「Pixel 8a」は上位モデルの機能を踏襲した買い得なスマートフォン:製品レビュー

グーグルが新たな低価格帯のスマートフォンとして投入した「Pixel 8a」。優れたデザインにフラッグシップ機に匹敵する性能や同等のAI機能を備えたことで、極めて買い得な1台といえる。
「Pixel 8a」レビュー:上位モデルの機能を踏襲した買い得なスマートフォン
PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

個人向けのガジェットいうものは、“パーソナル”な感じがしなければならない。それを確かめるために「テーブルテスト」と呼んでいる方法がある。レストランやカフェにいるとき、スマートフォンの画面を上に向けて置くだろうか。それとも、ひっくり返して伏せた状態にして、そのデザインを愛でるだろうか。

グーグルの低価格スマートフォン「Pixel 8a」の場合、伏せた状態にしたほうが機能的かもしれない。画面を下向きにして伏せておくとサイレントモードがオンになり、気をとられる通知が来なくなるのだ。それにPixel 8aは、デザインを隠してしまうことがもったいなく感じるほど美しくもある。特に新色である「Aloe」(グリーン)はそうだ。

500ドル(約78,000円)未満のスマートフォンが、それほど優れたデザインであることは、なかなかない。フラッグシップ機が“スター”の扱いを受け、低価格なモデルはつまらない外観であることが相場なのだ。

一方で、今年はモトローラの「moto g power 5G」や「Nothing Phone (2a)」などのスマートフォンが、ローエンド機でありながら興味深いデザインを打ち出していることに気づいた。グーグルのPixel 8aも、エレガントなマットでカラフルなデザインによって、その流れを引き継いでいる。

「Pixel a」シリーズで最も洗練されたモデル

グーグルの「Pixel a」シリーズは、Pixelのフラッグシップ機の要素を踏襲しながらも、ほかの部分でコストカットされていて手が届きやすくなっている。Pixel 8aは背面カバーにガラスではなく76%再生プラスチックを採用しており、画面には旧式で保護性能で劣るコーニング製の「Gorilla Glass 3 (ゴリラガラス3)」を採用した。

また、ディスプレイの有機ELパネルはそこまで輝度が高くないうえ、カメラのスペックも落とされている。ほかにも小さな変更点はあるが、こうした点が価格を「Pixel 8」より200ドル(日本では40,300円)安い499ドル(日本では72,600円)まで下げることを可能にした。

それでいてPixel 8aは、シリーズの高価格帯のモデルからかけ離れた感じもしない。金属製のフレームとカメラバーが独特の高級感を醸し出している。丸みを帯びたいい感じのエッジと6.1インチのディスプレイにより、手になじみやすく片手でも使いやすい1台になっている。

こうしてPixel aシリーズで最も洗練されたモデルとなり、なかでも新色のAloeが話題だ。このAloeカラーのPixel 8aを手に持っていたところ、すぐに母が気づいて質問を浴びせてきた(グーグルの純正ケースも本体の色と完璧にマッチし、ケース背面とカメラバーの面がぴったり揃うので薄さも保たれる)。

6.1インチのディスプレイは、さほど小さく感じない。最近テストするスマートフォンのほとんどが6.5インチ以上であることを考えると、目新しさを感じる。

有機ELパネルの表示は鮮明だ。ほぼ快晴のニューヨークの屋外でPixel 8aの画面を見たところ、周囲の明るさに合わせて自動的に輝度が上がり、目を細めなくても大丈夫だった。画面の輝度は以前のPixelに共通する弱点だったが、もはや問題ではなくなったのである。また、グーグルは120Hzのリフレッシュレートを打ち出してきたことで、全体的に動きが非常に滑らかで快適だ(この設定を端末側でオンにすることをお忘れなく)。

Pixel 8シリーズと同じく、生体認証は顔認証と指紋認証の2つの手段に対応する。指紋認証が問題になったことは個人的な経験ではあまりないし、暗めの環境では顔認証がうまくいかないことを考えると、サブの手段として指紋認証があることはいまも気に入っている。なお、指紋認証は、認証を必要とする銀行などのアプリでも利用できる。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

フラッグシップ機に匹敵する能力

Pixel 8aはグーグル独自のチップセット「Tensor G3」と8GBのRAMを搭載している。わずか499ドルでフラッグシップ機に匹敵する性能が手に入るわけだが、これ自体は最近では珍しいことではない。

例えば、「OnePlus 12R」はクアルコムの2023年の最高峰のチップセットを搭載しながらも、米国では同じ価格で販売されている。Nothing Phone (2a)のようなさらに低価格な機種は、価格のわりにはそれなりにスムーズな動きだ。Pixel 8aは、ゲームをしたり、数時間連続でナビゲーションや音楽のストリーミングに使っても、動作が不安定になったり遅くなったりすることはなかった。

しかし、注目すべきは、そういうところではない。Pixel 8aを特別なものにしているのは、500ドル未満のスマートフォンにはまず見られない、スマートなソフトウェアによる機能なのだ。

例えば、「通話スクリーニング」は、近年のスマートフォン時代における最高の発明のひとつだ。たまに、かかってきた電話をグーグルのソフトウェアが勧誘の電話と認識して、代わりに切ってくれる様子を見てほくそ笑んでいる。

「レコーダー」アプリはインタビューの文字起こしや話し手のラベル付けの機能が秀逸で、会議の際には必須のアプリとなっている。いまやGboardを使った音声入力はお気に入りの入力方法になっていて、ほかのデバイスの使用中にはこれが使えないことを心から残念に思うほどだ。こうした徐々に頼りにするようになった隠れた機能が、Pixel 8aにはたくさんある。

あえて言うなら、新機能の「かこって検索」をようやく使い始めたというところだろうか。下部のナビゲーションバーを長押しして画面上の物体を丸で囲めば、ビジュアル検索が実行される。

グーグルが取り組むべき唯一のことは、グーグルの人工知能(AI)である「Gemini」と「Google アシスタント」とメッセージとの連携だろう。ほかのほとんどのAndroidスマートフォンと同様に、Google アシスタントを起動すると新しいGeminiアシスタントに切り替えるかどうかを聞いてくるのだ。これはおなじみのグーグルの音声アシスタントが、間もなく“グーグル墓場”に向かう可能性がある裏付けにほかならない。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

バッテリーの性能には課題あり

それにPixel 8aは、500ドル未満のAndroidスマートフォンの市場において、ソフトウェアのサポートを7年間にわたって受けられる唯一のスマートフォンである可能性がある。

つまり、このスマートフォンを7年間ほど使い続けても、セキュリティアップデートはもちろん、Android OSのアップグレードや四半期ごとの機能アップデートである「Feature Drop」の利用を期待できるということでもある。2022年と20年にリリースされた「iPhone SE」を除けば、この価格でこれほどのサポートを受けられるスマートフォンは、おそらくほかにないのではないだろうか。

一方で残念なことに、Pixelシリーズはバッテリーの性能に関しては依然としてぱっとしない。Pixel 8aは前モデルと同様に大容量の4,492mAhのバッテリーを搭載しているにもかかわらず、毎日充電する必要があるのだ。

バッテリーは平均的な使い方なら問題なく1日もつのだが、今回のテスト期間中は「Google マップ」でのナビゲーションや「YouTube Music」での音楽のストリーミングが多かったので、午後7時ごろにはバッテリー残量が19%になって再充電する必要があった(画面がオンになっていた時間は約5時間20分だった)。また、OnePlus 12Rのような機種ほど素早く充電できないが、Pixel 8aはワイヤレス充電に対応している。

日常的に電源コンセントが手の届くところにあるので、その点ではバッテリーのもちは最大の優先事項ではない。しかし、バッテリーのもちが優先事項であれば、日ごろからポータブル充電器を持ち歩くことが気にならない人を除けば、Pixel 8aは向いていないかもしれない。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

ソフトウェアの賢さが切り札に

また、グーグルのPixelシリーズはカメラが高性能なことで知られており、Pixel 8aもこの伝統を引き継いで輝きを放つ。背面には64メガピクセルのメインカメラと13メガピクセルの超広角カメラ、そして前面には13メガピクセルの自撮り用カメラが搭載されている。

Pixel 8aは基本的に、500ドル未満の他のスマートフォンよりも美しい写真を撮影できる。そして、いくつかの点(自撮り用カメラなど)ではそれほど劣っていないNothing Phone (2a)や、サムスンの「Galaxy A35 5G」などを上回っている。

ただし、レンズのフレアが軽減されたことを除けば、昨年モデルである「Pixel 7a」からの大きな変化は感じられなかった。Pixelシリーズの強みは、高コントラストのシーンや低照度での処理、そしてよく動く被写体(うちのイヌなど)の撮影にあるのだ。

ここでも切り札になるのは、そのソフトウェアの賢さだろう。Pixel 8シリーズと同様に、「編集マジック」機能で被写体の周りを動かすとソフトウェアが背景を生成し、そのシーンを埋めてくれる。また「ベストテイク」機能を使用すると、みんなと一緒に写真を何枚か撮る際にまばたきをしてしまった場合に、顔をほかの写真の同じような顔に置き換えることが可能だ。さらに「音声消しゴムマジック」機能を使うと、動画から鳥の鳴き声などの不要な音を削除することもできる。

ただし、今回は少しがっかりした機能がひとつある。それは「リアルトーン」機能だ。これは有色人種の肌の色をより正確に捉えるためのグーグルの画像処理アルゴリズムで、「Pixel 6」に初めて搭載されたときには、個人的には「絶賛」した機能である。ところが、Pixel 8aでは動画にも使えるようになった様子で、自分の褐色の肌の色は実際より少し明るい色になってしまった。

今回のテストではPixel 8aとGalaxy A35で兄の動画を撮影したのだが、兄も母もGalaxy A35の動画のほうが彩度が少し強めであるにせよ、より正確に兄の肌の色が表現されていると言っていた。しかし、中国人である妻の写真を撮ったときはそうではなかった。Pixel 8aで撮影したときの妻の肌の色のほうが、Galaxy A35での色よりずっと正確だったのである。

このような点があるにせよ、Pixel 8aのカメラの性能に満足しないほうが難しいだろう。Pixel 8aは、あらゆるスマートフォンのなかで最高クラスの価値を維持していることには変わりない。

もっとも、今後の価格には注目すべきだ。フラッグシップモデルのPixel 8は米国では過去に499ドル(約77,800円)まで値下がりしたことがあるので、また値下がりするようであれば急いで購入する価値がある。

ただし、グーグルのスマートフォンは米国では頻繁にセール対象になっている。Pixel 7aを目安にするなら、Pixel 8aは今後定期的に約450ドル(約70,150円)にまで値下がりし、そして数カ月後には約375ドル(約58,450円)にまで値下がりすることもありうる。それまで待てるなら、これらの価格で購入できたら非常に買い得と言えるだろう。

◎「WIRED」な点
優れたパフォーマンス。出来のいいカメラ。明るくて表示が滑らかなディスプレイ。楽しげなデザイン。スマートなソフトウェア機能。ワイヤレス充電に対応。IP67規格の防水・防塵性能。7年間のサポート。顔認証機能を搭載。

△「TIRED」な点
バッテリーのもちは、もっとよくてもいいはず。そろそろ「Pixel 8」も同価格帯になるはず。「リアルトーン」機能は“退化”したかもしれない。

(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)

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