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2024年『WIRED』が注目する電動モビリティ8選──特集「THE WORLD IN 2024」

2024年も、あらゆる場所に繰り出そうとするユーザーに寄り添い、期待を上回るようなデザインとハイパフォーマンスを誇る電動モビリティが続々と登場予定だ。そのなかから、『WIRED』が選ぶ要注目のモビリティを8つ紹介する。
2024年『WIRED』が注目する電動モビリティ8選──特集「THE WORLD IN 2024」

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世界中のビジョナリーや起業家、ビッグシンカーがキーワードを掲げ、2024年の最重要パラダイムを網羅した恒例の総力特集「THE WORLD IN 2024」。そのなかでもギアとして今回取り上げるのが、電気自動車(EV)、電動垂直離着陸機(eVTOL)、電動モペッド、高級電動船舶など多彩な電動モビリティだ。


Hyundai / IONIQ 5 N

2021年に初公開されたIONIQ 5(アイオニック5)は、ヒョンデのカーデザインを大胆かつ斬新な方向に押し進め、賛否両論を巻き起こした(先がとがって見えるフロントバンパーのことだ)。一方、「IONIQ 5 N(アイオニック5 N)」は、ヒョンデの高性能ブランド「N」初の電気自動車(EV)であり、幸いにも、不人気だったデザインを改良している。また、パフォーマンスも改善された。N グリン・ブーストボタンを押すことで、最高出力478kW/650PSのトルクとパワーを発揮し、N ドリフト・オプティマイザーを採用したことで、ドリフト角を維持しやすくなっている。このほかにアップグレードされたのは、基本仕様に比べて約20mm低くなったバケットシート、Nを象徴するルミナスオレンジのアクセントが利いたフロントバンパー下部のリップスポイラーやリアディフューザーなどだ。


AIR / AIR ONE

イスラエルのスタートアップAIRによる空飛ぶ「AIR ONE」は2人乗りで、1回の充電で約180km移動できるように設計された電動垂直離着陸機(eVTOL)だ。2024年末に発売予定で、最低価格は15万ドル(約2,200万円)に設定されている。平均速度は高度1,200フィート(約366m)で時速100マイル(約160km)。同機は垂直に離陸して上空で前進する仕様で、最大積載量は250kgである。十分なスペースがあれば、アダプターを使って自宅でも充電できるだろう。CCS規格のプラグがある公共のEV用高速充電スタンドも利用でき、バッテリー残量が20%なら30分で80%に、空なら1時間で満充電できるという。


SUPER73 / C1X

電動モペッドを展開するSUPER73の「C1X」はコンセプトバイクとして紹介されたが、2024年内の納車を視野に入れて手付金の支払いを受け付けている。同社の目標は、時速75マイル(約120km)で公道を走行するオートバイと電動自転車の操縦性を融合させることであり、スイングアームのピボットポイントの後方にモーターを取り付け、コンパクトな15インチのホイールを採用。シート高はわずか79cmで、ホイールベースは約130cmになっている。また、急速充電で15分以内に容量80%(航続距離は約160km)までチャージ可能だ。


BMW × TYDE / THE ICON

BMWと船舶メーカーのTYDEによる高級電動船舶「THE ICON」は全長約13mで、洗練されたハウスボートのようだ。ラウンジスペースは美しく、海上制御と航行表示がBMW ID8オペレーティング・システムとタッチセンサー式ディスプレイをベースにしたコントロール・インターフェイスにまとめられており、音声操作も可能だ。ヨットレースで培われたハイドロフォイル技術を応用し、乗り心地は穏やか。人気の「BMW i3」で採用されたバッテリーを搭載することで、最高時速30ノット、航続距離100kmを実現している。


Fisker Inc.

Fisker / Ronin

電気SUV「Ocean(オーシャン)」で話題を呼んだフィスカーが、新たに複数のEVを開発している。38万5,000ドル(約5,800万円)の「Ronin(ローニン)」はそのひとつだ。この見事なコンバーチブルGTは1,000馬力を超えるパワーを誇り、トリプルモーターを採用したことで0-100km/h加速は約2秒という驚異的なスピードである。さらに、1回の充電による航続距離は約970kmだという。バタフライドアで、カーボンファイバー製のハードトップはスマートフォンのアプリから操作できる。2024年に生産を開始し、幸運にも限定999台のひとつを購入できたなら、25年に納車される予定だ。


Kia / EV3

「2023 Kia EV Day」というイべントで発表された起亜自動車(キア)のコンセプトSUV「EV3」が、2024年に発売されるという噂がささやかれている。EV3は、実用的で運転の喜びを体現するような小型EVを同社が追求した成果であり、35,000ドル(約520万円)から50,000ドル(約750万円)の価格帯で販売されると考えられる。EV9を小型化したようなデザインで、頑丈そうな角張った箱型のホイールアーチが特徴的だ。フロントガラスはEV9よりも前方に押し出されている。EV3はCピラーが分断されているので、外から見るとルーフが浮いているような印象を受ける。一方で車内を見ると、環境に優しい素材が使用され、長さや位置、角度を変えられる回転式ミニテーブルなど、使い勝手のよい機能も備えられている。インテリアは「フォーカス」「ソーシャル」「リフレッシュ」「ストレージ」の4通りに動かすことができ、リアシートを折り畳めば電動スクーターや自転車のような大きな荷物を積める。


Nimbus / One

米国の新興企業Nimbusによる、フロント2輪の軽快な電動バイク「One」は2024年に登場予定で、価格は10,000ドルに満たない。楽しく運転できそうな見た目だけでなく、そのほかの仕様も注目に値する。0-48km/h加速は約3秒で航続距離は150km。フロントエアバッグのほか、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)や先進運転支援システム(ADAS)、スチールフレームを採用している。容量9kWhの交換式のバッテリーは、自宅のコンセントに5.4時間つなぐだけで満充電できる。Nimbusは最高時速80kmのOneと、およそ120kmのOne Sのふたつを販売する予定。その真の魅力はオートバイのようにスリムな3輪デザインにあり、都会を縫って走るには最適だ。


Verge Motorcycles / TS Pro

Verge Motorcyclesの「TS Pro」は、航続距離350kmを誇る電動バイクだ。後輪には大きな穴が開いている。クールに見えて、それだけではない。これはモーターの一部なのだ。後輪のリムには、ベアリングを間に挟んだふたつの同心円状のマグネットリングを格納している。固定された内側のリングは電磁石、外側のリングは磁石で、反発により電気が生じ、ホイールを回転させるのだ。ボディ部分にモーターがなくバッテリーの収容スペースにできるので、航続距離を延ばすことにもつながった。可動部が少ないので摩擦で失われるエネルギーも減り、トルクは1,000Nmで0-100km/h加速は3.5秒と優れたパフォーマンスを発揮する。


TRANSLATION BY KEI HASEGAWA, LIBER/EDIT BY ERINA ANSCOMB

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.51 特集「THE WORLD IN 2024」より転載。


雑誌『WIRED』日本版VOL.51
「THE WORLD IN 2024」

アイデアとイノベーションの源泉であり、常に未来を実装するメディアである『WIRED』のエッセンスが詰まった年末恒例の「THE WORLD IN」シリーズ。加速し続けるAIの能力がわたしたちのカルチャーやビジネス、セキュリティから政治まで広範に及ぼすインパクトのゆくえを探るほか、環境危機に対峙するテクノロジーの現在地、サイエンスや医療でいよいよ訪れる注目のブレイクスルーなど、全10分野にわたり、2024年の最重要パラダイムを読み解く総力特集!詳細はこちら


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