |
国 | 日本 |
死者 | 4人 |
負傷者 | 63人 |
凶器 | 亜ヒ酸 |
逮捕日 | 1998年10月4日[27] |
収監場所 | 大阪拘置所[14](2020年9月27日時点)[13] |
1998年10月4日、知人男性に対する殺人未遂と保険金詐欺の容疑で、元保険外交員で主婦の林 眞須美[27](はやし ますみ、1961年〈昭和36年〉7月22日[14] - 、事件当時37歳)が、別の詐欺および同未遂容疑をかけられた元シロアリ駆除業者の夫・林健治[注 5]とともに和歌山県警捜査一課・和歌山東警察署による捜査本部に逮捕され[27]、2人とも同月25日に和歌山地方検察庁から起訴された。
10月26日には、眞須美が別の殺人未遂[注 6]および詐欺容疑で、健治も眞須美と同じ詐欺容疑[注 7]でそれぞれ再逮捕され、11月17日に追起訴された[29]。
11月18日、眞須美は健治らに対する殺人未遂容疑などで、健治も詐欺容疑で再逮捕され[29]、12月9日には眞須美と健治がそれぞれ詐欺罪で起訴されたほか、眞須美は健治らを被害者とする殺人未遂罪でも追起訴された[30]。
さらに12月9日には、カレーの鍋に亜ヒ酸を混入した殺人と殺人未遂の容疑で眞須美が再逮捕された[31]。同年末の12月29日に眞須美は和歌山地検により、殺人と殺人未遂の罪で和歌山地方裁判所へ起訴された[32]。
刑事裁判
一審
林は容疑を全面否認したまま裁判へと臨み、1999年(平成11年)5月13日に和歌山地方裁判所(小川育央裁判長)で開かれた第一審・初公判[33]では5,220人の傍聴希望者が傍聴券抽選会場の和歌山城砂の丸広場に集まった[34]。これはオウム真理教事件の麻原彰晃・覚せい剤取締法違反の酒井法子に次ぐ記録であり、事件発覚前に無名だった人物としては最高記録である。
裁判で和歌山地方検察庁が提出した証拠は約1,700点。1審の開廷数は95回、約3年7か月に及んだ。直接証拠もなく、動機の解明もできていない状況の中、上告審では弁護側が「地域住民に対して無差別殺人を行う動機は全くない」と主張したのに対し、最高裁は判決で「動機が解明されていないことは、被告人が犯人であるとの認定を左右するものではない」と述べ、動機を解明することにこだわる必要がないという姿勢を示した[35]。
2002年(平成14年)12月11日に開かれた第一審判決公判で和歌山地裁(小川育央裁判長)は被告人・林の殺意とヒ素混入を認めた上で「4人もの命が奪われた結果はあまりにも重大で、遺族の悲痛なまでの叫びを胸に刻むべきだ」と断罪し、検察側の求刑通り被告人・林に死刑判決を言い渡した[36]。被告人・林は判決を不服として大阪高等裁判所に即日控訴した[36]。
控訴審
大阪高裁(白井万久裁判長)での控訴審初公判は2004年(平成16年)4月20日に開かれ[37]、2審は結審まで12回を要した。2005年(平成17年)6月28日の控訴審判決で、大阪高裁は「カレー事件の犯人であることに疑いの余地はない」として第一審・死刑判決を支持して被告人・林側の控訴を棄却する判決を言い渡しした[38]。被告人・林は判決を不服として同日付で最高裁判所へ上告した[38]。
上告審
2009年(平成21年)4月21日に最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は「鑑定結果や状況証拠から、被告人が犯人であることは証明された」と述べ、林側の上告を棄却する判決を言い渡した[39]。
林被告人は2009年4月30日付で死刑判決の破棄を求めて最高裁第三小法廷に判決の訂正を申し立てたが[40]、申し立ては同小法廷の2009年5月18日付決定で棄却されたため、同日付で林の死刑が確定した[6]。これにより林は、戦後日本では11人目の女性死刑囚となった。[要出典]
再審請求
死刑囚・林は2020年9月27日時点で[13]死刑囚として大阪拘置所に収監されている[14]一方、2009年7月22日付で和歌山地裁に再審を請求した[15][41]。林及び弁護団は「無罪を言い渡すべき新たな証拠」として「祭り会場に残された紙コップのヒ素が自宅から発見されたものとは異なる。京都大学の研究者の鑑定からも『事件当時のヒ素の鑑定方法は問題がある』ことは明らかだ」と主張した[42]。
2014年(平成26年)3月、林は支援者の釜ヶ崎地域合同労働組合委員長・北大阪合同労働組合執行委員長・稲垣浩と養子縁組している[43]。この養子縁組は、本人との定期的な面会を行うためと見られる。
当該再審請求は和歌山地裁(浅見健次郎裁判長)の2017年(平成29年)3月29日付決定により棄却され[42]、これを不服とした林は2017年4月3日までに大阪高裁に即時抗告した[44][45]。しかし大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は2020年(令和2年)3月24日付で死刑囚・林の即時抗告を棄却する決定を出した[46]ため、林はこれを不服として同年4月8日付で最高裁に特別抗告を行った[47]。
また林は長男と手紙のやり取りをしており、長男が2019年(令和元年)5月3日にTwitterで公開した林からの3枚の手紙には、最も重要視されている近隣住民の目撃証言で「白いTシャツ」を着ていたとされる点に触れ、他の主婦らは黒っぽい服装をしていたと証言し、当の眞須美も黒いTシャツを着ていたと述べていたが、この手紙の中でも再三「黒色のTシャツ」を着ていたことを強調して述べている[48]。
裁判の反響
1審において被告人が完全黙秘を行ったことに対して、メディアが批判的な報道を行ったため、1審の判決文において黙秘権の意義に関し、専らメディア向けとみられる一般的な判示がなされるなど、刑事裁判の在り方の点から見ても特異な事件となった。
最高裁では、犯行に使われたものと同一の特徴を持つヒ素が被告人の自宅等から発見されたこと、被告人の頭髪から高濃度ヒ素が検出されたことなどから「被告人が犯人であることは合理的な疑いを差し挟む余地がない程度に証明されている」とし、弁護側が主張した「被告人には動機がない」との主張に対しては、「動機が解明されていないことは、被告人が犯人であるという認定を左右しない」と退けた[49]。
- ビデオ映像の証拠採用
- 裁判では、被告人が事件について語りテレビで放送された「ビデオ映像の証拠採用」についても争点となった。これは事案の重大性の中で黙秘を続ける被告人の事件に関する言葉が得られない中で、テレビ局の取材に対して被告人が事件に関するインタビューに応じているという事情があったため、真実解明という点で検察がテレビ局の被告人に対するインタビュー映像の証拠申請をしていた。
- それに対し、報道機関からはビデオ映像を証拠採用されることは取材方法に対する権力の介入として反発し、弁護側も誘導による不正確な発言及び意図的な編集の可能性から証拠採用に反対した。
- 裁判所は数少ない被告人の事件に関する証言として、民放4社6番組から収録されたインタビュー映像計約13分間分を「言動が趣旨を異にすることなく再現されている」として供述録取書として採用した。また裁判所は「報道機関が報道し、国民の多くが知っている情報を、なぜ真実の追求を目的とする刑事裁判で証拠としてはならないのか、理解に苦しむ」と判決文で述べ、ビデオ映像採用に反発する報道機関に苦言を呈した。
被害者の症状
本事件で生存した63名について、和歌山県立医科大学皮膚科が行った調査がある[50]。たとえば、事件後2週間に被害者の多くに共通して見られた兆候は、次のとおりであった。
冤罪疑惑
本事件の特徴として「直接的な証拠が一切存在しない」という点が挙げられる。
そのため、例えば「実際には家族や知人が毒を入れていたのに、被告人がそれを庇っている可能性」や「誰かに陥れられた可能性」などを否定できず、冤罪の疑惑がある事件として有識者からも問題点を指摘されている。
- 証拠も動機もない
- 「批判を承知であえて言えば、本人が容疑を否認し、確たる証拠はない。そして動機もない。このような状況で死刑判決が確定してよいのだろうか?」(田原総一朗)[51]。
- 「私のわだかまりも、この「状況証拠のみ」と「動機未解明」の2点にある。事件に、林被告宅にあったヒ素が使われたことは間違いない。ただし、そのヒ素に足があったわけではあるまいし、勝手にカレー鍋に飛び込むわけがない。だれかが林被告宅のヒ素をカレー鍋まで持って行ったことは確かなのだ。だが、果たしてそれは本当に林被告なのか、どうしたって、わだかまりが残るのだ。」(大谷昭宏)[52]。
- 黙秘権の侵害
- 「2審判決は「誠実に事実を語ったことなど1度もなかったはずの被告人が、突然真相を吐露し始めたなどとは到底考えられない」と言ったが、これは実質的に黙秘権侵害です」(小田幸児 - 林の1審、2審、上告審弁護人)[53]
- 曖昧な目撃証言
- 事件当時から目撃証言などの状況証拠の積み重ねてきたが、その中には不自然で辻褄の合わない証言も多く、関係者から疑問視されるケースもある。
- 被告の次女は、「林死刑囚がカレー鍋の見張りを離れた時間が20分以上あり、他の人物が毒物を入れる機会はあった」と主張している。なお、身内による証言ということもあり、和歌山地裁はこの証言を証拠に採用しないことを決定した。
- 鑑定の不確かさ
- 裁判で林の犯行と断定される上での唯一の物証で決定的な証拠となっていた亜ヒ酸の鑑定において、犯行に使われたとみられる現場付近で見つかった紙コップに付着していたヒ素(亜ヒ酸)と、林邸の台所のプラスチック容器についていたヒ素、カレーに混入されたヒ素が東京理科大学教授の中井泉による鑑定の結果、組成が同一とされた。
しかし、のちに中井は依頼された鑑定の内容は、林宅のヒ素と紙コップのヒ素とカレーのヒ素の3つにどれだけの差違があるかを証明することではなく、3つの試料を含む林宅周辺にあったヒ素のすべてが同じ輸入業者経由で入ってきたものだったかどうかを調べることだと理解し、それを鑑定で確認したに過ぎなかった。
このため有罪の決め手となった3つの試料の差違を詳細に分析はせず、3つの試料を含む10の資料のヒ素がすべて同じ起源であることを確認するための鑑定を行っていたにすぎなかった。当然ながら、林が自宅にあったヒ素を紙コップでカレーに入れたことを裏付けるためには、3つのヒ素の起源が同じであることを証明しただけでは不充分であり、その3つがまったく同一でなければならない。 - 弁護側の依頼で鑑定結果の再評価を行った京都大学大学院教授の河合潤により、この3つの間には重大な差違があることがわかり、3つは同一ではないと評価された[54]。
- 和歌山県警科捜研主任研究員の証拠捏造報道
- 2012年、カレー事件を捜査していた和歌山県警科捜研主任研究員が、他の事件で証拠を捏造したとして証拠捏造、有印公文書偽造及び行使容疑で書類送検されたことが判明した。しかし、捜査関係者によれば、研究員が携わったカレー事件での捏造はなかったと結論づけている[55]。
本事件の影響
カレーライスのイメージ悪化
和歌山毒物カレー事件では、報道で「毒入りカレー」の文字が前面に出ていたため、カレーライスのイメージが悪化し、食品会社はカレーのCMを自粛し、料理番組でもカレーライスのレシピ紹介を取りやめた。また、テレビアニメ『たこやきマントマン』と『浦安鉄筋家族』では、ストーリーにカレーライスが出る回が放送されなかった[注 8]。そして、日本ではちょうど夏祭りが各地で開催される時期だったことから、犯人逮捕前は、各地の夏祭りで食事の提供が自粛されるなどの騒動に発展した。
この他、前述の犠牲者である小学4年生の男子児童は事件当時、和歌山市立有功小学校に通学していたが[56]、同小学校では事件発生から2017年時点でも、学校給食の献立でカレーライスが出されていない[注 9][57]。
模倣犯の出現
和歌山毒物カレー事件の後、飲食物に毒物を混入させるといった模倣犯が日本では多数現れた。中でもアジ化ナトリウムは混入が相次ぎ、1999年にはアジ化ナトリウムの管理を徹底させるべく、日本においてアジ化ナトリウムは毒物に指定され、毒物及び劇物取締法による流通規制が行われるに至った。
林真須美が起こした訴訟
林真須美は、本事件後に多数の訴訟を起こしたことで知られる。
その中で「カレー毒物混入事件法廷写真・イラスト訴訟」では、取材対象に無断で撮影した写真や、無断で描画したイラストを報道した時に、肖像権侵害となるのはどういった場合なのかについて、日本の最高裁判所として初めて基準を示すに至った[58]。この中で最高裁は、撮影や描画された人物の社会的地位、活動内容を鑑みて、撮影や描画を行った場所、目的、さらに、撮影や描画をどのように行ったか、そもそも撮影や描画の必要性があったかを総合し、撮影や描画された側の人物が社会生活上の我慢の限度を超えるかどうかで判断すべきとし、林真須美の写真や一部のイラストについて違法と判断した[58]。
なお、この訴訟以外にも、例えば2012年に再審請求中の林は、事件の裁判において虚偽の証言をしたとして、100万円の損害賠償を求めて夫を提訴した。
その他、週刊朝日の調べにより、マスメディア関係者や事件の発生地の地元住民、生命保険会社に勤務していたときの同僚など、計50人ほどを相手に訴訟を起こしていることが判明。しかし、弁護士も立てていないため訴訟の遂行は難しいという。
かつてメディアを相手に500件以上の訴訟を起こしたロス疑惑の三浦和義は生前、林を支援しており、林に対しマスメディアを訴えることを勧め、手紙や面会で方法を伝授していた。これに対し林も「三浦の兄やん、民事で訴えちゃるって、ええこと教えてくれた」と答えた[59]。
その他
- 障害者郵便制度悪用事件で村木厚子を取調べ中に、担当検察官である國井弘樹は、村木に向かい「あの事件だって、本当に彼女がやったのか、実際のところは分からないですよね」といい、否認を続けることで冤罪で罪が重くなることを暗示し、自白を迫った[60]。
- 逮捕前、自宅を取り囲む報道関係者たちに笑いながらホースで放水している姿を撮った映像が繰り返し使用され、ふてぶてしい印象付けがメディアによりなされたが、これについて後に夫は、報道が過熱し夜中中取り囲まれたが、彼らが蚊に刺されないよう殺虫剤を持って行ったりしたにもかかわらず、郵便受けから郵便を抜き取ったり、塀にはしごをかけ2階の子供部屋を盗撮したりされたため、真須美に「あいつらのぼせ上ってるから、記者会見する言うて集めて、上からいっぺん頭冷やしたれ」と命令したとした上で、「いかにもカレーに毒入れそうなおばはんの「絵」」にされたと語っている[61]。
- フジテレビ『ニュースJAPAN』で、キャスターの安藤優子が事件の注目人物であった逮捕前の林に電話インタビューを試みている。逮捕前だったこともあり、注目人物であった林の名前を自主規制音を被せて名前を匿名化していたが、編集ミスで1か所だけ自主規制音が入っていなかったためその部分だけ「林さんは…」という言葉がのって放送されてしまった。そのため、林から「おかげで外に買い物にも行けない。どうしてくれるのか?」と、猛抗議を受けた。
- 林夫婦が住んでいた家(木造2階建て住宅・約180 ㎡)は2人の逮捕後、無人となり、壁などに落書きされたり、無断で敷地内に侵入したりする者が相次いでいたため、和歌山東署がパトロールを継続していたが[62]、2000年(平成12年)2月16日未明に放火され、全焼した[注 10][63]。そのニュースを聞かされた獄中の林は「ああ、そう」と答えた。林宅はその後解体され[68]、跡地(約360 ㎡)は競売に出された結果、2004年春に地元自治会が住民からの寄付を募って380万円で買い取った[69]。そして、住民たちの協議により花壇として整備された[注 11][70]。
関連書籍
- 週刊文春特別取材班『林真須美の謎 ヒ素カレー・高額保険金詐取事件を追って』ネスコ、1998年12月。ISBN 978-4890369935。
- 三好万季『四人はなぜ死んだのか インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」』文藝春秋、1999年7月。ISBN 978-4163554303。
- 林眞須美『死刑判決は『シルエット・ロマンス』を聴きながら 林眞須美 家族との書簡集』講談社、2006年8月。ISBN 978-4062135139。
- 今西憲之「和歌山カレー毒物混入事件 林真須美被告の夫・健治氏 独占告白10時間「私たち夫婦は保険金詐欺のプロ。金にならんことはやらん。真犯人は別」」『週刊朝日』第111巻第56号、朝日新聞社出版部、2006年11月3日、36-39頁、NAID 40007455802。 - 2006年11月3日号・通号4782。
- 林眞須美、林健治(林眞須美の夫)、篠田博之(月刊『創』編集長)『和歌山カレー事件 獄中からの手紙』創出版、2014年7月15日。ISBN 978-4904795316。 - 林夫妻と本事件を取材し続けている篠田らによる共著書。
- 帚木蓬生『悲素』新潮社、2015年7月。ISBN 978-4103314226。 - 事件に関わった実在の医師の記録に基づく小説。
- 田中ひかる『「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実』ビジネス社、2018年7月。ISBN 978-4828420370。
- 和歌山カレー事件 林眞須美死刑囚長男『もう逃げない。〜いままで黙っていた「家族」のこと〜』ビジネス社、2019年7月。ISBN 978-4828421155。
脚注
注釈
- ^ a b c 夏祭りは住民の親睦を図るため[8]、1992年(平成4年)に園部第14自治会が主導して毎年7月の最終土曜日に開催していた[9]。ただし、1997年(平成9年)は病原性大腸菌O157の影響で中止されていた[8]。事件後、自治会の夏祭りは開かれていない[10]。
- ^ 当初発表では患者数は66人とされていたが[8]、7月27日になって新たに1人(軽症)が入院した[19]。
- ^ 和歌山市保健所には25日22時ごろ、患者が搬送された一病院から「青酸化合物特有の瞳孔が閉じている症状が出た」という連絡があったが、他の病院に問い合わせても同様の報告はなかったため、保健所は毒物対応を具体的に指示しなかった[8]。
- ^ この際、使用された毒物の組成を調べるために、SPring-8が使用された。亜ヒ酸に含まれる特定の不純物元素の量を比較して、異同識別が行われた。この為の重元素不純物の検出には『SPring-8の性能が必要』とされたためである[24]。
- ^ a b 林健治は2014年、実名で妻・眞須美や篠田博之(月刊『創』編集長)とともに著書『和歌山カレー事件 獄中からの手紙』(創出版)を出版している[28]。
- ^ 知人男性(当時35歳)にヒ素入りのうどんを食べさせて殺害しようとした容疑[29]。
- ^ 林夫婦が共謀し、健治の病状を偽って高度障害保険金約1億3,700万円を詐取したとされる容疑[29]。
- ^ これらの回は、前者は再放送時に初放送され、後者はVHSソフト化の際に収録された。
- ^ 2017年に有功小学校の校長は『産経新聞』記者の取材に対し、その理由を「何年たってもわが子を失った痛みは消えない。重く受け止めたい」と述べている[57]。
- ^ 放火犯の男は同年4月3日に和歌山県警に非現住建造物等放火容疑で逮捕されたほか[63]、放火する4日前(2月12日)には林宅に侵入して現金やセカンドバッグ・腕時計など(時価合計約21万3,500円相当)を盗んだとして、窃盗容疑でも追送検された[64]。男はそれらの罪で和歌山地裁に起訴され[65]、2001年9月6日に「窃盗は計画的な犯行で、放火の手段も巧妙。また、住民に著しい危険・恐怖を与えた」として懲役8年を求刑されたが[66]、同年10月30日に和歌山地裁(小川育央裁判長)から「放火は衝動的・快楽的な犯行だが、犯行時は心神耗弱状態だった」として、懲役4年の実刑判決を受けた[67]。
- ^ 事件から20年となる2018年(平成30年)には、事件の風化を防ごうと植樹する計画が持ち上がったが、被害者から「事件を思い出すのが辛い」という反対の声が上がり、中止された[10]。
出典
- ^ a b c d e 和歌山地裁 2003, p. 2.
- ^ a b 「和歌山毒物カレー事件から19年 犠牲の男児の通学先、今も給食にカレーのメニューなし」『産経新聞』産業経済新聞社、2017年7月24日、2面。オリジナルの2021年1月4日時点におけるアーカイブ。2021年1月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 最高裁第三小法廷 2009, p. 1.
- ^ a b 最高裁第三小法廷 2009.
- ^ 最高裁第三小法廷 2009, pp. 6–7.
- ^ a b 『中日新聞』2009年5月21日朝刊第一社会面35面「毒物カレー事件 林被告の死刑確定 判決訂正申し立て 最高裁が棄却」(中日新聞社)
- ^ a b c d 『読売新聞』1998年7月27日東京朝刊第14版一面1頁「カレーに青酸 4人死亡 夏祭り会場で混入 和歌山 66人中毒、42人入院 無差別殺人で捜査」(読売新聞東京本社) - 『読売新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1425頁
- ^ a b c d e f g 『毎日新聞』1998年7月27日東京朝刊第14版一面1頁「和歌山・夏祭り カレーに青酸 4人死亡 何者かが混入の疑い 62人手当て、うち39人入院」(毎日新聞東京本社) - 『毎日新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1067頁
- ^ 『読売新聞』1998年7月28日東京夕刊第4版第一社会面11頁「青酸カレー 定番メニュー狙う? 段取り熟知か 30分前には混入」(読売新聞東京本社) - 『読売新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1399頁
- ^ a b 『中日新聞』2018年7月24日夕刊第三社会面24頁「毒物カレー20年 苦悩今も 地元「風化防ぐ」「忘れたい」」(中日新聞社 記者:豊田直也)
- ^ 「和歌山「毒物カレー事件」から22年 現場の空き地で静かに祈り」『NHKニュース』日本放送協会、2020年7月25日。オリジナルの2020年7月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ 真田嶺; 白木琢歩 (2017年3月29日). “林死刑囚の再審請求、地裁が棄却 和歌山カレー事件”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). オリジナルの2021年2月23日時点におけるアーカイブ。 2021年2月23日閲覧。
- ^ a b c 年報・死刑廃止 2020, p. 271.
- ^ a b c d e 年報・死刑廃止 2020, p. 263.
- ^ a b 『中日新聞』2009年7月22日夕刊第二社会面12面「林死刑囚が再審請求」(中日新聞社)
- ^ a b 『東京新聞』1998年10月5日朝刊一面1頁「保険金疑惑の夫婦逮捕 和歌山 妻には殺人未遂容疑 知人の食事にヒ素混入 夫も別の詐欺容疑で 容疑は否認 カレー事件関連捜査 和歌山事件」(中日新聞東京本社)
- ^ 真田嶺、白木琢歩「林死刑囚の再審請求、地裁が棄却 和歌山カレー事件 > 事件発生当時の和歌山市園部地区」『朝日新聞デジタル』朝日新聞社、2017年3月29日。オリジナルの2021年2月23日時点におけるアーカイブ。2021年2月23日閲覧。
- ^ 和歌山地裁 2003, pp. 1–2.
- ^ 『朝日新聞』1998年7月27日東京夕刊第4版第一社会面19頁「新たに1人入院」(朝日新聞東京本社) - 『朝日新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1359頁
- ^ 『毎日新聞』1998年7月27日東京朝刊第14版第二社会面30頁「「食べやんといて」 対応遅れ「99%食中毒と…」」(毎日新聞東京本社) - 『毎日新聞』縮刷版 1998年(平成10年)7月号1096頁
- ^ 『中日新聞』1998年8月3日朝刊三面3頁「核心 青酸カレーヒ素混入 見直し迫られる犯人像 検出遅れ捜査に打撃」(中日新聞社)
- ^ a b 『中日新聞』1998年8月14日朝刊第一社会面27頁「毒物カレー 4人の体内からヒ素 警察庁鑑定で検出 死因の変更を検討」(中日新聞社)
- ^ a b 『東京新聞』1998年10月25日朝刊社会面25頁「毒物カレー事件の経過」(中日新聞東京本社)
- ^ “(7-1)和歌山毒物カレー事件の砒素分析はどのビームラインで、どの様に行われたかのでしょうか?”. 2016年6月4日閲覧。
- ^ 『東京新聞』1998年10月5日朝刊社会面23頁「死因は「ヒ素中毒」 カレー事件 県警が変更 和歌山カレー事件」(中日新聞東京本社)
- ^ 八木澤高明 (2017年4月19日). “殺人風土記 - 漁師町の女――和歌山毒物カレー事件”. ウェブマガジン「あき地」. 亜紀書房. 2020年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月23日閲覧。 - 『日本殺人巡礼』(2017年7月発汗)の著者によるウェブマガジン。
- ^ a b c d e 『中日新聞』1998年10月5日朝刊一面1頁「「保険金疑惑」の夫婦逮捕 詐欺容疑、妻は殺人未遂も 和歌山 ヒ素、知人の食事に 夫婦は全面否認」(中日新聞社)
- ^ 林眞須美, 林健治 & 篠田博之 2014.
- ^ a b c d 『中日新聞』1998年12月31日朝刊特集一面5頁「あの事件あの感動 主なニュース98年(6/6) 和歌山の毒物カレー事件」(中日新聞社)
- ^ 『東京新聞』1998年12月10日朝刊一面1頁「毒カレー事件から138日 真須美容疑者らを再逮捕 殺人容疑、ヒ素混入動機特定せず」(中日新聞東京本社)
- ^ 『中日新聞』1998年12月9日夕刊一面1頁「真須美容疑者 毒物カレーで再逮捕 殺人と未遂 亜ヒ酸混入の疑い 和歌山県警 状況証拠重ね特定」(中日新聞社)
- ^ 『中日新聞』1998年12月9日朝刊一面1頁「真須美容疑者を起訴 毒物カレー 容疑否認のまま殺人罪 和歌山地検 動機は特定せず」(中日新聞社)
- ^ 『中日新聞』1999年5月13日夕刊1面「毒物カレー事件全面否認 真須美被告初公判 他のヒ素関連事件も 健治被告とも 詐欺は認める 和歌山地裁」(中日新聞社)
- ^ 『中日新聞』1999年5月13日夕刊11面「毒物カレー事件初公判 真須美被告震える声 221日ぶり再会…夫を見ず」「傍聴の列5220人 初公判で史上2番目」10面「『何ぬかしとんのや』被害者怒りこみ上げ」(中日新聞社)
- ^ [1] 中日新聞 2009年4月22日
- ^ a b 『中日新聞』2002年12月12日朝刊一面1頁「林真須美被告に死刑 毒物カレー事件和歌山地裁判決 ヒ素混入と殺意認定 激高説否定 動機不明のまま 被告側が即日控訴」(中日新聞社)
- ^ 『中日新聞』2004年4月20日夕刊1面「毒物カレー控訴審 弁護側『別に真犯人も』6月から真須美被告質問」(中日新聞社)
- ^ a b 『中日新聞』2005年6月28日夕刊1面「毒物カレー事件 真須美被告二審も死刑 大阪高裁控訴棄却『供述信用できず』被告側が上告」(中日新聞社)
- ^ 『中日新聞』2009年4月22日朝刊1面「林被告死刑確定へ 毒カレー事件 状況証拠で『犯人』 最高裁が上告棄却 動機解明されず」(中日新聞社)
- ^ 『中日新聞』2009年5月1日朝刊第三社会面29面「林被告が申し立て」(中日新聞社)
- ^ 『東京新聞』2009年7月22日夕刊第二社会面8面「林死刑囚が再審請求 和歌山カレー事件」(中日新聞東京本社)
- ^ a b 『中日新聞』2017年3月30日朝刊第一社会面39面「林死刑囚の再審認めず 毒物カレー事件」(中日新聞社)
- ^ 「カレー事件の林眞須美死刑囚 支援集会「負けず過ごす」」『スポーツニッポン』2014年7月19日。オリジナルの2014年7月21日時点におけるアーカイブ。
- ^ “再審棄却決定に即時抗告 毒カレー事件の林死刑囚”. 産経新聞. (2017年4月3日)
- ^ 『中日新聞』2017年4月3日夕刊第二社会面10面「林死刑囚が即時抗告」(中日新聞社)
- ^ “和歌山毒物カレー即時抗告 林死刑囚再審 高裁も棄却”. 東京新聞 (中日新聞東京本社). (2020年3月25日). オリジナルの2020年4月9日時点におけるアーカイブ。
- ^ “和歌山毒物カレー即時抗告 林死刑囚再審 高裁も棄却”. 朝日新聞. (2020年4月9日). オリジナルの2020年4月9日時点におけるアーカイブ。
- ^ “和歌山カレー事件 長男 @wakayamacurry”. 2020年2月11日閲覧。
- ^ “毒カレー事件、林眞須美被告の死刑確定へ…最高裁が上告棄却”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2009年4月21日). オリジナルの2009年4月24日時点におけるアーカイブ。 2013年2月27日閲覧。
- ^ K.Uede and F.Furukawa: Skin manifestations in acute arsenic poisoning from the Wakayama curry-poisoning incident. Brit J Dermatol 2003:149:757-762.
- ^ 和歌山毒物カレー事件 死刑判決に異議あり (田原総一朗の「タハラ・インタラクティブ」)
- ^ 大谷昭宏事務所「フラッシュアップ」状況証拠だけで裁けるのか
- ^ <検証>和歌山カレー事件 動機も自白もなし「類似事実」で死刑にできるのか 週刊金曜日 2009年2月13日号
- ^ 神保哲生 ニュース・コメンタリー 「和歌山カレー事件の鑑定ミスはなぜ起きたか」 2013年8月31日
- ^ 和歌山県警科捜研主任研究員が証拠捏造2021年2月5日閲覧
- ^ “沿革史”. 和歌山市立有功小学校 公式ウェブサイト. 和歌山市立 有功小学校 (2010年(最終更新)). 2020年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月9日閲覧。
- ^ a b 「和歌山毒物カレー事件から19年 犠牲の男児の通学先、今も給食にカレーのメニューなし」『産経新聞』産業経済新聞社、2017年7月24日、1面。オリジナルの2021年1月4日時点におけるアーカイブ。2021年1月4日閲覧。
- ^ a b 朝日新聞 2005年11月19日 朝刊 p.37
- ^ “林真須美、獄中訴訟乱発の謎”. 週刊朝日. (2012年8月3日)
- ^ 村木厚子「私は負けない 郵便不正事件はこうして作られた」中央公論社 2013年10月25日
- ^ “現代ビジネス - 和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか 決め手の「ヒ素鑑定」が揺らいでいる 田中ひかる 歴史社会学者”. 2020年2月11日閲覧。
- ^ 『朝日新聞』2000年2月16日夕刊第一社会面15頁「和歌山カレー事件の林被告宅が全焼 1年以上無人、放火か」(朝日新聞東京本社)
- ^ a b 『朝日新聞』2000年4月4日大阪朝刊第一社会面35頁「37歳の男逮捕 和歌山市のカレー毒物混入事件の林被告宅全焼 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2000年4月26日大阪朝刊第一社会面35頁「林被告宅に放火4日前、窃盗も 逮捕の男、容疑で追送検 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2000年6月16日大阪朝刊和歌山県版第一面31頁「被告、起訴事実認める 林真須美被告宅放火事件初公判 /和歌山」(朝日新聞大阪本社・和歌山総局)
- ^ 『朝日新聞』2001年9月7日大阪朝刊和歌山県版第一面29頁「「住民に恐怖」 眞須美被告宅を放火の被告に懲役8年求刑 /和歌山」(朝日新聞大阪本社・和歌山総局)
- ^ 『朝日新聞』2001年10月31日大阪夕刊第一社会面15頁「被告に懲役4年 林真須美被告宅放火で和歌山地裁判決【大阪】」(朝日新聞大阪本社・和歌山総局)
- ^ 『東京新聞』2000年4月22日朝刊社会面35頁「自宅取り壊しも保険金 放火で全焼した林真須美被告宅」(中日新聞東京本社)
- ^ 『中日新聞』2004年6月18日夕刊社会面15頁「毒物カレー事件 真須美被告 自宅跡 今は空き地 自治会が所有 事件の舞台…足踏み入れぬ人も」(中日新聞東京本社)
- ^ 『東京新聞』2005年6月27日夕刊第二社会面8頁「カレー事件 あす控訴審判決 真須美被告宅 跡地は花壇に」(中日新聞東京本社)
参考文献
刑事裁判の判決文
- 第一審判決骨子 - 和歌山地方裁判所判決 2002年(平成14年)12月11日 、平成10年(わ)第465号・平成10年(わ)第500号・平成10年(わ)第532号・平成10年(わ)第580号、『殺人,殺人未遂,詐欺被告事件』。
- 上告審判決 - 最高裁判所第三小法廷判決 2009年(平成21年)4月21日 『最高裁判所裁判集刑事編』(集刑)第296号391頁、平成17年(あ)第1805号、『殺人,同未遂,詐欺被告事件』「事実認定につき職権判示をした上死刑の量刑を維持した事例(和歌山カレー毒物混入事件)」。
民事裁判の判決文
- 和歌山地方裁判所第二民事部判決 2003年(平成15年)12月25日 裁判所ウェブサイト、平成11年(ワ)第423号、同年(ワ)第571号、同年(ワ)第637号、平成15年(ワ)第145号、『損害賠償請求事件』。
書籍
- 年報・死刑廃止編集委員会 著、(編集委員:岩井信・可知亮・笹原恵・島谷直子・高田章子・永井迅・安田好弘・深田卓) / (協力:死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90・死刑廃止のための大道寺幸子基金・深瀬暢子・国分葉子・岡本真菜) 編『コロナ禍のなかの死刑 年報・死刑廃止2020』(第1刷発行)インパクト出版会、2020年10月10日。ISBN 978-4755403064 。
関連項目
外部リンク
- 和歌山毒入りカレー事件 - ウェイバックマシン(2013年5月30日アーカイブ分) - 甲南大学刑事訴訟法教室
- 林眞須美さんを支援する会
- 最高裁判決全文とそれに対する弁護団コメント、および判決訂正申立書全文(ウェブマガジン「魚の目」 2009年5月18日、投稿者:安田好弘)
- NHKアーカイブス 和歌山毒物カレー事件(1998年) - NHKアーカイブ
- 和歌山カレー事件 長男 (@wakayamacurry) - X(旧Twitter) - 林の長男のTwitter