広告費をなくし、健全なサプライチェーン構築に投資するスニーカーブランド──VEJA:特集「リジェネラティブ・カンパニー」

フランス発のVEJAは、再生やオーガニックについて語ることを単なるマーケティングにとどめず、環境や健全なサプライチェーンに投資することで製品の価格競争力と責任の両立を果たしている──未来を再生する次世代カンパニーを紹介する『WIRED』日本版の総力特集。
広告費をなくし、健全なサプライチェーン構築に投資するスニーカーブランド──VEJA:特集「リジェネラティブ・カンパニー」

セバスチャン・コップとフランソワ・モリィヨンがグローバリゼーションの失敗を実感したのは、ふたりがフランスのファッションブランドの監査で中国の工場を訪れたとき。そこで目にしたのは、13畳ほどの部屋に32人で暮らす従業員の疲れ果てた姿だった。ふたりはサステナビリティについて企業の主張と実態の乖離に落胆する。

関連記事あの悲劇から10年、日本のファッション産業はどれだけ透明になったのか(ならなかったのか)

その後、フランスのフェアトレードを牽引する食料品ブランド「Alter Eco」やNGOなどでの経験を経て、ふたりはスニーカーブランドの「VEJA」を創業する。デザインと社会的責任の両立を求めるVEJAは、見た目や機能性はもちろん、環境や労働者の権利といった現代のものづくりの仕組みが抱える問題にも徹底的に向き合った。こうした施策を阻むのは概して資金だが、VEJAは通常はコストの7割を占めるという広告費をなくし、その分を環境や健全なサプライチェーンに投資することで価格競争力と責任の両立を果たす。

「ファッション業界やブランドは、再生やオーガニックについて語ることを単なるマーケティングと捉えています」と、コップは憤る。一方、創業時から生産現場でのフィールドワークを欠かさず、生産者と直接取引を続けてきたVEJAは、原材料がどこから来て、誰がどのように生産しているのかを正確に把握し、事細かに公開してきた。「ファッション業界はこうしたことが見えておらず、誰も語れません。だからこそ、わたしたちはブランドを『VEJA』(ポルトガル語で『見る』の意)と名付けたのです」

VEJA
Headquarters_ France
Founded_ 2005
Representative_ Sébastien Kopp (Co-Founder)

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.49 特集「THE REGENERATIVE COMPANY」より転載。
※『WIRED』によるTHE REGENERATIVE COMPANYの関連記事はこちら


雑誌『WIRED』日本版VOL.49
「THE REGENERATIVE COMPANY:未来をつくる会社」好評発売中!

株主資本主義による格差や外部不経済の拡大、ガバナンスの失敗などといった多くの課題に直面するなか、世界中で「会社」の役割や枠組みを問い直そうという動きがある。未来を再生するカンパニーを「THE REGENERATIVE COMPANY」と定義づけ、始まりつつある大きなムーブメントを捉えた総力特集!詳細はこちら