スウォッチの「MoonSwatch」、今度は地球をモチーフにした3モデルが発売へ

「MoonSwatch(ムーンスウォッチ)」のスヌーピーモデルの発売から3カ月も経たずに、スウォッチは3種類の新モデルを6月12日に発表した。今回の新モデルは、すべて地球をモチーフにした製品となる。
Image may contain Wristwatch Arm Body Part and Person
PHOTOGRAPH: Swatch Group

「MoonSwatch(ムーンスウォッチ)」のスヌーピーモデルの発表から3カ月も経たないうちに、スウォッチは1種類どころか3種類もの新モデルを6月12日に発表した。今回の新モデルは、すべて地球をモチーフにした製品となる。スウォッチによると、これらの新作は「歴史において人々は、上空から世界がどう見えるのかについて興味をもっていた」という事実にインスピレーションを得ているという。

「Bioceramic MoonSwatch MISSION ON EARTH – LAVA」は、火山の溶岩をモチーフにした鮮やかな赤色を採用している。クロノグラフの秒針はオレンジ色で、オメガの「スピードマスター ムーンウォッチ」の「ウルトラマン」モデルを彷彿とさせる。

「Bioceramic MoonSwatch MISSION ON EARTH – POLAR LIGHTS」は、オーロラを表現している。太陽からの荷電粒子が地球の上層大気分子と相互作用し、特徴的な光のショーを生み出す自然現象だ。ダークブルーの文字盤には、いまの時計製造のトレンドであるアベンチュリンガラスの文字盤にインスピレーションを得たシルバーの小さな斑点があしらわれている。この斑点の分布はモデルごとに異なる。

真っ赤な「Bioceramic MoonSwatch MISSION ON EARTH – LAVA」。クロノグラフの秒針はオレンジ色で、オメガの「スピードマスター ムーンウォッチ」の「ウルトラマン」モデルを思わせる。

PHOTOGRAPH: Swatch Group

そして「Bioceramic MoonSwatch MISSION ON EARTH – DESERT」は、3モデルのなかでは目立たないデザインだが、ベージュのトーンが地球上の砂の海を連想させる。スウォッチにとって重要なことは、これらの3モデルの自然現象はすべて宇宙からはっきり見えるという点だ。

今回の新製品のニュースは、タグ・ホイヤーがムーンスウォッチに対抗すべく、「タグ・ホイヤー フォーミュラ 1」とKithのコラボレーションモデルを限定で投入した動きに続くものだ。1986年に登場したタグ・ホイヤーの「フォーミュラ 1」は、その3年前に市場に革命を起こしたと低価格なスウォッチに対するタグ・ホイヤーの“回答”であり、はるかに高いスペックを誇る製品として注目された。

生まれ変わった「TAG Heuer Formula 1 | Kith」は、Kithとの限定コラボモデルとなる。タグ・ホイヤーがコラボレーションするパートナーのロゴとタグ・ホイヤーのロゴを融合させたのは、これが初めてだ。文字盤にはKithの 「Just Us」というスローガンがあしらわれ、タグ・ホイヤーがZ世代の消費者とのかかわりを強く意識していることが明確に示されている。

ターコイズブルーの「Bioceramic MoonSwatch MISSION ON EARTH – POLAR LIGHTS」。アベンチュリンガラスの文字盤にインスピレーションを得たシルバーの小さな斑点があしらわれている。

PHOTOGRAPH: Swatch Group

これらの3種類の新しいムーンスウォッチの価格は270ドル(日本では40,700円)で、6月15日から世界の一部のスウォッチストアで販売される。従来のムーンスウォッチと同様に、店舗でひとりが1日に購入できるのは1点のみだ。

スウォッチは、ムーンスウォッチのオンライン販売を拒否する姿勢を続けている。スウォッチ グループの最高経営責任者(CEO)であるニック・ハイエック・ジュニアが、オンライン販売の可能性を排除していなかったにもかかわらずだ。

「オンライン販売に対応するかどうかは、4カ月後にまた聞いてみてください」と、ハイエックは22年7月に『WIRED』の取材に語っている。「そうなるかもしれませんし、そうならないかもしれません」

それから2年近く経ったが、いまだにムーンスウォッチの新作は正式にオンライン販売されていない。近い時期にオンライン販売される可能性もなさそうだ。

「Bioceramic MoonSwatch MISSION ON EARTH – DESERT」は、3モデルのなかでは目立たないデザインだが、ベージュのトーンが地球上の砂の海を連想させる。そして身に着けやすい印象を与えるかもしれない。

PHOTOGRAPH: Swatch Group

今年3月には、待望のスヌーピーのムーンスウォッチ「Bioceramic MoonSwatch MISSION TO THE MOONPHASE」が発売された。この時計もクロノグラフを備えているが、月相を表示するムーンフェイズ機能も搭載されている。

2時の位置のサブダイヤルには月相が表示され、人工衛星の上に横たわるピーナッツのキャラクターが描かれた。スウォッチがムーンフェイズとクロノグラフの機能を組み合わせた製品は、これが初めてとなる。

少なくとも3種類のうち2種類が鮮やかな色合いの新モデルとは異なり、2種類のスヌーピー・ムーンスウォッチはオールブラックとオールホワイトのモノクロームのみの展開となっている。

タグ・ホイヤーの限定モデル「TAG Heuer Formula 1 | Kith」。Z世代の消費者を取り込むための“復刻”だ。

Photograph: TAG Heuer

宇宙をテーマにしたオメガとスヌーピーの関係は、米航空宇宙局(NASA〉の「シルバー・スヌーピー賞」に由来している。飛行の安全性やミッションの成功に関する優れた功績に対し、1968年に銀色のピンが初めて授与されたのだ。

オメガは1970年にシルバー・スヌーピー賞を授与されている。アポロ13号に乗船した宇宙飛行士のジャック・スワイガートがスピードマスターで14秒というロケットの噴射時間を計り、地球への安全な帰還を確実なものにするうえで重要な役割を果たしたからだ。興味深いことは、オメガがこれを記念してスピードマスターのスヌーピーモデルの投入したのが2003年になってからという点である。

オリジナルのムーンスウォッチのカラーは太陽系の惑星にインスピレーションを得ている。太陽へのミッションに関する明るいイエローの「Mission to the Sun」、海王星へのミッションに関するディープネイビーブルーの「Mission to Neptune」、木星へのミッションに関するベージュとオレンジの「Mission to Jupiter」、そしてもちろんオメガのオリジナルに似たブラックの「Mission to the Moon」が展開されている。

太陽系への“進出”、スヌーピーとのつながり、そして今回の「MISSION ON EARTH」シリーズなどを見ると、スウォッチが大成功を収めたオメガとのコラボレーションで得た収益に大満足であることは明らかだろう。スウォッチの利益を生むムーンスウォッチのミッションが、次はどこに向かうのか気になるところだ。

(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)

※『WIRED』による時計の関連記事はこちら


Related Articles
article image
スヌーピーやポパイ、ミス・ピギーなどといったキャラクターの知的財産を保有するライセンス事業者は、もはや安物を扱わなくなった。ルイ・ヴィトンやオメガなどのラグジュアリーブランドが、カートゥーンの世界と手を組み始めたからだ。
BIOCERAMIC MoonSwatch MOON
高級腕時計で知られるオメガがスウォッチとのコラボを実現し、「スピードマスター ムーンウォッチ」の“低価格モデル”を発売する。「BIOCERAMIC MoonSwatch」は日本で33,550円とリーズナブルでありながら、スピードマスターを思わせる要素が盛りだくさんだ。
article image
オメガとスウォッチのコラボで誕生した「MoonSwatch」の最新モデルが2023年3月7日の夜に1日限定で販売された。秒針にはオメガ独自のムーンシャインゴールドが塗布され高級感を演出しているが、一部の時計愛好家からは辛口なコメントも寄せられている。
MoonSwatch Neptune
スウォッチとオメガのコラボレーションモデル「BIOCERAMIC MoonSwatch」の限定モデルが、今年最大の満月であるスーパームーン(スーパーブルームーン)に合わせて発売された。金色の秒針を備えた「Mission to Neptune」の限定版は、世界に新たな熱狂を呼び起こすことになりそうだ。

雑誌『WIRED』日本版 VOL.53
「Spatial × Computing」6月25日発売!

実空間とデジタル情報をシームレスに統合することで、情報をインタラクティブに制御できる「体験空間」を生み出す技術。または、あらゆるクリエイティビティに2次元(2D)から3次元(3D)へのパラダイムシフトを要請するトリガー。あるいは、ヒトと空間の間に“コンピューター”が介在することによって拡がる、すべての可能性──。それが『WIRED』日本版が考える「空間コンピューティング」の“フレーム”。情報や体験が「スクリーン(2D)」から「空間(3D)」へと拡がることで(つまり「新しいメディアの発生」によって)、個人や社会は、今後、いかなる変容と向き合うことになるのか。その可能性を、総力を挙げて探る! 詳細はこちら