モトローラの「edge 50 pro」は優れたスマートフォンだが、性能に期待外れな点もある:製品レビュー

競争が激化している中価格帯のスマートフォン市場において、モトローラが投入した「motorola edge 50 pro」。“ほぼ最高”とも言える機能を備えているが、処理能力やソフトウェアアップデートの提供期間において期待外れな点もある。
「motorola edge 50 pro」レビュー:優れたスマートフォンだが、性能に期待外れな点もある
Photograph: Motorola

モトローラの「motorola edge 50 pro」は、競争が激化している中価格帯のスマートフォン市場において意外な選択肢のひとつだ。コンパクトな防水ボディにトリプルレンズのカメラ、表示が滑らかなディスプレイ、超高速充電などを備えたことで、ほぼ最高のスマートフォンといえるだろう。しかし、ソフトウェアのアップデートへの対応が限定的だったり、処理能力がそこまで高くなかったりする点が残念に感じられる。

レノボがモトローラのスマートフォン事業をグーグルから買収して、すでに約10年が経った。モトローラのスマートフォンは堅実な低価格帯のデバイスとして高い評価を得ているが、「edge」シリーズで中価格帯に挑戦しようとする試みを徐々に強化している。

edge 50 proは、米国とカナダを除く全世界で販売されている。英国での販売価格は600ポンド(日本では7月12日発売で79,800円)、欧州では700ユーロだ(edge 50 proの米国版は近い次期に発売される可能性が高い)。

明るく鮮やかなディスプレイ

この中価格帯のスマートフォンのスリムな本体を箱から取り出すと、手触りにすぐに感心させられた。186gと軽量で、背面はテクスチャー加工されたフェイクレザーになっている。しっかりとグリップできて、指の汚れも付きにくい。

レビューした端末の色はブラックだったが、ラベンダーや「ムーンライト・パール」も選べる[編註:日本仕様は「ブラックビューティ」と「リュクスラベンダー」の2色展開]。背面のカーブはスリムなアルミニウム製のフレームへと続き、とても持ちやすい。

PHOTOGRAPH: SIMON HILL

カーブした6.7インチの有機ELディスプレイは明るく鮮やかで、表示は滑らかだ。解像度は2,712×1,220ピクセル、リフレッシュレートは144Hz、HDRハイライト表示でのピーク輝度は2,000ニトとなる。映画やゲーム、ウェブのブラウジングに最適なディスプレイといえるだろう。

モトローラによると、edge 50 proのトリプルレンズカメラによる撮影とディスプレイへの表示は、(カラーチャートで有名な)PANTONE(パントン)が「正しい」と認めたカラーだという。つまり、ディスプレイやカメラが、より正確な色や肌の色を表現できるというわけだ。とはいえ、特に設定を切り替えない限り標準設定での彩度はモトローラ特有のビビッドな色合いなので、それほど強力な“タイアップ”ではないようである。

ディスプレイの端はカーブしているが、こうしたディスプレイには飽きてきた感じもある。フレームは左右側が非常に薄いので、本体を扱う際に間違って画面に触れてしまうことがあった。

PHOTOGRAPH: SIMON HILL

また、ディスプレイ内蔵タイプの指紋センサーはほぼ反応するが、ロックを解除する際には数回ほど押さないと反応しないこともある。IP68規格の防水・防塵性能をもつので、中価格帯のスマートフォンにしては珍しくプールに落としても大丈夫だ。

edge 50 proのスペックを調べてみると、最初の大きな課題が見つかった。プロセッサーは中レベルの「Snapdragon 7 Gen 3」で、12GBのRAMと512GBのストレージが搭載されている。このためスワイプ操作は軽快に感じるが、高負荷なゲームをプレイする際にはコマ落ちが予想される。

それに、アプリの読み込みに少し時間がかかることもある。だが、処理能力の不足を最も痛感したのは、なんといってもカメラを使うときだった。

暗くても撮影を楽しめるカメラ

立派なトリプルカメラのシステムは、中価格帯のスマートフォンという分野がどれだけ進化しているのかを示すものといえる。カメラの構成は、50メガピクセルのメインカメラと、10メガピクセルで光学3倍ズームの望遠カメラ、接写用のマクロモードを備えた13メガピクセルの超広角カメラだ。

なかでもメインカメラは、明るい場所では美しい写真を期待できる。1/1.55インチという充分な大きさのセンサーを搭載し、レンズはF値が1.4と明るい。このため暗い場所でも撮影できるほか、ポートレートモードに頼らなくても美しく自然なボケの効果を得られる。

PHOTOGRAPH: SIMON HILL

望遠モードは遠くの被写体を撮影する際に便利だ。港に入って来る船や学芸会の舞台に立つ子どもなどを撮影する際に、この機能を使う人は多いだろう。

ただし、十分な光量が必要になる。超広角モードは十分に明るく撮れるが、細部の表現に関してはメインカメラのほうが優れている。接写モードは使いづらく、ブレた写真になることが多かった。

最後に、前面にある50メガピクセルの自撮り用カメラを紹介しよう。自撮りには最適で、中価格帯のスマートフォンとしてはすばらしい能力といえる。だが、このカメラに対する評価を本当に台無しにしそうなものは、処理速度の遅さだ。撮影後の処理に1秒ほどかかることもあり、何枚も連続撮影することはできない。

edge 50 proのバッテリーは容量が4,500mAhで、平均的な1日の使用には十分に対応できる。ただし、写真や動画の撮影に使ったときは、寝る前に充電が必要だったこともあった。

充電も高性能で驚かされる。同梱されている125Wの充電アダプターを使えば、20分もかからずにフル充電が可能だ。そして大50Wのワイヤレス充電にも対応している。

使い勝手は純正の「Android 14」に近いと感じるが、ブロートウェア(プリインストールされた不要なアプリ)も少しある(Facebook、TikTok、「Bingo Blitz」が事前にインストールされていた)。だが、本体を空手チョップのように叩くと懐中電灯の機能がオンになったり、ひねることでカメラが起動したりするモトローラの独自機能は気に入っている。

また、Windows PCやノートPCに接続してワイヤレスでファイルを共有したり、ウェブカメラとして使ったりすることも簡単だ。本体内に安全なスペースをつくれる「Family Space」アプリも搭載されており、子どもに渡す前に機能の一部をロックできる点が、小さな子どもをもつ親にとって便利だろう。

優れたスマートフォンではあるが……

結論を言えば、edge 50 proは優れたスマートフォンだ。より高性能なプロセッサーを搭載していて、ソフトウェアのサポート期間がもっと長ければ、さらにすばらしいものになったことだろう。

なお、ソフトウェアのアップデートに関してグーグルは「Pixel」シリーズに7年間、サムスンもそれと同等の期間のサポートを提供している。これに対してモトローラは3年間のOSアップデートと4年間のセキュリティアップデートなので、短く感じる。ぜひ7年間を標準にしてほしいものだ。

edge 50 proの最も明らかな競合はグーグルだろう。「Pixel 8a」のほうが低価格だし、「Pixel 8」は今では約600ポンド(日本では87,900円)で手に入る。そして、どちらもedge 50 proより優れている。

昨年モデルであるサムスンの「Galaxy S23」でさえ、米国ではedge 50 proとさほど変わらない価格だ。スペックは驚くほど似ているが、実際の処理能力はGalaxy S23のほうが優れている。

◎「WIRED」な点
軽量でコンパクト。 美しいディスプレイ。 充電が高速。IP68規格の防水・防塵性能。

△「TIRED」な点
AndroidのOSアップグレード対応が3年間。プロセッサーの処理能力が不足。 カメラの反応がよくないことがあった。

(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)

※『WIRED』によるスマートフォンの関連記事はこちら


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