韓国・最大野党党首、演説後に首を刺される
韓国で2日午前、プサン市を訪れていた最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)党首が襲撃され、首を刺される事件があった。
李氏は首の左側に1センチの裂傷を負い、ヘリコプターで病院に運ばれた。医師によると、命に別状はないという。
聯合ニュースによると、襲撃犯の66歳の男は、李氏を殺すつもりだったと述べているという。襲撃の動機は明らかになっていない。
大胆な攻撃は国民に衝撃を与え、政党や尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を含む政治家らから非難の声が上がった。
李氏は2日朝、プサン港の建設現場を訪問中に記者会見で演説していたところ、襲撃犯が彼に近づき、サインを求めたという。
その後、犯人はインターネットで買ったという刃渡り18センチの刃物で、李氏を刺そうとした。犯人はすぐに制圧され、逮捕された。
聯合ニュースによると、検察はこの男を殺人未遂で起訴する方針。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、李氏がまず群衆の中に倒れ込み、そのまま地面に倒れる様子が映っている。また、数人が攻撃者を拘束しようとしている。事件後の写真では、李氏が目を閉じて地面に横たわり、誰かが彼の首の横にハンカチを押し当てている。
「共に民主党」のクォン・チルスン報道官は、頭から心臓に血液を送る頸静脈の損傷が医師団に懸念されていたと説明。また、出血が続くと懸念されるため、「速やかに」手術を受ける必要があると述べた。
その上で、この襲撃は「民主主義を破壊する明らかな行為」だとの見方を示した。尹大統領の事務所も、韓国は「いかなる状況においても、このような暴力行為を容認すべきではない」とする大統領の言葉を引用した。
李氏は2022年の大統領選で、得票率で0.73%という僅差で現職の尹氏に敗れた。韓国史上最も接戦の大統領選だった。李氏は2027年の次回選挙に出馬するとみられている。
貧困地域の出身で、子どもの頃に工場で働いていた李氏は、公民権弁護士となり、政界入りした。労働者階級でのルーツが、自分を不平等との闘いに駆り立てたのだと発言していた。
李氏の貧しい生い立ちは、他の多くの韓国の議会議員とは対照的だ。地元メディアの報道によると、議会議員の平均純資産は23億ウォン(約2億5000万円)。
2022年の大統領選に敗れた後、李氏は汚職と背任の罪で起訴された。検察は、李氏がソウルの南に位置する人口100万人の都市、城南市の市長だった時に、民間開発業者が不動産プロジェクトで違法に利益を得るのを許したとして起訴した。一連の罪状について李氏は、政治的な動機によるものだとして否定している。
韓国の裁判所は9月、裁判を待つ間の身柄拘束を求める検察側の要求を棄却した。検察は、李氏の在任中の汚職に関連する他の多くの事件に関しても捜査を続けている。
李氏はこの棄却の3週間前、尹大統領の外交・国内政策に抗議して19日間のハンガーストライキを敢行。最終的に病院での治療が必要となった。
韓国の犯罪率は一般的に低いが、昨年には刃物で襲撃事件が急増した。同国には銃火器を含む武器の所持について厳しい規制がある一方で、公人には厳格な警護がつかないことが多い。
だが、韓国の政治家が武器の襲撃を受けた事件は多い。
2022年3月には、「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)前党首が、李氏の選挙活動中に鈍器で殴られ、裂傷を負った。
2006年には、保守・ハンナラ党(当時)の党首で、後に大統領となった朴槿恵(パク・クネ)氏が刃物で襲撃され、顔に傷を受けた。
槿恵氏の父親で16年間大統領を務めた朴正煕(パク・チョンヒ)氏は1979年、、私的なディナーの席で側近に射殺された。
追加取材:ジェイク・クウォン(ソウル)