[目次]

▼ 伝説の古代兵器は実現したのか?

▼ 「死の光線」はこれまでにも研究されてきた

▼ まとめ


伝説の古代兵器は実現したのか?

カナダ・オンタリオ州ロンドンに住む当時12歳のブレンデン・セナーは、古代ギリシャの数学者アルキメデスの提唱した概念に夢中になっていた…と聞けば、驚く人も多いだろう。しかし、「その概念とは具体的にどのようなものであったか?」を知れば、納得できるはずだ。そのコンセプトとは、太陽のエネルギーを利用した『Death ray(死の光線)』だ。そしてセナーは、そのアルキメデスが記したそのアイデアに挑戦したいと考えたのだ。

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現在13歳になったセナーは、古代の装置を実現させる試みで、すでに複数のメダルを獲得している。カナダの科学雑誌『Canadian Science Fair Journal』に掲載された彼の論文*1によれば、彼は「アルキメデスの『死の光線』についての原理は確かに可能である」ということを示したのである。

熱線としても知られる「死の光線」使用されたことを証明する考古学的証拠はない。だが、かといって、必ずしもなかったことを意味するわけではない——セナーの説明によれば、古代の「死の光線」は一連の大きな凹面鏡でできており、太陽の光を一点に集中させるように配置され、1000フィート(304.8メートル)先までの標的に当たる可能性があったということだ。

セナーは、このコンセプトのミニチュア版を作った。 彼はヒートランプと4枚の凹面鏡を使い、それぞれが厚紙に印をつけるように調節した。これは2023年のMatthews Hall Annual Science Fair*2で発表され、彼は鏡を追加するにつれて目標地点の温度が上昇することを確認した。

光
SEAN GLADWELL//Getty Images

彼のこの実験は、紀元前214年から212年にかけてのシュラクサイ包囲戦*3に関する歴史的記述にあるような、接近してきたローマ帝国の船に火をつけるのに役立ったとしている。そして、より大規模な装置であったとも彼は認識している。また、当時の装置は鏡か、あるいは高度に研磨された盾が使用されていた可能性もあると…。

「古代シュラクサイ(現シラクサ)での『死の光線』使用に関する歴史的記述は、信じられる範囲のものです。ですが、アルキメデスの『死の光線』に関する考古学的証拠は、古代の哲学者の書物に記されている以外には見つかっていないのです」とセナーは言う。

「死の光線」はこれまでにも研究されてきた

CNNのインタビュー*4でセナーは、「家族旅行でギリシャに行ったときに初めてアルキメデスの発明に魅了されたんです」と語っている。 彼は最初のプロジェクトで水を動かすのに役立つアルキメデスのスクリューを取り上げたが、水を動かすことは、太陽のエネルギーを動かすことほど興味をそそるものではなかったのだろう。

「アルキメデスは、時代を先取りした発明をしていました。それまで誰も考えつかなかったようなことを考えていたのです」

同CNNの記事によれば、サンディア国立研究所のシニア・サイエンティストで、約10年前に「死の光線」について発表したクリフ・ホー*5氏は、セナーの科学的研究を推薦したとのこと。彼はまた、「死の光線」が作られたり使われたりする可能性は低いとしても、可能性はあると考えている。

アルキメデスのこのコンセプトを探求したのは、セナーが初めてではない。彼の論文にあるように、2003~2016年にディスカバリー・チャンネルで放映されていた「MythBusters(怪しい伝説)」シリーズ*6では3回にわたってこのシナリオをテストし、いずれもボートを燃やすことに失敗している。動いている船や雲が太陽の熱を制限するため、この試みは失敗に終わったのだろう。

そしてCNNは、2005年にマサチューセッツ工科大学で行われた「死の光線」を再現しようとした学生の試み*7も取り上げている。この試みは、一度船を燃やすことには成功したが、再挑戦では失敗に終わった。

セナーはすべての実験が積み重ねによって、これが実現する可能性を証明することへとつながると固く信じているようです。それこそが、今この中学生にとって必要なすべてではないだろうか。

まとめ

  • 古代ギリシャの数学者アルキメデスは「死の光線」はあり得ると考え、カナダの中学生がそのコンセプトを実現しようと試みた。
  • オンタリオ州のブレンデン・セナーは、光と鏡を使って細工したアルキメデスの「死の光線」のミニチュア版で、複数のメダルを獲得した。
  • 「死の光線」が採用されたことを証明する考古学的証拠は存在しないが、セナーは大いにあり得たと考えている。

[脚注]

*1:『Canadian Science Fair Journal』に掲載されている「THE POWER OF THE ARCHIMEDES DEATH RAY」を参照

*2:カナダのオンタリオ州ロンドンにある私立学校。そこで毎年開催される科学フェアのこと。このイベントでは、生徒たちが科学プロジェクトを発表し、実験結果を共有する。公式サイトを参照

*3: 「シュラクサイ包囲網」は歴史をまたいで何回もあるが、ここで言うそれは紀元前214~212年のシュラクサイ包囲戦となる。第二次ポエニ戦争中にローマ軍がシチリアのシュラクサイを攻撃した戦いの一部であり、この戦いでシュラクサイ防衛に数学者アルキメデスが関与し、「死の光線」が使われたという文献がある。最終的にローマ軍はシュラクサイを攻略し、街を占領。この過程でアルキメデスは殺害されたとされる説が有力となっている。

*4:CNNの公式サイトに掲載されている「13-year-old has eureka moment with science project that suggests Archimedes’ invention was plausible」を参照

*5:Cliff Ho サンディア国立研究所公式サイトを参照

*6:公式サイトを参照

*7:マサチューセッツ工科大学の「Archimedes Death Ray: Idea Feasibility Testing」を参照

Source / Popular Mechanics
Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です