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英CPI、6月は前年比+2.0%で横ばい 利下げ観測後退

2024年07月17日(水)19時39分

 7月17日、英国立統計局(ONS)が発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.0%上昇し、伸び率は5月から横ばいとなった。写真は9日、ロンドンで撮影(2024年 ロイター/Hollie Adams)

William Schomberg David Milliken

[ロンドン 17日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が17日発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.0%上昇し、伸び率は5月から横ばいとなった。ロイターの調査では1.9%へと小幅に鈍化すると予想されていた。基調的な物価上昇圧力は依然として強く、イングランド銀行(英中央銀行)が来月、2020年以来の利下げに踏み切るとの観測が後退した。

インフレ率が予想を上回った一因はホテル価格の大幅上昇で、サービス部門の価格圧力に対するイングランド銀行の懸念が裏付けられた。6月は米人気歌手テイラー・スウィフトさんを始めとする複数の有名なパフォーマーが英国ツアーを行った。

ONSによるとホテル価格のほか、中古車価格の下落幅縮小も上振れ要因だった。一部のアナリストは、ホテルのような変動しやすい項目を除けば、サービスインフレは下落したとの見方を示した。

デロイトのチーフエコノミスト、イアン・スチュワート氏は、食品やエネルギー価格の高騰が一服する中、英インフレ率は今や米国やユーロ圏よりも低くなっているが、これは一時的なものに過ぎないと解説。「今年に入ってからの英経済の回復は、サービス業がかなり高い水準のインフレを生み出していることを意味しており、英中銀が今年利下げに踏み切る余地が限られていることを示唆している」と述べた。

会計士団体ICAEWの経済ディレクター、スレン・ティル氏は「インフレ危機を脱したことを改めて示すものだが、高水準のサービスインフレは、その後遺症が続いていることを示唆している」と語った。

統計局によると、サービス部門のインフレ率は5.7%で、5月から横ばいだった。ロイターが集計したエコノミスト予想は5.6%。

金利先物によると、投資家は英中銀が次回会合の8月1日に利下げを実施する可能性は3分の1程度とみている。インフレ統計の発表前には、利下げの確率はほぼ半々とされていた。

<スウィフト効果?>

ドイツ銀行のチーフエコノミスト、サンジェイ・ラジャ氏は、ホテル価格の上昇はスウィフトさんのツアーが影響しているかもしれないと指摘。こうした上昇は7月のデータで反転する可能性はあるが、全体として6月のインフレ統計は英中銀にとって心強いものではないだろう。

ラジャ氏は「8月利下げの有無は微妙だと考えている。5月の賃金と失業率のデータ次第だ」と述べた。

<コアインフレ>

変動の激しい食品とエネルギー価格を除くコアインフレは前年比3.5%上昇し、ロイター調査による予想と一致した。中銀は今回の数字から大きな安心感を得ることはないとみられている。RBCキャピタル・マーケッツのエコノミストは、8月の利下げはますます予断を許さないものになったとの見方を示した。

ロイター
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