2023年のモビリティ分野を振り返ると、特に注目されたのは電気自動車(EV)に関する記事だった。なかでもテスラの注目度は相変わらず高く、デザインが刷新された新型「モデル3」のほか、角張った斬新なデザインが印象的な電動ピックアップトラック「Cybertruck(サイバートラック)」が大いに話題になった。
「プロジェクト・ハイランド」のコードネームで呼ばれていた新型「モデル3」については、『WIRED』日本版が国内初の試乗レビューを11月にお届けしている。東京都内や近郊の市街地と高速道路を2日間にわたって走らせてみたが、静粛性が旧型より大幅に高まるなど走りが洗練された印象で、価格相応の“高級車”を思わせるクルマへと進化していた。
一方でテスラに関しては、自動運転技術を用いた運転支援機能「オートパイロット」の“問題”も指摘されている。自動車が車止めのポールに突っ込んだり、ありもしない衝突を回避するために勝手にブレーキがかかったり、さらには車両自体の制御が効かなくなって急加速したりする──といった問題が記された内部資料が、5月にリークされたのだ。
さらに12月に入ると、テスラは米国で販売したほぼ全車両に相当する200万台以上をリコールすると発表した。オートパイロットを使用中に起きたとされる一連の衝突事故を受けたもので、ドライバーが周囲に注意を払って自ら操作している状態を確認するオートパイロットの方法が不十分であると、米国の規制当局が結論づけたのである。話題の「サイバートラック」にも設計上の問題が指摘されるなど、テスラに関しては逆風も多い年だったと言えるだろう。
このようにEVは注目度こそ高いものの、現時点では航続距離が短めで価格が割高であることもあって、日本国内での普及率は低いのが現状だ。政府は2035年までに乗用車の新車販売における電動車の比率を100%とする目標を掲げているが、23年の段階では数パーセント程度(EVとプラグインハイブリッド車の合計)にとどまっている。国内外のメーカーからもEVの新モデルが次々に投入されてはいるものの、やはり主流はエンジン車だ。
それでも、EVの販売台数が増えるにつれ充電スタンドの数の少なさも顕在化するなど、2024年には電動化の理想と現実のギャップがさらに浮き彫りになるかもしれない。ここからは、23年にモビリティ関連で最も読まれた記事のランキングを紹介する。
01 電気自動車は本当に「寒さに弱い」のか? 氷点下の冬をEVで過ごして見えた現実:連載・フューチャーモビリティの現在地(7)
電気自動車(EV)は冬の寒さに弱いとされるが、実際のところ積雪するような寒さでEVを普段使いすると、どんな不便なことが起こりうるのか。次世代のモビリティについて考察する連載「フューチャーモビリティの現在地」の第7回は、テスラ「モデル3」で氷点下の冬を過ごして気付いたことについて。>>記事全文を読む
02 自動運転技術に重大な問題? テスラの内部資料が示唆する「技術的な限界」
自動運転技術を用いたテスラの運転支援機能「オートパイロット」に重大な問題がある可能性を示唆する内部データの存在について、このほどドイツの大手経済紙が報じた。これを受けてテスラは規制当局からの新たな圧力に直面するかもしれない。>>記事全文を読む
03 テスラがついに「サイバートラック」を納車へ。奇抜な電動ピックアップトラックには課題も山積
テスラが電動ピックアップトラック「Cybertruck(サイバートラック)」の納車イベントを日本時間の12月1日に開催する。あまりに奇抜なデザインのEVをテスラが量産しようとしていることに、専門家たちはいまだに戸惑いを隠せないでいるようだ。>>記事全文を読む
04 テスラ「モデル3」が初の大型刷新、デザイン変更でテコ入れへ
テスラが電気自動車(EV)「モデル3」のデザインを刷新した新モデルを9月1日に公開した。「プロジェクト・ハイランド」のコードネームで呼ばれてきた新モデルは、ライトのデザインなどが大きく変更されたことが特徴となっている。>>記事全文を読む
05 テスラの「Cybertruck」に設計上の“問題”が続出? 内部資料から見えた新型EVの行く末
テスラが開発を進めている電動ピックアップトラック「Cybertruck(サイバートラック)」に、致命的な設計の問題がある可能性が浮上した。ドイツの大手経済紙が報じた内部資料によると、問題の解決は困難を極めるかもしれない。>>記事全文を読む
06 テスラが「レアアースを使わないモーター」を採用? 次世代の磁石を巡る謎と研究開発の現在
テスラがレアアースを使わない磁石を用いたモーターを次世代のEVに採用する方針を明らかにしたことが、業界に波紋を広げている。実際のところ、そのような判断は現実的なのだろうか?>>記事全文を読む
07 クルマからリアウィンドウが消えた! ボルボの高級ブランド「ポールスター」が新モデルで挑戦したこと
電気自動車(EV)に特化したボルボの高級ブランド「ポールスター」が新モデル「ポールスター4」を発表した。そのデザインの最大の特徴は、なんとリアウィンドウをなくした点にある。>>記事全文を読む
08 ホンダの「Motocompacto」は、“現代版モトコンポ”としてモビリティを拡張する
畳んで持ち運べる電動スクーターを、ホンダが米国で発表した。1980年代に注目された超小型バイク「モトコンポ」の“再来”ともいえる「Motocompacto」は、「移動する自由」をサステナブルなかたちで拡張するモビリティを目指している。>>記事全文を読む
09 2023年のおすすめ電気自動車17モデル徹底解説:大手メーカーも続々投入
2022年には電気自動車(EV)の市場が米国では急成長した。23年のEVはさらに進化し、デザインのバリエーションも増えてくる。こうしたなか、注目すべき17モデルを紹介しよう。>>記事全文を読む
10 EVの競争が激化し、テスラに“イーロン・マスク以上の問題”が迫りつつある
電気自動車(EV)の競争が激化するなか、テスラには解決すべき課題が少なからずある。そのひとつが急速に信頼を失いつつあるイーロン・マスクの存在だが、それ以上に本質的な問題が迫りつつある。>>記事全文を読む
雑誌『WIRED』日本版 VOL.51
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