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プラダの歴史から学ぶ姿勢──未来へ前進するためのロマンティックなエレガンス【2024-25年秋冬ミラノ速報】

プラダ(PRADA)が2月22日(現地時間)にミラノで発表した2024-25年秋冬コレクションは、「INSTINCTIVE ROMANCE(本能的なロマンス)」と題されていた。ブランドが111年目となった今季は、歴史を見つめて異なる時代のエッセンスを取り入れて、未来に前進するためのロマンティックなコレクションを送り出した。

着想源は“過去を振り返ること”

Photo: Courtesy of Prada

今季ミウッチャ・プラダラフ・シモンズが着想を得たのは歴史だ。19世紀後半のビクトリア朝や1920年代、50年代などの服飾史の要素を引用したが、これは過去を肯定する懐古主義ではなく、歴史を辿り今を理解することを意図したという。

ミウッチャは「歴史を振り返ると、私たちの犯している過ち、そして 強みが見えてきます。私たちが持っている唯一のもの、それが過去です。歴史から学ぶことをしない、懐古主義という考え方は好みません。歴史は、私たちにすべてを教えてくれます」とコメント。

ラフは「今のように混乱の時期、歴史を知ることに大きな意味があります。私たちは何者なのか、どこから来たのか。そうした 過去を知ることができて初めて、未来を見据えることができるのです」と説明している。

会場は1月に発表したメンズコレクションと連動して、ガラスフロアの下に小川が流れる自然空間を再現。所々に落ち葉が散りばめられ、秋冬のムードを感じられた。

キーモチーフはリボン

ファーストルックは、シルクリボンを無数に装飾したブラックドレス。ドレスの下には、刺繍入りのベッドリネンで仕立てたようなバミューダパンツを重ねている。リボンは今季プラダのキーモチーフの一つで、ドレスやスカートのバックスタイルに施されている。本来、甘くフェミニンな要素をモノトーンで表現し、その意味を見つめ直す。

帽子はフェザーやベルベットをあしらったもので、コレクション全体を通して登場し、強い印象を残した。

前後でスタイルが異なる二面性

一般的に男性的だと考えられている肩の張ったジャケットとパンツのスーツを再構築。パンツはマーメイドシルエットのようなスカートに作り替えていて、バックスタイルにはベッドリネン風のシルク生地を合わせている。多くのルックが、前後で色や素材が異なっており、プラダが長年題材にしている二面性が色濃く表現されている。

ヴィクトリア朝のディテール

今季はヴィクトリア朝のディテールが至る所に用いられている。高貴な花柄や、高い襟、ふんだんに施したくるみボタンなどは、カーディガンやジャケット、ワンピースなどのアクセントになった。それらを過去の衣服のように用いるのではなく、サイズを変えたり、異素材をミックスしたりとモダンにアレンジしている。

創業年を刻んだボンバージャケット

アメリカの1950年代のボンバージャケットは、ヴィクトリア朝の高い襟をミックスしてハイネックになっているのが特徴的。胸にはブランドの頭文字を、腕には創業年の1913を表す「19」と「13」のパッチをそれぞれ両腕に施して歴史を刻んでいる。

コルセットの名残を感じるデザイン

バイカージャケットは、ヴィクトリア朝を感じさせる高い襟や細身のシルエット、コルセットの名残を感じさせるようなデザインが目立った。スカートは、表が緩やかなシルエットで、後ろはバッスルスタイルのようなフリルやリボンがあしらわれており、女性たちをコルセットから解放した20年代のファッションを彷彿とさせた。

テクニカル素材のイブニング

ラストには、アウトドアギアに用いられるようなテクニカル素材でイブニングガウンを提案した。シルエットは身体に沿った50年代風のオフショルダードレスで、ロマンティックなデザインと硬い質感の相反する要素のコントラストがユニーク。スキーグローブのような手袋の合わせも不思議とエレガントに見える。

バッグは、腕に装着するストラップが目を引いた。ビジューや花のモチーフで装飾された定番バッグのガレリアやクレオなどにつけることで、いつものバッグでも新しい持ち方が楽しめる。また昨シーズンデビューしたベルト付きのバッグは、ハット同様のフェザーを全体にあしらって華やかにアップデート。

足もとはポインテッドトゥのサテンパンプスや、スクエアトゥのロングブーツなどの新作が登場している。

対話を生むコレクション

2024年現在も戦争が続いている中で、歴史を学び、平和について考えることは大切なこと。今季のプラダは、歴史的なモチーフにロマンティックな装飾を合わせることで、優しさや愛の大切さをコレクションに込めていた。ショーを通して、私たちに疑問を投げかけ、対話を生む、強いコレクションだった。

※プラダ2024-25年秋冬コレクションを全て見る

Photos: Gorunway.com Text: Mami Osugi