スマートリングからスマートウォッチ「Galaxy Watch Ultra」、第6世代の折り畳みスマートフォンまで、サムスンが発表した新製品すべて

サムスンが恒例の新製品発表イベント「Samsung Unpacked」を開催した。スマートリング「Galaxy Ring」からスマートウォッチ「Galaxy Watch Ultra」、第6世代となった折り畳みスマートフォン「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」まで、発表された新製品について詳しく紹介しよう。
Samsung Galaxy Devices
Photograph: Julian Chokkattu

年2回を恒例とするサムスンの新製品発表イベント「Galaxy Unpacked」がオリンピック開幕を数週間後に控えたパリで7月10日(欧州時間)に開かれ、さまざまな新しいデバイスが発表された。これはサムスンにとっては重要な日である。

そのうちひとつは、サムスンにとってまったく新しい製品カテゴリーであるヘルストラッキング用のスマートリングだ。この「Galaxy Ring」は、OuraUltrahumanなどのリング型デバイスへの関心が高まって新たな競争が起き始めたタイミングでの登場となる。

Galaxy Ringと併せて、折り畳みスマートフォンの「Galaxy Z Fold6」と「Galaxy Z Flip6」も発表された。これらは従来モデルである第5世代の折り畳みスマートフォンの新バージョンとなる。

オーディオ分野においては、ワイヤレスイヤフォン「Galaxy Buds3」と「Galaxy Buds3 Pro」が発表された。スマートウォッチ「Galaxy Watch7」シリーズは、これまで通り2サイズで発表されている。

いつもとは違う流れだが、今回は新たに「Galaxy Watch Ultra」も発表された。これは「Apple Watch Ultra」から多くのインスピレーションを得ており、同じようにより本格的なアスリートをターゲットにしている(なお、今回のパリでのメディア向けイベントに伴ってサムスンは『WIRED』を招待し、旅費の一部を負担している)。

サムスンから発表された内容について、知っておくべき情報をまとめて紹介しよう。

Photograph: Julian Chokkattu

1. スマートリング「Galaxy Ring」

わたしたちの多くは、スマートウォッチやフィットネストラッカーで健康やフィットネスのデータを管理することに慣れている。スマートリングの人気がますます高まっているのは、技術の小型化が進んだからだ。ごつい腕時計の代わりに小さなリングを着けてこうした健康管理をしたいと思わない人はいないだろう。

今年はじめに「CES 2024」で先行して披露されたサムスンのGalaxy Ringは、ブラック、シルバー、ゴールド仕上げの軽いチタン製のリングだ。予約注文するとリングサイズの調整キットが送付されるが、米国では今年後半に一部の小売店でも販売される予定で、その場合は店頭で試着できる。サイズは9種類だ(身長195cmの自分は最大サイズの13号しかほとんどの指に入らなかったので、指の太い人は苦労するかもしれない)。

Photograph: Julian Chokkattu

IP68等級の防塵・防水と10気圧の防水性能があり、シャワーを浴びながらでも、皿洗いをしながらでも使える。「Sumsung Health」アプリからAndroidスマートフォンとペアリングできるが、iPhoneには対応しない。

すべての機能を利用するために有料のサブスクリプション契約をする必要はなく、利用可能な機能はすべて購入時に含まれている。また、ユーザーの端末の位置を知らせてくれる機能「Samsung Find」と連動しているので、置き忘れた場合も簡単に探すことが可能だ。

充電ケースも付属しており、ワイヤレスイヤフォンのケースと同じように使える。サムスンによるとGalaxy Ringは1回の充電で7日間にわたって利用可能で、これはOura Ringのバッテリー持続時間に匹敵するという。

Galaxy Ringは、睡眠トラッキング、サイクルトラッキング、心拍数の高低アラート、自動ワークアウト検出など、スマートウォッチに期待される多くのヘルストラッキング機能を備えている。また人工知能(AI)を用いることで、モニタリングした睡眠パターン、いびき、心拍数、呼吸数に基づいて睡眠に関する詳細な情報を得られるという。

さらに重要な機能は、新しいGalaxy Watchにも採用された「Energy Score」だ。これはFitbitの「今日のエナジースコア」やガーミンの「ボディバッテリー」のようなもので、睡眠の質や最近の活動レベルといったデータに基づいて、その日をスタートする準備がどの程度できているのかを数値で示す。

また、健康にまつわる目標に合わせた生活のヒントとなる「Wellness Tips」が1日を通して届く。なお、Galaxy Ringと新しいGalaxy Watchシリーズを併用する場合には、バッテリー残量を“温存”するためにGalaxy Watch側のセンサーの一部がオフになることがある。

Photograph: Julian Chokkattu

Galaxy Ringには触覚フィードバックの機能はないが、アラームの解除やスマートフォンでの動画撮影の開始など、一部の機能については指による簡単なジェスチャー操作にも対応する。これらはダブルピンチ(人差し指と親指を素早く2回くっつける)の操作によるもので、Galaxy Watch7シリーズでも利用可能だ。

Galaxy Ringは米国で本日から予約が始まっており、価格は400ドル(約65,000円)。正式な発売日は7月24日だ[編註:日本での発売は未定]。米国で発売されたら、すぐに試してみたいと考えている。


「Galaxy Z Fold6」。

Photograph: Julian Chokkattu

2. 第6世代の折り畳みスマートフォン

新登場した「Galaxy Z Flip6」と「Galaxy Z Fold6」には、従来モデルから大きく変わった点はない。過去6年間にわたって新モデルが出るたびに同じことを言っている気がするが、実際その通りなのだ。サムスンは折り畳みAndroidスマートフォンのデザインを大幅に変えることなく、洗練させていく傾向がある。

Galaxy Z Flip6とGalaxy Z Fold6は他社のAndroidスマートフォンの最新のフラッグシップ機と同様に、いずれもクアルコムのチップセット「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載している。Galaxy Z Flip6はこれまでで最も薄く、Galaxy Z Fold6は前モデルより短く幅広になっている。どちらも角ばったデザインを採用しており、丸みを帯びた曲線の代わりに角はシャープになっている。

「Galaxy Z Fold6」。

Photograph: Julian Chokkattu

Galaxy Z Flip6とGalaxy Z Fold6の新機能のほとんどは、サムスンが「Galaxy S24」シリーズで搭載したAI機能「Galaxy AI」によるものだ。そのひとつが、7.6インチというGalaxy Z Fold6の大画面を活用できる「かこって検索」機能だろう。一連のAI機能には新たな特徴もあり、例えば「かこって検索」では数学の方程式の解答と解法が示されるようにもなった。

新たに加わった楽しい機能のひとつが、手描きの簡単なイラストから画像を生成する「AIスケッチ」だ。例えば、サムスンの写真アプリ「ギャラリー」で浜辺の貝殻の写真を開き、AIボタンを押して星の絵を大雑把に描いてから「生成」を選んでみたたところ、落書きした場所にリアルな星形の貝殻が現れた。これは本当にすごい(なお、生成されたスケッチを含む画像には、AIが作成したことを示す透かしが入る)。

もうひとつ注目すべきは、通話をリアルタイムで音声翻訳する機能だ。この機能はもともとサムスンのスマートフォンに搭載されているが、「WhatsApp」や「Telegram」のようなサードパーティの通話アプリにも対応した点が新しい。

サムスンはこれらの折り畳みスマートフォンの耐久性が向上したことをアピールしている。傷がつきづらくなり、画面に穴が開くことを防ぐ第4層がディスプレイに新たに追加されたという。

さらに落下時の耐衝撃性を高めるために、デュアルレール構造のヒンジが採用されている。防塵性能も僅かに向上した(従来のモデルは防塵・防水性能がIPX8等級だったが、新モデルはIP48等級になっている)。これもヒンジの構造が新しくなったおかげかもしれない。

「Galaxy Z Flip6」。

Photograph: Julian Chokkattu

Galaxy Z Flip6は外側のディスプレイが変更されておらず、3.6インチのままとなっている。これはモトローラが「motorola razr」の新モデルで画面を大きくしたことと真逆を行く取り組みだ。「motorola razr+」のディスプレイは4インチで使えるスペースが広く、より多くのアプリを開いたり通知を確認したりできるので、個人的にはrazr+のほうが好みだ。

それでは、Galaxy Z Flip6では何が新しくなったのだろうか。まず、壁紙がよりインタラクティブなものになり、例えば天気や日照量にリアルタイムで反応する壁紙も用意されている。 外側のディスプレイに表示されるウィジェットの種類も増えており、サイズをカスタマイズしたり、複数のウィジェットをまとめて置いたりもできる。

またメッセージが届くと、外側のディスプレイには「おすすめの返信」機能によって最適な返信文が提案される。 一瞬たりとも気を抜けないような場面では、AIが生成した返信文を選べば端末を開かなくても済む。

「Galaxy Z Fold6」。

Photograph: Julian Chokkattu

カメラも新しくなった。Galaxy Z Flip6は「Galaxy S24」と同じ5,000万画素のメインカメラと、改良された1,200万画素の超広角カメラを搭載している。Galaxy Z Fold6はこれらの2つに加えて、光学3倍ズームの1,200万画素のカメラを搭載した。

Galaxy Z Flip6には、モトローラの端末にヒントを得た「カムコーダーグリップ」と呼ばれる機能が追加されたが、これを除けばカメラに関してほかに目新しい点はあまりない。カムコーダーグリップは、本体を横向きに持ってビデオカメラのように90度折り曲げると録画が始まり、録画中は画面の底部にズーム用のスライダーが表示される。これはmotorola razrにもある楽しい機能で、同じような体験ができることに期待したい。

またGalaxy Z Flip6には、ほかにも2つの注目すべき新しい点がある。サムスンによると、今回はGalaxy Z Flipシリーズとして初めてベーパーチャンバーと呼ばれる放熱機構を搭載したという。これは多くのスマートフォンで採用されている放熱効果が高まる技術で、よりスムーズにゲームを続けられるようになる。これにより動作中のGalaxy Z Flip6の温度は全体的により低くなるはずだ。

もうひとつは、バッテリー容量がGalaxy S24と同じ4,000mAhになったことだ。折り畳みスマートフォンはバッテリーのもちがあまりよくないが、少しでも改善されるならありがたい。

Galaxy Z Fold6とGalaxy Z Flip6では、リアルタイムで会話を翻訳してくれる「通訳」モードにいくつかの改良が加えられている。会話モードとリスニングモードが用意されており、誰かが他言語で話しているときにリスニングモードでマイクを向けると、その会話がテキストに翻訳されて画面に表示される。

これに対して会話モードでは、相手とのやり取りが可能だ。外側の画面には自分が話した内容がテキストで翻訳されて表示され、内側の画面には相手が話した内容の翻訳が表示される。グーグルは昨年、この機能を「Pixel Fold」に導入した。

「Galaxy Z Flip6」。

Photograph: Julian Chokkattu

Galaxy Z Flip6とGalaxy Z Fold6は米国で予約が始まっており、正式発売は7月24日となる[編註:日本では7月17日に予約開始、発売は7月31日]。

好ましくない点があるとすれば、米国では従来のモデルより100ドルほど高くなっているわりに、あまり変化がないところだろう。これは納得しがたい。Galaxy Z Flip6の米国での価格は1,099ドルから(日本では15万9,700円から)、Galaxy Z Fold6は1,900ドルから(日本では24万9,800円から)だ。


Photograph: Julian Chokkattu

3. 新しい「Galaxy Watch」シリーズ

今回は「Galaxy Watch」シリーズとして初めて「Galaxy Watch Ultra」が登場した。この機種がラインナップに追加された理由が気になるところだろう。

Galaxy Watch Ultraは、大型の47mmサイズに四角でも丸でもない“スクワークル”のデザインを採用し、「Wear OS 5」を搭載したスマートウォッチだ(これがWear OSの最新版を搭載した最初の機種となる)。外観は魅力的で、特にオレンジのバンドがいい。そこにサムスンは、いくつかの新しいスポーティーなフェイスを合わせてきた。

本体はチタン製で、「10 ATM」の防水性能を備えている。おかげで海面下500mから標高9,000m(これはエベレストを超える高さなので、地球上のどんな山にもこれを着けて登れる)まで、極端な高度でも動作する。

「Galaxy Watch Ultra」

Photograph: Julian Chokkattu

トライアスロンの過程をトラッキングしたければ、新たな「マルチスポーツタイル」機能が便利だろう。この新機能は最大サイクリングパワーを数分で正確に測定し、パーソナライズされた高度な心拍ゾーンによって適切な運動量を確実に発揮できるようサポートしてくれる。

また程度の差こそあるが、サムスンがアップルを“真似”した機能がいくつか搭載されている。例えば「クイックボタン」(これはアップルの「アクションボタン」だ)を使ってワークアウト関連の機能を操作したり、ボタンに別の機能を割り当てたりできる。

危険な状況においては緊急用のサイレンを起動でき、夜間は画面表示を読みやすくするためにディスプレイが自動的に「ナイトモード」(すべての色が赤になる)に切り替わる。ディスプレイの明るさは最大3,000ニトだ。

本体のサイズが大きくなったことでバッテリー持続時間も伸びている。サムスンによると、省電力モードで100時間、運動時の省電力モードで48時間もつという。

この数値を平均的な使用方法に置き換えた場合にどうなるのかは見極めることが難しいが、「Galaxy Watch6」シリーズのバッテリーは一般的に1日半ほどもつので、Galaxy Watch Ultraは2~3日ほどもつのではないかと予想している。価格を聞いて驚かないでほしいのだが、650ドル(日本では12万6,940円)だ。

Photograph: Julian Chokkattu

標準モデルとなる「Galaxy Watch7」は2サイズ(40mmと44mm)展開で、見た目は前機種から大きな変更こそないものの、機械式の回転ベゼルは今回発表されたどのGalaxy Watchにも採用されなくなってしまった(これにはブーイングだ)。

また、新しいGalaxy Watchシリーズにはこれまでのチップよりも高速かつ電力効率に優れる3ナノメートルプロセスのプロセッサーが搭載されているほか、デュアル周波数モードに対応したGPSによって位置のトラッキング精度が向上している。

Galaxy Watch7に採用されている機能は、Galaxy Watch Ultraにもすべて採用されている。米国における目玉機能である睡眠時無呼吸症候群トラッキングは米食品医薬品局(FDA)の承認済みで、中~重度の症状を検知できる。ほかにも多くのヘルストラッキング機能を引き続き利用できるが、センサーの精度が向上しているという。サムスンによると、例えば激しい運動時の心拍数測定は最大で30%ほど精度が向上している。

発表イベントにおいてサムスンは詳細を明らかにしなかったが、Galaxy Watch7は終末糖化産物(AGEs)をトラッキングできる「AGEs指数」の機能も備えている。このツールは代謝機能の健康に関する問題を予測し、病気の前兆がある場合に予防的なケアを受けられるようにするためのものだ。

Galaxy Watch7の価格は300ドルから(日本では57,200円から)。米国での予約は始まっており、7月24日に発売される[編註:日本では7月17日に予約が始まり、正式発売はGalaxy Watch Ultraが7月下旬以降、Galaxy Watch7が7月31日となる]。


Photograph: Julian Chokkattu

4. ワイヤレスイヤフォン「Galaxy Buds3」シリーズ

最後になるが、サムスンにとって2022年以来となる新しいワイヤレスイヤフォン「Galaxy Buds3」と「Galaxy Buds3 Pro」も重要な製品だ。サムスンは最も快適なフィット感を見つけ出すためのデータ収集に12カ月を費やしたいう。しかし申し訳ないのだが、サムスンがたどり着いた答えは「AirPods」の“クローン”だった。

これは冗談ではない。このイヤフォンはテスラの電動ピックアップトラック「Cybertruck(サイバートラック)」とAirPodsをかけ合わせたような見た目をしている。Galaxy Buds3はフラットなデザインだが、Galaxy Buds3 Proはイヤーチップ付きだ。どちらもIP57等級の防塵・防水性能があるので、ランニングで汗をかいても問題ない。

このイヤフォンの最もクールな“隠し玉”は、サムスンの通訳モードによるリアルタイム翻訳機能だろう。これは「Galaxy Z Fold6」か「Galaxy Z Flip6」と組み合わせた際に動作するが、イヤフォンのマイクが周囲の言葉をすべて拾って翻訳してくれる。翻訳された内容が耳に届くまでわずかな遅延があるので、早口な相手の会話に付いていくことは期待できない。

「Adaptive ANC」(アダプティブ・アクティブノイズキャンセリング)機能は鳴り響くサイレンの音を遮断したり、誰かに話しかけられた場合に音楽を止めたりといった機能だ。また、24ビット/96kHzでの音楽再生や強化された通話品質など、サムスンはオーディオとしての基本性能について改善を大々的に打ち出している。

価格はGalaxy Buds3が180ドル(日本では27,500円)、Galaxy Buds3 Proが250ドル(38,500円)となる。米国では予約が始まっており、正式発売は7月24日だ[編註:日本では7月17日に予約開始、発売は7月31日]。

(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)

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