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モデルのコーラ・カレ、祖母ヴィヴィアン・ウエストウッドの誇り高きスピリットを継承する気鋭のアクティビスト

環境活動家、デザイナーなど、さまざまな顔をもち、ファッションを通じて社会に革命を起こしてきた故デイム・ヴィヴィアン・ウエストウッド。その不屈の精神の継承者として、現在世界のファッションシーンのイットモデルとして注目を集めるコーラ・カレが、祖母譲りのアクティビズムで挑む社会変革とは。

2022年3月、パリで開催されたヴィヴィアン・ウエストウッド2023-24年秋冬コレクションのショーにて。故ヴィヴィアンと孫のコーラ・カレ(左)。Photo: Pascal Le Segretain/Getty Images

「私の祖母は、まず自分自身を教育することで、あらゆることや人に挑戦してきました。そして、社会の現状やメディアやファッションについての社会認識にさまざまな異議を唱えてきましたが、最も偉大な功績は世界の正義を求めて異議を唱えたことです。ヴィヴィアン・ウエストウッドとは、私の祖母であり、姉妹であり、友人、教師、活動家、アーティスト、デザイナーetc. と、語り尽くせない存在です。彼女がいたからこそ、今の私があるのです」

2024年、UK版『VOGUE』にこう寄稿したコーラ・カレは、現在世界のファッションシーンで大きな注目を集める“イットモデル”だ。起業家のセレーナ・リーズを母親に、イギリスのランジェリーブランド「Agent Provocateur(エージェント・プロヴォケイター)」の共同創業者で活動家でヴィヴィアン・ウエストウッドの息子のジョゼフ・カレを父親に持つ彼女は、2023年にアンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッドANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD)の広告でモデルデビューを果たした。一方で、本業と並行してウエストウッドが設立した「ヴィヴィアン財団」の活動に尽力するアクティビストでもある彼女は、祖母の偉大なる遺産である財団の使命を全うすべく、日々さまざまな取り組みに尽力している。

ヴィヴィアン財団のミッション

2024年6月、ロンドンで開催されたSerpentine Summer Partyにて。Photo: Darren Gerrish / Getty Images

「過去2年間、私は祖母と緊密に協力して財団の活動に取り組む中で、想像をはるかに上回る彼女の功績と称賛を目の当たりにしてきました。祖母の言うとおり、私たちの戦略の具現化は政府の協力なしではあり得ません。そのため、祖母のような影響力を持った人が、NGOや科学者や専門家と協力して政府に圧力をかけることが、法改正を促し、社会に変革をもたらす近道だということを知ったのです」

祖母の遺志を実現すべく、今年の6月に「A Strategy 2 Save the World(世界を救うための戦略)」と題したプロジェクトを発表した。この活動は、ウエストウッドが亡くなる少し前に完成させたグラフィックアートのカードを老舗オークションハウスのクリスティーズに出品し、その売り上げを国際NGOのGreen Peaceに寄付するというものだ。

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「慈善団体やNGOは、直接人の命を救うことができる機関ですが、政府の協力なしにはそのためのシステムの変革を達成することはできません。私たちが自らを救う唯一の方法には、どうしても政府の援助が必要です。ですからまず、政府を動かすための私たちの戦略を具現化しなければなりません」

生前よくこう語っていたウエストウッドは、1970年代にデザイナーとしてのキャリアと同時に、より良い社会の創造に向け様々な活動を展開してきた。そんな彼女が、活動の集大成として立ち上げた同財団は「気候変動の阻止」「戦争の阻止」「人権擁護」「資本主義への抗議」という4つの柱を活動のポリシーとしている。オークションに出品されたグラフィックアートカードは、その思いを踏襲したものだとカレはアート雑誌『Plaster Magazine』に明かしている。

「たとえば、『スペードの5』のカードは、NASAのグラフィック・マップに基づいて描かれていて、21世紀末までに世界の気温が5度上昇した場合に何が起こるかを暗示しています。また、彼女がグッズに施した『I Love Crap』というグラフィックは、消費主義が横行する世の中でゴミを買うのを止めようというメッセージでもあります。ですが皮肉なことに、これが彼女のプロダクトの中で最も売れたもののひとつとなったのです」

熱帯雨林、海洋、生物多様性に焦点を当て、二酸化炭素排出量森林破壊を同時に削減し、自然界の保護と回復に努めること。武器貿易反対キャンペーンの展開と、戦争によって直接影響を受けた人や亡命希望者の権利保護運動を支援すること。言論の自由のために戦う人々の擁護と保護に重点を置き、体制に立ち向かい、体制によって迫害されている人々を支援すること。そして、「購入を減らし、適切に選択し、長持ちさせる」ことをスローガンに、より平等でグリーンな経済を目指して闘う組織と連携をとること──これらヴィヴィアンの哲学は、孫娘であるカレという次世代へと確実に受け継がれている。

“声”という特権を社会を変える力に変えて

2015年のヴィヴィアン・ウエストウッド レッド・レーベルの春夏コレクションにて。Photo: Mike Marsland

「地球を守ることは、人類の生存そのものを賭けた戦争。それを阻止するための私たちの最大の武器が“世論”。だからこそ、皆が自由の戦士にならなければならない」──幼い頃、ウエストウッドからよく聞かされていたというこの言葉を、現在の自身の活動の信念に据えているというカレ。そんな彼女は、ウエストウッドの反骨精神の直々の継承者として、自身の活動の“これから”について先の『VOGUE』の記事でこう宣言している。

「今日の私たちには、特権が与えられています。その特権とは、個々の力であり、“声”です。そして、個々の声が集まれば、やがて大きな力に変わります。ですから、いかなる活動においてもこの特権を決して軽視すべきではありません。

私たちが雨風を凌げる安全な家に住むことができることは、決して当たり前ではありません。だからこそ、その特権は同胞への思いやりのために活用するべきものなのです。そのためにも、私は祖母の信念を正しく継承し、誠実に実践していきます」

Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba