シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)は、幻想的な月明かりに照らされた2024年春夏と土砂降りのプールに直上の東京タワーが美しく映えた2024-25年秋冬で、会場と環境を味方につけたショーを披露してきた。10周年を迎えた最新コレクションが発表された国立競技場のアスリートスロープに足を踏み入れると、会場内はブランドが頻繁に用いるブルーのライトで照らされ、ランウェイも青く、ショーノートが入った封筒も同様のカラーで(デザイナー小塚信哉自身の手によって)塗られていた。
今シーズンのタイトルは「picturesque or die」で、15年前に小塚が描いた絵本『いろをわすれたまち』をリマスター版として新たに描き直し、テーマに据えたという。その絵本は来場者に配られたQRコードから読むことができ、ほとんど読み終えたところで明転。環境音のような静かなショー音楽とともに絵本の表紙イラストがあしらわれたトップスを纏ったモデルが登場した。
『いろをわすれたまち』は、季節や色彩のない街に住む男がとある青い絵に出会い、その絵から出てきた謎の動物とともに色鮮やかな世界を旅し、自分自身の世界にも色を取り戻していく、という内容。そのストーリーに沿うように、序盤はモノトーンのルックで構成され、青い絵を携えたルックも登場する。物語のキーとなる色鮮やかな“絵”の世界に行くための招待状風のバッグを首に下げ、大きい板のようなオブジェクトを身につけた全身ブルーのモデルが現れるやいなや、Mr.Children『1999年、夏、沖縄』が流れ始め、一気に色を取り戻しショーは華やいでいく。そして終盤、元いた世界に帰った男と同じく、ルックは再び色を失い、カラフルな絵本の裏表紙が配されたアイテムで締めくくられる。
シグネチャーともいえるブルーは、セットアップ、シャツ、ニット、ショートパンツなど様々なアイテムに用いられる。小塚は「親友が2組いて、地元の親友2人とプロになってからの親友2人なんですが、みんなイメージカラーが青。だから、その色を大事にしていきたいんです」と話す。
一方、家が編まれたローゲージニット、絵本内のイラストがプリントされたカラフルなトップス、絵の具が散りばめられたようなフーディやワイドパンツ、そしてマルチカラーのツイードジャケットやジャンプスーツなど、今シーズンの世界観を強調するファンタジー要素を詰め込んだウェアにも富んでいる。また、印象的なバッグは土屋鞄と初のコラボで制作され、キジマ タカユキやディッキーズとのコラボも引き続き登場する。
小塚は、ショー直後のバックステージでショーについて「集大成という言葉では表現したくなくて、20年目へのファーストシーズンみたいな気持ちでいたいと思ったんですが、結局は自分の培ってきたものや得意なものを凝縮したコレクションになりました」と語った。取材を終え会場の外に出ると、新たな一歩を踏み出したブランドを労うかのように、晩夏の夜空を花火が華やかに彩っていた。
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Photos: Courtesy of SHINYAKOZUKA