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グッチは未来に続くデザインを継承。トム・フォード期のアーカイブを色濃く反映【2023-24年秋冬ミラノ速報】

2月24日(現地時間)、前クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ退任後、初のウィメンズのファッションショーを披露したグッチ(GUCCI)。9月に控える新クリエイティブ・ディレクターのサバト・デ・サルノのデビューコレクションを前に、今季はデザインチームがブランドのヘリテージを振り返り、未来にバトンを繋ぐコレクションを打ち出した。

会場のGUCCI HUBは、壁紙もカーペットも鮮やかなサフランイエローの空間。ブラウンのシートには、グッチGUCCI)が開発した70%植物由来のレザー風テキスタイル、デメトラが配されていた。モデルたちは、時空を旅するエレベーターをイメージした自動ドアから登場し、ランウェイを闊歩する。

今季は、100年を超えるグッチの歴史の中から、1990年代から現在までのスタイルにフォーカス。特にトム・フォードがデザインを手掛けていた90〜00年代のセンシュアルな要素が色濃く出ている。ファーストルックのGGのジュエリーブラと、ロングのタイトスカートは、ランジェリーをランウェイに送り出したトムの象徴的なルックを彷彿とさせる。

アイコニックなハードウェアのホースビットは、過去の細長いモデルをキーモチーフとして随所に採用。ローライズパンツやスカートには、付属のベルトとして施した。また新鮮なのは、補色を使ったカラーパレットと異素材のコーディネート。ビビッドなサフランイエローのモヘアニットは、ベルベットのパープルパンツを合わせて、コーディネートにスパイスを効かせている。

リファレンスは、前任クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロのデザインも垣間見える。アレッサンドロのデビューコレクションだった2015-16年秋冬を想起するファーカフスの装飾もあった。

これまでメンズとウィメンズの合同ショーを行い、ジェンダーの流動性を発信してきたグッチだが、今季はジェンダーを分けてショーを発表。しかし、流動性を感じる表現は残っている。ボーイフレンドの服を借りたようなオーバーサイズのジャケットコートは、中性的な色気を醸し出す。

装飾的なイブニングウェアは、職人による手作業でビジューを総刺繍するなど、クチュール級の仕立て。グッチのデザインチームや職人が盤石な体制であることを証明した。

懐かしく新鮮なバッグ&シューズ

バッグシューズも、アーカイブを掘り起こしたデザインが目立った。トム・フォード期にヒットした大きなホースビットをあしらったチェーンバッグを復刻。カラフルなレザー使いのほか、シアリングやクリスタルなど豊富なデザインで提案する。代表的なハンドバッグであるジャッキーは原型をアレンジし、ツートーンやGGパターンを施して再登場。アレッサンドロが手掛けたデュオニソスのバッグからヒントを得た、タイガーヘッド付きの新作バッグやサンダルもあった。

さらにバスケットシューズからインスパイアされたスニーカー、ファーとホースビットをのせたスキーブーツ、香水瓶の赤を再現したというバイザーグラスなど、スポーツの要素を感じられるアイテムもラインアップした。

フィナーレ後には、デザインチームのメンバーがエレベーターから現れ、拍手をして挨拶。今季は、過去のデザイナーが生み出したアイコニックなデザインに敬意を払いながら、ユニークかつリアルな提案が融合され、ブランドが前進する姿を感じさせた。

ヴァレンティノVALENTINO)などで経験を積んだ、新クリエイティブ・ディレクターのサバト・デ・サルノのデビューは9月の予定。同氏が今後、どのようなグッチの時代を築いていくのか期待が募る。

※グッチの2023-24年秋冬コレクションをすべて見る。

Photos: Gorunway.com  Text: Mami Osugi