悪魔と夜ふかしの映画専門家レビュー一覧

悪魔と夜ふかし

テレビ番組の生放送中に起きた怪異を“ファウンド・フッテージ”スタイルで描いたオカルトホラー。1977年、ハロウィンの夜。深夜トークバラエティ番組の司会者ジャックは、悪魔が憑くという少女を生放送に登場させ、“悪魔の生出演”を実現させるが……。監督は、「スケア・キャンペーン」のコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。出演は、「ザ・スーサイド・スクワッド  極 悪党、集結」のデヴィッド・ダストマルチャン、「ソウ5」のローラ・ゴードン。
  • 文筆業

    奈々村久生

    生放送中の番組で悪魔を召喚する設定自体は少しも目新しくない。主軸は怪奇現象ではなく視聴率を稼ごうとする制作者側の野心であり、ホラーとしての怖さは度外視だ。私たちはどうして放送事故を恐れるのか。テロップのみの固定画面になぜあんなにも不安を煽られるのか。スポンサー企業のCMを放送できないリスクは理解できるが、ライブ=止められないという思い込みはまったくのナンセンスで、本番中はカメラの前を侵すべからずという撮影現場における不文律の理不尽な滑稽さを思わせる。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    こういう怖さのホラー映画、ひさしぶりに観た気がする。怖かったし笑えたし、すべてのキャラクターが類型といえば類型だけど悲劇的で、面白かった。そして続篇が作りにくい、いさぎよい終わりかた。テレビ局ごと地獄に堕ちるのは中島らもの傑作長篇小説『ガダラの豚』を思い出す。日本だとホラーの元凶はメンヘラの幽霊か田舎の因習かサイコパスな人なのが多いけど、与党に影響力をもつカルト宗教が悪の本尊だと設定を改変してネトフリで『ガダラの豚』をドラマにしてくれないかしらね。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    生放送のバラエティ番組で起こるハプニングは、ホラーとの親和性が高く、視聴者に他者と共有できない孤独な不安を与えるものだ。今や売れっ子の助演俳優デイヴィッド・ダストマルチャンの、満を持しての主演作。背が高くスタイルも良いので、70年代風シルエットの背広姿と髪型が、フェティッシュな魅力を放つ。悪魔憑きなどの表現は凡庸なものの、当時の雰囲気を再現する美術や映像へのこだわりは愉しい。ファウンドフッテージなのに、カメラがセット裏の内緒話などに立ち会っているのはご愛嬌。

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