「繁栄思考」でフードシステムを改革する──Future Food Institute:特集「リジェネラティブ・カンパニー」

イタリア発のFuture Food Instituteは、経済成長のみならず、社会的・環境的ウェルビーイングを含めた“繁栄”という理念に基づき、よりよいフードシステムの構築を目指している──未来を再生する次世代カンパニーを紹介する『WIRED』日本版の総力特集。
FFIの共同設立者、サラ・ロヴェルシ。
FFIの共同設立者、サラ・ロヴェルシ。

社会を駆動し、イノベーションを生む装置として大きな役割を担ってきた「会社」。株主資本主義による格差や外部不経済の拡大、ガバナンスの失敗など、その歴史で多くの課題にも直面するなか、いま「会社」の役割や枠組みを問い直す動きが世界中で始まっている。

経済活動を通じて人々のつながり、社会、生態系、経済システムを再生しようとする次世代カンパニーを「THE REGENERATIVE COMPANY(リジェネラティブ・カンパニー)」と定義づけ、始まりつつある大きなムーブメントを捉えた『WIRED』日本版の総力特集から。

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2014年にボローニャで設立されたグローバルな非営利団体、Future Food Institute(FFI)。その核にあるのは、「プロスペリティ・シンキング(繁栄思考)」のアプローチだ。「経済成長だけでなく、社会的・環境的ウェルビーイングを含めた繁栄という理念を共有することで、よりよいフードシステムの構築を目指しています」と、共同設立者のサラ・ロヴェルシは話す。

この理念を実践的なかたちで拡めるべく、FFIはイタリア国内のほか、東京を含む世界各地で教育活動や産官学連携のイノベーションの推進、コミュニティプラットフォームの構築などを進めてきた。そのひとつが、ユネスコ無形文化遺産にも登録された地中海式食の発祥の地、ポリカのリビングラボだ。

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環境保護と健康維持を両立したライフスタイルが受け継がれてきたポリカでは、フードシステムの強化が人や土壌の栄養を満たすだけでなく、文化財や生態系の保護、文化的アイデンティティやコミュニティ意識の向上といった地域の再生にもつながることが証明されているとロヴェルシは話す。「FFIでは新しいデザインやツール、モデル、KPIなどを用いてこの総合的なアプローチを他地域にも適用することを目指しています」

環境の側面ばかり語られがちな持続可能性だが、真の持続性は社会や人、政治、経済、文化などの再生とバランスで達成されるとFFIは考える。「価値再生に基づく非搾取的な循環型モデルを領域ごとに適用することはできません。あらゆる側面への同時展開が必要なのです」

Future Food Institute
Headquarters_ Italy
Founded_ 2014
Representative_ Sara Roversi (President)

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.49 特集「THE REGENERATIVE COMPANY」より転載。
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