HPの「HP Envy x360」シリーズは、同社のラインナップで最も多機能なノートPCの位置を占めてきた。スリムで魅力的な筐体と確かな性能、そしてタブレット端末としても使える柔軟性を備えたノートPCだ。しかも、これをお手ごろ価格で提供している。
「HP Envy x360」のラインナップは充実している。価格は550ドルからで、画面サイズは14インチから16インチまで揃っている。ハードウェアのデザインには無駄がないが、それは魅力がないという意味ではない。色はグレーまたはシルバーの単色で、本体はすべての角が丸みを帯びたデザインを採用している。
いまや成熟したHPの「Envy」シリーズの最新作は、15.6インチモデルだ(米国での公式モデル名は「15-fh0097nr」)。この製品は通常のインテルのチップの代わりにAMDの「Ryzen 7 7730U」を搭載している。
外出の多い社会人の利用を想定して設計されており、メモリは16GB、ストレージ容量は1TBを備えている。解像度が1,920×1,080ピクセル、アスペクト比16:9のディスプレイを支えるのは「AMD Radeon」のチップセットだ。また、DisplayPortに対応したUSB Type-Cのポートが2つ、USB Type-Aのポートは2つ、HDMI 2.1のポートは1つ、そしてフルサイズのSDカードリーダーを搭載している。
明るいタッチスクリーン
タッチスクリーンはまばゆいばかりである。長きにわたって数々のノートPCを試してきが、「HP Envy x360」のディスプレイの輝度はこれまで計測してきたなかでも最大値に並び、色も非常に正確だ。
15.6インチの画面は広々としているが、もう少し解像度が高ければ画面により多くのものを快適に表示できると感じた。とはいえ、少なくとも画面の鮮明さには文句の付けようがない。バング&オルフセン製のスピーカーは、音量をそこまで上げなくても問題なく音声を聞き取れる。
HPはこのマシンでウェブカメラの改良に力を入れている。リモートワークをしている人には朗報だろう。カメラの解像度は5メガピクセルで、「HP Enhanced Lighting」機能を搭載している。これは外付けのハードウェアを用意しなくても、ディスプレイに明るいリングライトを重ねることでユーザーの顔色を明るく映すためのものだ。
また、顔を動かしても画面の中心にくるように調整してくれる「オートフレーム機能」を搭載し、プライバシー強化のために画面上に物理的に操作できるカメラカバーも備わった。またプレゼンスセンサーによって、ユーザーがコンピューターから離れたことを検知すると画面を自動的に暗くし、戻ると点灯させる機能も備えている。
このノートPCには長所と短所の両方があるが、全体の性能としては平均以上である。「HP Envy x360」の魅力は、一般的なビジネスアプリの利用時に最も輝く。「PCMark 10」のベンチマークではトップクラスのスコアを獲得し、動画の表示テストでも優秀な結果を残した。
ただし、純粋なグラフィックスやゲームのテストスコアは、これに比べると劣る。最新ゲームなどを快適に楽しむためのパワーはない。
驚くほど静かなマシン
「HP Envy x360」の名称がそれとなく示しているように、これはコンバーチブル型の2in1ノートPCである。つまり、ディスプレイを回転させてノートPCの背面にくっつけるように折り畳むことができるのだ。
厚さは20mm、重さは3.8ポンド(約1.7kg)なので、このモードを普段使いするのは少し厳しいかもしれないが、使えないことはない。HPはスタイラスペンを別売り(約25ドル)しており、タイピングがそこまで得意ではない人はマシンの側面にマグネットで貼り付けて持ち運ぶことができる。
「HP Envy x360」は不気味なほど静かだ。マシンに大きな負荷をかけたときも、ファンが作動することはあまりなかった。まれにファンが作動することがあっても、まるでささやくような音量である。
ファンの音よりクリックパッドの音のほうが断然大きく、ボタンを押すたびにカチカチと鳴った。キーボードには十分な余裕があり広々としている。
ただし、セットアップ中に発生した妙な問題についても言及しなければならないだろう。「HP Envy x360」は、ネットワーク接続が無効の状態で届いた。マイクロソフトはセットアップ時にネットワーク接続を義務づけているので、これによりWindowsの初期設定を進めることができなかったのだ。
とはいえ、連絡したHPのテクニカルサポートの担当者が問題を解決してくれた(これはコマンドラインを使った回避策を含むものだった)。その後は問題なく製品を使うことができたが、そもそもなぜこの問題が発生したのかについて、HPからは何の説明も得られていない。
価格は1,200ドル(約17万4,000円)と製品の構成を考えると悪くはないが、少し割高に感じる。とはいえ、いくつか小さな欠点はあるものの、全体的にバランスのとれた製品だ。
あまり驚くような進化はないが、かといって不満もあまりない。15.6インチのノートPCを探しているなら、「HP Envy x360」は検討リストの上位に入るだろう。
◎「WIRED」な点
仕事用アプリの性能は優れている。優れたディスプレイを搭載。
△「TIRED」な点
グラフィックスの性能はほどほど。セットアップ時に奇妙な問題が発生した。画面の解像度が少し低い。
(WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)
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