HAPPYEND(2024)の映画専門家レビュー一覧
HAPPYEND(2024)
東京とニューヨークの2拠点で活躍し、コンサートドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto | Opus」を監督した空音央(そらねお)の長編劇映画初監督作。そう遠くない近未来の日本で、高校卒業を控えた幼馴染二人の友情と葛藤を描いた青春映画。出演は共にオーディションで抜擢され、本作でスクリーンデビューを果たす栗原颯人と日高由起刀。
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文筆家
和泉萌香
10代が無邪気でいることは悪いこととは思わない。初めてデモに参加する者、「気楽にやろうよ」と過ごす者、今を生きる等身大の高校生たちの心情、葛藤、時にはちょっとした傲慢さ、おふざけなどをもあくまでも等しく愛と尊敬をもって描写したこの眼差しはきっと若者たちを優しく鼓舞することだろう。劇中での音楽そのものの在り方も魅力的だ。主演ふたりも迫力満点に美しいが、三枚目に徹する友人キャラが実は最高に格好いい。「声」はそれぞれ十人十色と思わせる。
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フランス文学者
谷昌親
どこか北野武の「キッズ・リターン」を思わせるような不良少年物の骨格を保ちながら、近未来からの視点を借りることで、閉塞感ただよう現代の日本社会までも鮮やかに浮かび上がらせた、21世紀的な青春群像劇の秀作と言えそうだ。高校の管理体制に反発する生徒たちを描いた映画というのも、なぜか最近はあまり見た記憶がなく、それだけに、少年・少女たちのみずみずしい演技が印象的だ。何度となく歩道橋で語り合い、左右に別れていく少年二人の姿がほほえましく、そしてもの悲しい。
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映画評論家
吉田広明
映画の冒頭に、大人たちは管理を強めようとし、一方若者はそれに反抗するという旨の字幕が出るのだが、本作の内容はそれをそっくりそのまま映像化したものだ。語りたい主題があり、それを映像として実現するというのが映画作りではあろうが、しかし映像=音響がそれを逸脱しようとし、主題とは別の意味を生み出し始める、その葛藤に映画の意義はあるだろう。一定の意味に映像や音響を押し込めるだけであれば、本作が仮想敵としている「大人たち」のありようと大して変わるまい。
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